更新日:2009/4/20 調査部:市原 路子 北米のシェールガス革命 (WGI 4/1, 3/11, 2/18, OGJ 3/9, 米国エネルギー省HPほか) ・ ・ ・ 近年、米国では、相次いで巨大なシェールガスが発見され、ガス生産量が増加中。 開発対象外であったシェールガスが、新たな生産可能な資源として認識され始めた。 これを受けて、米国外でも、シェールガス鉱床を評価しようという動きが出始めた。 米国陸上からのガス生産量が急増し、2005 年以降平均4%の伸びを示している(図1)。米国のガス埋蔵 量も 70 年代以降減退を続けていたが、2000 以降反転して増加し始めた(P9、図参考)。近年のガス高価 格や 90 年代の技術革新により、非在来ガス開発・生産技術が飛躍的に向上したことから、新たな資源とし てシェール(頁岩)層に貯留しているガスが経済的に探鉱開発できる目処がたち、多くの中小企業がシェー ルガス掘削に挙って投資し始めたことが大きな要因となっている。新たな資源として注目され始めたシェー ルガスは、その埋蔵量及び開発ポテンシャルは膨大であることから、国外からの十分なLNGが不可欠と考 えられていたこれまでの米国のガス需給見通しを一変させている。 米国では、シェールガスの登場は、上流業界に大きな変革をもたらしていることから「シェールガス革命」 あるいは「シェールショック」と呼ばれることもあり、さらに、その衝撃は世界の上流事業に伝わり始めて いる。著名コンサルタントの推定によれば、世界のシェールガス資源量は 5,000-16,000Tcf とその量は膨 大であり、開発への期待はどんどん膨らんでいる。 なお、シェールガスの特徴や開発技術については、4月 15 日掲載「非在来型天然ガス(タイトガスサンド、コールベッドメタン、 シェールガス)開発技術の現状 -Quiet Revolution: 技術の進歩は、天然ガスの可採埋蔵量を確実に増やす-」をご参照ください。 図1.米国のガス生産量(1977-2008) (bcf/d) 60 米国のガス生産量(年次 1977-2008) 55 メキシコ湾沖合 50 在来型 減退 45 40 1977 1982 (データ:米国エネルギー省) 1987 1992 1997 2002 2007 Global Disclaimer(免責事項) 1 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含ま れるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの 投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責 任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 図2.米国の種類別の非在来型ガス生産量 米国の非在来型ガス生産量 (Bcf/day) 25 タイトガスサンド CBM シェールガス 20 15 タイトガス サンド 10 5 CBM シェールガス 0 1990 1995 2000 2005 (データ:米国エネルギー省 長期見通し2008年) 1.米国のシェールガス事情 米国のシェールガス開発は、まだ始まったばかりである。非在来ガス(図2)は、現在のところ、米国の ガス生産量の5割近くを占めているが、その中でも、砂岩を貯留岩としたタイトガスや、炭層からのガス(C BM)開発がこれまで先行してきた。シェールガスは 70 年代の Ohio シェールガス開発や 80 年代から 90 年代の税優遇策がインセンティブとなったミシガン州の Antrim シェールから一部生産があったのみで、シ ェール鉱床の存在は知られていたものの経済的に採算性が見出せないとしてそのほとんどが見捨てられてき た。しかしながら、2000 年代に入って大きく変わり、米国のシェールガス生産量は 2000 年に 1.2bcf/d のみ であったが、2008 年に 4.6bcf/d まで増加している。テキサス州にある Barnett シェールガスからの生産量 が急増しているためであり、シェールガス革命は、この Barnett シェールガス開発の成功がブレークスルー となった。 Global Disclaimer(免責事項) 2 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含ま れるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの 投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責 任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 図3.米国エネルギー省による米国 48 州のシェールガスエリア シェールガス名 (位置) Barnett (テキサス) Fayetteville (アルカンザス) Haynesville (テキサス、ルイジアナ) Marcellus (米国北東部) 概要 主な事業者 ポテンシャル 3.7bcf/d(2008) 1981 年発見 面積 5,000sqm 深度 6,500-8,500ft 層厚 100-600ft 2005 年確認 面積 9,000sqm 深度 1,000-7,000ft 層厚 20-200ft 2007 年確認 面積 9,000sqm 深度 10,500-13,500ft 層厚 200-300ft 2006 年確認 面積 95,000sqm 深度 4000-8500ft 層厚 50‐200ft Devon, XTO Energy, Chesapeake, EOG Resources, EnCana Southwestern Chesapeake ・44TCF(可採埋蔵量*) ・Chsapeake によると最終生産量最大 75TCF Chesapeake, EnCana, Petrohawk ・251TCF(可採埋蔵量*) ・2008 年3 月、Chesapeake 保有エリアで 7.5-20TCF 発見と発表。 ・Chesapeake 推定の最終累積生産量は 500TCF 超 Chesapeake, Atlas Energy Range Resources ・262TCF(可採埋蔵量*) Chesapeake 推定の最終累積生産量は 500TCF 超 Apache-EnCana EOG Resources Nexen ・EnCana-Apache 連合、EOG、Nexen をあわせて、 18-31TCF Recoverable Muskwa(Ootla) 又は Horn River Basin 層厚 530ft (カナダBC州) 各種資料より作成 ・41.6TCF(可採埋蔵量*) ・Chesapeake 推定の最終累積生産量は最大 75TCF *はDOE「Shale gas primer 2009」 sqm=平方マイル ft=フィート 表1.開発投資が向かうシェールガスエリア Global Disclaimer(免責事項) 3 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含ま れるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの 投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責 任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 90 年代に革新的な発展を遂げた水平坑井などの掘削技術と、3次元などを取り入れたイメージング技術を 利用したバーネットシェールでの開発により、シェール層が開発対象として十分に有効であることが 2000 年代前半にかけて証明され、注目されるようになった。技術面で中心を担ったのは、長年開発に挑戦してい たMitchell Energy を2002 年に買収した中堅企業Devon 社であり、 そのほかに、 Chesapeake, XTO Energy, EOG Resources, カナダ企業の EnCana などの陸上中心に活動する中堅企業が中心となって生産量を押し 上げた(表2)。2000 年に日量 2 億 cf 程度の生産であったが、多くの企業が精力的に掘削・開発に取り組 み、2008 年末現在、1 万本以上の生産井から、2008 年年間平均で日量 37 億 cf の生産レベルに達している (図4)。Barnett シェールガスの埋蔵量についても、多数の企業が鉱区を保有しており確かな数字はない ものの、USGS の 2004 年評価によると 24TCF、Schlumberger によると 25-252TCF と評価されている。 図4. シェールガス別のシェールガス生産量(「Shale gas primer 2009」より) Devon XTO Energy Chesapeake EOG Energy EnCana Quicksilver Range Production Barnett 全体 2008 年生産量 (Bcf/d) 1.14 0.59 0.53 0.43 0.18 0.19 0.11 3.75 表2.Barnett シェールガスの主要事業者(上位7社)と生産合計 Global Disclaimer(免責事項) 4 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含ま れるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの 投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責 任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 Barnett シェールでの開発成功を受けて、米国の中堅企業は、他のシェールガスを求めて国内のシェール 層で試掘を行い、産出確認を行った。2005、2006 年にアルカンザスの Fayetteville や北東部の Marcellus などで相次いでガスが確認され、2007 年には Chesapeake がルイジアナの Haynsville シェールガスで生産 テストを行い、期待以上の生産結果を得て、新たなハイポテンシャルのシェールガスを確認し、賦存状態な どが把握され始めた(図3.及び表1)。さらに、カナダのブリティッシュコロンビアでも EOG や Apache などがシェールガスを確認した。このカナダのシェールガスは、「Horn River ベーズン」、あるいは 「Muskwa」あるいは「Oohaw」と呼ばれ、カナダでのシェールガスにも期待が広まった。 これら新たに確認されたシェールガス層からもガス生産が少しずつ始まっており、大手国際石油会社( メジャー)が、米国でのガス生産に伸び悩み、大幅な減少を記録している企業が多いのに対して、シェー ルガスに積極投資する中堅企業は、 その2008 年ガス生産量を2007 年比で7-30%増と大きく伸ばした。 (表 3) ランキン 2008年生産量 グ (百万cf/d) メジャー BP ConocoPhillips Chevron ExxonMobil Shell 中堅企業 Chesapeake Anadarko Devon XTO EnCana EOG Williams 2008年 前年比 (%) 2008年米国で 2009年3月27 の年間掘削数 日時点掘削操 (探鉱井・開発井合 業数 計) 1 3 8 9 12 2,157 2,091 1,501 1,241 1,040 -0.8 -8.8 -11.6 -15.5 -8.0 384 849 860 442 493 27 30 12 12 18 2 4 5 6 7 10 11 2,119 2,049 1,982 1,905 1,633 1,163 1,094 18.2 7.1 14.0 30.7 21.5 19.8 19.8 1733 1590 1069 1247 103 28 29 64 30 45 11 750* 1542* 1054 * 米国年間掘削数のうちガス狙いの掘削本数のみで、石油狙いの掘削数は含まず。その他は石油・ガス狙いの掘削数の合計。 (各社の財務諸表及び Chesapeake 投資家向けプレゼンテーション資料より) 表3.