生体分子有機化学
2015年1月8日分
第12回:クエン酸サイクル
今日のポイント
-
ピルビン酸をいかにCO2に変換するかに注意。
-
アセチルCoAの生成機構、役割を知る。
-
クエン酸サイクルの概要・役割を理解する。
担当:岸村 顕広
前回のQuiz
AMPによる阻害の解除
アデニル酸キナーゼの触媒する反応
2ADP
ATP + AMP
の平衡定数Kが
[ATP][AMP]
K=
= 0.5
2
[ADP]
で表されるとき、以下の問いに答えよ。
(1) [ATP] = 1.0 mM, [ADP] = 0.1 mMの時の[AMP]を求めよ。
0.005 mM = 5 µM
(2) [ATP] = 0.9 mMに変化した時の [AMP]を求め、(1)の値と比較せよ。
ただし、[ATP] + [ADP] = 1.1 mMが成り立つとする。
AMP濃度は、0.02(2) mM (= 22 µM)となるから、約4倍となる。
(10%のATP濃度変化で4倍のAMP増加がもたらされる。)
2
グルコースが関連する代謝のまとめ
電気的に中性
負の電荷
糖代謝の概要
ミトコンドリアを舞台に、好気的代謝が行われる。
全体で、ピルビン酸を3つのCO2に変える。
解 糖
C6H12O6
アセチルCoAの生成:
グルコース
ピルビン酸 + NAD+ + CoASH
→ アセチルCoA + NADH + CO2 + H+
(ΔG°’ = –33.5 kJ/mol)
2NAD+
2ATP
クエン酸サイクルの全反応:
2NADH
3NAD+ + FAD + GDP + Pi + アセチルCoA
→ 3NADH + FADH2 + GTP + CoASH + 2CO2
2ピルビン酸 2C3H4O3
(酸化的リン酸化に備えて還元力を貯めこむ。)
嫌気条件で
ホモ乳酸発酵
好気条件で酸化
アセチルCoA
クエン酸
サイクル
2NADH
2NADH
2NAD+
6O2
酸化的
リン酸化
2NAD+
2乳酸
6CO2 + 6H2O
嫌気条件で
アルコール
発酵
酸化的に代謝する経路であるだけでなく、同化
のための合成原料を提供する代謝のハブ。
2NADH
2NAD+
2CO2 + エタノール
『アメリカ版
大学生物学の教科書』
p. 216-222参照。
クエン酸サイクル(TCAサイクル、Krebs回路)
アセチルCoA生成後、全8ステップのサイクル。
→ピルビン酸を3つのCO2に変換して燃やす。
- オキサロ酢酸とアセチルCoAの反応から始まり、
オキサロ酢酸が再生して終わる。
- 1サイクルで2つのCO2を生成するが、このCO2は
アセチル基由来ではない(オキサロ酢酸由来)。
アセチル基由来の炭素は、オキサロ酢酸に残る。
- 準備段階として、ピルビン酸をCoAに結合させ、
アセチルCoAを得るプロセスが必要。
ピルビン酸
NADH
CO2
アセチルCoA
オキサロ酢酸
NAD+
NADH
+ H+
クエン酸
ピルビン酸
NAD+
クエン酸サイクル
NADH
炭素数2+1
+ H+
CO2
–O
オキサロ酢酸
FADH2
H 3C
O
C
C
–O
CO2
O
C
NAD+
GTP
NADH
GDP
+ Pi
+ H+
O
–2炭素
C
O–
cf. シュウ酸
(Oxalic acid)
C
C
O
O
H2
C
O
FAD
O–
O
C
O–
炭素数4
+2炭素
OH
–O
クエン酸
C
O
炭素数6
C
H 2C
O
H2
C
C
C
O
O–
O–
復習:アセチルCoA(アセチル補酵素A)
“~”は高エネルギー結合の意味
全ての食物が分解されてなるアセチル基を運ぶ中間体。
(長い炭化水素鎖も2炭素ずつ酸化され、アセチル
CoAを生み出す。)
アセチル基
-
チオエステル結合にエネルギーを貯めこむ。
-
加水分解により、–31.5 kJ/molのエネルギー放出。
(ATPより約1 kJ/mol大きい。S原子が大きく、CとS
との電子の重なりが小さいため、より共鳴効果の寄与
が小さい。)置換反応に対する活性が高い。
パント
テン酸
残基
構造の共通性に注目
ATP
パントテン酸
β-アラニン
ピルビン酸デヒドロゲナーゼ多酵素複合体(PDC)
アセチルCoAの生成: ピルビン酸 + NAD+ + CoASH → アセチルCoA + NADH + CO2 + H+
