第8章 国民所得の測定

第8章 国民所得の測定
経済学通論Ⅱ
9月29日(水)
国民所得の測定
• ミクロ経済学(前期)
– ミクロ経済学は個々の家計と企業がどのように意
思決定を行い,それらの意思決定が市場でどの
ように相互作用するかに関する研究である.
• マクロ経済学(後期)
– マクロ経済学は経済全体の研究である.
– マクロ経済学の目標は,多くの家計,企業,市場
に即座に影響する経済的な変化について説明す
ることである.
マクロ経済学の目的
• マクロ経済学は以下のような疑問を考える:
– なぜ平均所得の高い国と低い国があるのか?
経済成長の問題
– なぜ物価はある時期急速に上昇し,他の時期に
は安定しているのか?
インフレ・デフレの問題
– なぜ生産や雇用はある年には拡大し,他の年に
は縮小するのか?
景気循環の問題
経済全体をいかに把握するのか?
• 経済統計
– あるルールに従って、一国全体の経済活動を記
述する。
• 特に注目される経済統計は
– 国内総生産(Gross Domestic Product: GDP)
– 物価指数(消費者物価指数、GDPデフレータ等)
8‐1.経済の所得と支出
• 国内総生産(Gross Domestic Product; GDP)
– 一国経済全体の所得の指標
– 一国経済全体の支出の指標
• 経済全体において、所得と支出は等しくなる。
– 誰かが稼ぐ(所得)ということは、彼にお金を支
払っている(支出)している人がいるということ。
8‐1.経済の所得と支出
• 家計部門と企業部門からなる経済を考える。
– 家計
• 働いて企業から賃金を貰う(所得)←労働市場
• 企業から財を購入する(支出)←財市場
• 残りを貯金する←資本市場
– 企業
• 労働者を雇い賃金を払う(支出)←労働市場
• 銀行からお金を借りる←資本市場
• 家計に財を売却する(所得)←財市場
⇒ マクロ的循環構造
マクロ的循環構造(家計と企業からなる単純な経済)
収入・売上
財、サービス
・企業は売り手
・家計は買い
手
労働市場
賃金
財、サービス
家計
・財を購入
・労働力を保有
企業
・財を生産、販売
・労働力を雇用
労働
支出
財市場
・企業は買い手
・家計は売り手
労働
賃金
8‐2.国内総生産の測定
• 国内総生産(GDP)
一定期間において、一国内で生産されるすべて
の最終的な財・サービスの市場価値。
1.市場価値、2.一定期間、3.一国内、
4.生産される、5.すべて、6.最終的な
7.財・サービス
8‐2.国内総生産の測定
1. 市場価値
– 経済にはいろいろな財がある。GDPは、それらを
比較・集計するために、市場価格を用いて測定
する。
•
米10トンと自動車10000台は合計しようがない。そこ
で、米10トンの市場価格(市場価値)と自動車10000
台の市場価格を合計する。
8‐2.国内総生産の測定
2. 一定期間
– GDPはある特定期間内に行われた生産の価値
の測定である。
8‐2.国内総生産の測定
3. 一国内で
– GDPは、ある国、例えば日本国内で行われた経
済活動を測定する指標である。従って、ある国
民が海外で活動して得た所得は算入されない。
– ある国の国民、例えば日本人がどれだけ稼いだ
かは、GNI(国民総所得)またはGNP(国民総生
産)と呼ばれる。
8‐2.国内総生産の測定
4. 生産される
– GDPは新たに生み出されたものの価値であり、
過去に生産されたものが取引された場合(中古
車等)は、GDPには算入されない。
8‐2.国内総生産の測定
5. すべて
– GDPは可能な限り、経済全体の活動を細くしよう
とする。
– 持家に住んでいる場合、持家に対してあたかも
家賃を支払っているかのようにして、経済活動
を細くしようとする(帰属家賃)。
– 捕捉できない経済活動もある。
•
•
家庭内での主婦労働
非合法経済活動
8‐2.国内総生産の測定
6. 最終的な
– 生産された財やサービスは、他の財やサービス
の生産に利用されるものもある。そのため、生
産された財・サービスを集計してしまうと、二重
計算になってしまう。
8‐2.国内総生産の測定
PCの粗
付加価
値
原
材
料
の
価
値
原材料
部品
の粗
部
付加
品
価値
の
価
値
部品
PC
の
価
値
PC
PCの粗
付加価
値
部品
付加価値の
の粗
合計が生み
付加
出されたもの
価値
の価値の合
計になる!
