じゃんけんの確率 確率の分野でよく出題される問題の一つに「じゃんけんの問題」がある。実際に,身近にあ るテーマであるじゃんけんを題材にした身近な問題には,生徒も興味深いようである。そこで, 教科書にあるような問題だけでなく,次のような問題で興味・関心と思考力と高めるのもよい と思われる。 [問題1] n 人で1回じゃんけんをするとき,あいこになる確率を求めよ。 (解答1) 【勝利者数で場合分けして考える方法】 余事象を考える。 1人勝つ確率は, n 人の中から勝利者を1人選ぶ方法が n C1 通り,どの手で勝つかは3 3 n C1 となる。 3n 3 C 3 C 同様に,2人勝つ確率は n n 2 ,3人勝つ確率は n n 3 ,……, (n 1) 人勝つ確率は 3 3 3 n C n 1 。 3n 通りあるので, よって,勝負がつく確率は, 3 n C1 3 n C2 3 n C3 3 C C C C n C n 1 n n n 1 n 1 n 2 n n31 ……① n n n 3 3 3 3 3 n ここで,二項定理を用いると, n C 0 n C1 n C 2 n C n 1 n C n 2 より, n n C1 n C 2 n C n 1 2 2 であるので,①= したがって,あいこになる確率は, 1 (解答2) 2n 2 となる。 3 n 1 2n 2 3 n1 【勝敗がつく手の出し方のパターンを考える方法】 余事象を考える。 n 人で1回じゃんけんをして勝負がつくのは,n 人の出す手がちょうど2種類になると きである。 2種類の手の選び方は 3 C 2 通り,n 人が2種類の手 を 出 す出 し 方 は 2 2 通 り あ る の で, 勝 負 が つく n C2 2 n 2 2 n 2 n1 となる。 3n 3 2n 2 よって,あいこになる確率は 1 n 1 3 確率は, 3 【参考】 n の値を増やしていくと,あいこになる確率は n の値 あいこになる確率 3 1 (33.3%) 3 4 13 (48.1%) 27 5 17 (63.0%) 27 右の表のようになる。 … … - 1 - 10 18661 (94.8%) 19683 [問題2] n 人でじゃんけんをするとき,勝利者が1人以上出る(つまりあいこにならない 場合)までの回数の期待値を求めよ。 (解答) [問題1]より, n 人で1回じゃんけんをして勝敗がつく確率を p ,あいこになる 2n 2 2n 2 確率を q とおくと, p n 1 , q 1 n 1 。 3 3 求める期待値を E A n とおくと, 勝者が出る回数 確率 1 2 3 ・・・ k ・・・ p qp q2 p ・・・ q k 1 p ・・・ より E A n kq k 1 p となる。 k 1 ここで, S n kq k 1 p とおく。 k 1 S p 2qp 3q 2 p 4q 3 p nq n 1 p …① qS qp 2q 2 p 3q 3 p n 1q n 1 p nq n p …② ①-②より, 1 q S p qp q 2 p q 3 p q n1 p nq n p p 1 qn nq n p 1 q よって, S p 1 qn 1 q 2 nq n p 1 q したがって, E A n lim S n 【参考】 となる。 p 1 q 2 p 1 3 n1 2 n p 2 2 p n の値を増やしていくと,勝利者が1人以上出 るまでの回数の期待値は右の表のようになる。 勝利者が1人以上出る までの回数 3 3 (1.5 回) 2 4 27 (1.93 回) 14 5 27 (2.7 回) 10 … … - 2 - n の値 10 19683 (19.3 回) 1022 [問題3] (解答) n 人で1回じゃんけんをするとき,勝利者数の期待値を求めよ。 n 人で1回じゃんけんをして k 人勝つ確率を Pn, k とおくと, 3 C C Pn, k n n k n n 1k ( 1 k n 1 )となる。 3 3 求める期待値を E B n とおくと, E B n n 1 k P n, k k 1 n 1 k n Ck 3 n1 k 1 1 3 n 1 n 1 k n Ck k 1 n 3 n 1 n 1 n 1 C k 1 K 1 ( k n C k n n 1 C k 1 ) よって, 3 n 1 E B n n1 C 0 n 1 C1 n1 C 2 n 1 C n 2 2 n 1 1 n n 1 ( 二項定理より n 1 C 0 n 1 C1 n 1 C 2 n1 C n 2 n 1 C n 1 2 ) したがって, E B n 【補足】 k n C k n n 1 C k 1 [証明] n 2 n1 1 3 n 1 についての説明 (左辺)= k n C k k n! n 1! n n C =(右辺) k !n k ! k 1!n 1 k 1! n1 k 1 感覚的な説明ではあるが, ア (左辺)は, n 人の中から k 人の委員を選び,その k 人の委員の中から1人の委員長を 決める場合の数 イ (右辺)は, n 人の中から委員長を1人選び,残りの n 1 人の中から k 1 人の委員 を決める場合の数 アとイは同じ操作だから,k n C k n n 1 C k 1 である,と説明すると生徒も理解しやすいだろう。 - 3 -
© Copyright 2024 ExpyDoc