No1 - Biglobe

2015/9/12
知的の教科音楽における
自立活動について
奈良県立奈良西養護学校
教諭 上田 翠
音楽の授業紹介
• 生徒:中学部1年3名、2年3名、3年3名
(男子6名、女子3名)の9名
Ⅱグループ/新版K式発達検査
全領域2:03~6:02
• 教師:主担当1名、サブ3名
• 授業:毎週木曜と金曜の2回 40分
生徒9名の「音楽」での実態と様子
~ 課題、目標、見立て、思い ~
• 音楽的な実態に幅がある。
ピアノを聞き覚えで演奏できる子
歌詞を覚えて歌える子
リズムに合わせて楽器演奏ができる子
音楽に合わせて身体を前後に揺らす子、手拍子する子
歌うのがむずかしい子
• 歌を歌ったり声を出したりする生徒は2,3名。
• 自分のペースやタイミングまたはひとりで表現することが多い。
• 音楽に合わせて動く、音を出すことが難しい。
• 着席し続けることが難しく動き回ったり退室したりする生徒がいる。
• 自発的な要求や意思表示が弱く、あきらめたり怒ったりする。
• 教師とのかかわりは楽しめるが、友だちとは関わる経験が少ない。
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(学校経営計画より)
・音楽を通して、教師や友達と一緒に表現する楽しさを味わおう
・楽器に興味をもち、音を出す喜びを感じよう
・音楽を聞いて、声を出したり楽器を鳴らしたり表現しよう
むずかしい
4.学習課題
A 1年 女 ダウン症
1学期の授業内容について
•題材名「身体を使って音を鳴らそう」
2.授業計画 (全13時間)
第1次 音を鳴らす楽しさを知ろう (7時間)
•音楽を聞いて、音を鳴らしたり表現したりしよう (6時間)
3.授業内容
学習内容
生徒の活動
挨拶
・椅子に座ったままで姿勢を正し、始まりの挨拶をする。
本時の説明
・カードを見聞きして、今日の授業の流れを確認する。
はじまりのうた
・教師と一緒に声を出すまたは歌う。
・歌詞に合わせて身体の各部をトントンとリズムをたたいた
り、前にいる教師を見て動きを模倣したりする。
うた
・歌いやすい歌詞の一部分を歌ったり、手拍子など身体表現
『校歌』
をしたりする。
みんなのおなか
・Bくんは、ピアノ伴奏をする。
『いぬのおなか』より
・意識的に、長く、息を吹く。
① 短冊状の半紙を吹く
・教師が短冊状の半紙を口元に持ってくると、自分の息を意
② クワイヤーホ-ンを吹く
識して「フーフーフー」と3回息を吹く。
・教師の合図を聞いて、曲に合わせて、クワイヤーホンを吹
器楽
く。
( ハ ン ドベ ル と ツ リ ー チ ャイ ・自分で音を出そう。
ム)
・絵カードを見ながら歌う。その後、楽器を一人ずつする。
『ドレミのうた』
・教師の合図を見聞きしたり、ピアノの音を聞いて鳴らした
りしてタイミングを合わせて7 個のハンドベルを順に鳴らす。
最後にツリーチャイムを鳴らす。
・ベルをしない人は、歌を歌う。待つ。
挨拶
・椅子に座ったままで姿勢を正し、終わりの挨拶をする。
姿勢・運動 3:10 認知・適応 3:8 言語・社会 3:1 全領域 3:4
実 1. 動きを見て模倣をしたり、音楽に合わせて手拍子ができるが歌わない。
態 2. 2、3語文でぼそぼそ話すが聞き取りにくい。「なんでー」「やったー」は、大きな声。
課 3. 人見知りをする。慣れるまではすぐに集団や教室に入れず、しばらく離れて見てい
題
る。
理 1. 歌うことに抵抗がある?自信がない?恥ずかしい?
由 2. 息のコントロール苦手?大きな声を出すことができる。
原 3. 人や場面に緊張しやすい。不安。やりたいが、どうすればいいのかわからない?
因
仮 1. 馴染みがあり途中エコーソングになっている「校歌」であれば、口ずさむ?
説 2. 吹く楽器で、自分の体から音が出る感覚を体験。クワイヤーホーンを使用した。
手 3. 好きな楽器活動で、よく知っている曲を使用。全体の写真を提示し、始まりと終わり
を明確になるよう環境設定をした。
立
て
結 1. 手拍子のみ。声を出さなかった。
果 2. 「おなら」と言って手の甲に口をあてて音を出して遊んだり、クワイヤーホーンでは
何度もチャレンジして音が出せるようになったが声にはつながらなかった。
3. 繰り返す中で自分からスタート位置に並べるようになった。また、この活動以外でも
動きがスムーズになってきて、積極的に友だちの前に出られるようになった。
教室の入り口で座り込むAさん
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4.学習課題
B 2年 男 自閉スペクトラム症
姿勢・運動 3:10 認知・適応 7:09 言語・社会 3:03 全領域
実
態
課
題
理
由
原
因
仮
説
手
立
結
果
5:05
1. ピアノが得意だが、聴覚過敏があり耳を塞いで不安定になることがある。
2. 自分の思い通りにならないと、人や物をたたいてパニックになることがある。
3. 集団に入りにくかったり、同じ場所で活動し続けたりすることが難しい。
教師が身体をさすることで少しの間部屋に居ることができる。
1. 自分が出す音以外の音に対して不快感を感じているような様子がある。
2. 気持ちの伝達やコントロールが苦手。やりとりの経験不足か?状況の理解不足。
3. 集団の大きさ、音によって入りにくさが異なる。周囲の音が気になって着席し続け
られない。(音楽では、別室の音楽の授業を見に行く)
1. 役割活動、得意なことで力を発揮できると参加しやすくなるのでは。「校歌」の伴奏。
2. 伴奏や好きな活動でやりとり場面をつくる。「今日も弾いてくれる?」「もう一回」等。
3. 自分の役割を理解しての活動や友達と交代する活動で、集団での過ごし方が変
化するのでは?→ピアノ伴奏をしてもらったり、順番に吹く曲を用いたりする。
1. 合図を待って引き始める。教師に弾いてほしい時動作等で依頼。音が嫌でない。
2. 好きな音楽で気持ちの表現はあったが、やりとりにはならない。交互演奏は?
3. ピアノ伴奏では、退室していても必ず戻ってきて弾いてくれるようになった。順番に
吹く曲は自分の順番のときのみ、参加することがあった。
ピアノを弾くBくん
本校の授業をするなかで思うこと
• 音楽は興味を引き出すアイテムとしてよく使われる。
• 人数が多く、一人一人の課題が様々である。
• 生徒の実態に合わせて活動内容を考えるのがむずかしい。
• グループ編成の観点が認知面、適応面で、課題に応じていない。
• 多くの生徒に内容を合わせるため、内容の継続がむずかしい。
• 現在自立活動の時間が設定されていない。もしあれば・・・・・
例えば
Bくんであれば音楽を通して信頼関係を築いたり、音でやりとりを経
験したりしてコミュニケーションの基礎を学ぶことができるのではない
だろうか
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