足もとの為替ヘッジコスト(対米ドル)

Column
ご参考資料
「投資のヒント」
2016年12月19日
足もとの為替ヘッジコスト(対米ドル)と今後の見通し
足もとでは対米ドルの為替ヘッジコストが高止まりしています。そこで、改めて為替ヘッジコストについて確認してみます。為替
ヘッジとは、一般に外貨建資産を組み入れた際の為替変動リスクを低減するために用いられる方法です。
※為替ヘッジを行った場合でも、為替変動リスクを完全に排除できるとは限りません。
◆為替ヘッジコストの実勢値と理論値(短期金利差)の比較
米ドル資産の運用商品を為替ヘッジ(対円)する場合のコストは、理論的には米ドル短期金利と円短期金利の差となります。
それに加えて、円に対する米ドルの調達コストも影響する点に留意が必要です。
米ドル資産を為替ヘッジ(対円)する場合、米ドル資産の購入時にあらかじめ将来の米ドルから円への交換取引(先物為替予
約)を行うこととなりますが、これは将来の期日までの期間、円を担保に米ドルを借りる(調達する)行為と同様です。そのため、
市場における米ドルの調達コストが円に比べて高ければ、その調達コスト分が上乗せされることになります。
2016年12月15日現在の為替ヘッジコストを見ると、日米短期金利差(1ヵ月LIBOR*1)から算出した理論値とフォワードレート*2
(1ヵ月)から算出した実勢値に、通常時よりも大きな乖離が生じています。足もとの市場における米ドルへの需要の高まりに伴
い、米ドル調達コストが通常時よりも高まっていることによるものです。本来、グローバルな金融取引の多くは米ドル建で行われ
ていることから、潜在的に米ドルの資金需要が強まりやすい傾向にあります。
*1 LIBOR:ロンドン市場における銀行間での資金取引金利。短期金利の国際的な指標
*2 フォワードレート:為替フォワード市場で実際に取引されているレート
◆為替ヘッジコスト上昇の要因と今後の見通し
2015年12月以降、為替ヘッジコストは上昇基調で推移しています。その上昇要因の一つに日米金融政策の違いが挙げられま
す。2015年12月のFOMC(米連邦公開市場委員会)ではFRB(米連邦準備理事会) が政策金利を引き上げた一方で、2016年1月
に日銀はマイナス金利政策の導入を発表しました。その結果、日米短期金利差の拡大が為替ヘッジコストの上昇要因となりまし
た。もう一つの要因は、米ドル資金需要の高まりです。日銀の金融緩和政策を背景に日本の金利が低下し、運用難となった日
本の投資家が為替ヘッジ付き外国債券投資を拡大させたことに加えて、2016年6月に行われた英国民投票でEU(欧州連合)離
脱派が勝利したことから信用不安が拡大したこともあり、米ドル資金需要が高まりました。
2016年11月以降は、トランプ次期米大統領選出後、将来の財政悪化懸念による米国の金利上昇に加え、2016年12月のFOMC
でFRBは政策金利を引き上げました。一方、日本は長短金利操作付き量的・質的金融緩和で金利上昇が抑制されていることか
ら、日米短期金利差が拡大し、また、12月は例年見られる年末越えによる米ドル資金需要の高まりという季節要因も為替ヘッジ
コストの上昇につながっています。
2017年1月に入れば、その年末越え要因は剥落することから、為替ヘッジコストは落ち着くものと思われますが、先行きも米国
が利上げを継続し、日銀が緩和的な金融政策を維持すれば、日米短期金利差が一段と拡大し、為替ヘッジコストの上昇に繋が
ることも考えられます。
今後も日米の金融政策、日本の投資家による為替ヘッジ付き外国債券投資動向、リスク回避の動きから派生する米ドル調達
コスト上昇などに注視する必要があります。
足もとの為替ヘッジコスト(対米ドル)の推移 (理論値と実勢値の比較)
8
(%)
6
4
(2006年1月4日~2016年12月15日、日次)
理論値-実勢値
実勢値:フォワードレート(1ヵ月)で算出した為替ヘッジコスト
理論値:日米短期金利(1ヵ月LIBOR)で算出した為替ヘッジコスト
(2016年12月15日現在)
2.45%(実勢値)
0.82%(理論値)
2
0
-2
06/1
08/1
10/1
12/1
14/1
※グラフ範囲外のデータを含みます。
(出所)Bloombergのデータを基に三井住友トラスト・アセットマネジメント作成
16/1 (年/月)
※上記は過去のデータであり、将来の運用成果を示唆あるいは保証するものではありません。
当資料は、三井住友トラスト・アセットマネジメントが作成したものであり、金融商品取引法に基づく開示書類ではなく、
証券取引の勧誘を目的としたものでもありません。当資料のお取扱いについては最終ページをご覧ください。
1/2
ご参考資料
【 ご留意事項 】
●当資料は三井住友トラスト・アセットマネジメントが投資判断の参考となる情報提供を目的として作成したもので
あり、金融商品取引法に基づく開示書類ではありません。
●ご購入のお申込みの際は最新の投資信託説明書(交付目論見書)の内容を必ずご確認のうえ、ご自身でご判断
ください。
●投資信託は値動きのある有価証券等(外貨建資産には為替変動リスクを伴います。)に投資しますので基準価
額は変動します。したがって、投資元本や利回りが保証されるものではありません。ファンドの運用による損益は
全て投資者の皆様に帰属します。
●投資信託は預貯金や保険契約とは異なり預金保険機構および保険契約者保護機構等の保護の対象ではあり
ません。また、証券会社以外でご購入いただいた場合は、投資者保護基金の保護の対象ではありません。
●当資料は信頼できると判断した各種情報等に基づき作成していますが、その正確性、完全性を保証するもので
はありません。また、今後予告なく変更される場合があります。
●当資料中の図表、数値、その他データについては、過去のデータに基づき作成したものであり、将来の成果を示
唆あるいは保証するものではありません。
●当資料で使用している各指数に関する著作権等の知的財産権、その他の一切の権利はそれぞれの指数の開発
元もしくは公表元に帰属します。
当資料は、三井住友トラスト・アセットマネジメントが作成したものであり、金融商品取引法に基づく開示書類ではなく、
証券取引の勧誘を目的としたものでもありません。
2/2