5つの連続反応により遂行される。実際には、
3種の酵素の多量体である『ピルビン酸デヒ
ドロゲナーゼ複合体』により触媒される。
E1: ピルビン酸デヒドロゲナーゼ (脱炭酸)
E2: ジヒドロリポアミドS-アセチルトランスフェラーゼ (CoAと反応)
E3: ジヒドロリポアミドデヒドロゲナーゼ (E2の再生/NADH生産)
- 次の反応までの移動距離が抑え
られ、連続反応に有利。
- 副反応が抑えられる。(競合反応
の影響を受けにくい。)
- 反応の同調的制御に有利。
→3つの酵素が連動して触媒サイクルを回す。
PDCの触媒する5反応
補酵素TPPとリポ酸が不可欠
E3
E1
E2
アセチル基を受け渡す
ピルビン酸デヒドロゲナーゼ多酵素複合体(PDC)の構造
E1: ピルビン酸デヒドロゲナーゼ (2量体で存在)
E2: ジヒドロリポアミドS-アセチルトランスフェラーゼ (3量体で存在)
E3: ジヒドロリポアミドデヒドロゲナーゼ (2量体で存在)
→合計60サブユニットの巨大複合体(大腸菌で。4.6 MDa, 直径~30 nm)
大腸菌の例
その他の菌
の例
E23量体が立方
E12量体が辺上に24個、
体頂点に配置
E32量体が面上に12個
(24個)
ある種の菌ではさらに複合体は
大きく(~10 MDa; 直径50 nm)、
コアは正十二面体である。
E1とE3から
なる外殻
E2からなる内殻
(正十二面体コア)
合計60サブユニット
のキューブ
E2 (ジヒドロリポアミドS-アセチルトランスフェラーゼ) の3量体構造
ピルビン酸デヒドロゲナーゼ(E1)の反応には補酵素が必要
補酵素: チアミン二リン酸 (TPP)
酸性
プロトン
アミノ
チアゾリウム環
ピリミジン環
ピルビン酸
ピロリン酸
H+
TPP (イリド型)
TPP
アルコール発酵
(ピルビン酸
デカルボキシ
ラーゼの場合)
求核攻撃
アセトアルデヒド
すぐにE2上の別の補酵素と反応し、
アセチル基を渡してE1が再生。
E1
E1
E1
ピルビン酸
CO2
CO2脱離
デヒドロゲナーゼ (E1)
–H+
+H+
2炭素受け取り
リポアミド–E2
S-アセチルジヒドロ
リポアミド–E2
共鳴安定化したカルボアニオン
E2 (ジヒドロリポアミドS-アセチルトランスフェラーゼ)では補酵素を介してCoAと反応
リポ酸(補酵素)を介した酸化還元反応
リポ酸
Lys
CoAの-SHとのエステル交換反応
アセチルCoA
環状
ジスルフィド
酸化型(リポアミド)
2H+ + e–
S-アセチルジヒドロリポ
アミド–E2
ジチオール
還元型(ジヒドロリポアミド)
ジヒドロリポアミド–
E2
フラビン補酵素 (FAD/FADH·/FADH2)
アデノシン
リボフラビン
(ビタミンの一種)
FAD
1電子ずつ、2電子まで受け入れ可能。
FADH·
FADH2
E3(ジヒドロリポアミドデヒドロゲナーゼ)はE2の再生を担う
E3がジヒドロリポアミドを酸化してE2を再生
触媒サイクルへ (E1と接触)
E3(酸化型)
E3(還元型)
E3は内蔵されたFADを使って、-SHを酸化
NAD+ NADH + H+
FAD
S
S
生じたFADH2はNAD+で酸化され再生。
(NAD+は、ピルビン酸を直接酸化するの
ではなく、酵素内のFADH2を酸化。)
E3の酵素活性部位のX線結晶構造解析モデル
中間体授受を可能にする秘訣∼E2の長くぶらぶらな腕
E2のリポアミドドメイン(リポイ
ルドメイン)がE1にアセチル基
を受け取りに行っている。
ピルビン酸
間を漂い、
CO2
E1 NAD+
アセチル
CoA
E1
E1とE3から
なる外殻
リポイルドメインがE1, E3外殻と内殻の
連続的に反応を進める。
CoA
E3
E3
NADH
E2
E2からなる内殻
リポイル
リシル側鎖
PDC構造
のモデル
リポイル
ドメイン
第1反応は、まずオキサロ酢酸が基質
クエン酸シンターゼは、オキサロ酢酸と結合してコンホメーション変化する。
(ヘキソキナーゼで見られたような『誘導適合』)
O
–OOC
C
H2
COO –
オキサロ酢酸
オープン型 (結合前)
閉鎖型 (結合後)
アセチルCoA結合可能なサイトが出現
反応の推進は、塩基触媒がトリガー
