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生体分子有機化学
2014年12月18日分
第11回:発酵・他、クエン酸サイクル
-
-
生体反応が連続的に機能し、生体の恒常性を維持
する一例として『解糖』を理解する。!
発酵、その他の糖代謝の役割について理解する。!
ピルビン酸の使い方を学ぶ。!
ミトコンドリアやクエン酸サイクルの概要を知る。
担当:岸村 顕広
2
参考文献
『ヴォート 基礎生化学』!
(東京化学同人)
『マッキー 生化学』
(化学同人)
予習用教材。!
(第8回以降は、!
3-5章に対応。)
化学反応機構、タンパク
質構造が詳しい。
本気の方には、!
『ヴォート 生化学』!
(2倍のボリューム)!
をお薦めします。
イラストが豊富
前回のQuiz
ピルビン酸は、生体内で還元されて乳酸となることが知られており、この反
応は次式で示される。(これをホモ乳酸発酵といい、NAD+が再生されるの
が重要である。)!
この反応は、乳酸デヒドロゲナーゼによ
り触媒されるが、活性部位に配置された
2つのアルギニン残基と一つのプロトン
化されたヒスチジン残基が反応に関与し
ているらしい。想定される反応機構を述
べよ。(よくわからない場合は、2つ目
のアルギニンは無視して良い。)
アルギニン
+
プロトン化されたヒスチジン
+
H
2
*今回の講義に関する質問、リクエスト、その他感想などがあれば、それも書いて下さい。!
*名前と学籍番号も書いて下さい。
Quiz解説
考える上で何が重要か?
Nu
(1) 基質の固定:超分子的相互作用!
(2) 反応の立体化学の制御:ヒドリドの攻撃方向!
(3) 反応の推進:プロトンの授受、カルボニルの活性化
2
H
+
プロトンの!
受け渡し方向
+
2
+
正電荷による反応の活
性化、反応面の固定。
O
O
3
–
CH
がっちり
固定
O
CH 3
O
2点で
カルボニル基の
π結合
O–
O
O
H–
O
–O
H 3C
O
H–
どちらがL体を
与えるか?
(1) Arg 171で固定。!
(2) Arg 109とHis 195で基質の向きを整えつつ、
プロトンのスムーズな受け渡しを準備。
R
HN
Arg 171
O
下
NAD+
Arg 109
H 2N
+
+
H 2N
NH 2
– O
上
H 3C
H
HO
O
NH 2
H
H 3C
NH
His 195
N
O–
L-乳酸
OH
R
N
NH 2
H
R
+
R
O
NH
酵素
(補足)D, L-表記法
単糖や関連する化合物、ヒドロキシ酸では、グリセルアルデヒドを基準に立体配置の
呼び方を決める。
CHO
H
COOH
CHO
OH
HO
H
HO
H
CH2OH
CH2OH
D-グリセルアルデヒド
CH3
L-グリセルアルデヒド
L-乳酸
アミノ酸では、セリンを基準に決める。
COOH
H
NH 2
COOH
H 2N
H
CH2OH
CH2OH
D-セリン
L-セリン
生体内のタンパク質は
L体のアミノ酸で構成
されている。
アルデヒド、ケトン、
カルボン酸を上に配置。
グリセルアルデヒド
と比べる
CHO
H
OH
D
H
L
H
OH
D
H
OH
D 最も下の不斉炭素で
決める。
HO
CH2OH
D-グルコース
*DL表記法は、旋光性を示すのに用いられるdl表記とは異なる。
糖代謝の概要
解糖の全反応:
解 糖
C6H12O6
グルコース
グルコース + 2NAD+ + 2ADP + 2Pi !
→ 2ピルビン酸 + 2NADH + 2ATP + 2H2O + 4H+
2NAD+
*実際には2ATPを使って、4ATPを回収する。
『アメリカ版
大学生物学の教科書』!
