トルコ海峡の渋滞が深刻化 ロシア原油の輸出が遅延 - JOGMEC 石油

<更新日:2003/1/30>
<企画調査部:小田路子>
トルコ海峡の渋滞が深刻化
ロシア原油の輸出が遅延
(2004,CERA 1/21,Reuters 1/26, Oil Daily 1/6, OGJ 1/19, 他)
黒海からのロシア原油輸出が、予定より 15 日~1ヶ月程度の遅れ。
ロシアを含め旧ソ連の生産量は年間 60~100 万 b/d の伸びを示すが、輸出能力の限界が鮮明に。
ロシア及び中央アジアからの石油輸出量が順調に伸びる中で、最大の輸出ルートである黒海からの
搬出がタンカー渋滞のために滞っており、数週間の遅れが出ている。ロシア原油の生産量が 99 年に回
復し始めた当初から,輸出のボトルネックとしてトルコ海峡の通行キャパの制約が指摘されていた。中央
アジア諸国を含め旧ソ連地域からの生産量は,4 年前の 2000 年に 8 百万b/d(うち輸出量4.5 百万b/d)
で黒海からの原油及び石油製品の輸出量は 2 百万 b/d であったが、2003 年末には,生産量が 11 百万
b/d(輸出量 7 百万 b/d),うち3百万 b/d 近くが黒海沿岸から輸出されるまでになった。それらのほとん
どが、最狭700m のボスポラス海峡とダーダネルス海峡(双方を総称してトルコ海峡:地図参照)を通過し
て、地中海市場に搬出されている。今後も旧ソ連地域からの生産量が伸びることが予想されていること
から,黒海からの輸送の遅れが恒常的になれば,ロシア,アゼルバイジャン,カザフスタン原油の輸出量
は,迂回ルートの開拓まで制約を受けることとなる。
-1Global Disclaimer(免責事項)
本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)石油・天然ガス調査グループが信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、
機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたも
のであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結
果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申
し上げます。
ボスポラス海峡
ダーダネルス海峡
Bosphorus Strait
Dardanelles Strait
写真:イスタンブール(マルマラ海への入
り口)付近のボスポラス海峡
マルマラ海
トルコ海峡の混雑のために、2003 年末
から1月末の間,予定より15日~1ヶ月遅
れて海峡を通過している。以前より恒常
的に数日間の遅れが出ていたものの,
冬にあたって全長 200m 以上の船舶の通
航が可能な日中の時間が短く,さらに濃
霧や雪のために視界不良となるために
大幅に遅れが見られており, 近年の黒海
からの輸出量の増加もあって事態は深刻
化している。特に、ダーダネルス海峡の
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本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)石油・天然ガス調査グループが信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、
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のであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結
果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申
し上げます。
通行は日数がかかっており、1月末、ダーダネルス海峡で北方向けタンカーが 38 隻、南方向けタンカ
ーが 16 隻待機して、通行許可を待っている。ボスポラス海峡の通航についても全体で 13 隻が待機中
である。IEA によると,トルコ海峡の通行能力は 1.8 百万 b/d であり,すでに実際の輸送量はそれを大
幅に上回っているのが現状である。
旧ソ連産石油の輸出量(原油+石油製品)
パイプライン及び貨車輸出
バルト海・北極海からの輸出
1月
03
年
20
20
02
年
1月
1月
20
01
年
1月
20
00
年
1月
19
99
年
1月
98
年
19
97
年
19
96
年
19
1月
黒海からの輸出
1月
(百万b/d)
8.00
7.00
6.00
5.00
4.00
3.00
2.00
1.00
0.00
ボスポラス海峡の最狭点は幅 700m、その地点での 45 度の旋回などがあり、海峡全体でもジグザグ
走行のため高度な操縦技術が必要となる。大型船舶の通行は不可能で、14.5 万トンタンカー(約 1 百万
bbl 積載)が通行キャパの上限である。90 年代前半には、運転が難しいボスポラス海峡での事故が年間
