Forex 株式会社 ジャパン エコノミックパルス Market Insight 平成28年7月4日(月) 〒107-0052 東京都港区赤坂1-14-5 Tel 03-3568-2973 Fax 03-3568-2977 www.j-pulse.co.jp [email protected] 英国懸念と円高の一服、持続性を模索 各国政策と金利低下の行方、米雇用統計など焦点 今週の為替相場は、円高一服の持続性をにらんだ展開が予想されよう。週間予想 はドル/円が101.50-104.30円、ユーロ/円が112.50-117.10円。6月23-24日の英 国におけるEU離脱を問う国民投票では離脱支持多数となり、リスク回避の円高が加 速されたが、その後は各国の政策期待や、実際の離脱には時間を要するという冷静 判断などでリスク回避が後退している。引き続き政策対応のほか、政策期待や安全 逃避で急低下してきた国内外の長期債金利動向(国債価格は高騰)、米雇用統計など が焦点になる。 米ISMで仕入れ価格が急上昇、金利低下に歯止め余地も 「英国によるEU離脱の選択を受け、トレーダーは米FRBによる利上げの可能性を 過小評価し過ぎている」――。 世界最大の債券ファンドである米PIMCOは6月30日、このような分析レポートを取 りまとめた。そのうえで過度なインフレ低迷と利上げ遅延への楽観見通しが反転す る場合に備えて、インフレ連動債の購入を推奨している。 一般的には英国問題の不透明さや、安全逃避による対円以外でのドル高、米大統 領選の不透明感などにより、米国経済には減速警戒が高まっている。FRBの金融政 策については、利上げの来年以降への遅延のみならず、「利下げや量的緩和(QE) 再開も非現実的ではなくなってきた」(米国の大手金融機関幹部)。引き続きFRBの 利上げシナリオ修正が、ドル/円でのドルの戻り売り材料となりやすい。 一方で7月1日に公表された米国経済の重要先行指標であるISM製造業景況指数 は、最新6月に53.2と予想の51.3を大きく上回る改善となった。まだ英国問題は反 映されていないものの、2015年2月以来の高水準を回復している。今週の米国では5 日に耐久財受注、8日に雇用統計といった重要指標が続くため、少しでも底堅さが 示されると、過度な利上げ遅延見通しが修正される余地が残されている。 すでに米国債市場では利上げ遅延観測と安全逃避により、米国債金利が大幅な低 下となってきた(債券価格は高騰)。それがドル/円ではドル安圧力となっている が、過熱調整が入ると短期的にドルの反発を促す可能性をはらむ。 例えば米30年債金利は1日、一時2.18%に切り下がり、過去最低を更新する場面 があった。その中で過熱感を示すRSI指数(相対力指数)は週足ベースで27.45%と なり、下限の節目である30%を割り込んでいる。過去には2015年1月に21%、ギリ シャ債務危機などがあった2011年9月に21%、リーマン・ショック直後の2008年12 月に18%へと急低下する場面があった。そろそろ金利低下のスピード面で行き過ぎ 過熱が警戒されつつあり、反動調整には注意を要する。 米国債金利に影響を及ぼすインフレ指標でいえば、最新6月のISM製造業景況指数 で「仕入れ価格」が60.5となり、前月の63.5に続く2014年1月以来の高水準となっ た。原油反発などを受けて、昨年12月から今年1月の33.5をボトムに2倍以上もの急 上昇となっている。タイムラグを経て物価指標の押し上げと米債金利の下げ止まり を支援しやすい。ちなみに前回の60超えとなった2014年1月以降にドル/円は、現在 と同じような101-104円を中心としたレンジ内でのドル安定化が、同年8月にかけ 1 Market Insight て維持された。その他の注目ポイントは以下の通り。 <米雇用統計などの経済指標> 今週の米国指標については、まだ英国のEU離脱問題が反映されておらず、あくま で参考データにとどまる。それでも最新6月のISM製造業景況指数は大幅改善となっ ており、他の指標も金利低下などを受けた底堅さが注目されそうだ。5日の耐久財 受注は前月までの悪化の反動や、自動車販売の改善傾向、原油反発を受けた資源エ ネルギー会社の打撃一服などが支援材料となる。 最大の注目は8日の6月雇用統計だ。5月は通信大手の大規模ストライキのほか、 1-3月に季節調整で底上げされた反動や天候要因などで大幅な悪化となっている。 その分だけ、反動改善が期待されやすい。先行指標である週間の新規失業保険申請 件数は、米6月雇用統計のサンプル週である6月18日週に25.9件と、予想の27.0万件 を下回った(失業者は減少)。前週の27.7万件から大きく減少し、4 月23日週以来の 低水準に改善している。