2ATP
2NADH
p. 210-214参照。
2ピルビン酸 2C3H4O3
好気条件で酸化
嫌気条件で
嫌気条件で
ホモ乳酸発酵
アルコール発酵
クエン酸!
サイクル
2NADH
2NADH
2NAD+
6O2
酸化的
リン酸化
2NAD+
2乳酸
6CO2 + 6H2O
2NADH
2NAD+
2CO2 + エタノール
解糖:まとめ
前半
x2
NAD+
投資
1. リン酸化
HK
GAPDH
酸化
ADP
NADH
PGK
後半
6. 高エネルギー化合物生成
還元力
7. 基質レベルのリン酸化
ATP
2. 異性化
8. リン酸基の移動
投資
3. リン酸化
PFK
エノラーゼ
9. 高エネルギー化合物生成
アルドラーゼ
4. 開裂
5. 等価
交換
ADP
PK
ATP
10. 基質レベルのリン酸化
全反応: グルコース + 2NAD+ + 2ADP + 2Pi → 2ピルビン酸 + 2NADH + 2ATP + 2H2O + 4H+
解糖に登場する高エネルギー化合物
“~”は高エネルギー結合の意味
ADPをATPに再生するのが目標。
アシルリン酸!
(酸無水物)
ホスホエノールピルビン酸
1,3-ビスホスホグリセリン酸
-
加水分解により、共鳴安定化し、水和
エネルギーが増す。!
置換反応に対する活性が高い。!
-
静電反発解消もあると思われる。
-
ホスホクレアチン
エノールリン酸
グルコース-6-リン酸 (G6P)
グリセロール-3-リン酸
-
加水分解後に生ずる、エノールの互変
-
異性により安定化。!
静電反発解消、水和エネルギー上昇の
効果もあると思われる。
(おさらい)ATP生成のエネルギー収支
反応6と7でのエネルギー収支
6.
ΔGが小さく正であり、不利。
7.
ΔGが大きく負であり、有利。
反応10でのエネルギー収支
全体として発エルゴン的に
進む。!
(反応7が反応6を牽引す
る。)
加水分解
ΔG°’ = –16 kJ/mol
異性化
ΔG°’ = –46 kJ/mol
全反応
ΔG°’ = –61.9 kJ/mol
エノール体がケト体に互変異性化
する時により大きな安定化エネル
ギーが放出される。
解糖の制御・調節(1)
代謝流量の制御・調節は生体の恒常性維持に必須である。
不可逆
ヘキソキナーゼ
近平衡
PFK
ΔG
流量調節に有効 不可逆
近平衡
PK
(標準)
(実際)
筋肉では、休んでいる時と激しく活動している時で、
ATP濃度は10%しか変わらないが、
流量は100倍近く変わることがある。
ホスホフルクトキナーゼによるATP生産量の調節は…!
- 基質のATPによるアロステリック制御!
- AMPによる阻害解除!
- 基質サイクル!
(- 遺伝子発現の調節)
不可逆
筋肉におけるホスホフルクトキナーゼ(PFK)の調節
基質サイクル
ホスホフルクトキナーゼの活性
ATPによるアロステリック制御
不可逆反応にける、別経路の逆向き反応によるサイクル。
阻害剤なし(低ATP濃度)
休息時
活動時
PFK
PFK↑
1 mM ATP
+ 0.1 mM AMP
約1/7
1 mM ATP
FBP
アーゼ
FBP
アーゼ
フルクトース-6-リン酸濃度 (mM)
AMPによる阻害の解除
アデニル酸キナーゼ
2ADP
ATP + AMP
[ATP][AMP]
K=
[ADP]2
= 0.44
基質サイクルは、一見無駄に見えるが、
高活性を持続的に発揮する状態に急激
に移るために有用。また、体熱の大部
分を基質サイクルによりまかなってい
るらしい。
ATPが不足するとADP2つから供給。
その際にAMP濃度が上昇し、効果的に阻害解除。
FBPアーゼ: フルクトース-1,6ビスホスファタ−ゼ
13
ピルビン酸キナーゼ(PK)
アロステリック制御になっている!
