NOC(国営石油会社)の IPO - JOGMEC 石油・天然ガス資源情報

更新日:2016/6/28
調査部: 高木路子
NOC(国営石油会社)の IPO
(各社の財務諸表及び各種報道)
・米国で起きたシェール革命の余波が、サウジアラビアの経済・社会改革“ビジョン 2030“の発表を促した
とも言える。サウジアラビアが発表した“ビジョン 2030”には同国の国営石油会社 SaudiAramco の変革プ
ログラムが含まれる。その改革として、同国国営石油会社の株式上場(IPO)計画が盛り込まれるとみら
れ、経済改革の一端を担う。現在、SaudiAramco の株式上場については、その上場場所、上場対象、時
期等の詳細は検討段階とみられる。
・これまでに国営石油会社の IPO を実現した前例は数多く、いずれのNOCもその後は規模拡大を目指
して国内外の上流投資に積極的な姿勢に転じた。
・過去の事例に従えば、このような産油国企業(NOC)の IPO と上流の外資導入は、NOC を技術面及び
資金面で増強させると共に、国内上流産業の活性化を促し、石油収入の増大につなげてきた。1990 年
代末以降、中南米を中心に産油国でよくみられる動きでもある。
1. 低油価に直面する産油国
今回の原油価格の低迷を契機に、2016 年 5 月、サウジアラビアは経済改革の一環としてサウジアラム
コの小規模シェアの株式上場計画を発表した。2018 年頃にも上場したい意向であるが、今のところ、上
場先、規模、上場対象など最終案は明らではない。また上場にあたって、財務諸表の公表、取締役会の
独立性、さらに上流が含まれる場合には保有資産等の開示などが要求されることから、その実現につい
て疑問視する見方も見受けられる。
民間企業(IOC)
国営石油企業(産油国NOC)
・CAPEX、OPEXの削減
・CAPEX, OPEX 削減
・ポートフォリオ見直し・資産売却
・資産売却/ファームアウト
・減配、自社株買い中止
・CAPEX, OPEX 削減
・将来に向けた資産取得
・財務条件緩和
国営石油企業(消費国NOC)
・鉱区開放・外資導入
・国営企業の民営化
産油国政府
図 1. IOC、NOCと産油国政府の低油価対応
–1–
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本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含ま
れるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの
投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責
任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。
2.産油国政府の対応
低油・ガス価に直面して、民間企業(IOC)や国営石油会社(NOC)だけでなく、今回のように産油国
政府も対応に急ぐ。産油国の政府は、2014 年後半以降の原油・ガス価下落を受けて財政収入が急減し、
国家財政への影響を軽減させるために国民に対して補助金撤廃等の緊縮策を打ち出している。石油産
業からの収入確保にむけて既存企業への投資インセンティブの引き上げや新規ライセンスラウンドのほ
か、国有企業の改革、あるいは政府保有株の放出など財政収入確保に向けた施策が表明されている。
例えば、ロシアでは、同国政府は、国家収入を補填するために国営企業の政府保有株の放出計画
(Rosneft, Bashneft)、輸出税の引き上げ、あるいは国営企業の配当金引き上げ指示などの策を講じてい
る。また、サウジ政府も国債発行による資金調達や外貨準備高の取り崩しなども行っている。産油国政府
による NOC の新規 IPO も、サウジアラビアの Aarmco をはじめ、ナイジェリアのNNPC、カザフスタンの
KazMunaiGasa などで検討されている。IPO 計画は、資金調達だけを目的としているのではなく、あわせ
て国営会社の競争力強化によって国内産業の育成を図ろうという狙いもある。
一方、IOCや NOC は、投資額・操業費の削減、ポートフォリオの見直しと並行した資産売却の実施
(例:ロシア、ブラジル)、民間企業であれば減配・無配などの株主還元費の削減などがみられる。中東
産油国の NOC は、政府による生産増大政策が掲げられており、掘削活動の顕著な後退は見られず、引
き続き生産能力に向けた投資活動を行っている。消費国 NOC は、将来に向けた資産確保(例:タイ、イ
ンド)が一部でみられる。
3.サウジ Aramco の IPO
サウジアラビアは、世界最大規模を誇る国営石油会社 Saudi Aramco を、全体あるいは一部切り出して