第7回(C-C結合の生成)の項参照。
中間体シトリルCoAが加水分解
加水分解により、
–31.5 kJ/molの
エネルギー放出。
シトリルCoA
塩基触媒
エノレートが安定化され求核攻撃
クエン酸
第2反応:アコニターゼによるクエン酸の異性化
一度脱水して水和。
生成物のキラリティが制御。
クエン酸
cis-アコニット酸
アコニターゼ
イソクエン酸
[4Fe–4S]クラスター
Arg 580がクエン酸を捕捉。
cis-アコニット酸中間体
反応する面を固定しているらしい。
(2R, 3S)-イソクエン酸
第3反応:NAD+による酸化/脱炭酸
クエン酸サイクル最初のNADHとCO2を生成。
触媒するNAD+依存イソクエン酸デヒドロゲナーゼは、Mn2+またはMg2+を要する。
CO2はオキサロ酢酸由来
であることに注意せよ!
α-ケト酸の
一種
ケト-エノール
互変異性化
NAD+
H+ + NADH
Mn2+
イソクエン酸
アルコールが酸化
H+
CO2
オキサロコハク酸
β-ケト基が脱炭酸促進
Mn2+が分極を援護
イソクエン酸
デヒドロゲナーゼ
Mn2+
2-オキソグルタル酸
第4反応:第2のCoA投入とチオエステル結合形成
クエン酸サイクル2つ目のNADHとCO2を生成。
2-オキソグルタル酸デヒドロゲナーゼ複合体が反応を触媒。
CO2はオキサロ酢酸由来
貯めこんだエネルギーは、
CoASH
CO2
エネルギー通貨(主にGTP)の
オキサロ
酢酸由来
生産に使われる。
NAD+
2-オキソグルタル酸
H+ + NADH
スクシニルCoA
(高エネルギー化合物)
*2-オキソグルタル酸デヒドロゲナーゼ複合体は、先のピルビン酸デヒドロゲ
ナーゼ複合体 (PDC)と合わせ、α-ケト酸デヒドロゲナーゼ複合体ファミリーの
一つ。複合体の構成も類似しており、メカニズムも同一。
E1: 2-オキソグルタル酸デヒドロゲナーゼ
E2: ジヒドロリポアミドS-スクシニルトランスフェラーゼ
E3: ジヒドロリポアミドデヒドロゲナーゼ (PDCと同一分子)
クエン酸サイクル・ここまでのまとめ
クエン酸サイクルの全反応:
オキサロ酢酸
3NAD+ + FAD + GDP + Pi + アセチルCoA
→ 3NADH + FADH2 + GTP + CoASH + 2CO2
1. クエン酸
シンターゼ
クエン酸
2. アコニターゼ
イソクエン酸
NAD+
3. イソクエン酸
デヒドロゲナーゼ
NADH + H+
CO2
4. 2-オキソグルタル
酸デヒドロゲナーゼ
CO2
2-オキソグルタル酸
NAD+
NADH + H+
スクシニルCoA
このうちの、
2NAD+ + アセチルCoA
→ 2NADH + 2CO2
が済み、受け入れたアセチル基相当の
2炭素が完全に酸化され、CO2となった。
(結果的にはオキサロ酢酸を燃やしたこと
に相当。)
この先(第5∼8反応)、エネル
ギー通貨の生産とオキサロ酢酸を
再生するプロセスへと続く。
第5反応:チオエステル結合のエネルギーをGTP(ATP)に保存
共 スクシニルCoA + H2O → コハク酸 + CoASH (ΔG°’ = –32.6 kJ/mol)
役 GDP + Pi → GTP (ΔG°’ = +30.5 kJ/mol)
GTP
スクシニルCoAシンテターゼによる反応
スクシニルリン酸
スクシニルCoA
コハク酸
CoASH
オキサロ酢酸の再生に向かう。
(かなり強力な酸化が必要。)
O
–OOC
3-ホスホHis
GDP
GTP
C
H2
COO –
酵素のHisが
再生
エネルギーをGTPに保存。
ヌクレオシド二リン酸キナーゼにより、
GTP + ADP GDP + ATP (ΔG°’ = ~0 kJ/mol) ATPから、エネルギー的に等価なその他の
ヌクレオシドの三リン酸体が作られる。
第6反応:コハク酸が酸化(脱水素)される
コハク酸デヒドロゲナーゼが反応を触媒する。
コハク酸
–OOC
C
H2
H2
C
フマル酸
COO –
–OOC
+ 酵素-FAD
2電子が移動
強力な酸化力が必要なため、NAD+では
物足りず、FADが用いられる。
C
H
H
C
COO –
+ 酵素-FADH2
生じたFADH2を
トランス体だけが
生成する。
どう再生するか?