(図中では、フルクトース-1,6-ビスリ
ン酸; FBPが制御分子の場合は、正
の効果。)
→FBPの増加でATP生産を加速
制御サイト
高濃度のATPで不活性化、!
高濃度のAMPで活性化、するらしい。
PDB 1a3w!
(酵母由来だそうです。)
活性サイト!
緑:金属イオン(Mn, K)!
*これらのキナーゼでは、Mgでな
く、Mnが活性サイトにあることもあ
るらしい。
解糖
グルコース
: 活性化
解糖の制御・調節(2)
: 阻害
ヘキソキナーゼ
グルコース-6-リン酸
フルクトース-6-リン酸
ホスホフルクトキナーゼ
フルクトース-1,6-ビスリン酸
ホスホエノールピルビン酸
ピルビン酸キナーゼ
ピルビン酸
『アメリカ版 大学生物学の教科書』!
p. 248-252参照。
14
発酵
嫌気条件(酸素のない条件)で、NAD+を再生するためのプロセス。!
動物では筋肉でホモ乳酸発酵が起こる。酵母ではアルコール発酵が起こる。
→解糖は、とても速いプロセスなので、筋肉などのATP消費が速い組
織でよく行われる。1グルコースあたりの燃費の意味では、酸化的リ
ン酸化(次回以降; 速度は解糖の100分の1)の方が良い。
→乳酸は、肝臓などでグルコースへと戻される。
アルコール発酵(酵母)
ピルビン酸は
グルコース
残りカスではない!!
2ATP
CO2 パン
解糖
ピルビン酸
酸化的
リン酸化
ピルビン酸!
(アセチル+炭酸)
発酵
NADH
32ATP
CO2
O2が必要。
アセトアルデヒド
NAD+
エタノール
乳酸
CO2 エタノール
O2不要。
酒
『アメリカ版 大学生物学の教科書』!
p. 223-226参照。
グルコースが関連する代謝のまとめ
ペントースリン酸経路
核酸合成用のペントースを合成するだけでなく、NADPHを生産するという
重要な役割を担っている経路。
ATP:エネルギー通貨。
NAD+/NADH:ATP生産に必須の酸化力通貨。![NAD+]/[NADH]~1,000
NADP+/NADPH:生合成系のための還元力通貨。![NADP+]/[NADPH]~0.01
! 例) コレステロールの生合成系(以前に紹介済み)
脱炭酸
NADPH + H+
NADPH + CO2
NADP+
NADP+
グルコース-6-リン酸
デヒドロゲナーゼ
グルコース-6-リン酸
(G6P)
6-ホスホグルコン酸
デヒドロゲナーゼ
6-ホスホグルコノδ-ラクトン
6-ホスホグルコン酸
リブロース-5-リン酸!
(Ru5P)
以下、可逆反応で
解糖プロセスへ
3G6P + 6NADP+ + 3H2O 全反応: ! → 6NADPH + 6H+ + 3CO + 2F6P + GAP
2
リボース-5-リン酸
イソメラーゼ
リボース-5-リン酸!
(R5P)
呼吸バースト
食細胞における殺菌機構:スーパーオキシドアニオンの生成!
→ファゴソームに取り込んだあとに活性酸素などで攻撃。
病原体などの異物
食細胞!
(マクロファージ、
好中球など)
ファゴソームに 取り込み
ペントースリン酸経路
→酸素はエネルギー生産に必要だが、一歩間違うと凶器にもなりうる。 →体内では、抗酸化物質(ビタミンC,ビタミンEなど)が重要。
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ペントースリン酸経路の位置づけ
ヌクレオチド合成にも進めるが、解糖にも合流可能。!
! →NADPHだけ必要な時は、解糖に向かう。
ペントースリン酸
経路
解糖
グルコースが関連する代謝のまとめ
グリコーゲン
- 分岐構造のグルコースのポリマー。末端から分解されるので、枝分かれが
多いと急激なグルコース需要に対応しやすい。!
