更新日:2016/1/17 調査部:野神 隆之 原油市場他:米国での在庫増加

更新日:2016/1/17
調査部:野神 隆之
原油市場他:米国での在庫増加、中国経済減速に対する懸念、イランの制裁解除と増産観測で、原油
価格は下落、1 バレル当たり 30 ドル割れ
(IEA、OPEC、米国 DOE/EIA 他)
① 米国では、製油所の石油製品生産活動は比較的旺盛であったと見られる一方で、ガソリン需要が減
速しつつあった他、留出油についても、暖冬に加え米国経済の減速による物流活動等の不活発化
が発生していると見られることで需要が低迷したことにより、両製品の在庫は増加傾向を示した結
果、双方とも平年幅を超過する在庫水準となっている。他方、製油所の高水準の活動に併せ原油の
処理が進んだ結果、原油在庫水準は上下に変動しながらも若干減少傾向になったが、平年幅を超
過する水準は続いている。
② 2015 年12 月末の OECD 諸国推定石油在庫量の対前月末比での増減は、原油については、米国で
は若干減少、日本ではほぼ変わらず、といった状況であったが、欧州においては、原油価格が下落
傾向となったことに伴いガソリンの精製利幅が回復してきたことから、欧州での製油所のガソリン生産
活動が刺激されるとともに原油の受け入れも旺盛になったと見られることから、かえって在庫水準は
上昇した結果、OECD 諸国全体での原油在庫は若干ながらも増加となり、平年幅を大きく超過した状
態は継続している。他方、製品在庫については、欧州で微減、日本では微増となったものの、米国
でガソリン及び留出油在庫が増加したことにより、石油製品全体の在庫も増加となったことから、
OECD 諸国全体での製品在庫水準も上昇、この時期としては平年幅上方に位置する量となってい
る。
③ 2015 年 12 月中旬から 2016 年 1 月中旬にかけての原油市場においては、12 月中旬から 2016 年 1
月初旬までは、米国連邦公開市場委員会(FOMC)での金利引き上げの決定等により米ドルが上昇
したことや、イランが制裁解除後原油輸出を増加させる方針である一方でサウジアラビアは生産制限
を行わない意向である旨それぞれ表明したこと等が原油相場に下方圧力を加えた反面、米国で原
油輸出解禁の動きが明確になってきたことにより、同国での石油需給が引き締まるとの観測が発生し
たこと等が、原油相場に上方圧力を加えた結果、原油価格は 1 バレル当たり概ね 34 ドル前後~38 ド
ル台前半の範囲で変動していた。しかしながら、1 月初旬以降は、米国でガソリン等の在庫が大幅に
増加している旨判明したことに加え、中国株式相場等を巡り混乱が発生したこと等に伴い同国経済
の不透明感に対する市場の懸念が増大したこと、イランの制裁解除と増産が間近に迫ってきたとの
認識が市場で広がってきたこと等により、原油相場は下落傾向となり、1 月 15 日の原油価格の終値
は 1 バレル当たり 29.42 ドルと、終値ベースとしては 2003 年 11 月 4 日以来の安値に到達した。
④ 今後については、イランに対する制裁解除に伴う同国での増産観測から相場に対して下方圧力が
加わりうると考えられる。一方で、米ドルが上昇しやすい環境から、この点でも原油相場には下方圧
力が加わりやすい。さらに、冬場の暖房シーズンが峠を越えつつあり、石油不需要期に向かい始め
ることから、この面でも原油相場が下落する可能性があるなど、総じて原油相場を下落基調にするよ
うな要因が多いものと思われる。
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本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含ま
れるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの
投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責
任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。
1.原油市場を巡るファンダメンタルズ等
2015 年 10 月の米国ガソリン需要(確定値)は前年同月比で 1.1%程度増加の日量 925 万バレルとなり
(図 1 参照)、速報値(同 921 万バレル、前年同月比 0.7%程度の増加)から若干上方修正されている。10
月の同国のガソリン小売価格が前年同月比で 1 ガロン(約 3.8 リットル)当たり 0.8 ドル強低下していること
から、自動車運転距離数もそれなりに堅調に推移した(10 月の同国の自動車運転距離数は前年同月比
で 2.4%の増加となっている、図 2 参照)ことが、ガソリン需要の増加に繋がったものと考えられるが、9 月
は自動車運転距離数が前年同月比で 4.3%増加している一方で、ガソリン需要は同 5.1%の増加と自動
車運転距離数を上回る伸びを示したことから、その反動で、10 月に関しては自動車運転距離数の増加
ほどガソリン需要が伸びなかった可能性があるものと考えられる。他方、2015年12月の同国ガソリン需要
(速報値)は日量 907 万バレル、前年同月比で 1.5%程度の増加を示している。これに関しては、2014 年
12 月において、既に原油価格の下落とともにガソリン小売価格も下落し始めていた結果、2015 年 12 月
の同国のガソリン小売価格は前年同月比で 1 ガロン当たり 0.5 ドル弱安価である状態にとどまったことか
ら、ガソリン需要の伸びもそれに応じて鈍化し始めたことが推察される(また、後述のようにガソリンの出
荷を抑制する動きが製油所に出てきたことから、出荷量で測定される需要も鈍化したことも考えられる)。
他方、米国での製油所は、秋場のメンテナンス作業を概ね終了し、冬場の暖房シーズン突入に伴う暖房
用石油製品需要期に向け稼働を高水準に保つとともに、原油精製処理活動も旺盛であった(図 3 参照)。
一方で、ガソリン最終製品の生産は相当程度減少した(図 4 参照)。しかしながら、ガソリン需要が鈍化し
始めた反面、ガソリン混合基剤の生産は堅調であったと見られること(これに関しては、製油所が春場の
ガソリン製造に備えて混合基剤の製造に注力した結果によるものと見る向きもある)から、12 月中旬から 1
月上旬にかけガソリン在庫は増加傾向となった(特に、1 月 1 日及び 8 日の週については併せて在庫量
は 1,900 万バレル強増加したが、これは 1990 年 1 月以降の週間統計史上最高水準の増加量であった)