マロン酸
cf. マレイン酸
–
OO
C
–
OO
C
CH
CH
–OOC
C
H2
COO –
コハク酸代謝の
阻害剤になる。
およそ0なので、可逆反応
となりうる。
第6反応:コハク酸が酸化(脱水素)される
脱水素の機構ははっきり確定していないが、FADが共有結合的に酵素に結合
していることが知られている。
基質ポケット
のモデル
FAD捕捉サイト
オキサロ
酢酸
大腸菌のコハク酸デヒドロゲナーゼのX線構造解析
結果(Protein data bank: pdb2aczより)
第6反応:コハク酸が酸化(脱水素)される
コハク酸デヒドロゲナーゼはミトコンドリア内膜に埋め込まれたタンパク
質複合体(複合体II)の一部である。FADの再生は、電子伝達系と連携して
行われる。
大腸菌の複合体II
(Protein data bank: 1nek)
複合体II
膜間部
ミトコンドリア内膜
マトリックス
コハク酸デヒドロ
ゲナーゼ
コハク酸
2電子が移動
フマル酸
第7反応:フマル酸が水和される
フマラーゼにより、二重結合が水和され、L-リンゴ酸が生じる。
カルボアニオン遷移状態
フマル酸
–OOC
C
H
H
C
L−リンゴ酸
H
+
OH–
COO –
+
–OOC
C
H
H+
C
C
COO –
CH
–OOC
C
H
OH
H
–OOC
+
H+
H2
C
OH
+ OH–
COO –
H
カルボカチオン遷移状態
フマラーゼ
COO –
第8反応:リンゴ酸がNAD+により酸化される
リンゴ酸デヒドロゲナーゼにより、オキサロ酢酸を再生。
L−リンゴ酸
–OOC
C
H
H2
C
OH
COO –
+ NAD+
オキサロ酢酸
H2
–OOC
C
C
COO –
O
+ NADH + H+
この反応のΔG°’は +29.7 kJ/mol
オキサロ酢酸の平衡濃度は非常に低い。
リンゴ酸デヒドロゲナーゼ
第1反応のCoAのチオエステルの加水分解により、
–31.5 kJ/molのエネルギーを放出することで、
サイクルを牽引する。
クエン酸サイクル・後半のまとめ
クエン酸サイクルの全反応:
3NAD+ + FAD + GDP + Pi + アセチルCoA
→ 3NADH + FADH2 + GTP + CoASH + 2CO2
オキサロ酢酸
NADH
+ H+
NAD+
8. リンゴ酸デヒドロ
ゲナーゼ
L-リンゴ酸
7.フマラーゼ
H 2O
クエン酸サイクル
6.コハク酸デヒドロゲナーゼ
フマル酸
FADH2
FAD
5.スクシニルCoA
シンテターゼ
CoASH
コハク酸
GTP
GDP
+ Pi
スクシニルCoA
後半では
NAD+ + FAD + GDP + Pi
→ NADH + FADH2 + CoASH + GTP
が行われ、コハク酸からオキサロ酢酸が再生され
つつ、エネルギー通貨・還元力通貨を得る。
ピルビン酸以降のまとめ
アセチルCoAの生成:
ピルビン酸
ピルビン酸 + NAD+ + CoASH
→ アセチルCoA + NADH + CO2 + H+
(ΔG°’ = –33.5 kJ/mol)
アセチルCoA
アセチルCoA
NADH
オキサロ酢酸
不可逆
クエン酸サイクルの全反応:
クエン酸
3NAD+ + FAD + GDP + Pi + アセチルCoA
→ 3NADH + FADH2 + GTP + CoASH + 2CO2
イソクエン酸 (酸化的リン酸化に備えて還元力を貯めこむ。)
L-リンゴ酸
*1サイクルで2つのCO2を生成するが、
不可逆
NADH このCO2はアセチル基由来ではない(オ
クエン酸サイクル
キサロ酢酸由来)。アセチル基由来の炭
CO2
フマル酸
2-オキソグルタル酸
素は、オキサロ酢酸に残る。(2巡目以
CO2
降に酸化。)
不可逆
FADH2
NADH
CO2
コハク酸
スクシニルCoA
GTP
CO2