- 2分岐が約12回繰り返される。約12残基が一つの枝を構成している。!
- 球状構造体。小さい容積に多量のグルコースが貯蔵できる仕組み。
分解
非還元
末端
- 非還元末端がリン酸化されつつ切り取られる。
→グルコース-1-リン酸が生成
→G6Pに変換されて代謝経路へ
枝分かれ
還元末端
電子顕微鏡写真
デンドリマーなどと比較すると
面白い。
- 外側に行くほど密度が高まる。!
! →サイズに上限が生じる。!
- 分岐世代が上がると球状構造。
糖新生
基本的には、解糖の逆行でグルコースを合成できる(糖新生)。!
不可逆反応を乗り越えるために、別の反応経路が用意されている。
グルコース-6-
ホスファターゼ
解糖
+2ATP
フルクトース-1,6-
ビスホスファターゼ
+2ATP
–6ATP
→4ATPのコスト
をかけて経路調節
を守っている。
ピルビン酸カルボキシラーゼ!
(ビオチンが補欠分子)
糖新生
–6ATP
ピルビン酸
ホスホエノールピルビン酸
オキサロ酢酸
HCO3– + ATP
PEPカルボキシキナーゼ
オキサロ酢酸
ピルビン酸
GTP
CO2 + GDP
ホスホエノール
ピルビン酸
グルコース以外の糖(ヘキソース)の代謝について
うまく解糖プロセスに乗せるように変換が行われている。
ATP
4ステップ
ATP
2ステップ
ATP
1ステップ
2ATP
3 or 7ステップ
ATP
糖代謝の概要
ミトコンドリアを舞台に、好気的代謝が行われる。!
全体で、ピルビン酸を3つのCO2に変える。
解 糖
C6H12O6
アセチルCoAの生成:
グルコース
ピルビン酸 + NAD+ + CoASH !
→ アセチルCoA + NADH + CO2 + H+
(ΔG°’ = –33.5 kJ/mol)
2NAD+
2ATP
クエン酸サイクルの全反応:
2NADH
3NAD+ + FAD + GDP + Pi + アセチルCoA !
→ 3NADH + FADH2 + GTP + CoASH + 2CO2
2ピルビン酸 2C3H4O3
(酸化的リン酸化に備えて還元力を貯めこむ。)
嫌気条件で
ホモ乳酸発酵
好気条件で酸化
アセチルCoA
クエン酸!
サイクル
2NADH
2NADH
2NAD+
6O2
酸化的
リン酸化
2NAD+
2乳酸
6CO2 + 6H2O
嫌気条件で
アルコール
発酵
酸化的に代謝する経路であるだけでなく、同化
のための合成原料を提供する代謝のハブ。
2NADH
2NAD+
2CO2 + エタノール
『アメリカ版
大学生物学の教科書』!
p. 216-222参照。
異化代謝の流れ(再)
食物
消化: 胃、小腸などで小さな
分子へ分解!
→細胞レベルでの吸収
ADP
NAD+
解糖
ATP
NADH
ミトコンドリア外!
(サイトソル)
ピルビン酸
CO2
アセチルCoAの産生: 糖、ア
ミノ酸、脂質などが共通し
た小分子へと分解。
クエン酸サイクル: アセチル
CoAが酸化され、還元型補
酵素が生産される。
酸化的リン酸化: 還元型補酵素
に伝達されたエネルギーにも
とづき、ATPが合成される。
ミトコンドリア内
アセチルCoA
NAD+
FAD
クエン酸
サイクル
CO2
酸化的
リン酸化
NADH
FADH2
ミトコンドリア(1)
好気的代謝の舞台:内膜、及び内膜で囲まれた空間(マトリックス)で行う。
好気代謝以外の役割:アミノ酸・鉄・脂質の代謝、カルシウム濃度の維持、アポトーシス
誘導(シトクロムc放出による誘導)などの役割も持つ。
外膜:ポリンという膜タンパクを介して分子量10,000以下程度の物質を透過できる。!
