炉物理プログラム演習 (3) 1次元複数媒質固定中性子源拡散問題 千葉豪 平成 24 年 4 月 20 日 演習 (2) では、単一組成の媒質で構成される体系の拡散方程式を解いたが、実際の問題は 複数の異なる媒質で構成される。 ここで、異なる媒質間の境界において満足されるべき条件を考える。 まず、中性子束が連続であるべきことは直感的に理解できるであろう。それに加えて、 「中 性子流の連続性」が担保されなければならない。以下、その点について説明する。中性子が 増倍しない一次元平板体系に固定中性子源がある場合、エネルギー1群の中性子拡散方程式 は以下のように書ける。 − d d D(x) φ(x) + Σa (x)φ(x) = S(x) dx dx (1) ここで、D は拡散係数、Σa は吸収断面積を示す。異なる媒質間の境界位置を x = xb とし、 区間 [xb + , xb − ] で積分を行うと以下の式を得る。なお、 としては小さい値を考える。 −D(xb + ) dφ dφ |x=xb + + D(xb − ) |x=xb − + Σa (xb )φ(xb )2 = S(xb )2 dx dx (2) ここで、 → 0 の極限をとると、以下の式を得る。 −D(xb + ) dφ dφ |x=xb + = −D(xb − ) |x=xb − dx dx (3) dφ が連続でなければならないことが dx dφ 分かる。ここで、−D が(拡散近似のもとでの)中性子流に該当し、この式が中性子流 dx の連続性を意味する。 以降では、式 (1) の離散化を行い、数値計算の準備を行う。体系を N 個の空間メッシュに 分割する。ただし、各々の空間メッシュは一種類の媒質のみで構成されるものとする。n 番 目のメッシュについて空間積分を行うと、以下の式を得る。なお、メッシュ平均の φ、S に ついてはメッシュ中点での値で代表させるものとする。 すなわち、境界 xb を挟んで、その右側と左側とで D −Dn dφ dφ |x=xn + Dn |x=xn−1 + Σa,n φn ∆xn = Sn ∆xn dx dx (4) ここで、Dn 、Σa,n はメッシュn での定数であることを示し、φn は Sn はメッシュn の中点 での値である。また、∆x = xn − xn−1 である。 1 次に、φ の一次微分項の計算を行う。メッシュn と (n + 1) の境界位置を xn における中性 子束を φb と書くと、メッシュn 側の境界における中性子流 J− は次のように書けるであろう。 J− = −Dn dφ φb − φn |x=xn = −Dn dx ∆xn /2 (5) 一方、同一境界位置におけるメッシュ(n + 1) 側の中性子流 J+ は次のように書けるであろう。 J− = −Dn+1 φn+1 − φb dφ |x=xn+1 = −Dn+1 dx ∆xn+1 /2 (6) 中性子流の連続条件 J− = J+ を用いることにより、φb が以下のように求まる。 φb = ∆xn Dn+1 φn+1 + ∆xn+1 Dn φn ∆xn Dn+1 + ∆xn+1 Dn (7) これより、xn における一次微分項が以下のように求まる。 −Dn dφ 2Dn Dn+1 (φn+1 − φn ) = −Cn (φn+1 − φn ) |x=xn = − dx ∆xn Dn+1 + ∆xn+1 Dn (8) 同様にして、xn−1 における一次微分項も以下のように書ける。 Dn dφ 2Dn Dn−1 |x=xn−1 = (φn − φn−1 ) = Cn−1 (φn − φn−1 ) dx ∆xn Dn−1 + ∆xn−1 Dn (9) 以上より、式 (4) は、 −Cn (φn+1 − φn ) + Cn−1 (φn − φn−1 ) + Σa,n φn ∆xn = Sn ∆xn (10) と書ける。 なお、メッシュ端点が外部境界と一致する場合は、φ = 0 の境界条件のもとでは dφ φ1 |x=0 = dx 0.5∆x (11) としてやれば良い。 ✓ ✏ 問題1:a = 50、D = 10、Σa = 1、S = 1 として、作成したプログラムで φ(x) を求め、 解析解を再現することを確かめよ(メッシュ分割は任意)。 ✒ ✓ ✑ ✏ 問題2:[0, 25] の区間では D = 10、Σa = 1、S = 1、[25, 50] の区間では D = 10、 Σa = 2、S = 1 として φ(x) を求めよ。 ✒ ✑ 2
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