米国ガス生産企業上位 12 社 最近発見された Haynsville やカナダの Muskwa は、その賦存状態が Barnett シェールよりも、層厚、 圧力状態や孔隙率などの面で良好であるため、生産効率はさらに高いとの結果といわれている。本格開発・ 生産となれば、生産量が一気に増加するとの見通しである。 Global Disclaimer(免責事項) 5 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含ま れるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの 投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責 任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 また、賦存状態のほかにも、生産効率を上げるために繰り返し行われる水圧フラクチャリングのために、 大量の水が必要であることから、水の確保も大きなハードルである。さらに、既存インフラの有無も開発促 進に大きな影響を与える。Haynsville や Fayetteville シェールガスは、従来からの油・ガス田エリアである ことから比較的テンポよく開発が期待できる面もあるが、井戸元価格が非常に安いエリアであることから価 格変化に敏感となる。一方で、カナダの Muskwa は、産油ガス生産エリアから遠隔であるため、輸送イン フラ、開発インフラの整備や大量の水確保が大きな課題となり、本格開発までに時間を要するとの見方が多 い。 現在、石油・ガス価格は急落して、米国のガス上流投資意欲も一気にトーンダウンしており、夏場のピー ク時の稼動リグ数は、ガス狙いで 1500 基あったものが、2009 年4月時点で6割減の 600 基まで減少してい る。Chesapeake によると、非効率な在来型やシェールガス掘削を一部見合わせているが、2009 年後半にも ガス価格は上昇すると見込んでおり、その時期を待って再び投資を活発化させると述べる。 Chesapeake や XTO Energy によると、シェールガス探鉱開発コストが 1 百万 Btu あたり1ドル台前半 から2ドル台前半で、生産コストが同1~2ドル程度であることから, 全体でも3ドル~4ドル/百万 Btu 台 である。一方で、現在の米国のガス価格(ヘンリーハブなど)も同レベルの3ドル~4ドル./百万 Btu の低 位で推移している。シェールガス開発投資においては、在来型の石油・ガス開発やLNG事業と違って、多 数の井戸を次々に掘削し、生産挙動は初期時点が最も高いことから、掘削コスト回収までの時間が短い事業 である。そのため、現在は、この低価格下において、確実なコスト回収できるレベルに価格が戻るまで、新 掘及び生産の抑制を行っている状況である。ただ、企業によっては、開発が進み賦存状況が正確に把握され 始めていることから、これまで以上に掘削活動を活発化させたい意向を示すところもある。たとえば、XTO Energy などは2009 年の投資額を2008 年よりは削減するものの生産量目標は前年比14%増と増加目標を掲 げている。 2.米国のLNG需要見通しが一変 これらのシェールガスの開発可能性が飛躍的に高まり、米国の上流開発に大きな変化をもたらしているこ とから、将来的な米国のガス需給見通しも大きく変化した。米国エネルギー省による、2004 年時点での長期 見通し(図5-A)は、米国ガス生産量は減退し始めており、隣国からのパイプライン輸入も限界であるこ とから、今後は、LNG輸入が急増し、2025 年には、国内ガス消費量の 28%が輸入ガスでカバーされると の見通しであった。そのため、多くのLNG受入基地計画が提案され、東南アジアや中東でのLNG計画も 巨大米国市場を輸出先に想定したプロジェクトが立ち上がった。 しかしながら、2009 年の最新の見通し(図5-B)によると、長期的にも需要をほぼ国内生産でカバーで Global Disclaimer(免責事項) 6 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含ま れるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの 投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責 任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 きることから、 2030 年の長期でも消費量の3%程度をLNGでカバーする必要があるとの見通しに大きく将 来見通しが変わった。 図5-A 2004 年時点での長期見通し 図5-B 現在の長期見通し (出所:DOE) 米国LNG輸入量の実績をみても、LNG輸入量は、2000 年以降徐々に増加しており、2004 年~2007 年にかけては今後も増加傾向との見通しであったが、2008 年以降、国内のガス生産が堅調に伸び始めたこと から、LNG輸入量は激減している(図6)。 米国のLNG輸入量(月間輸入量 単位:10億cf) 120 100 80 60 40 20 02000年1月 2001年1月 2002年1月 2003年1月 2004年1月 2005年1月 2006年1月 2007年1月 2008年1月 2009年1月 (データ:米国エネルギー省) 図6.米国の月間LNG輸入量実績(20001 月-2009 年 1 月) 3.大手石油会社も続々と参入へ 中東などの大産油国への進出が難しい中で、政治的・経済的リスクの低い米国でのシェールガス資源の登 場は大手石油会社をも動かしている。2008年に、大手石油会社は、続々とシェールガス開発を得意とする中 Global Disclaimer(免責事項) 7 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含ま れるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの 投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責 任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 堅企業らとのパートナーを構築して、シェールガス(タイトガス)開発に参入し始めた。 