原
材
料
の
価
値
8‐2.国内総生産の測定
7. 財・サービス
– GDPは有形の財(食料品、衣服、自動車など)と、
無形のサービス(散発、医者の診療など)の両
方を含む。財もサービスも生み出された価値だ
からである。
8‐3.GDPの構成要素
• 希少な資源がいかに利用されているかを理
解する上で、支出形態からみたGDPが重要に
なる。
• 支出からみたGDP
– 家計による消費(C)
– 企業による投資(I)
– 政府による政府支出(G)
– 海外による購入から自国民の海外への支出を差
し引いた純輸出(NX)
8‐3.GDPの構成要素
Y  C  I  G  NX
マクロ恒等式
国内総生産(Y )
 消費(C )  投資( I )  政府支出(G)  純輸出( NX )
700000.0
700000.0
日本の実質GDPと構成要素
日本の実質GDPと構成要素
600000.0
600000.0
10億円(2000年基準)
10億円(2000年基準)
500000.0
500000.0
400000.0
400000.0
300000.0
300000.0
200000.0
200000.0
100000.0
100000.0
0.0
1955
1955
1958
1958
1961
1961
1964
1964
1967
1967
1970
1970
1973
1973
1976
1976
1979
1979
1982
1982
1985
1985
1988
1988
1991
1991
1994
1994
1997
1997
2000
2000
2003
2003
2006
2006
0.0
年
年
民間最終消費支出
政府最終消費支出
総資本形成
財貨・サービスの純輸出
民間最終消費支出
政府最終消費支出
総資本形成
財貨・サービスの純輸出
8‐4.実質GDPと名目GDP
• GDPは市場価格で評価した生産財価値
– GDPの変化は
• 「生産量の変化」
• 「市場価格の変化」
の二種類の可能性がある。
• 物価が上昇すれば、生産量が変化していな
いくても、GDPが変化してしまう。
– 物価上昇の影響を受ける名目GDP
– 物価上昇の影響を除去した実質GDP
8‐4.実質GDPと名目GDP
• 名目GDP
– ある年の財の生産量を、その年の財の価格で評
価して測定するGDP.
• 年ごとに財の価格が変わってしまうと、生産量の比較
ができない。
• 実質GDP
– ある年の財の生産量を、ある基準年の財の価格
で評価して測定するGDP
• 財の価格を基準化するので、生産量の比較が可能。
8‐4.実質GDPと名目GDP
• GDPデフレータ~代表的な物価指数
名目GDP
GDPデフレータ 
100
実質GDP
• GDPデフレータは、経済の平均物価水準の動
向を観察するのに用いる指標である。
8‐5.GDPと経済的福祉
• GDPは社会の経済的福祉を測定する単一の尺度と
して最良のものである.
– 1人当たりGDPは経済の平均的な人の所得と支出を表す.
– 1人当たりGDPが高いほど,生活水準が高いことを示す.
• (一人当たり)GDPの長期的な挙動を「経済成
長」、短期的振動を「景気循環」と呼びマクロ
経済学においてとくに重視される。
日本の経済成長の長期推移
第
二
次
大
戦
高
度
成
長
期
オ
イ
ル
シ
ョ
ッ
ク
安
定
成
長
期
失
わ
れ
た
10
年
1870年以降の日本の実質GDPの変動
第二次世界大戦
オイルショック
失われた10年
8‐5.GDPと経済的福祉
• しかしながら,GDPは幸福や生活水準の完全な
尺度でない.
• 福祉に貢献するいくつかのものはGDPに含まれ
ていない.
– 余暇の価値.
– きれいな環境の価値.
– 両親が子どものために費やす時間の価値やボランティア
活動の価値のような,市場の外で行われる活動の価値.
• しかし、GDPの高さと福祉水準の高さは相関する
国
アメリカ
日本
ドイツ
メキシコ
ロシア
ブラジル
中国
インドネシア
インド
パキスタン
バングラデシュ
ナイジェリア
1人当たり実質
GDP
平均寿命
成人識字率
(1999年,ドル)
(年)
(%)
77
81
78
72
66
67
70
66
63
60
59
52
99
99
99
91
99
85
83
86
56
45
41
63
31,872
24,898
23,742
8,297
7,473
7,037
3,617
2,857
2,248
1,834
1,483
853
(出所) Human Development Report 2001 , United Nations.
結論:GDPの測定の重要性
• マクロ経済学は以下のような疑問を考える:
– なぜ平均所得の高い国と低い国があるのか?
– なぜ物価はある時期急速に上昇し,他の時期に
は安定しているのか?
– なぜ生産や雇用はある年には拡大し,他の年に
は縮小するのか?
これらの疑問に答えるにあたって、現実の経
済がどのようになっているのかを把握する、
GDPの把握、が重要である!