結果、1 月上旬としては平年幅を超過する量となっている(図 5 参照)。
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2015 年 10 月の同国留出油需要(確定値)は前年同月比で 6.4%程度減少の日量 399 万バレルと速報
値の日量 393 万バレル(前年同月比 8.0%程度の減少)からは若干上方修正されている(図 6 参照)もの
の、それなりの減少幅となった。米国では金利引き上げ観測等に伴う米ドルの上昇もあり。同国の鉱工業
生産の前年同月比での伸びが鈍化傾向を辿った(図 7 参照)ことから、物流活動が鈍化していることが影
響しているものと考えられる。また、12 月の留出油需要(速報値)は日量 353 万バレルと、前年同月比で
15.6%程度の大幅な減少となっている。12 月は平年を上回る気温が相当期間見られたことから、暖房油
の需要が不振であったことに加え、米国の鉱工業生産も 11 月及び 12 月については前年割れをするよう
になったことから、物流活動等がさらに鈍化していると見られることにより、留出油需要が抑制されたこと
が示唆される。このように需要が軟調である一方で、留出油の生産は若干減少を見せた(図 8 参照)もの
の、留出油在庫を減少させるまでには至らず、結果として 12 月中旬から 1 月上旬にかけ概ね当該在庫
は増加傾向となった結果、1 月上旬としては在庫は平年幅を超過する量となっている(図 9 参照)。
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2015 年 10 月の米国石油需要(確定値)は、前年同月比で 1.7%減少の日量 1,935 万バレルとなって
おり(図 10 参照)、速報値の段階では前年同月比で 13.3%程度の増加(量としては日量 387 万バレル)
を示していた「その他の石油製品」が確定値では同 329 万バレル、前年同月比で 3.7%程度の減少とな
っていた旨明らかになったことから、石油需要全体でも速報値である日量1,967万バレル(前年同月比で
0.1%の減少)から下方修正となった。また、12 月の米国石油需要(速報値)は、ガソリンや「その他の石
油製品」の需要が前年同月比で増加していることが寄与し、日量1,967万バレルと前年同月比で1.9%程
度の増加となっているが、「その他の石油製品」の需要は日量 402 万バレルと確定値上の実績(2014 年
10 月~2015 年 10 月で日量 302~372 万バレル)と対比して高過ぎるように見受けられるので、この点に
ついては確定値に移行する際に下方修正される可能性を意識しておく必要があろう。他方、米国では、
製油所での原油精製処理量が比較的高水準を保っていたことにより、原油の処理がそれなりに進んだこ
とから、原油在庫水準は上下に変動しながらも、若干ながら減少する傾向を示した。それでも、1 月上旬
時点では平年幅を大きく超過している状態は維持されている(図 11 参照)。なお、原油、ガソリン、及び
留出油在庫がそれぞれ平年幅を大幅を超過していることから、原油とガソリンを合計した在庫、そして原
油、ガソリン及び留出油を合計した在庫は、いずれも平年幅を超過する状態となっている(図 12 及び 13
参照)。
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2015 年 12 月末の OECD 諸国推定石油在庫量の対前月末比での増減は、原油については、米国で
は若干減少、日本ではほぼ変わらず、といった状況であったが、欧州においては、原油価格が下落傾
向となったことに伴いガソリンの精製利幅が回復してきたことから、欧州の製油所でのガソリン生産活動
が刺激されるとともに原油精製処理量も増加したものの、原油の受け入れも旺盛になったと見られること
から、かえって在庫水準が上昇した結果、OECD 諸国全体での当該在庫は増加となり、平年幅を大きく
超過した状態は継続している(図 14 参照)。他方、製品在庫については、欧州で微減、日本では微増と
なったものの、米国でガソリン及び留出油在庫が増加したことにより、石油製品全体の在庫も増加となっ
たことから、OECD 諸国全体での製品在庫水準も上昇し、この時期としては平年幅上方に位置する量と
なっている(図 15 参照)。なお、原油在庫が平年幅を大きく超過する一方で、石油製品在庫量が平年幅
の上方に位置していることから、原油と石油製品を合計した在庫は平年幅を超過する状態となっている
(図 16 参照)。また、2015 年 12 月末時点での OECD 諸国推定石油在庫日数は 64.1 日と 11 月末の推
定在庫日数である 63.6 日から上昇している。
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12 月 9 日には 1,300 万バレル台半ば程度の水準であったシンガポールでのガソリン等の軽質留分在
庫量は、その後 1,200 万バレル台半ばから 1,300 万バレル台後半の範囲で変動したが、1 月 12 日には
1,300 バレル台後の水準と、12 月 9 日に比べ微増となっている。このように在庫水準自体は、それほど低
水準というわけでもないが、原油とともにガソリン価格が下落したことや天候がどちらかというと温暖であ
ったことから、人々が比較的活発に自動車で外出したことにより、ガソリン需要が根強い一方で、留出油
の需要が弱いことから、今後製油所の稼働が低下することにより、ガソリン等他の製品の生産にも影響、
ガソリンの需給が引き締まるのではないかとの観測が市場で発生したこともあり、ガソリン価格は 12 月中
旬から 1 月中旬にかけ下落はしたものの、原油価格に比べるとその度合いは緩やかなものにとどまった。
他方、ナフサについては、石油化学部門で競合する LPG の冬場の暖房向け需要が暖冬により抑制され
ていることにより、価格面で今後ナフサと競合状態となることによりナフサの需要にも影響が生じるとの見
方が市場で発生してきたこともあり、特に 1 月に入り、原油と比べてナフサの価格は下落速度が速くなっ
ている。
12 月9日には 800 万バレル台後半と前年同期並みの水準であったシンガポールの中間留分在庫は、
その後 12 月中は 1,100 万バレル台へと回復したものの、1 月 5 日には再び 900 万バレル台半ばの量へ
と減少、1 月 12 日には 900 万バレル前半の水準とさらに低下している。このように、原油価格の下落とも