40 件近く起きていたため、同年代半ばからトルコ政府は、独自に船舶の通行規制を始め、ロシア政府
の反対も受けながら, 2002 年 10 月からは,長さ 200m 以上(5 万トンタンカー以上)の船舶について夜間
の通行を禁止し、それらの通行には 48 時間前までに通行許可を申請することを義務付けた。さらに,全
長 200-300m の船舶の通行時は片道通行にすることとした。
表1.トルコ海峡の概要
ボスポラス海峡 (黒海~マルマラ海)
ダーダネルス海峡(マルマラ海~エ
ーゲ海)
長さ
約 30km
約 60km
最狭地点
Kandilli 幅約 700m
幅約 1000m
-3-
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本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)石油・天然ガス調査グループが信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、
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最広地点
幅 3200m
幅 1700m
タンカーキャパ
14.5 万トン
航行路が狭い上に蛇行しており,さらに,黒
海とマルマラ海の潮の関係で海面の流れと
海底の流れが反対方向であるため,航行
のハンドリングが難しい。
トルコ海峡は、1936 年 7 月に締結されたモントレー条約により、トルコの安全が害されない限り、外国の
一般船舶に対し自由航行が認められている。しかし、1994 年より、年間ボスポラス海峡で 40、50 件の事
故が発生していることから、トルコ政府は海上の安全航行を守るため規制を開始した。2002 年 10 月に規
制を強化し、200m 以上の船舶については 48 時間前までに許可要求し、かつ夜間通行を禁止。
表2.急増するタンカー通行量
ボスポラス海峡の通行量 (トルコ Maritime Pilots’ ホームページより)
通行船舶 うちタンカー
タンカー比率
総数
全長 200m 以
上の船舶
2000
48079
4937
10%
2203
2001
42637
6516
15%
2453
2002
47283
9427
20%
3113
遅延・混雑化に伴う石油市場への短期中期的な影響
・ トルコ海峡でのタンカー航行の遅延により中型タンカーの供給が不足しており、特に、アフラマッ
クス(8 万トン)とスエズマックス(約 14 万トン)タンカーの運賃が大幅に上昇。運賃レートは1月末現
在,昨年夏の水準から 3~4 倍に跳ね上がっている。タンカー市場は,全体的にフレート高(大型船
VLCC は World Scale 130 前後。中東-日本の運賃 2.4 ドル/bbl)になっている。
・ 黒海からの原油搬出の滞りで、地中海地域向けの石油製品や原油供給が減少している。
-4Global Disclaimer(免責事項)
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し上げます。
・ 旧ソ連産原油の輸出量の限界:ロシア原油の搬出路は海上からでは黒海の他にバルト海からの
ルートがあるが、このルートはバルト海からの出口で多島海(デンマーク海峡)を通行するため,ト
ルコ海峡と同様にタンカーの規模(キャパ 11万トンタンカー)に制約があり、また,冬場はバルト海
やバルト海に至る河川で凍結がおきる場合もあることから,輸出量の拡大が制約される。すでにそ
の航行量は限界状態とも伝えられている。一部,ロシア輸出ルートの欧州向け Druzhba パイプライ
ンで拡張工事が行われているが、旧ソ連地域からの生産量は、2005 年まで年間 50 万 b/d 以上の
増加が見通しされているため,その他の既存ルートの能力増強や新規の輸出ルートの開通が行
われない限り輸出量は制約されることが予想される。なお,アゼルバイジャン原油及びカザフスタ
ン原油の旧ソ連地域以外への輸出は,現状,すべてロシア経由の黒海ルートからとなる。
・ ボスポラス迂回ルートの建設計画が促進:アゼルバイジャン原油及びカザフスタン原油の輸出を
目的として,ロシア国内及びトルコ海峡を通過しない, Baku-Tbilisi-Ceyhanパイプラインの建設
(2005 年開通予定)が行われている。また,ロシア原油の輸出ルートには、黒海沿岸のブルガリア
からギリシャアのアドリア海までのパイプライン建設計画(関連記事 2002 年 7 月号 ブルガリア・ロ
HTU
シア・ギリシャ:Burgas-Alexandroupolis P/Lの建設合意で,実現性に一歩前進), 太平洋側に搬出する太平
UTH
洋パイプライン計画、北極海Murmanskに搬出するパイプライン計画があがっている。(関連記事
2002 年 11 月号 ロシア原油パイプライン計画の全貌)
HTU
UTH
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