子会社化して上場すると発表し、サウジアラビア国内の証券取引所「Tadawul」での投資家向けに上場さ
れる方針を示しているが、具体的な上場方法については現在検討中である。
SaudiAramco は世界最大の石油・ガス生産者、かつ、国内資源を一元的に操業管理し、外国石油企業
との共同事業化(旧中立地帯を除く)を行っていない。データ・情報開示は、石油・ガスの可採埋蔵量、石
油・ガスの生産量、石油精製量・精製能力・輸出量・販売量等、部分的に開示されている(表1参照)が、
具体的な投資規模や財務諸表等の資金面について一切公開されていない。石油及びガスの埋蔵量は
公表されているものの、その評価基準が明確に提示されているわけではない。このような状況において
SaudiAramco のIPOの実現性について疑問視する声もきかれる。
–2–
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本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含ま
れるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの
投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責
任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。
その一方で、サウジアラビアのエネルギー・産業・鉱物資源大臣兼 Aramco 会長の Khalid Al-Falih 氏
は、6月上旬、国内生産能力については現状の水準を維持していくとの従来路線を表明したが、これま
で行ってこなかった国外の上流事業への参画を検討しているとの新たな方針を示した。今回の
SaudiAramco 改革プログラム及びIPOをきっかけにして、サウジ Aramco の経営体制及び事業展開の拡
大にも繋がる可能性も十分に想定される。
表1.サウジ Aramco の概要(2015 年年報)
石油:可採埋蔵量(億バレル)
Saudi Aramco 2015
2,611
ガス:可採埋蔵量(TCF)
297.6
原油生産量(百万 b/d)
10.2
輸出量 7.1
1.3
7,979
12.83
NGL 生産量(百万 b/d)
天然ガス生産量(mmcf/d)
生産量合計(百万 boe/d)
精製能力(百万 b/d)
国内
世界(権益分)
石油製品販売量
(百万 b/d)
従業員
その他
(参考)ExxonMobil 2015 年
確認埋蔵量【SEC基準】
147
確認埋蔵量【SEC基準】
60
2.345 (NGL 含む)
上記に含む
10,515
4.10
5.03(世界全体)
1.0(100%保有)
1.9(JV保有)
3.1
1.76
5.68
65,266 人
73,500 人
石油化学生産 7.0 百万トン
石油化学能力 23.7 百万トン
国内エネルギーインフラ保有 小売販売拠点 世界 20,251 箇所
http://www.saudiaramco.com/content/dam/Publications/annual-review/2015/English/AR-2015-SaudiAr
amco-English-full.pdf
4.過去の IPO
国営石油会社 NOC の IPO(新規株式公開)はそれほどめずらしいものではない(表2、表3)。近年で
も、政府による国営企業の民営化政策の一環として、国際競争力の強化、非効率性の排除といった目的、
あるいは、他石油企業との公平性維持、外部からの資金調達などそれぞれの政策的な意図をもって各
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国で実施されている。それによって国営石油会社が企業体として規模拡大や効率性・収益性の向上を
目指してきた。
表2.これまでのNOCの株式売却・部分民営化 1
国
Gazprom
ONGC
Petobras
Statoil
CNPC 他
(別表)
PTT
Rosneft
Ecopetrol
ロシア
インド
ブラジル
ノルウェー
中国
タイ
ロシア
エクアドル
1996 年
民営化
インド
1999
2001
2000-2001
2001
2006
2007
香港、NY、
ロンドン
別表
バンコク
モスクワ、
ロンドン
69.5%
(追加売却
19.5%予
定)
・政府企業
の民営
化。
・外部から
の資金調
達
コロンビ
ア、NY
88.5%
上場時期 1993
主な上場 モスクワ
市場
現在の政 50.003%
府保有比
率*
上場時の
政策的な
背景・目
的
68.9%
ブラジル、 オスロ、N
NY
Y
28.3%
67%
(議決権で
は 50.3%)