シェルは、2007年、 Barnettシェールガスで操業するEnCanaと組んで、Haynesvilleシェールガス事業 の共同事業化を図り、2008年6月には、ブリティッシュコロンビア州のシェールガス事業を一部操業する Duvernay社を59億ドルで買収した。また、BPは、シェールガス革命の立役者でもあるChesapeakeと組ん だ。2008年7月に、オクラホマのWoodfood シェールガス の9万エーカーをChesapeake から17.5億ドルで 購入し、同年9月にアルカンザスのFayettevilleシェールガスの25%権益を19億ドルで購入して、共同事業 化を実現した(表4)。 金融危機後の2008年11月には、ノルウェーのStatoilHydroが資金難に陥ったChesapeakeに、34億ドル以 上を提供して、Marcellusのシェールガス事業の33%を取得するとともに、世界展開を視野に戦略的なパー トナーシップを締結した。ExxonMobilは、Haynesvilleのシェールガス鉱区を保有し、カナダのHorn River ベーズンにも自ら鉱区取得して参入している。 新技術の適用により登場したシェールガス開発は、専門技術と経験を有する企業が優位である。豊富な資 金を利用して、大手石油会社は、シェールガスの開発技術を早々に取り込むとともに、自らのシェールガス 技術を向上させて先行企業にキャッチアップする。大手企業がシェールガス事業に参入する理由として、あ くまで資源豊富な非在来資源を補強しているという見方もあれば、北米のコスト高資産の参入であるものの (高価格の時期であったために)収益性は十分に見出せるためと考える見方、あるいは北米は政治的な安定 している点を挙げるアナリストもいるが、いずれにしても、シェールガスは、世界の大ガス田を凌ぐ埋蔵量 が期待されており、さらに、低コスト開発が可能になったことから、大手企業にとっても非常に魅力的な資 産の一つになっている。 表4.Chesapeakeが提携したパートナー 締結時期 パートナー 対象シェールガスエリア 2008/8 2008/9 2008/11 Plains E&P BP Statoilhydro Haynesville Fayetteville Marcellus パートナ ーの参画 比率 20% 25% 32.5% (各種資料より作成) 4.米国外への波及 これらの動きは米国外でのシェールガス(タイトガス)評価を行うきっかけにもなっており、多くの企業 や団体が各地で動き出した。 Global Disclaimer(免責事項) 8 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含ま れるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの 投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責 任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 カナダでは、地元企業など多くの企業が、アルバータ州などの既定の産油地域だけでなく、サスカチェワ ン州、オンタリオ州、ケベック州などでの探査を始めて、シェールガスの発見と賦存エリアの把握を急ぐ。 欧州では、今のところシェールガスの生産量はない。しかし、米国での成功を受けて、2009 年 1 月に、 ドイツ(GeosciencesGFZ)、フランス(IFP)、オランダ(TNO)の研究機関が共同で、5 百万ユーロ(6.7 百万ドル)を事業予算として、地質的なシェールガスの調査事業を開始した。BP や Shell などの大手石油 会社が財政的な支援を行う。 本計画は、 西欧及び東欧でのシェールガス層に関するデータベースを構築して、 シェールガスフォーメーションの特定化を行う。第 1 フェーズでは、ドイツ、オランダ、スカンジナビア半 島を中心に、第 2 フェーズで、フランス、オーストリア、バルト三国、英国を対象とする。事業は3年間で、 必要であれば3年間延長する。民間企業ベースでも、ドイツ、オーストリア及びハンガリーなどに関心が向 けられている。 欧州でのシェールガス開発は、技術面ではなく、土地確保や制度面のハードルが北米よりも高いだろうと 推測されている。都市部での土地確保やインフラ整備などは高コストであり、さらに、税制面でも優位性が 乏しいと考えられる。もちろん、十分な掘削リグの数や高度な能力を有する技術者なども不可欠である。ガ スが確認されたとしても、当面は本格開発には至らないとの見方も強い。しかしながら、欧州地域は、市場 価格が北米より割高な点では魅力的であり、さらに、中・東欧地域にとって域内ガス開発への期待は非常に 高い。さらに、ExxonMobil、BP やシェルなどスーパーメジャーが関心を持ち取り組み始めたことで、彼ら の得意とする大規模開発化のノウハウや高度なリスクマネージメント力を駆使して、中長期的な視野におい て北米ではみられない新たな合理的な開発方式が登場する期待もある。 〔参考〕米国のガス確認埋蔵量 (米国エネルギー省) 米国ガス確認埋蔵量 (TCF) 350 300 250 200 150 100 1969 1976 1983 1990 1997 2004 米国エネルギー省ホームページ Global Disclaimer(免責事項) 9 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含ま れるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの 投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責 任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。
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