なう中間留分価格の下落が当該製品需要を刺激している側面があることもあり、中間留分在庫はむしろ
減少傾向を示している。しかしながら、米国や欧州での暖冬による暖房用石油製品(主に軽油)需要が
低迷しており、軽油や暖房油を含む留出油需給に緩和感が発生していることから、アジア諸国から欧州
方向に暖房用石油製品が流れにくくなった結果、アジア地域に当該製品がとどまりやすくなっていること
に加え、中国をはじめとする域内の経済減速による産業及び輸送向け軽油需要が鈍化していることから、
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例えばアジア地域の軽油価格は原油価格に比べて下落速度を速める傾向がみられる。また、日本でも
暖冬であるうえ、12 月 25 日には気象庁が 2016 年 1~3 月は北日本で平年並みであるものの東日本や
西日本等では平年を上回る気温になると予想される旨示唆したことから、暖房用に利用される灯油の需
要が抑制されるとの観測が市場で発生したこともあり、アジア地域でのジェット燃料(灯油に類似する石
油製品)の価格も原油価格に比べて軟調に推移している。
シンガポールの重質留分在庫は、12 月 9 日には 2,700 万バレル台半ばの量であったが、12 月 29 日
には 2,500 万バレル弱、1 月 5 日には 2,200 万バレル強、そして 1 月 12 日には 2,000 万バレル台後半
の量になるなど、総じて減少傾向となっている。日本では、暖冬や原子力発電所の稼働再開により、発
電部門での重油需要が低迷するとの見通しがあるものの、シンガポールでの在庫の減少に加え、欧州
方面での悪天候に伴いアジア地域での重油の流入が遅延するとの観測が市場で発生していることもあり、
重油価格は原油と比べ、比較的堅調に推移した。
2. 2015 年 12 月中旬から 2016 年 1 月中旬にかけての原油市場等の状況
2015 年 12 月中旬から 2016 年 1 月中旬にかけての原油市場においては、12 月中旬から 2016 年 1
月初旬までは、米国連邦公開市場委員会(FOMC)での金利引き上げの決定等により米ドルが上昇した
ことや、イランが制裁解除後原油輸出を増加させる方針である一方でサウジアラビアは生産制限を行わ
ない意向である旨それぞれ表明したこと等が、原油相場に下方圧力を加えた反面、米国で原油輸出解
禁の動きが明確になってきたことにより、同国での石油需給が引き締まるとの観測が発生したこと等が、
原油相場に上方圧力を加えた結果、原油価格は 1 バレル当たり概ね 34 ドル前後~38 ドル台前半の範
囲で変動していた。しかしながら、1 月初旬以降は、米国でガソリン等の在庫が大幅に増加している旨判
明したことに加え、中国株式相場等を巡り混乱が発生したこと等に伴い同国経済の不透明感に対する市
場の懸念が増大したことや、イランに対する制裁解除に伴い同国での原油増産が間近に迫ってきたとの
認識が市場で広がってきたこと等により、原油相場は下落傾向となり、1 月 15 日の原油価格の終値は 1
バレル当たり 29.42 ドルと終値ベースとしては 2003 年 11 月 4 日以来の安値に到達した(図 17 参照)。
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12月14日には、これまでの原油価格の下落に対して利益を確定するための買い戻しの動きが市場で
発生したことに加え、12 月 14 日に米国議会下院民主党指導部関係筋が、共和党が適切な譲歩をすれ
ば同国からの原油輸出につき協議する意志がある旨示唆したことで、同国からの原油輸出の解禁が決
定されるかもしれない(つまり輸出に伴い米国内の石油需給は相対的に引き締まる)との観測が市場で
発生したことにより、この日の原油価格は前週末終値比で 1 バレル当たり 0.69 ドル上昇し、終値は 36.31
ドルとなった。また、翌 15 日も、これまでの原油価格の下落に対して利益を確定するための買い戻しの
動きが市場で発生した流れを引き継いだうえ、同国からの原油輸出解禁に関する市場の観測の流れも
引き継がれたことから、この日の原油価格の終値は 1 バレル当たり 37.35 ドルと前日終値比で 1.04 ドル
上昇した。この結果、原油価格は 12 月 14~15 日の 2 日間で併せて 1 バレル当たり 1.73 ドル上昇した。
しかしながら、12 月 16 日には、米国エネルギー省(EIA)から発表された同国石油統計(12 月 11 日の週
分)で原油在庫が市場の事前予想(前週比 140~250 万バレル程度の減少)に反し同 480 万バレル増加
している旨判明したことに加え、12 月 15~16 日に開催された米国連邦公開市場委員会(FOMC)で金利
をそれまでの 0~0.25%から 0.25~0.50%へと引き上げる旨決定したことに伴い、米ドルが上昇したこと
から、この日の原油価格は前日終値比で 1 バレル当たり 1.83 ドル下落し、終値は 35.52 ドルとなった。12
月 17 日も、前日(16 日)に EIA から発表された同国石油統計で原油在庫が市場の事前予想に反して増
加している旨判明した流れを引き継いだうえ、米国石油関連情報サービス会社 Genscape が、12 月15 日
時点の米国オクラホマ州クッシングの原油在庫が前週比で 140 万バレル増加したと報告した旨 12 月 17
日に報じられたこと、12 月 15~16 日に開催された FOMC での金利引き上げ決定から、この日も米ドル
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上昇が継続したことにより、この日の原油価格の終値は 1 バレル当たり 34.95 ドルと前日終値比で 0.57 ド
ル下落した。12 月18 日も、この日米国石油サービス企業Baker Hughes が、同日時点での同国石油坑井
掘削装置稼働数が 541 基と前週比で 17 基増加(石油水平坑井掘削装置稼働数は 465 基と前週比で 12
基増加)している旨発表したことから、将来的に同国のシェールオイル生産が増加に転じるとの観測が市
場で発生したことで、この日の原油価格は前日終値比で 1 バレル当たり 0.22 ドル下落し、終値は 34.73
ドルとなった。この結果、原油価格は 12 月 16~18 日の 3 日間で併せて 1 バレル当たり 2.62 ドル下落し
た。
12 月 21 日には、この日の NYMEX の WTI 原油先物 1 月渡し契約の取引期限を前にして持ち高調整