・政府保有 ・政府によ ・国際競争 ・政府による
・政府によ
る国営企業 株式の一 る民営化
力の強化 国営企業改
の民営化政 部上場
政策の一
革
策
環
・民営化に
・上流開発
よる競争力
における
強化と国際
外資導入
進出
を並行し
て実施
51.11%
・政府に
よる民営
化政策
の一環
*これら以外に、政府系銀行や政府系企業が株式を保有している場合もある。
1
・Petrobras
を先行モ
デルに実
施。
・上流開発
における
外資導入
策を並行
各種資料より作成
http://oilgas-info.jogmec.go.jp/pdf/0/558/200401_085a.pdf 「Statoil 民営化の教訓」(伊藤)
https://oilgas-info.jogmec.go.jp/pdf/0/454/200205_019a.pdf 「驚くべき変貌を遂げた中国国有石油会社
の民営化」(佐藤(竹原))
https://oilgas-info.jogmec.go.jp/report_pdf.pl?pdf=0602_out_j_ru_russian%2dmajors%2epdf&id=193
「ロシア: 再編進むロシア石油・天然ガス業界-官製国際メジャー誕生か」(本村)
https://oilgas-info.jogmec.go.jp/report_pdf.pl?pdf=0710_out_l_co_ronda_caribe%2epdf&id=1840
「コロンビア:外資導入政策によりメジャーの探鉱・開発活動増加も期待される」(舩木)
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表3.中国国営企業の部分民営化
国営会社
時期
上場子会社名
上場市場
上場子会社の政府
保有比率
CNPC
2000 年
PetroChina
香港、NY
Sinopec
2000 年
Sinopec Corp
香港、NY、ロンドン
CNOOC
2001 年
CNOOC Ltd
香港、NY、ロンドン
86.40%
75.80%
64.40%
親会社は 100%国営企業
親会社は 100%国営企業 親会社は 100%国営企業
南米産油国ではブラジル、コロンビアにおいて、近年、上流開発を軸にした経済改革を行うために外
資導入策に踏み切り、外国企業に石油開発投資を誘致すると同時に国営石油企業を上場させ、石油開
発産業の活性化を促した。
中国でも、政府の方針として国営企業の競争力強化・透明性向上に向けて民営化が推進され、2000
年から 2001 年にかけて中国国営企業3社が一部事業を子会社化し、その一部を上場させている(表2)。
それに伴って上場した子会社の資産保有、投資状況、操業状況等が年次報告書等で明らかにされるよ
うになったと共に、これら3社は、2005 年頃から積極的に海外展開を行うようになった。
こうして各国政府が NOC 強化策を講じたことで、2000 年代には、中国、ブラジル、ノルウェーでは、国
内での投資増強による新規の油田開発に繋がっているだけでなく、積極的な国際進出によって先進的
な技術やフロンティア開発の経験・ノウハウの取得機会を得ている。
また、中国NOCの積極的な国外投資を受けて、韓国やインドあるいは他の東南アジアの NOC に影
響を与え、海外展開を始めた。南米では、ブラジルが Petrobras 上場後に国内生産量を大きく成長させ
ているが、それに倣ってコロンビアでもNOCの上場と上流投資の積極的な活動に繋がった。こうした成
功例を参考にしながら、メキシコのPEMEXが独占開発から外資開放に転じ、国内生産量の回復と、そ
れに伴う財政の回復を目指し始めた。
ノルウェーも、減退するとみられていた国内の石油生産は、Statoilが中心となってJohan Sverdrup 等過
去最大級の国内油・ガス田の発見に繋がり、生産ピークが先送りされる目処が立った。Statoil 自体も、
2000 年以降、北米やアフリカなどの国外への上流投資を増やし、シェール開発や東アフリカの大水深開
発に参画している。
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各NOCの生産量
6,000
5,000
2005
2010
2015
4,000
3,000
2,000
1,000
0
Petrobras
Statoil
PetroChina
Sinopec
CNOOC Ltd
PTT
ONGC
Rosneft*
Ecopetrol
財務諸表、PIW、Evaluate Energyより
図2.NOC の生産量推移(単位:千 boe/d, 石油及びガス合計)
*Rosneft は 2013 年に TNK-BP 買収(99 万 boe/d)して生産大幅増。
5.上流市場の対外開放とNOCの欧米化
