2012年度 サービス管理責任者指導者研修 就労分野 1-2.地域で「福祉サービス」を展開していくために ~ 昨今の「働く」ことを取り巻く環境(経済等外部環境からの視点~) 2012年10月4日 社団法人 滋賀県社会就労事業振興センター 城 貴志 穴太の石積み 小さい石、不格好な石・・・どれも捨てず、削らず。どの石にも役割がある。 どれが欠けても成り立たない。補い合う、支え合う、共に生きる社会を。 「賢愚和楽(けんぐわらく)」 男女、老若、強弱、貧富など皆それぞれ“差”はあるが、たったひとつのかけがえのない「命」を 持っている点ではなんの“別”もない。したがってみんな仲良く“和”して“楽しく”暮らして いけるように努力すること。 田村 一二 障害のある人への就労支援、ICFの視点から地域を考える 健康状態 変調・病気 心身機能・構造 活動 参加の制約 環境因子 個人因子 <環境へのアプローチ> ・事業所への支援 → 障害に対する知識、職務設定、職務分析等 ・家族への支援 → 職業生活を支える支援等 <個人へのアプローチ> ・支援計画に基づく就職前・雇用後の支援 → 強みを引き出し、伸ばすサポート 基本的労働習慣への支援 両方へのアプローチ 環境=地域・社会 企業で、地域で、一人ひとりが大切にされる地域を、社会を創る担い手!! 障害のある人も、ない人も共に働き・暮らせる地域、社会をどのようにつくるか!! 「働く」ということを少し考えてみました。 <個人的な視点> 生計を立てる=所得を得るため(衣食住+α) 役割を果たし能力を発揮し、心理的満足を得る源泉。 社会人としての人格・人間形成 <社会的な視点> 社会の存続や発展に必要な活動を分担して役割を遂行す ること。 働くことにより社会の存続や発展に必要な資金(税金)を納 めること。 障害のある人、1人親家庭、高齢者、外国人、誰にとっても「働く」ことの大切さは一緒 「働く(はたらく)」・・・“はた”(周り)を“らく”にする。 → “はた”=地域、社会へのお役立ち。 地域、社会での自分の居場所・役割 「働く」を取り巻く環境、人口動態 <海外 ~世界経済の減速懸念~> ・ギリシャに端を発したヨーロッパにおける各国の債務問題、ユーロ危機、スペイン → 南欧諸国の緊縮財政、債権の下落により金融機関の引き締め→成長率低下・・・ ・アメリカの財政赤字、国債の格下げ、失業率の高止まり → 雇用にも改善の鈍化、金融緩和の限界?、燃料高、大統領選挙による政治の停滞 Appleが時価総額世界一(しかし米国内での雇用は 約60,000人) ・BRICS(ブラジル、ロシア、インド、中国、南ア)をはじめとする新興国の成長率鈍化 → 人件費、物価、貧富の拡大、先進国の景気の影響 ・地球の人口が70億人を突破へ(21万人/1日)!!→ 食料、電気、資源不足へ。 <日本 ~経済・雇用の下押し圧力~> ・円高、電力問題、世界的な自由貿易協定への流れ、法人税率、製造の海外シフト加速 ・債務問題、人口の減少、少子高齢社会、個人所得の減少、雇用不安 → 雇用のパイの縮小、所得と消費の減少、デフレ脱却へ向かうのか?? ・日本の人口:1億2605万7千人(2012年3月現在:前年同月比23万人の減少・過去最大の減少) ・高齢化率:23.4%、介護保険認定者数:506万人(10年前の2倍)、合計特殊出生率:1.39、15歳未満人口13% ・労働力人口:6565万人(前年同月比35万人の減少)、就業者数は6277万人(前年同月に比べ9万人の減少) ・非労働力人口:4530万人(前年同月比:15万人の増加) ・完全失業者数は288万人(広島県の人口とほぼ同じ)、失業率4.3%(15歳~24歳まで8.3%) ・非正規労働者:1733万人(2011年:前年より48万人増)、正規労働者:3185万人(25万人減) 5 ・フリーターの高齢化:35~44歳まで50万人 ・NEET:60万人(2012年3月卒業56万人のうち7.5万人が就職できず、うち3.3万人がNEET) 参考:総務省労働力調査2011年平均、7月速報値 税収と社会保障費 ☆税収は減収、社会保障費は右肩上がり 生活保護費・・・景気悪化に伴い増大 210万人突破 年間予算3.7兆円 介護保険・・・高齢化に伴い年5.6%増(09年→10年度) 、年間予算7.2兆円 公的年金・・・年間予算51.9兆円(保険料収入32.2兆円、国庫負担分11.5兆円) 医療費・・・年間37兆円(70歳以上が45%) 社会保障給付費総額・・・109兆円(2012年度予算) ※ 国全体の一般会計、特別会計合計の総額予算228兆円 <税収> 2007年度 51兆円 2008年度 44.3兆円 2009年度 38.7兆円 2010年度 41.5兆円 2011年度 42兆円 障害者雇用が促進されるためには・・・。 <Question> <Question> 失業率の改善、雇用を回復さ せるためには何が必要です か? 障害者雇用を促進させるため にはどのような制度や考えが必 要と思いますか? 両方相まって初め て障害者雇用が 促進される。 両方に目を向け ないと・・・。 <Answer> ・企業の理解 ・就業・生活支援センターの量、質のUP ・ジョブコーチの増加 ・法定雇用率の強化 ・就労移行支援事業所の強化 厚生労働省の施策 <Answer> ・景気の回復 ・経済政策、成長戦略 ・財政政策 ・新たな産業の創出 ・地域振興 ・物価の安定 経済産業省、財務省、日銀等の施策 漁業を振興させようと思っても・・・。 漁業→ 農林水産省 水産加工 → 経済産業省 加 し漁 工 て業 、 もを 消 、振 費 そ興 全 れさ 体 をせ を 取よ 支 りう 援 巻と し く思 な 港っ い のて と 整漁 振 備師 興 やだ し 流け な 通を い 、支 。 援 漁港→ 国土交通省 寿司屋の経営 → 厚生労働省等 産業と雇用① ~経済成長期~ 地方の公共工事 輸出 ☆ ものづくり国として製造業等による貿易黒字(大企業→小規模企業→中小企業等の役割分担による製造) 原材料を輸入し、部品から完成品までを国内で製造し、海外へ輸出。大企業誘致による企業城下町の形成。 ☆ made in Japanの品質力・ブランド力(大企業の研究・開発力、「職人」と呼ばれる熟練工の技術力) ☆ インフラ整備等公共工事による建設業での雇用の吸収。 ☆ 国内人口の増加、世帯数の増加、経済成長による個人所得の向上で内需も自然増。 ☆ 地域の個人商店による地域商店街の活況(小規模商店等個人商店主の増加) ☆ 結果,GDP(国内総生産)成長率は1956年~73年の平均は9.1%,1974年~90年の平均は4.2% ☆ 単純労働、アナログな業務も多く、雇用の受け皿の機能。 失業率 失業者数 1970年 1.1% 59万人 1980年 2.0% 114万人 1990年 2.1% 134万人 産業と雇用② ~バブル崩壊から~ 地方の公共工事縮小 低価格が海外から流入 ☆ グローバル化による安価な商品の流入とそれに伴う企業の海外進出、海外移転。 ☆ グローバル化により、大企業を中心とした人材の国際化。 ☆ BRICSはじめ新興国の経済成長に伴う競争激化。 ☆ アナログな仕事から高度化、専門化、自動化、省力化。 ☆ 企業数の減少(2006年~2009年廃業率6.2%、開業率2.0% 総務省「事業所・企業統計調査」) ☆ 国・地方の財政状況の厳しさから公共工事の減少 ☆ 国内人口の減少、少子高齢化 → 消費の減少 ☆所得の減少(1997年平均年収467万円→2010年平均年収412万円 国税庁民間給与実態統計調査結果) ☆個人金融資産約1500兆円(約80%を50歳以上が保有→中年・若年層の収入の減少) ☆ 結果,GDP(国内総生産)成長率は1991年~2011年の平均は0.9% 失業率 失業者数 2003年 5.3% 343万人 2009年 5.2% 320万人 2011年 4.6% 273万人 雇用の継続と、雇用の創出をする取り組みが今後は重要 地域で産業をつくり、雇用を生み出し、地域の雇用を地域で守る!! 人気があるのは 大企業誘致だ が・・・ 公共事業頼み の地方も今 や・・・ 大手企業が撤退するとそこに残るのは・・・ 債務が1000兆円(約800万円/1人) 違った仕組みを創造しないと!! FEC自給圏構想・・・日本の企業数の99.8%、労働者数の80%は中小企業 Foods(食料)、Energy(電気)、Care(医療・介護) 参考:内橋克人著 「共生経済が始まる」 エコノミック・ガーデニング・・・地域経済活性化のために地元の中小企業を成長させる 新手法として、米国の地方自治体で実施されている。 参考:山本尚史著 「エコノミック・ガーデニング」 グローバル経済と地域循環経済(ローカルズ) <グローバル> ・大企業(12,000社・1.2%) ・従業員(1463万人・34%) ・市場も、拠点も世界規模 →人・物・金も世界規模で流れる。 ・拠点の海外移転で国内に雇用 を生み出しにくい。 ・職種も「発想とセンス」、専門性。 働きにくい、働きずらい人も多い・・・。 ・能力差による雇用機会の偏重 <ローカルズ> ・中小/小規模企業(4,201,000社・99.7%) ・従業員(2834万人・65.9%) ・大企業が海外に流れても海外進出は難しい・・・。 → 人(社員)は顔の見える関係。地域の人。 ・地域の雇用を守り、地域の暮らしを育てる。 ・様々な人の雇用を吸収していきた。 ・物、金の地域循環システムを構築出来る。 ・中小企業が自立できる地域経済の樹立が不可欠。 ・我々はローカルズとして地域づくりの担い手に!! それぞれの街に、それぞれの特色がある。 それぞれの地域特性 人口の推移、人口構成比 街の歴史 街の財政状況 地場産業、伝統産業 街の主要産業 街の目指す方向(観光、環境、福祉・・・) 街の課題 街の企業の特徴、景気 社会資源の存在 地域の強み、弱みをとらえる。地域の人からの情報収集。 行政・企業・住民・福祉等が一体となった街づくり、地域作り。 福祉のネットワークは当たり前。他業種の人達、団体とのネットワーク。 地域をつくる、地域の雇用を創る意識での仕事づくり、 地域に根ざした福祉は、地域づくりの主役になれる!! 地域の特性を活かしたビジネスによる地域活性化の事例 ~ そうだ、葉っぱを売ろう ~ 株式会社 いろどり ・徳島県上勝町(人口約2,000人) ・高齢化率 約45% ・「そうだ、葉っぱを売ろう!!」 ・株式会社いろどり 売上2億6千万/年 ・過疎の町の再生を、70代・80代のお年寄りが担う。 ・年間4,000人の視察 その他、高齢者が主役のコミュニティビジネスの例 (株)小川の庄(長野県安曇野) 愛知県足助町 百年荘・ZI-ZI、BA-BA 社会のなかで、役割や居場所があり、 生き甲斐を持ち働き・暮らすことが大切 であるということは、お年寄りや障害のある人、 障害のない人も一緒。 14 様々な施策を有効に活用 時々の条件をチャンスに変える!! <障害者施策として> ・工賃倍増五カ年計画 ・発注促進税制 ・グループ就労 ・優先発注制度 ・労働施策の充実 ・障害者雇用促進法改正 ・労働機関との連携強化 ・新たな法制度の検討 企業・施設にある 経営資源 機械設備 職員の取得資格 <その他の環境として> ・企業のCSR、コンプライアンスの普遍化 ・指定管理者制度 ・団塊世代の退職 ・労働力人口の減少 ・食糧問題の社会化 ・環境問題の社会化 ・企業の第二創業 ・中小企業や伝統産業の後継者不足 ・社会起業家、コミュニティビジネス 障がいのある人も地域で、 いきいき働ける新しい事 業が生まれるかも!! それぞれの企業・施設 の強み。 得意とするところ 15 ネットワーク。 顔の見える関係を地域でつくる ~働く編 ~ 自宅に戻ると 親の介護が・・・ 息子が派遣切りに・・・ 経営者として、 社員の顔、社員の 家族の顔が見える からどうにかした 重度の障害のある息子が・・・ い・・・。 息子が不登校で・・・ 母子家庭で・・・ ・親の介護と仕事を両立させてあげたい・・・。 ・派遣切りにあった息子さんも我が社でアルバイトできないか・・・。 ・それぞれにあった働き方ができないか・・・。 ・経営が苦しいときも人削減ではなく、ワークシェア、サラリーシェアができないか・・・。 逆に社員の顔、社員の家族の顔が見えないと、簡単に人員削減ができてしまうのかも・・・。 地域福祉から地域振興へ、地域づくりへ 地域=顔の見える関係=しあわせや苦しみを共有できる=人を大切に出来る地域づくり。 しあわせを共に創り出す地域・社会づくり 地域づくり・街づくり 自分も家族も、だれもが住みやすい街をみんなで創造 地域の資源 地域で顔の見える関係 支え合う地域づくり 福祉の資源 地域での雇用の創出 地域の課題の解決 地域力の向上 人(知識・経験・ノウハウ) 企業の資源 パートナーとしての行政 17 働くことは、生活の糧を得るだけではなく、社会参加の重要な要素。 就労による収入は、自分で、自分の生活の幅や質を高め、自分らしく生きる礎。 それは障害のある人、一人親家庭・・・誰でも一緒。 きっと、今のままでいいはずはありません。 私たちは、日々、サービス管理責任者として 何が出来るか。今日から、明日から何をするか。 制度やシステム、組織はあっても、そこにいるのは人。 想いを持った人が集まり、話し、実践し、変えていく。 それが本当のネットワーク。 私たちは何のために、誰と、どのような手段で どのような地域を、社会を実現したいのか・・・。 楽しく、遊び心も持って、まじめに、地域の仲間と一緒に実践していきましょう!!
© Copyright 2024 ExpyDoc