第 章 連分数 の値は無限に続く少数で分数に表すことはできませ ん。しかし、できるだけ近い分数に表すことを考えてみましょう。たとえば、 「もう少 し」としてみます。 「もう少し」とは と のあいだにある数です。しかし、これではあまりに も大雑把すぎます。そこで、次の様に逆数の形に変形します。 の値は より大きな数なので、先ほどと同様に 「も う少し」となるように変形してみましょう。 最後の「もう少し」を無視してみれば、 は近似的に にこれを繰り返してみます。 最後の「もう少し」を無視した分数の値はどうなるでしょう。 この値は の値の 桁まで一致しています。 この章ではこうした「連分数」について学びます。 に等しくなります。さら 連分数 有理数の連分数 次の様な分数を(正則)連分数といい、 と略記する。 この連分数は厳密には次の様に定義される。 (定義)連分数 例題 を連分数表示せよ。 (解答) ■ 【問題 】 を連分数表示せよ。 これからこの連分数について学習するが、その下準備として連分数の ”分子 ”と ”分母 ”にあたる数につ いて学んでおく必要がある。 (定義)連分数の ”分子 ”と ”分母 ” に対し、 を次の様に定める。 (補題) (証明) また、 定義より より、 ∴ より、 ∴ より、 ■ (定理)( 次分数近似) ここで である。 (証明) ■ を 次分数近似という。 例題 を連分数表示せよ。また、 を求めよ。 (解答) ■ 【問題 】 を連分数表示せよ。また、 を求めよ。 実数の連分数 有理数についての連分数展開をみてきたが、今度はこれを実数にまで拡張する。 (定義)実数の連分数 とする。 すなわち (定理) (証明) より、 とすると、 ■ (定義) に対し、 を次の様に定める。 このとき有理数の場合と同様に次の定理が成り立つ。 (定理) (証明)省略 (定理)( 次分数近似) (証明)省略 例題 (解答) ∴ を連分数表示し、 次の分数近似をせよ。 とおく。 【問題 】次の値を連分数表示し、 次の分数近似をせよ。 (補題) または (証明) ∴ ∴ ■ (定理) (証明) ここで より、 ∴ より、 ∴ ∴ ∴ ∴ ∴ より、 より、 より、 が奇数のとき、 が偶数のとき、 より、 は単調増加なので、 ■ 例題 の近似分数を用いて、次のことが成り立つことを について確かめよ。 (解答) ∴ が成り立つ。 ∴ ∴ ■ 【問題 】 の近似分数を用いて、次のことが成り立つことを について確かめよ。 (定理) (証明) ∴ のとき、 ∴ ∴ ■ 次の有理数を連分数展開せよ。 次の無理数を連分数展開し、 次の分数近似をせよ。 を連分数展開し、 次の分数近似をせよ。 次の問いに答えよ。( 早稲田) を互いに素な正の整数とする。 の整数解を全て求めよ。 は正の整数) と書けるとする。 を通分して得られる分子 の値を求めよ。 の整数解を求めよ。 を 、分母 を とするとき、 循環連分数と 次無理数 循環連分数と 次無理数 (定義)循環連分数 無限連分数が が循環連分数であるとは、 を満たす が存在することをいう。 また、 を循環節の長さという。 を循環節といい、次の様に表す。 のとき、純循環であるという。 例題 を連分数表示し、循環節表示せよ。 (解答) とおく。 ∴ ■ 【問題 】次の数を連分数表示し、循環節表示せよ。 (定義) 次無理数 整数係数の 次方程式 の判別式が正かつ平方数でないとき、この方 程式の解を 次無理数であるという。逆に 次無理数が満たす整数係数の 次方程式を、その 次無理 数の 次方程式という。その中で最高次の係数が の多項式を最小多項式という。このとき方程式の解 に対して、 平方数でない である。 となるような に対し、 は が存在し、 次無理数で、 を共役元という。 が最小多項式である。また、 の共役元は (定理) が 次無理数であることと、 が ることは同値である。また、 (証明)( ) を は 次無理数であ の共役元である。 の共役元とする。 は明らか。また、 より、 ∴ ( ) 次無理数 を の作る 次方程式を とする。 に代入すると、 ここで、 とおくと、 のとき、 より、 のとき、方程式 ここで すなわち の判別式をそれぞれ は平方数ではないので、 となり、矛盾。よって、 とすると、 も平方数ではない。よって、 は 次無理数である。■ (定理) 次無理数は循環連分数に展開される。 (証明) を無理数、 の作る 次方程式を を とする。 に代入すると、 ∴ ここで、 とおくと、 より、 ∴ (定数) 同様に (定数) また、 (一定)より、 (定数) よって、 となる 致する。 ■ は有界な点列をなり、 が存在する。ここで は 次方程式 の解であるから、少なくとも つは一 例題 (解答) ∴ の値を求めよ。 とする。 ∴ (∵ ) ■ 【問題 】次の数の値を求めよ。 の連分数展開 (定義)簡約な 次無理数 次無理数 が簡約な 次無理数であるとは、 が成り立つことである。 (補題) は簡約 次無理数である。 (証明) また、共役元は なので、 ■ (定理) 簡約な (証明) 次無理数は純循環な連分数に展開される。 を簡約 次無理数として、循環の長さを とする。 とすると、 より、 より、 ∴ ∴ ■ 例題 は純循環な連分数に展開されることを確認せよ。 (解答) とおく。 ∴ は簡約な 次無理数。 ■ 【問題 】 は純循環な連分数に展開されることを確認せよ。 (定理) (証明) の証明 は簡約 ここで ∴ とおくと、 次無理数なので、純循環な連分数に展開される。循環節の長さを とすると、 の証明 とおくと、 であるから、 を満たす。このとき、 は次の に関する 次方程式 とおく。 任意の整数 に対して、 となる て、 をとり、 とおく。このとき、 と定め、すべての整数 に対し となる。 ∴ ∴ となり、 は と同じ 次方程式を満たす。 だから、 は の共役元 ∴ 後半の性質は回文構造を有するという。 例題 を連分数展開し、回文構造を有することを確認せよ。 (解答) ∴ 【問題 】 とおく。 ■ を連分数展開し、回文構造を有することを確認せよ。 に等しい。よって、 ■ 次の数を連分数表示し、循環節表示せよ。 次の数の値を求めよ。 次の数を連分数表示し、循環節表示せよ。 を連分数表示し、循環節表示せよ。
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