が市場で発生したことで、この日の原油価格の終値は 1 バレル当たり 34.74 ドルと前週末終値比で 0.01
ドルの上昇にとどまった。(なお、NYMEX の WTI 原油先物1 月渡し契約に関する取引はこの日を以て終
了したが、2 月渡し契約のこの日の終値は 1 バレル当たり 35.81 ドル(前日終値比 0.25 ドル下落)であっ
た)。他方、12 月 22 日には、12 月 18 日に米国からの原油輸出が解禁されたことで、今後米国内での石
油需給が引き締まるであろうとの市場の観測の流れをこの日の市場が引き継いだことにより、この日の原
油価格は前日終値比で 1 バレル当たり 1.40 ドル上昇し、終値は 36.14 ドルとなった。また、12 月 23 日に
は、この日 EIA から発表された同国石油統計(12 月 18 日の週分)で、原油在庫が市場の事前予想(前週
比110~120 万バレル程度の増加)に反し前週比で 588 万バレル減少している旨判明したことに加え、12
月 23 日に Baker Hughes が、同日時点での同国石油坑井掘削装置稼働数が 538 基と前週比で 3 基減少
(石油水平坑井掘削装置稼働数は464基と前週比で1基減少)している旨発表したことで、将来的に同国
のシェールオイル生産が減少するとの観測が市場で発生したこと、12 月 25 日のクリスマスの休日に伴う
休場を前にして、持ち高調整が市場で発生したことにより、この日の原油価格の終値は 1 バレル当たり
37.50 ドルと前日終値比で 1.36 ドル上昇した。さらに 12 月 24 日には、前日(23 日)に EIA から発表され
た同国石油統計で、原油在庫が市場の事前予想に反し減少している旨判明した流れを引き継いだうえ、
12 月 23 日に Baker Hughes が、同日時点での同国石油坑井掘削装置稼働数が前週比減少している旨
発表したことで、将来的に同国のシェールオイル生産が減少するとの観測が市場で発生した流れを引き
継いだこと、12 月 25 日のクリスマスの休日に伴う休場を前にして、持ち高調整が市場で発生したことによ
り、この日の原油価格は前日終値比で 1 バレル当たり 0.60 ドル上昇し、終値は 38.10 ドルとなった。この
結果、原油価格は 12 月 22~24 日の 3 日間で併せて 1 バレル当たり 3.36 ドル上昇した(なお、12 月 25
日には、米国クリスマスの休日に伴い取引は実施されなかった)。
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本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含ま
れるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの
投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責
任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。
他方、イランのザンギャネ石油相が同国のウラン濃縮問題を巡る制裁解除後の優先課題は原油輸出
を増加させることであると強調した旨 12 月 27 日に伝えられたことに加え、12 月 27 日に中国国家統計局
から発表された 11 月の同国工業部門企業利益が前年同月比で 1.4%の減少と 6 ヶ月連続で減少している
旨判明した他、中国企業の新規株式公開を許可制から登録制に変更させるための証券法の改正を早け
れば 2016 年 3 月にも実施する旨中国全国人民代表大会が承認したと 12 月 27 日に報じられたことで、
今後の中国株式相場の安定性に対する懸念が市場で発生したことから、12 月 28 日の中国株式相場下
落が下落したことにより、この日(12 月 28 日)の原油価格は前週末終値比で 1 バレル当たり 1.29 ドル下
落し、終値は 36.81 ドルとなった。12 月 29 日には、翌日(30 日)に EIA から発表される予定である同国石
油統計(12 月 25 日の週分)で原油在庫が減少しているとの観測が市場で発生したことに加え、米国北東
部でのそれまでの平年を上回るとの気温予報が平年並みになるとの気温予報に変更されたため、暖房
用燃料需要が増加するとの観測が市場で増大したことから、米国暖房油先物相場が上昇したことにより、
この日の原油価格の終値は 1 バレル当たり 37.87 ドルと前日終値比で 1.06 ドル上昇した。ただ、12 月 30
日には、この日EIAから発表された同国石油統計で原油在庫が市場の事前予想(前週比100~250万バ
レル程度の減少)に反し同 263 万バレル増加している旨判明した他、オクラホマ州クッシングの原油在庫
が 6,299 万バレルと当該地区の原油在庫に関する週間統計史上最高水準にまで増加した旨判明したこ
とに加え、サウジアラビアのヌアイミ石油鉱物資源相が同国は原油生産を制限するつもりはないとともに、
サウジアラビアは石油需要増加を満たす能力を保有する旨発言したと 12 月 30 日に報じられたことにより、
この日の原油価格は前日終値比で 1 バレル当たり 1.27 ドル下落し、終値は 36.60 ドルとなった。12 月 31
日には、1 月 1 日の新年の休日に伴う休場を前にして持ち高調整が市場で発生したことにより、この日の
原油価格の終値は 1 バレル当たり 37.04 ドルと前日終値比で 0.44 ドル上昇した(なお、1 月 1 日には、
米国での新年の休日に伴い取引は実施されなかった)。
1 月 4 日には、1 月 1 日までの 1 週間で米国オクラホマ州クッシングの原油在庫が 48 万バレル増加し
ていた旨 Genscape が報告したと、この日報じられたことに加え、1 月 4 日に中国独立系報道機関財新伝
媒と英国経済関連情報サービス企業マークイットから発表された 12 月の中国製造業購買担当者指数
(PMI)が 48.2 と 10 ヶ月連続で当該部門拡大と縮小の分岐点である 50 を割り込んだ他、市場の事前予想
(48.9~49.0)を下回ったことで、中国をはじめとする世界経済の先行きに対する不安感が市場で増大し
たことから、米国株式相場が下落したことにより、この日の原油価格の終値は 1 バレル当たり 36.76 ドルと
前日終値比で 0.28 ドル下落した。1 月 5 日には、翌日(6 日)に EIA から発表される予定である同国石油
