情報数理 IIB 演習問題解答 木村泰紀∗ 2014 年 10 月 23 日出題 問題 1. X, Y をそれぞれ距離空間とする. 次の問いに答えよ. (i) A, B がともに X の閉部分集合のとき, A ∩ B も閉であることを点列の収束を用いて証明せよ. (ii) f : X → Y と g : X → Y がともに連続のとき, D = {x ∈ X : f (x) 6= g(x)} は開集合であることを示せ. 解答 (i) {xn } を x0 に収束する A ∩ B の点列とするとき, x0 ∈ A ∩ B となることを示せばよい. {xn } ⊂ A ∩ B ⊂ A より, {xn } は A の点列でもあり, A は閉であるから x0 ∈ A が得られる. 同様にして, {xn } ⊂ A ∩ B ⊂ B より, {xn } は B の点列でもあり, B は閉であるから x0 ∈ B も得られる. よって x0 ∈ A ∩ B であり, A ∩ B は閉であることが示された. (ii) C = DC = {x ∈ X : f (x) = g(x)} とするとき, C が閉集合であることを示せばよい. {xn } を x0 ∈ X に収束する C の点列とするとき, 各 n ∈ N に対して xn ∈ C より f (xn ) = g(xn ) が成り立つ. よって, f, g の 連続性を用いると f (x0 ) = lim f (xn ) = lim g(xn ) = g(x0 ). n→∞ n→∞ よって x0 ∈ C となり, C は閉集合, すなわち, D は開集合であることが示された. 問題 2. A を距離空間 X の部分集合とする. このとき, 次の命題が同値であることを示せ. (i) x ∈ A; (ii) x に収束する A の点列 {xn } が存在する. 解答 まず (i) を仮定し (ii) を示す. x ∈ A とすると, 閉包の定義より任意の r > 0 に対して Ur (x) ∩ A 6= ∅ が成り立つ. ここで各 n ∈ N に対し r = 1/n とすると, U1/n (x) ∩ A は空でないので xn ∈ U1/n (x) ∩ A をみ たす xn ∈ X をとることができる. このようにして構成した {xn } は A の点列であり, 開球の定義より d(xn , x) < 1 n を各 n ∈ N でみたす. ここで n → ∞ として極限をとると limn→∞ d(xn , x) = 0 であるから, {xn } は x に収 束する. よって (ii) が得られた. ∗ 東邦大学理学部情報科学科. http://www.lab2.toho-u.ac.jp/sci/is/kimura/yasunori/ 1 次に (ii) を仮定し (i) を示す. x に収束する A の点列 {xn } が存在すると仮定すると, A ⊂ A が常に成り立 つことから {xn } は A の点列でもある. ここで A は閉集合だから {xn } の極限 x は x ∈ A をみたし, (i) が得 られた. 以上より, これらの条件は同値であることが示された. 問題 3. {xn } を距離空間 X の収束点列で, その極限を x ∈ X する. また y ∈ X とする. このとき, ある M ≥ 0 が存在して d(xn , y) ≤ M が任意の n ∈ N に対して成り立つことを示せ. 解答 {xn } が x に収束するので, = 1 に対してある n0 ∈ N が存在して, n ≥ n0 をみたす任意の n ∈ N に 対して d(xn , x0 ) ≤ 1 が成り立つ. ここで, M1 = 1 + d(x, y) とすると d(xn , y) ≤ d(xn , x) + d(x, y) ≤ 1 + d(x, y) = M1 が n ≥ n0 をみたす任意の n ∈ N に対して成り立つ. そこで, M = max{d(x1 , y), d(x2 , y), . . . , d(xn0 −1 , y), M1 } とすると, 任意の n ∈ N に対して d(xn , y) ≤ M が成り立つ. よって示された. 2
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