クエン酸サイクルの調節
ピルビン酸
反応
阻害
活性化
アセチルCoA
1
オキサロ酢酸
イソクエン酸
3
コハク酸
スクシニルCoA
ATP
2-オキソグルタル酸
4
イソクエン酸デヒドロゲ
ナーゼ
–21
負
2-オキソグルタル酸デヒ
ドロゲナーゼ複合体
–33
負
–2.1
~0
+6
~0
–3.4
~0
–
4
6
NADH
フマル酸
+5
クエン酸シンターゼ
クエン酸
7
8
ΔG°’ ΔG
[kJ/mol] [kJ/mol]
負
~0
1
2
3
5
L-リンゴ酸
酵素
アコニターゼ
スクシニルCoAシンテ
ターゼ
コハク酸デヒドロゲナー
ゼ
フマラーゼ
リンゴ酸デヒドロゲナー
ゼ
–31.5
+29.7
調節メカニズム
(1) 基質の供給量
(2) 生成物阻害
(3) 後続ステップの中間体による
フィードバック阻害
主として、基質のアセチルCoA、オキサロ酢酸、
生成物のNADHのバランスにより調節される。
サイクルを回すのに不可欠なオキサロ酢酸などの補充反応
アナプレロティック反応
ピルビン酸カルボキシラーゼ
糖新生の第一反応
ピルビン酸
COO –
解糖
オキサロ酢酸
HCO3– + ATP
アミノ基転移
+H
3N
ピルビン酸
COO –
COO –
H +
CH2
COO –
O
O
COO –
+
+H
3N
CH2
CH3
CH3
COO –
ピルビン酸
アスパラギン酸
H
アラニン
オキサロ酢酸
CO2
CO2
COO –
+H
アセチルCoA
3N
COO –
H
CH2
+
CH2
COO –
オキサロ酢酸
グルタミン酸
2-オキソグルタル酸
グルタミン酸
アラニン
O
COO –
GPT
CH3
ピルビン酸
COO –
O
CH2
+
CH2
COO –
+H
3N
H
CH3
アラニン
2-オキソ
グルタル酸
GPT:グルタミン酸–ピルビン酸トランスアミナーゼ
(肝機能の血液検査に利用。)アラニントランスアミ
ナーゼとも言う。
クエン酸サイクルの二面性:生合成系との関連
4生合成
異化代謝
アミノ酸
(アスパラギン酸)
グルコース
アスパラギン酸
チロシン
フェニルアラニン
4
ピルビン酸
アセチルCoA
脂肪酸
コレステロール
コレステロール
オキサロ酢酸
L-リンゴ酸
クエン酸
フマル酸
イソクエン酸
コハク酸
スクシニルCoA 2-オキソグルタル酸
ヘム
ポルフィリン
イソロイシン
バリン
メチオニン
NADH + NH4+
アミノ酸
(グルタミン酸)
奇数炭素の
脂肪酸
電子伝達と酸化的リン酸化の意義
グルコースの燃焼
C6H12O6 + 6O2→ 6CO2 + 6H2O
ΔG = –2850 kJ/mol (–686 kcal/mol)
半
+
反 C6H12O6 + 6H2O→ 6CO2 + 24H + 24e
応
6O2 + 24H+ + 24e- → 12H2O
式
生体内では、この2つの半反応式をつなぐ電子伝達を多段階で行い、解放された
エネルギーをATPとして蓄える。
解糖の全反応式
グルコース + 2NAD+ + 2ADP + 2Pi → 2ピルビン酸 + 2NADH + 2ATP + 2H2O + 4H+
アセチルCoAの生成:
ピルビン酸 + NAD+ + CoASH → アセチルCoA + NADH + CO2 + H+
クエン酸サイクルの全反応:
3NAD+ + FAD + GDP + Pi + アセチルCoA → 3NADH + FADH2 + GTP + CoASH +
2CO2
→得られたNADH, FADH2から取り出された電子を用いて(電子伝達系に受け渡して)、
O2の還元を行う。
→この過程でプロトンがミトコンドリア内部から み出され、生じたプロトンの濃度勾配
によりADP + PiからATPを再生する。(電気化学的なエネルギー変換である。)これが
酸化的リン酸化である。