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任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。
統計(1 月 1 日の週分)で原油在庫が前週比で増加を示しているとの観測が市場で発生したことに加え、
1 月 5 日に欧州連合(EU)統計局(ユーロスタット)から発表された 2015 年 12 月のユーロ圏消費者物価
指数(CPI)(速報値)が前年同月比で 0.2%の上昇と市場の事前予想(同 0.3%の上昇)を下回ったことで、
ユーロが下落した反面米ドルが上昇したことから、この日の原油価格は前日終値比で 1 バレル当たり
0.79 ドル下落し、終値は 35.97 ドルとなった。1 月 6 日には、この日財新伝媒及びマークイットから発表さ
れた 12 月の中国サービス部門 PMI(50 が当該部門拡大と縮小の分岐点)が 50.2 と前月の 51.2 から低下、
2014 年 7 月(このときは 50.0)以来の低水準となっている旨判明したうえ、1 月 6 日に中国人民銀行が人
民元の対ドル為替レート基準値を 2011 年 4 月以来の低水準である 1 ドル当たり 6.5314 元としたことで、
同国経済の先行き不透明感に対する懸念が市場で増大したこと、1 月 6 日に EIA から発表された同国石
油統計でオクラホマ州クッシングの原油在庫が 6,391 万バレルへと増加し週間統計史上最高記録を更新
したうえ、ガソリン在庫が前週比で 1,058 万バレルの増加と 1993 年 5 月 28 日(この時は同 1,146 万バレ
ルの増加)以来の大幅増加となっていた他市場の事前予想(同100万バレル程度の減少~230万バレル
程度の増加)を上回ったことから、この日の原油価格は前日終値比で 1 バレル当たり 2.00 ドル下落し、終
値は 33.97 ドルとなった。1 月 7 日も、中国人民銀行が人民元について 2015 年 8 月中旬以降最大の切り
下げを実施、対ドル為替レート基準値を 1 ドル当たり 6.5646 元と 2011 年 3 月以来の低水準としたことに
より、同国経済の先行き不透明感が増大したことで、中国株式相場が下落したことから、この日の原油価
格の終値は 1 バレル当たり 33.27 ドルと前日終値比で 0.70 ドル下落した。さらに、1 月 8 日も、中国の人
民元為替レートと同国経済の先行き不透明感に対する市場の懸念を引き継いだことにより、この日の原
油価格は前日終値比で 1 バレル当たり 0.11 ドル下落し、終値は 33.16 ドルとなった。この結果、原油価格
は 1 月 4~8 日の週については、全ての取引日において終値ベースで下落となり、下落幅は 5 日間で併
せて 1 バレル当たり 3.88 ドルとなった。
さらに、1 月9 日に中国国家統計局から発表された 12 月の同国生産者物価指数(PPI)が前年同月比で
5.9%の低下と 46 ヶ月連続で前年割れを記録している旨判明した他、市場の事前予想(同 5.8%の低下)
に届かなかったことから、1 月 11 日の中国株式相場が下落したことにより、1 月 11 日の原油価格は前週
末終値比で 1 バレル当たり 1.75 ドル下落し、終値は 31.41 ドルとなった。また、1 月 12 日も、中国の経済
と石油需要に関する不透明感に対する市場の懸念の流れを引き継いだことで、この日の原油価格の終
値は 1 バレル当たり 30.44 ドルと前日終値比で 0.97 ドル下落した。この結果、原油価格は 1 月 11~12
日の 2 日間で併せて 1 バレル当たり 2.72 ドル下落した。1 月13 日には、この日中国税関総署から発表さ
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投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責
任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。
れた 2015 年 12 月の同国貿易統計(米ドルベース)で、輸出が前年同月比で 1.4%の減少、輸入が同
7.6%の減少と市場の事前予想(輸出が前年同月比で 8.0%の減少、輸入が同 11.0~11.5%の減少)ほ
ど悪くなかった旨判明したことが、原油相場に上方圧力を加えた反面、1 月 13 日に EIA から発表された
同国石油統計(1 月 8 日の週分)でガソリン在庫及び留出油在庫が市場の事前予想(ガソリン前週比 150
~270 万バレル程度の増加、留出油同 120 万バレル程度の減少~200 万バレル程度の増加)を上回り、
ガソリンが前週比で 844 万バレルの増加、留出油が同 614 万バレルの増加となっている旨判明したこと
が、原油相場に下方圧力を加えたことから、この日の原油価格の終値は 1 バレル当たり 30.48 ドルと前日
終値比で 0.04 ドルの上昇にとどまった。ただ、1 月14 日には、これまでの原油価格下落に対する利益確
定の動きが市場で発生したことから、この日の原油価格は前日終値比で 1 バレル当たり 0.72 ドル上昇し、
終値は 31.20 ドルとなった。しかしながら、1 月 13 日にイランのアラグチ外務次官が、1 月 16 日もしくは
17 日に、同国のウラン濃縮問題を巡る制裁の解除を発表すると見込んでいる旨明らかにしたことで、イラ
ンの原油生産増加が間近に迫っているとの認識が市場に広がったこと、1 月 15 日に中国人民銀行から
発表された 2015 年 12 月の人民元建て新規融資額が 5,978 億元(約 927 億ドル)と 11 月の 7,089 億元
から減少した他、市場の事前予想(7,000 億元)を下回ったことで、中国株式相場が下落したこと、1 月 15
日に米国商務省から発表された 2015 年 12 月の同国小売売上高(速報値)が前月比で 0.1%の減少と市
場の事前予想(同 0.0~0.1%の減少)の一部よりも悪かったことに加え、同日米国連邦準備制度理事会
から発表された 12 月の同国鉱工業生産が前月比で 0.4%の低下と市場の事前予想(同 0.2%の低下)に
届かなったことにより、この日の原油価格の終値は 1 バレル当たり 29.42 ドルと前日終値比で 1.78 ドル下
落、終値ベースとしては 2003 年 11 月 4 日(この時の終値は 28.75 ドル)以来の安値に到達した。
3.今後の見通し等