膜間部:サイトソルの物質がここまで浸透して来られる。!
内膜:膜タンパク質を多量に含む物質透過性の低い膜 (O2やCO2は透過)。好気的代謝に必
要なタンパク質複合体や、物質輸送用タンパク質が埋まっている。!
マトリックス:水分量が50%以下のゲル状空間。溶存酵素多数。ミトコンドリア固有の
環状DNAも存在(ただし、ミトコンドリアタンパクの95%は核の染色体に存在。)
実際は豆粒状の形態だけでなく、多様性に富む
外膜
マトリックス
内膜
膜間部
透過電顕像
クリステ
ミトコンドリア模式図
ミトコンドリア(2)
クリステ:内膜が陥入してできたひだ状構造部。
呼吸の状態に応じて、形態が大きく変化する。
マウス肝ミトコンドリアの電顕写真。
活発な状態(呼吸時)
休止状態(通常)
*ミトコンドリアの数は細胞種によって異なるが、ヒトの体内で約20%の体積を
占めると推定されている。
ミトコンドリアにおけるピルビン酸酸化の概念図
28
ミトコンドリアマトリックスへの物質輸送
内膜の物質透過性が低いため、原料や生成物をサイトソルとやりとりするためには、
膜を介した物質輸送システムが必要。(内膜は、O2, CO2, H2Oのみを自由に通す。)
2+
運ぶべき物質 - ATP/ADP, Pi(リン酸イオン), Ca !
- ピルビン酸、オキサロ酢酸、アセチルCoA!
- サイトソルで生じるNADH! !
!
!
など。
マトリックス
ATP
シンターゼ
内膜
ADP/ATPトランス
ロケータ
H+
ADP/ATPトランスロケータ
基質が来ると向こう側に開く
マトリッ
膜間部!
クス!
(正)
(負)
ATP4–
or ADP3–
膜間部
ロケータ
- ADP/ATPトランスロケータ!
- リン酸トランスロガーゼ
H+
H+
/ATP
トラ
ンス
ロ
ADP/ATPトランス
ADP/ATP, リン酸イオンの輸送
リン
酸ト
リン酸トランス
ラゼ
リン酸トランス
ロカーゼ
ロカーゼ
H+
コンホメーション2
ATP4–
or ADP3–
コンホメーション1
ADP/ATPトランスロケータのX線構造解析
基質結合部
膜間部
膜間部
膜間部側から見た図
中央の穴が正電荷(青)を持っており、
ATP/ADPを結合
内膜
マトリックス
*赤い着色が負の表面電荷、青い着色が正の
表面電荷を表す。
30
クエン酸サイクル(TCAサイクル、Krebs回路)
アセチルCoA生成後、全8ステップのサイク
ル。!
→ピルビン酸を3つのCO2に変換して燃やす。!
- オキサロ酢酸とアセチルCoAの反応から始まり、
オキサロ酢酸が再生して終わる。!
- 1サイクルで2つのCO2を生成するが、このCO2
はアセチル基由来ではない(オキサロ酢酸由来)。
アセチル基由来の炭素は、オキサロ酢酸に残る。!
- 準備段階として、ピルビン酸をCoAに結合させ、
アセチルCoAを得るプロセスが必要。
ピルビン酸
CO2
NADH
アセチルCoA
NADH
+ H+
クエン酸サイクル
NADH
CO2
FADH2
CO2
GTP
NADH
GDP
+ Pi
+ H+
+ H+
ピルビン酸デヒドロゲナーゼ多酵素複合体(PDC)
アセチルCoAの生成: ピルビン酸 + NAD+ + CoASH → アセチルCoA + NADH + CO2 + H+
5つの連続反応により遂行される。実際には、
3種の酵素の多量体である『ピルビン酸デヒ
ドロゲナーゼ複合体』により触媒される。
E1: ピルビン酸デヒドロゲナーゼ (脱炭酸)!
