アジアREIT市場の動向と今後の 通し (2016年9 〜2016年11 )

2016年12月27日
アジアREIT市場の動向と今後の⾒通し
(2016年9⽉〜2016年11⽉)
足もとのアジアREIT市場 ~トランプ次期米国大統領決定による影響~
世界的な⾦利上昇を受け、⾹港・シンガ
ポールは⼀時下落
(図1)各国・地域のREIT指数の推移
(2015年11月30日~2016年11月30日、日次)
130
アジアREIT市場は、10月以降、米国の年内利上げ
観測の高まりやECB(欧州中央銀行)の量的金融緩
和を縮小するとの見方などを受けて欧米主要国の金 120
利が上昇基調で推移したことが嫌気され、軟調な動き
110
となりました(図1参照)。
⾹港
香港
118
⽇本
シンガポール
111
また、11月中旬にかけては、米国大統領選挙で勝
日本
100
106
利した共和党トランプ氏が掲げる減税・インフラ投資
シンガポール
⽶国
などの政策が米国の財政赤字拡大やインフレ率の上
米国
90
昇を招くとの見方を背景に、世界的に長期金利の上
106
昇圧力が高まる中、アジア金融市場からの資金流出
80
懸念の高まりなどを受け、他のREIT市場と比べて調
15/11
16/1
16/3
16/5
16/7
16/9 16/11 (年/月)
整幅がやや大きくなりました。しかしその後は、さらな
る金利上昇への警戒感がくすぶる一方、アジアREIT
※S&PグローバルREIT指数(現地通貨ベース、配当込み)の各国・地域
のデータを2015年11月30日を100として指数化
市場の下落による配当利回りの上昇や、今後の香港
(出所)S&Pダウ・ジョーンズ・インデックスのデータを基に三井住友トラス
の小売市況やシンガポールのオフィス市況の改善へ
ト・アセットマネジメント作成
の期待感の高まりなどから、アジアREITを買い戻す
動きも見られています。
アジアREITの業績は今後も安定的に
推移する⾒込み
(図2)1口当たり配当金の推移
(2012年11月末~2016年11月末、月次)
130
香港はREIT各社の業績が概ね堅調なことから、1口
当たり配当金は安定的に推移しています(図2参照)。 120
商業施設は、低水準の失業率・最低賃金の上昇など
良好な雇用・所得環境を背景に、生活必需品の取扱 110
いを中心とする保有物件の売上が底堅く推移してお
り、今後も安定的な業績が見込まれます。また、オフィ 100
スREITも概ね良好な需給環境が続く見通しです。
一方、シンガポールは1口当たり配当金にやや頭打
ちが見られます(図2参照)。小売市場の低迷や、物
流・産業用施設などにおける需給緩和などの懸念材
料がある一方、立地や設備状況など保有物件のクオ
リティの高さや、国内外での高利回り物件の取得によ
る収益への寄与が見込まれることから、全体としては
概ね安定した業績が続く見通しです。
⾹港
シンガポール
90
80
12/11
13/6
14/1
14/8
15/3
15/10
16/5
(年/月)
※1口当たり配当金は1口当たり実績配当金の直近12ヵ月合計、2012年11月
末を100として指数化(現地通貨ベース)
※香港はハンセンREIT指数、シンガポールはFTSE ST REIT指数
(出所)Bloombergのデータを基に三井住友トラスト・アセットマネジメント作成
※上記は過去のデータであり、将来の運用成果を示唆あるいは保証するものではありません。
当資料は、三井住友トラスト・アセットマネジメントが作成したものであり、金融商品取引法に基づく開示書類ではなく、
証券取引の勧誘を目的としたものでもありません。当資料のお取扱いについては最終ページをご覧ください。
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ご参考資料
不動産ファンダメンタルズ ~賃料と空室率~
賃料は⾹港・シンガポールとも頭打ちながらも業績への影響は限定的
香港の商業施設は、引き続き中国からの旅行客減少による影響から宝飾品など高級品を中心に小売売上高が
伸び悩んでおり、全体的な賃料はやや頭打ちとなっています。一方、REITに組み入れられている物件の取扱商
品は生活必需品の割合が多く、賃料は安定的に推移しています。オフィスは、中国本土の金融機関の香港への
進出などを受け、金融ビジネスの中心である中環地区を中心に賃料は高水準で推移しています(図3参照)。
シンガポールの商業施設は、国内外の景気減速の影響などから小売売上高の低迷が続いており、賃料はや
や頭打ち傾向が見られます。また、オフィスは2016年後半以降、大型物件の供給が相次ぐ中、市場全体では賃
料下落が続いていますが、主要なREIT各社は保有物件のクオリティの高さを背景に、供給増を見据え契約更
新の前倒しなどが相次いでおり、賃料下落による業績への影響は限定的と見られます(図4参照)。
(図3)香港賃料の推移
(図4)シンガポール賃料の推移
(2000年10-12月期~2016年7-9月期、四半期)
300
オフィス
250
商業施設
(2000年10-12月期~2016年7-9月期、四半期)
250
オフィス
商業施設
200
200
150
150