地政学的リスク要因面では、必ずしも石油供給途絶懸念を喚起する要因が皆無であるわけではない。
例えば、サウジアラビアとイランとの間では以前に比べて緊張が高まった。1 月2 日にサウジアラビアが、
シーア派指導者ニムル師を含む 47 名を処刑した旨発表したことから、同日から 3 日未明にかけイランの
テヘランでニムル師の処刑に抗議する群衆がサウジアラビア大使館を襲撃した。これを受け、1月3日に
は、サウジアラビアがイランに対して断交を発表、4 日以降バーレーン、スーダン、ジブチ、ソマリアも追
随し断交を発表、UAE やクウェートも 4 日以降駐イラン大使を召還した。他方、1 月 7 日には駐イエメンイ
ラン大使館(サヌア)をサウジアラビアが空爆したとイランが非難するなど、イスラム教シーア派が主流の
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イランとスンニ派が主流のサウジアラビアと外交関係が急速に悪化した。一方で、リビアでは、1 月 4 日に
エス・シデル(Es Sider)石油ターミナル(原油出荷能力日量 36 万バレル、但し後述のラス・ラヌフ(Ras
Lanuf)石油ターミナルとともに2014年12月より操業停止中)でイスラム国(同国の治安状態の隙をついて
2015 年 5 月頃西部の都市であるシルトでの支配を確立したとされる)戦闘員による自爆テロが発生した
他、1 月 5 日には当該ターミナルでの貯蔵タンクがイスラム国によるミサイル攻撃で炎上、また、ラス・ラヌ
フ石油ターミナル(同 22 万バレル)でも 1 月 4 日に近くの貯蔵タンクがイスラム国の攻撃により炎上した
旨明らかになる一方で、同日同国の都市ズリテン(首都トリポリの東約 160km)で自爆テロが発生、65 名
が死亡したと伝えられる。また、1 月 13 日夜から 14 日未明にかけては、ラス・ラヌフ石油ターミナルに原
油を輸送するパイプラインが攻撃された(但し当該パイプラインは稼働停止中であった)。さらに、1 月 8
夜遅くには、ベンガジの発電所が武装勢力(イスラム国と見る向きもある)により襲撃されている。
サウジアラビアとイランとの対立の激化については、確率が低くても、一方の当事国による他の当事者
の原油出荷に対する妨害等による石油供給上での支障発生といった展開があり得ないわけではないこ
とから、原油相場が上昇する場面が見られてもおかしくない状態にある。他方、リビアでのイスラム国の
襲撃による石油関連施設の被害は、同国での原油生産回復をさらに遅延させる(衝突の終結後、施設の
被害状況を調査したうえで、被害を受けた施設を修理する必要があるため)。従ってこのような直接石油
施設に被害が及ぶような攻撃も原油相場にとってはしばしば上方圧力を加える要因となりうる。
しかしながら、サウジアラビアとイランの対立については、1 月 3 日にサウジアラビアのジュベイル外相
に加え、イランのザリフ外相も、オーストリアのクルツ外相に対して(対立)状況の悪化を望んでいない旨
伝えたことに加え、イランは、1 月 4 日に、テヘランのサウジアラビア大使館襲撃事件に関し遺憾の意を
表明、再発防止に向け努力していく旨の書簡を潘基文国連事務総長宛に送付した。加えて、サウジアラ
ビアはイランと断交した後においても、シリア和平協議(現在 1 月 25 日に開催を予定していると伝えられ
る)には参加する意向を示している一方で、米国、ロシア及びイラク等が両国間関係改善に向け仲介の
役割を果たす旨申し出ている。さらに、足元の石油需給の緩和感が強く、そのようななかで、サウジアラ
ビアとイランの対立が激化すれば、なおさら OPEC 加盟国全体(に加えロシア等の主要非 OPEC 産油
国)との間での協調減産に向けた体制が構築しにくくなると考えられる。このようなことから、サウジアラビ
アとイランの対立の激化が原油価格への上方圧力となって現れにくい状況となっている。リビアについて
も、既に 2013 年後半以降の期間の大半に渡り日量40 万バレル程度(もしくはそれ以下)の原油生産量と
なっており、市場では既にこの生産水準が認識として織り込まれている格好となっているため、原油相場
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への影響が限定的になっているものと考えられる。そのような意味では、今後サウジアラビアとイランとの
対立、及びリビアでの政情不安については、さらに状況が極度に悪化する兆候が見えてこなければ、原
油価格が持続的に上昇するといった展開になる可能性は低いと考えられる(そして現在においてそのよ
うな兆候は見られない)。
他方、1 月 16 日には、イランが核プログラムの制限を実施しているとの判断がなされた結果、イランに
対する制裁解除に向けた作業が開始された、これによりイランも本格的な原油の増産体制に入るものと
予想される。そして、既に供給過剰感のある世界石油市場に、さらにイランからの供給が増加する可能
性があるとの市場の心理から、短期的には原油価格にさらに下方圧力が加わるといったことも想定される。
ただ、その後はイランの原油生産の増加が、どの程度の期間、どの程度の量で以て行われるか、というこ
とに、市場の注目が集まることになろう。そして実際どのようなペースで原油生産が増加するか、というこ
とを市場は見ながら、原油価格にその状況が織り込まれていくことになろう。
米国等の経済情勢面では、当面市場が注視するのは中国経済であろう。1 月 13 日に中国税関総署か
ら発表された 2015 年 12 月の同国貿易統計(米ドルベース)では、輸出及び輸入ともに市場の事前予想
ほどには減少を示さなかった。しかしながら、依然として同国の輸出は前年同月比で 1.4.%の減少、輸
入は同 7.6%の減少となっており、増加基調に転じているわけでもない。これが継続的に増加に転じれ
ば、中国経済の回復に関して市場が確信を持つとともに、同国の石油需要が増加するとの観測が強まる
ことにより原油相場に上方圧力を加える可能性はあるが、現時点ではそうはなっていないことから、この
面で持続的に原油価格に上方圧力を加える展開とはなりにくいと考えられる。加えて、中国では人民元
通貨とともに株式相場が不安定となっている。今後も株式相場が下落を続けるようだと、中国経済の減速
とともに石油需要鈍化の予想が市場で広がってくることから、原油相場に下方圧力を加えてくる展開もあ
りうると考えられる。
米国については、1 月 8 日に発表された、2015 年 12 月の米国の非農業部門雇用者数が前月比で
