更新日:2016/7/27 調査部:舩木弥和子 ガイアナ、ウルグアイ大水深での試掘 (Platts Oilgram News、International Oil Daily、Business News Americas、Business Monitor International 他) 原油価格の低迷により南米全体としては探鉱・開発が停滞しているが、これまでほとんど掘削が行な われたことのなかったガイアナ、ウルグアイの沖合では試掘井の掘削が行なわれた。 ガイアナ沖合では、ExxonMobil が Stabroek 鉱区で 2 坑目の試掘井 Liza-2 号井を掘削し、石油を確認 した。Liza 油田の可採埋蔵量は 8~14 億 boe と推定されている。ExxonMobil は、引き続き同鉱区での掘 削を続けるとしている。 ウルグアイ沖合では、Total が Raya 1 号井を掘削した。石油やガスの発見はなかったが、メジャー等に よるウルグアイ沖合鉱区へのファームインが続いている。 1. ExxonMobil、ガイアナ沖で石油を確認 ExxonMobil は2016年6月30日、Stabroek鉱区(総面積26,800km2) の沖合約193km、水深1,692mの海 域で掘削したLiza-2号井(掘削長5,475m)で、58mの砂岩の油層を確認した。ExxonMobilは、Liza油田の 可採埋蔵量を8~14億boeと推定している。同鉱区の権益保有比率はオペレーターのExxonMobil が 45%、Hess が30%、Nexen が25%となっている。 ExxonMobilは、2015年3月より、Stabroek鉱区のLiza-2号井から3.3km離れた海域でLiza-1号井を掘削、 90mの砂岩の油層を確認した。この時、ExxonMobilは、発見された油田の規模を大規模としたが、具体 的な埋蔵量には言及せず、今後数ヶ月にわたり商業生産の可能性などについて評価作業を続けるとし ていた。同年7月には、ガイアナのRaphael Trotman統治相が、Liza油田の埋蔵量は石油換算で7億bblを 超える可能性が高いと発言していた。 同コンソーシアムは、Liza-2号井からリグを39km北西に移動させSkipjack構造の掘削を行なった後、 2016年中にリグをLiza油田に戻し評価井を1坑掘削することを計画している。2017年初に許可を取得し、 開発を行い、3年から3年半後に生産を開始する可能性があるという。 ガイアナでは、Liza油田発見以前には、商業量の原油、天然ガスは発見されておらず、生産も行なわ れていなかった。しかし、2000年にUSGSがGuyana Basinを最も有望な堆積盆地の一つとし、埋蔵量のポ –1– Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含ま れるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの 投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責 任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 テンシャルは原油が150億bbl、ガスが40Tcfであるとしたことで、注目を集めていた。ガイアナは、スリナ ムと排他的経済水域(EEZ)をめぐり争っていたが、2007 年9 月に、国際海洋法裁判所(ITLOS)の決定 で両国の中間線を境界とし、紛争海域をガイアナ65 対スリナム35 の割合で分割することで決着、境界 問題が解決したことで、探鉱が進められるようになった。さらに、2011年に同じくGuyana Basinの一部であ る仏領ギアナでZaedyus油田が発見されたことや、大西洋を隔てたアフリカ西岸でも油田発見が続いたこ とから、2012年以降、AnadarkoがRoraima鉱区、Nabi Oil & GasがMahaica鉱区、RepsolがKanuku鉱区のラ イセンスを取得し、ガイアナに参入、地震探鉱等が行なわれている。 なお、Liza-1号井、Liza-2号井はベネズエラが自国の海域と主張するエリアで掘削されたわけではな いが、Stabroek鉱区の一部はベネズエラが権利を主張する海域にまで広がっている。そのため、ベネズ エラを刺激することとなり、ガイアナとベネズエラの関係が緊張の度合いを増している。両国は国際機関 に調停を依頼している。 表1. ガイアナ、スリナム、仏領ギアナ鉱区図 (各種資料より作成) –2– Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含ま れるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの 投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責 任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 2. Totalのウルグアイ沖の試掘井はドライ Totalは、2016年3月から、約2億ドルを投じdrillship、Maersk Venturer を用いPelotas Basin、Area14鉱 区 (面積6,690 km2、水深1,850~3,500 m)の水深3,411mの海域でRaya 1号井を掘削した。ウルグアイに とっては40年ぶりの掘削であり、また、水深3,411mとこれまで掘削された坑井の中で最も深い水深での 掘削であったことから、関心は高かったが、石油、ガスの発見はなかった。 ウルグアイでも、これまでのところ商業規模の発見はなく、石油、ガスともに生産は行われていない。 そこで、ウルグアイは必要とする石油、ガスの全量を輸入している。特に、ガスについては全量をアルゼ ンチンからパイプラインで輸入しているが、アルゼンチンでは、2001年以降、石油や天然ガスの価格が 低く抑えられる一方で、十分な探鉱・開発促進策がとられず、上流部門の活動が停滞し、生産量や埋蔵 量が減少し、ガス不足を引き起こし、ウルグアイはしばしば十分にガスの供給を受けられないという状況 に追い込まれた。