過去の事例に倣えば、国営石油会社の IPO の実施によって、国営石油会社は、政府の一部分として
の活動を離れ、企業体として生産・収入目標を掲げた規模拡大や国外進出などを積極的に展開してい
る。今後、サウジ国内の石油事業の変化がどのように進み、政治からの分離をどこまで追求し、どこまで
投資活動が明らかになるのかという点で興味深い。ブラジルの動きが南米地域(コロンビア、アルゼンチ
ン、メキシコ)に広がったように、サウジアラビアのNOC改革がうまく進むと他の中東諸国に発展する可
能性も否定できない。
1990 年代末の低油価時には、サウジアラビアとクウェートの両政府も上流開発に欧米のメジャーを入
れて取り組もうとした 2。しかしどちらも政府・NOC間の調整がうまくいかず、最終的に失敗した。サウジア
ラビアでは、1998 年に天然ガス田開発プロジェクト(通称:Gas Initiative)をアブドラ皇太子(当時)の下で
始動させたが、その後の交渉で事業の経済性評価や埋蔵量評価の面でメジャー側との見解相違がみら
れ、2003 年に最終的に交渉は打ち切られた(表4)。当時の Naimi 石油大臣/あるいは Aramco の内部に
おいて外資主導の事業推進に対して強い抵抗があったとも伝えられ、交渉妥結を難しくした可能性が指
摘された。クウェートでもプロジェクトクウェートと呼ばれる北部 4 油田(Raudhatain,Sabriyah,Ratqa,
2「サウジアラビア/クウェート:外資導入プロジェクトの進展を目指す動き、サウジは
Gas Initiative の枠組みを見直しへ」
(猪原)https://oilgas-info.jogmec.go.jp/report_pdf.pl?pdf=200307_100t%2epdf&id=525
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Abdali)と西部 2 油田(Minagish,Umm Gudair)の能力増強計画が打ち上げられメジャーらが高い関心を
示したが、議会が不透明な契約手続きに難色を示し、事実上交渉が膠着した。
表4.サウジアラビアの 1990 年末の Gas Initiative
出所:石油・天然ガスレビュー2003 年 7 月号(猪原)
低油価であった1990年代末から2000年初は、他の中東諸国でもカタールLNG事業(メジャー主導)、
イエメン LNG 開発(Total 主導)で西側の技術や資金が投じられた。中東の一部諸国では受入姿勢がみ
られカタールが外資開放に向かった。しかしながら、サウジやクウェートは内部の抵抗により実現せず、
その後も NOC 完全独占体制(中立地帯を除く)がそのまま維持され、現在に至っている。
各国紆余曲折しながらも、こうした外資導入やNOCのIPOの動きはみられ、1990 年代末の低油価期
頃から各地でみられる潮流である。前述のようなNOCの IPO に限らず、2000 年代以降においても、リビ
アの 2005 年の対外上流開放、イラクの 2009 年の対外上流開放、さらに近年のメキシコの国内エネルギ
ー改革の一環による PEMEX 競争力強化及び上流の対外開放、そしてイランでも新たな上流開放の動き
がみられる。他国に触発されて相次いで産油・ガス国が国営石油会社(NOC)の改革に着手するとともに、
国内の石油・ガス産業の活性化による国庫収入の増大を目指している。
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図3.石油会社の時価総額(上位)
70 年代に世界に広がった産油国の資源の国有化は、30 年あまりを経て反転し始めた。再び、ゆっくり
と対外開放・NOC改革へと向かっている。その流れは、再び低油価に直面したサウジアラビアにおいて
経済改革の一翼として動き出したと捉えることはできないだろうか。
6.まとめ
・米国で起きたシェール革命の余波が、サウジ経済の改革をも促しているとも言える。サウジアラビアの
国営石油会社の株式上場計画もその一端である。
・今のところ、その上場に関わる最終設計が明らかにされていないため、その実現性を疑問視する声も
ある。しかし、実際に国営石油会社が IPO を実現した事例は数多く、いずれもその後は国内外の上流投
資に積極姿勢に転じ、規模拡大を目指している(時価総額ランキング図3。
・長期的な視点でみれば、産油国企業(NOC)の IPO や上流の外資導入は、NOC を技術面と資金面で
強化すると同時に国内の上流産業の活性化を促し、国家財政の収入増大にも繋がっている。これは、
1990 年代末以降から、中南米、中東を中心によくみられる潮流でもある。
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