100
100
50
50
0
00/12
03/12
06/12
09/12
12/12
15/12
0
00/12
03/12
06/12
09/12
12/12
(年/月)
※【香港】オフィスは上環地区~中環地区、商業は公表元の選定基準に基づくエリア、【シンガポール】オフィス・商業は中央地区の全エリア
※2000年10-12月期を100として指数化
(出所)Bloombergのデータを基に三井住友トラスト・アセットマネジメント作成
15/12
(年/月)
シンガポールのオフィス空室率は⼤型供給の影響から⼀時上昇
香港のオフィス空室率は、中国系企業の進出が需要の下支えとなり、低水準にあります(図5参照)。シンガ
ポールは足もとで大型供給からやや上昇しておりますが(図6参照)、供給のピークである2017年第1四半期以
降は低下が見込まれます。
(図6)シンガポールのオフィス空室率の推移
(図5)香港オフィス空室率の推移
(2005年7-9月期~2016年7-9月期、四半期)
(%)
10
8
(2005年7-9月期~2016年7-9月期、四半期)
(%)
15
12
6
9
4
6
2
0
05/9
07/9
09/9
11/9
13/9
15/9
3
(年/月)
05/9
07/9
09/9
11/9
13/9
15/9
(年/月)
※Greater Central(上環・中環・金鐘地区エリア)
※中央地区の全エリア
(出所)Cushman & Wakefieldのデータを基に三井住友トラスト基礎
(出所)Bloombergのデータを基に三井住友トラスト・アセットマネジメン
研究所作成
ト作成
※上記は過去のデータであり、将来の運用成果を示唆あるいは保証するものではありません。
当資料は、三井住友トラスト・アセットマネジメントが作成したものであり、金融商品取引法に基づく開示書類ではなく、
証券取引の勧誘を目的としたものでもありません。当資料のお取扱いについては最終ページをご覧ください。
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ご参考資料
魅力的な配当利回りと株価純資産倍率 ~良好なバリュエーション水準~
⾼⽔準が続く配当利回りとリスクプレミアム
2016年11月末現在のアジアREITの配当利回りは、
足もとのアジアREIT市場の下落を受けて上昇し、シン
ガポールで6.5%、香港で4.5%とグローバルREIT市場
において相対的に高水準となっています(図7参照)。
REITの価格水準の割安・割高評価を行う際の尺度
の1つに「国債との利回り差=リスクプレミアム」があ
ります。一般的に、リスクプレミアムが拡大すると国債
に対するREITの投資魅力度が高まる一方、リスクプ
レミアムが縮小するとREITの投資魅力度が低下しま
す。
米国大統領選挙の結果を受けて米国の長期金利
が急騰し、アジア金融市場からの資金流出懸念が高
まった影響などから、アジア諸国でも国債が売られ、
シンガポールや香港の長期金利も上昇しました。
一方で、REITの配当利回りも同様に上昇しており、
リスクプレミアムは過去平均(2010年1月末~2016年
11月末の平均値)シンガポール3.7%、香港2.8%に比
べても、2016年11月末時点ではシンガポール4.2%、
香港3.1%と高く、引き続き魅力的な水準と考えられま
す(図8参照)。
(図7)各国・地域のREITと10年国債利回り比較
8
(2016年11月末現在)
(%)
REIT配当利回り
6.5
10年国債利回り
6
4.5
4.0
3.6
4
2.3
2.4
1.4
2
利回り差
3.1%
利回り差
4.2%
0
0.0
利回り差
1.7%
利回り差
3.6%
シンガポール
香港
日本
米国
※REITの配当利回りはS&PグローバルREIT指数の各国・地域の実績
配当利回り。データは小数点以下第2位を四捨五入しています。
(図8)香港・シンガポールREITと
10年国債利回りの格差(リスクプレミアム)の推移
(2010年1月末~2016年11月末、月次)
(%)
10
シンガポールREIT利回り
シンガポールリスクプレミアム
8
香港REIT利回り
香港リスクプレミアム
6
4
2
純資産価値に対して割安なバリュエーション
また、2016年11月末現在のPBR(株価純資産倍
率)*もシンガポールが0.95倍、香港が0.84倍と1倍
割れとなり、過去の平均(2010年1月末~2016年11
月末)と比べても割安な水準で推移しています(図
9参照)。
*PBR(株価純資産倍率)
株価(REIT価格)が1株当たり純資産の何倍かを⽰す指標
で、相対的に値が低いほど割安と判断されます。⼀般にPBRが
1倍であるとき、株価が解散価値(株主資本)と等しいとされ、
それ以下だと割安として扱われます。
※⾹港とシンガポールのPBRは時価評価を⽤いて算出される為、
NAV(Net Asset Value = 純資産価値)と同様の割安判
断指標として掲載しています。
0
10/1
11/4
12/7
13/10
15/1
16/4 (年/月)
※REITの配当利回りはS&PグローバルREIT指数の香港・シンガポール
の実績配当利回り。