E2: ジヒドロリポアミドS-アセチルトランスフェラーゼ (CoAと反応)!
E3: ジヒドロリポアミドデヒドロゲナーゼ (E2の再生/NADH生産)!
- 次の反応までの移動距離が抑え
られ、連続反応に有利。!
- 副反応が抑えられる。(競合反応
の影響を受けにくい。)!
- 反応の同調的制御に有利。
→3つの酵素が連動して触媒サイクルを回す。
PDCの触媒する5反応
補酵素TPPとリポ酸が不可欠
E3
E1
E2
アセチル基を受け渡す
ピルビン酸デヒドロゲナーゼ多酵素複合体(PDC)の構造
E1: ピルビン酸デヒドロゲナーゼ (2量体で存在)!
E2: ジヒドロリポアミドS-アセチルトランスフェラーゼ (3量体で存在)!
E3: ジヒドロリポアミドデヒドロゲナーゼ (2量体で存在)!
→合計60サブユニットの巨大複合体(大腸菌で。4.6 MDa, 直径~30 nm)
大腸菌の例
その他の菌!
の例
E23量体が立方
E12量体が辺上に24個、
体頂点に配置
E32量体が面上に12個
(24個)
ある種の菌ではさらに複合体は
大きく(~10 MDa; 直径50 nm)、
コアは正十二面体である。
E1とE3から
なる外殻
E2からなる内殻!
(正十二面体コア)
合計60サブユニット
のキューブ
E2 (ジヒドロリポアミドS-アセチルトランスフェラーゼ) の3量体構造
ピルビン酸デヒドロゲナーゼ(E1)の反応には補酵素が必要
補酵素: チアミン二リン酸 (TPP)
酸性
プロトン
アミノ!
ピリジン環
チアゾリウム環
ピルビン酸
ピロリン酸
H+
TPP (イリド型)
TPP
アルコール発酵
ピルビン酸
デカルボキシ
ラーゼ
求核攻撃
アセトアルデヒド
すぐにE2上の別の補酵素と反応し、
アセチル基を渡してE1が再生。
E1
E1
E1
ピルビン酸
CO2
CO2脱離
デヒドロゲナーゼ (E1)
–H+
+H+
2炭素受け取り
リポアミド–E2
S-アセチルジヒドロ
リポアミド–E2
共鳴安定化したカルボアニオン
E2 (ジヒドロリポアミドS-アセチルトランスフェラーゼ)では補酵素を介してCoAと反応
リポ酸(補酵素)を介した酸化還元反応
リポ酸
Lys
CoAの-SHとのエステル交換反応
アセチルCoA
環状
ジスルフィド
酸化型(リポアミド)
2H+ + e–
S-アセチルジヒドロリポ
アミド–E2
ジチオール
還元型(ジヒドロリポアミド)
ジヒドロリポアミド–
E2
E3(ジヒドロリポアミドデヒドロゲナーゼ)はE2の再生を担う
E3がジヒドロリポアミドを酸化してE2を再生
触媒サイクルへ (E1と接触)
E3(酸化型)
E3(還元型)
E3は内蔵されたFADを使って、-SHを酸化
NAD+ NADH + H+
FAD
S
S
生じたFADH2はNAD+で酸化され再生。!
(NAD+は、ピルビン酸を直接酸化するの
ではなく、酵素内のFADH2を酸化。)
E3の酵素活性部位のX線結晶構造解析モデル
中間体授受を可能にする秘訣∼E2の長くぶらぶらな腕
E2のリポアミドドメイン(リポイ
ルドメイン)がE1にアセチル基
を受け取りに行っている。
ピルビン酸!
リポイルドメインがE1, E3外殻と内殻の
連続的に反応を進める。
CO2
E1 NAD+
アセチル
CoA
CoA
E1とE3から
なる外殻
間を漂い、
E3
NADH
E2からなる内殻
リポイル
リシル側鎖
PDC構造!
のモデル
リポイル
ドメイン