29.2 万人の増加と市場の事前予想(同20.0 万人の増加)を大きく超過するほど好調であった。このため、
今後も引き続き金利の引き上げがなされるとの観測が発生しやすい状況が少なくとも短期的には(2 月 5
日発表予定の次回の雇用統計まで)続くものと見られることから、この面で米ドルは下落しにくく、また上
昇しやすいものと考えられる。他方、欧州においては 1 月 21 日に欧州中央銀行(ECB)の理事会の開催
が予定されているが、前回(12 月 3 日開催)の ECB 理事会では追加金融緩和策を実施したものの、市場
の予想程ではなかったと判断されたこともある他、1 月 5 日に発表された 12 月のユーロ圏消費者物価指
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数(CPI)が前年同月比で 0.2%の上昇と市場の事前予想(同 0.3%の上昇)を下回っていることもあり、次
回の ECB 理事会では、追加金融緩和策の実施予想が発生しやすいことから、ユーロが下落しやすく、
米ドルが上昇しやすい素地があると考えられる。このようなことから、米ドルが継続的に下落することによ
り原油価格が持続的に上昇する局面が見られる可能性は低く、むしろ米ドル上昇から原油相場に下方
圧力を加える場面が見られる可能性はある。
一方、冬場の暖房シーズンに伴う暖房用石油製品需要期は最終消費段階ではなお続く(暖房シーズ
ンは概ね 11 月 1 日から 3 月 31 日までである)。しかしながら、製油所の段階では、既にある程度暖房用
石油製品の生産が進んでおり、むしろ間もなくメンテナンス作業時期に突入する。その時期に向け製油
所は稼働を引き下げ始めるとともに、原油の購入を不活発にしてくる。このため、原油に対する需要がこ
の先低下するとの観測が市場で発生しやすくなることから、この面で原油相場に下方圧力を加わる可能
性がある。ただ、引き続き米国では冬の残りの期間も暖冬であると予想され暖房用石油製品需要が盛り
上がらない可能性があることが示唆されるが、このような予想に反して気温が平年を割り込むようになっ
たりした場合には、一時的であれ、暖房油需給の引き締まり感の醸成から、暖房油価格、そして原油価
格が上昇する場面が見られることもありうる。また、1 月 19 日には国際通貨基金(IMF)から世界経済見通
し(WEO:World Economic Outlook)が発表される予定である。そこにおいて世界経済成長に関して修正
等が施されている旨判明すれば、その後発行される予定の IEA、EIA 及び OPEC の石油市場報告の類
において世界石油需要が修正されるとの観測が市場で発生することにより、原油相場が変動することも
考えられる。
全体としては、地政学的リスク要因では、イランに対する制裁解除に伴う同国での増産観測から下方
圧力が加わることが考えられる一方で、他の要因は緩和状態にある需給ファンダメンタルズにより価格へ
の影響力が限定される可能性がある。また、米国経済指標類等の面では、米ドルが上昇しやすい環境
から、この点でも原油相場には下方圧力が加わりやすい。さらに、需給ファンダメンタルズ面でも冬場の
暖房シーズンが峠を越えつつあり、不需要期に向かい始めることから、原油相場がこの面でも下落する
可能性があるなど、総じて今後当面原油相場は下落基調になりやすいものと思われる。また、原油価格
の下落が継続するようだと、金融機関等の予測する原油価格が下方修正されることにより、市場関係者
が原油を一層購入しにくくなるなど原油市場に対する心理が冷え込むことにから、原油相場が実際に下
落、それがさらなる原油価格予想の引き下げに繋がるといった、原油価格下落サイクルが発生する可能
性もあるものと考えられる。
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4.世界天然ガス市場動向
米国では、2015 年 9 月に天然ガス生産量が日量 760 億立方フィートを超過して以降、伸び悩みの傾
向を見せつつある(図18 参照)。詳細を見てみると(なお、詳細については、坑井における天然ガス生産
量から、坑井圧力維持のために再圧入される天然ガスの量等を差し引いたもの(Marketed Production)
になるが、実際に市場に販売するための天然ガス(Natural Gas Dry Produciton)は、天然ガス処理施設
等での処理を通じてさらに量が縮小するので、その分だけ両者には差異が生ずる)、9 月以降、本土 48
州、メキシコ湾沖合、アラスカ州のいずれの地域も 9 月以降伸び悩みの傾向を示している。他方、EIA が
毎月発表する「掘削生産性報告」(DPR:Drilling Productivity Report)では、主要 7 シェール鉱床における
天然ガス生産量は 7 月の日量 455 億立法フィートをピークとして減少傾向となり 2016 年 1 月の天然ガス
生産量は日量 440 億立方フィートとなっている。このようにピークに到達する時点については、若干の相
違はあるものの、いずれにしても、米国での天然ガス生産は一時に比べて勢いが低下している。これは、
天然ガス価格が影響しているものと考えられる。2015 年の米国の天然ガス価格は 5 月 18 日に終値ベー
スで 100 万 Btu 当たり 3 ドル程度の最高値に到達して以降下落傾向となり、特に 9 月以降は 2 ドル台半
ばから 2 ドル割れの水準へとなった(図 19 参照)。また、2015 年の原油価格(WTI)も 5 月 6 日に到達し
た 1 バレル当たり 62.58 ドルが最高値であり、その後は下落傾向となり、2015 年末は 30 ドル台半ば前後
となったことから、液体炭化水素の豊富なシェールガスの開発・生産も不活発になってきているものと推
察される。一方で、2015年10~12月の米国の気温は平年を上回ることが多かったこと(図20参照)から、
特に暖房用の天然ガス需要が低迷した(図 21 参照)。このように、米国での天然ガス生産量は順調に増
加していたわけではなかったが、需要面でも不振であった結果、天然ガス地下貯蔵量は、2015 年にお
いては、11月20日の週まで増加傾向を示す(寒冷な気候が早期に訪れた場合には、米国の天然ガス貯
蔵量は 10 月中に減少に転じることもある)など、同国の天然ガス需給が緩和状態であったことが覗われ
る。そしてその日(11 月20 日)の米国の天然ガス貯蔵量は 4.0 兆立方フィートと史上最高水準の貯蔵量と