そこで、ウルグアイ政府は、沖合鉱区の公開による探鉱・開発の促進、LNG輸入等によ り、エネルギーの安定供給確保をめざすようになった。 ウルグアイ沖合鉱区に関しては、2008年の第1次ライセンスラウンドでPetrobras/YPF/Galpコンソーシ アムが、2012年の第2次ライセンスラウンドでBP、Total、BG、Tullowが権益を取得した。しかし、2014年に Shell/PetrobrasがArea4鉱区、2015年にBPがArea 11、12、6鉱区、2016年にYPFがArea3鉱区を政府に返 還、現在、ウルグアイ沖合で探鉱が行なわれているのは、Area8、9、13、14、15の5鉱区のみとなってい る。 ただし、これらの鉱区へのIOCの関心は高く、Area14鉱区については2015年11月にExxonMobilが権 益35%を取得、2016年2月にStatoilが権益15%を取得し、Area15鉱区については2013年5月にInpexが 権益30%を取得、2016年2月にStatoilが権益35%を取得しファームインした。さらに、2016年7月には、 ExxonMobil、Statoil、Total がArea 13鉱区にファームインしたと報道された。Area 13鉱区のファームイン については政府承認を待っている段階であるため、権益保有比率は明らかにされていない。 今回のRaya 1号井掘削にあたっては、ウルグアイ初の油田が発見されるのではないかとの期待が高ま っていた。Vázquez大統領は、油田が発見されれば今後の国家のあり方に関わる重要問題となるとして、 1985年の民政復帰後に就任した大統領を集め、長期国家戦略について協議を行なってきた。発見され た油田の操業のみを担当する独立した国家機関を設置し、それを国会が監督すること、水圧破砕は行 なわないこと等について合意が成立していたという。 今回の掘削は思わしくない結果であったが、Raya 1号井の掘削と並行して、ExxonMobil、Statoil、Total –3– Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含ま れるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの 投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責 任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 がArea 13鉱区にファームインしており、引き続き同国沖合での探鉱は活発に続く見通しである。 表1.ウルグアイ沖合鉱区保有状況 ラウ ンド 1 2 鉱区 Area3 オペレ ーター YPF Area4 Shell Area6 Area11 Area12 Area8 Area9 Area13 Area14 BP BG (Shell) Total Area15 Tullow 権益保有状況等 ( )内は権益保有比率 YPF (40%)、Petrobras (40%)、Galp Energía (20%)のコンソーシアムが権益 取得。ShellはPetrobrasより権益を取得するが、2013年3月撤退。YPF (80%)、Galp Energía (20%)は2016年1月に鉱区返還。 YPF (40%)、Petrobras (40%)、Galp Energía (20%) のコンソーシアムが権 益取得。ShellはPetrobrasより権益を取得、オペレーターとなるが、2014年に 鉱区返還。 BPが権益100%を保有。2012年10月に締結されたPS契約では、探鉱期間 は2015年12月までとされていたが、BPは2015年10月に同鉱区を政府に返 還。 BG(Shell)が権益100%を保有。2012年10月に締結されたPS契約では、探鉱 期間は2015年11月までとされていたが、2017年5月まで延長。2016年7月、 ExxonMobil、Statoil、Total がArea13鉱区にファームイン。 2015年11月10日にExxonMobilが権益35%を取得し、ファームイン。2016年2 月1日にStatoilが権益15%を取得し、ファームイン。オペレーターのTotalが 権益の50%を保有。2012年10月に締結されたPS契約では、探鉱期間は 2016年3月までとされていたが、2016年1月にこれを2017年9月まで延長。 2016年第2四半期にRaya 1号井を掘削したが、油、ガスの発見はなかった。 2012年10月に締結されたPS契約では、探鉱期間は2015年12月までとされ ていたが、2017年6月まで延長。2013年5月にInpexが権益30%を取得し、フ ァームイン。2016年2月15日にStatoilが権益35%を取得し、ファームイン。オ ペレーターのTullowが権益の35%を保有。 (各種資料より作成) –4– Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含ま れるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの 投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責 任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 表2.第2次ライセンスラウンド後のウルグアイ沖合鉱区図 (各種資料より作成) 以 上 –5– Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含ま れるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの 投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責 任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。
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