(図9)香港・シンガポールREITのPBRの推移
割高 1.8
(倍)
(2010年1月末~2016年11月末、月次)
1.6
1.4
シンガポール
2010年1⽉末からの平均値1.05倍
2016年
11⽉末
1.2
シンガポ-ル
0.95倍
1.0
0.8
香港0.84倍
⾹港
2010年1⽉末からの平均値0.94倍
割安 0.6
10/1 11/1 12/1 13/1 14/1 15/1 16/1
※S&PグローバルREIT指数の香港・シンガポールのデータ
(年/月)
(出所)S&Pダウ・ジョーンズ・インデックスおよびBloombergのデータを基に三井住友トラスト・アセットマネジメント作成
※上記は過去のデータであり、将来の運用成果を示唆あるいは保証するものではありません。
当資料は、三井住友トラスト・アセットマネジメントが作成したものであり、金融商品取引法に基づく開示書類ではなく、
証券取引の勧誘を目的としたものでもありません。当資料のお取扱いについては最終ページをご覧ください。
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ご参考資料
<コラム> 香港の商業施設・シンガポールオフィスを取り巻く環境
⾹港⼩売売上回復の兆しと
REIT資産の安定性
(図10)香港の品目別小売売上高の推移
80
香港小売市場では、昨年来の中国人観光客の減
少と共に、小売売上高の伸び悩みが顕在化していま
すが、前年同期比でみると、今年第1四半期
▲12.5%、第2四半期▲8.2%、第3四半期▲7.5%と
徐々にマイナス幅を縮小しています。
衣類、靴類
宝石・時計・腕時計
百貨店
60
スーパーマーケット
耐久消費財
40
本格的な回復に入るのは2017年以降と見られます
が、香港REITが保有する資産は、生活必需品(図
10:スーパーマーケットおよび衣類、靴類)の取扱い
が中心であり、この環境下、売上回復の兆しが見ら
れます。
足もとでは小売業界から「緩やかながら回復の兆し
が見える」、「売上成長軌道へ回復」など各社で明る
い見通しを示しているほか、大手商業施設REITで
は、今年度更改の賃料が前回契約時(3年前比)から
比較して2桁の伸びを達成できる見込みであり、香港
小売市場の活性化が期待されます。
(2005年10-12月期~2016年7-9月期、四半期)
(%)
20
0
-20
-40
05/12
活気づくシンガポールオフィス
売買市場
07/8
09/4
10/12
14/4
15/12
(年/月)
※前年同期比
(出所)Bloombergのデータを基に三井住友トラスト・アセットマネジメント
作成
(図11)シンガポールの主な不動産取引例
今年6月、オフィス市場でCBD(セントラルビジネス地
区)の大型物件アジア・スクエア・タワー1(図11①参
照)について、約24.5億米ドル(約2,500億円※)で売買契
約が締結されました。夏場にかけてはインドネシアの
富豪がストレート・トレーディング・ビルディング(図11②
参照)を単位面積当たりの国内過去最高値で購入、11
月にマレーシアのデベロッパーが政府保有の土地(図
11③)を予想を上回る価格で落札するなどオフィス売
買市場が活況を呈しつつあります。
一方、オフィス賃料市場は2015年前半にピークをつ
けて以来、弱含む動きとなっています。年内にマリーナ
ワン(図11④参照)という大型物件が完成することもあ
り、現在は大型供給に伴う悪材料を消化するタイミング
に位置していますが、足もとで海外の金融・不動産や
ネット関連企業がオフィスを開設もしくは拡張する予定
が見られることや、2017年以降の限定的な供給量を勘
案すると、やがて賃料は安定してくるものと思われま
す。
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3
1
4
(出所)各種HP資料を基に三井住友トラスト・アセットマネジメント作成
※2016年6月30日の為替データを基に三井住友トラスト・アセットマネジメントが円換算しています。
※上記は過去のデータであり、将来の運用成果を示唆あるいは保証するものではありません。
当資料は、三井住友トラスト・アセットマネジメントが作成したものであり、金融商品取引法に基づく開示書類ではなく、
証券取引の勧誘を目的としたものでもありません。当資料のお取扱いについては最終ページをご覧ください。
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ご参考資料
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● 当資料は三井住友トラスト・アセットマネジメントが投資判断の参考となる情報提供を目的として作成したもので
あり、金融商品取引法に基づく開示書類ではありません。
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● 当資料で使用している各指数に関する著作権等の知的財産権、その他の一切の権利はそれぞれの指数の開
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