なった(図 22 参照)ことに加え、12 月も温暖な気候が継続したことで、天然ガス価格はさらに下落、12 月
11 日には終値ベースで 100 万 Btu 当たり 2 ドルを割り込み、12 月 18 日には一時 1.684 ドルと、1999 年
3 月19 日(このときは 1.680 ドル)以来の低水準に到達している。なお、その後は、値頃感から天然ガスを
買い戻す動きが発生した他、2016 年に入り米国では平年並みか、平年を下回る気温となったり、今後 2
週間程度は気温が低下するとの予報が発表されたりしていることから、同国での天然ガス価格は上昇、1
月 15 日現在 2.100 ドルとなっている。ただ、同国の 3 ヶ月予報は特に北部と中心として平年を上回る気
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任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。
温になると予想されていることから、冬場の暖房シーズン終了時であっても、豊富な天然ガス貯蔵量が
維持されるとの見方もあり(EIA は 1 月 12 日に発表した「短期エネルギー展望」(STEO:Short-term
Energy Outlook)で、2016 年 3 月末の貯蔵量を 2.043 兆立方フィートと、この時期としては 2012 年(この
時は 2.473 兆立方フィート)以来の高水準になると予想している)、米国での天然ガス価格を抑制する格
好となっている。
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本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含ま
れるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの
投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責
任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。
欧州では、秋場が概ね平年を超過する気温であったことから、暖房用の天然ガス需要が控えめであっ
たことに加え、アジア諸国での LNG 価格下落により、当該地域でのさらなる下落を抑制するべく、欧州に
向けてカタール等から LNG が流入した(図 23 参照)ことを含め、供給面でも問題が発生していたわけで
なかったこともあり、欧州地域での天然ガス貯蔵量は秋場から冬場にかけ、潤沢な貯蔵量とされた前年
並みの水準近辺で推移していた(図24 参照)。このような需給状態により、英国の天然ガス価格は、10 月
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時点では 100 万 Btu 当たり概ね 6 ドル台前半(推定値)であったものが、その後は下落傾向となり、12 月
後半には、100 万 Btu 当たり 5 ドルを割り込む(同)場面もみられるようになった。他方、欧州大陸におい
ても、石油製品価格の低迷が長引いてきたことに伴い、天然ガス価格(多少の変形はあるものの過去半
年程度の石油製品平均価格に連動している)も下落してきたが、過去天然ガス価格が高水準であった時
に、欧州の天然ガス購入企業が、産ガス国に対して価格引き下げ交渉を行ったこともあり、例えば、ドイ
ツの輸入する天然ガスのロシア国境渡し価格は、2015 年 12 月は 100 万 Btu 当たり 5.81 ドルと、原油価
格連動の LNG を調達するアジア諸国の購入価格に比べて割安になっている(図 25 参照)。
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アジアにおいては、10~11 月においては、冬場の需要を賄うための消費国による LNG 確保(10 月に
はエジプトでの LNG 購入が活発であったと伝えられる)や、スポット LNG 価格が割安であると認識する
一部企業(欧州石油企業が代表的な例であるが、自社の LNG供給のみならず、他社からの長期LNG契
約やスポット LNG 契約を、予想される需要に応じて調達し、それを自社にとって最も利益を生み出しそう
な需要家に向け販売するという、いわゆる「ポートフォリオ LNG」を扱う企業)による購入が行われたと言
われており、この結果、LNG スポット価格も 10 月半ばの 100 万 Btu 当たり 6 ドル台半ばから 11 月中旬に
は 7 ドル台半ばまで上昇する場面も見られた。しかしながら、その後は、冬場の暖房用需要期に向けた
LNG の調達がほぼ完了した一方で、原油や重油に比べて LNG は割高になっている(長期契約の LNG
価格は原油価格に連動しているものの、足元の原油価格が LNG 価格に反映されるのは数ヶ月後にな
る)ことから、発電部門において、燃料転換が行われていると見られることに加え、韓国では、原子力発
電所及び石炭火力発電所における稼働に大きな問題が発生していたわけではないことから、同国で天
然ガス需要がそれほど増加していない一方で、日本でも 2015 年 9 月 10 日の川内原子力発電所 1 号機
に続き、12 月17 日には 2 号機が営業運転を開始したことに加え、強いエル・ニーニョ現象もあり、日本の
冬場の気温が暖冬となっていることから、天然ガス需要が不振である(図 26 参照)うえ、引き続き気温が
平年を超過すると予想される旨予報で示唆されていることから、この先も LNG 需要が低迷すると見られ
ている他、そもそも今後暖房用の燃料需要期が峠を越え始めるとともに、春場の不需要期が視野に入っ
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てきつつあること、原油価格下落傾向でこの先長期契約の LNG 価格が下落することが予想されることか
ら、必要以上の LNG 購入が手控えられている反面、2015~2016 年にかけ、豪州、インドネシア、米国、
マレーシア等の新規プロジェクトで LNG の出荷が開始されたか、開始される予定であるなど、供給増加
観測が発生していることから、足元、そして今後の世界 LNG 需給の緩和感が強くなってきていることもあ
り、アジア地域でのスポット LNG 価格は 1 月中旬には 100 万 Btu 当たり 6 ドル台半ば程度となっている。
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