賃金は構造的な低迷が想定されるが、5月以降は小売関連 指標の上振れが目立っており、最低賃金の引き上げなどを受けた緩やかな修復が注 視されそうだ。 <各国の政策動向> 英国のEU離脱問題を受けて、英国や欧州などでは政策期待が高まっている。中銀 による流動性供給の強化や先行き緩和強化の地ならし、銀行安定化、減税などの対 応準備が見られており、こうした期待感の賞味期限が焦点となる。前週には欧州中 銀(ECB)が早期の緩和措置強化を打ち消しており、過度な英国懸念の一服が、各 国政策当局の弛緩・慢心を招くリスクにも注意を要する。 なお、前週までは各国での政策期待やFRBの利上げ遅延観測により、新興国市場 や資源相場には資金流入が見られた。為替相場でもNZドル、カナダ・ドル、南アフ リカ・ランドといった資源国通貨や新興国通貨が自律反発となっており、こうした 通貨の戻り反発の度合いも注目されよう。 <豪州の総選挙と中銀会合> 豪州では2日に上下両院総選挙が行われたが、与野党の大接戦となり、大勢判明 米30年債金利、週足RSI指数(過熱感を示す、単位;10%)、ドル/円 6.5 6.0 5.5 5.0 4.5 4.0 3.5 3.0 2.5 2.0 Mar-16 Nov-15 Jul-15 Feb-15 ドル/円(右軸) Oct-14 RSI(左軸) May-14 Jan-14 Sep-13 Apr-13 米30年債(左軸) Dec-12 Aug-12 Mar-12 Nov-11 Jul-11 Feb-11 Oct-10 May-10 Jan-10 Sep-09 Apr-09 Dec-08 Aug-08 Mar-08 % 10% 120 115 110 105 100 95 90 85 80 75 円実効相場の月足・一目均衡表(英国中銀算出、軸を上下反転) ドル/円 100 110 円高 ↓ 120 130 140 雲 150 160 円安↑ 円高↓ 170 180 Oct-17 Sep-16 Aug-15 Jul-14 Jun-13 May-12 Apr-11 Mar-10 Feb-09 Jan-08 Dec-06 Nov-05 Oct-04 Sep-03 Aug-02 Jul-01 Jun-00 May-99 Apr-98 Mar-97 Feb-96 Jan-95 禁無断転載・転送 円実効(左軸) 先行スパン1 先行スパン2 ドル/円(右軸) 雲 攻防 円 135 130 125 120 115 110 105 100 95 90 85 80 75 70 65 60 円 2 Market Insight は5日以降に持ち越されている。どの党も過半数を取れない「ハングパーラメント (宙づり議会)」が現実味を帯びてきたことで、政治不安定化が豪ドルの戻り売り 要因として警戒される。 また、豪州では5日に豪中銀の政策委員会が予定されている。英国民投票後、豪 州でも市場混乱は一服となってきた。その流れから当面の様子見や追加利下げの慎 重姿勢が示されると、短期的な豪ドル高材料となる可能性がある。 <円高・債券高の過熱警戒> 世界的に金融緩和期待や安全逃避などで長期金利の低下(国債価格は急騰)が加 速するなか、日本では債券高・円高の圧力が持続している。外国人投資家による日 本国債投資で判断材料となる「ドルベースでの日本の債券価格指数」は、過去最高 値を一気に上抜ける騰勢となってきた。日本の債券価格指数(ブルームバーグ・ EFFAS=欧州証券アナリスト協会連合会の債券指数、10年以上)は6月27日、ドル換 算で4.453ドル前後となり、前回高値である2011年時の4.22ドル前後を大きく上 回っている。 一方で昨年末の3ドル前後から、+43%もの急騰となってきたことで、テクニカ ルでは過熱警戒が高まってきた。200日移動平均線3.55ドルからの上方乖離率は、 実に+26%を超える場面が見られている。過去には1995年4-5月以来という、記録 的な上方乖離となってきた。1995年4月といえばドル/円が79.75円前後と当時のド ル最安値(円は最高値)をつけたあと、ドルが底入れ反発に転じている。現在は当 時に比べるとドル安・円高のクライマックス的な過熱感や、日米間での政策協調の 機運は乏しいものの、円高と日本の国債価格急騰の自律調整的な揺り戻しには注意 を要しよう(円安要因)。 おりしも米国のウォールストリート・ジャーナル紙は、4日付けの社説で「円の 急騰と財政の脆弱性が再び視野に入ってきた日本からは目を離さないほうがいい」 と警告を発した。その中では「日本での国債の大口購入者は今、円高を見込んでい る外国勢であり、日本の銀行や保険会社のように長期的に保有する公算は小さい。 外国勢は円高の期待が外れれば、大量に国債を売るだろう。そうなれば利回りは急 伸する。理論的には、日銀が低い利回りを維持するために国債買い入れを増やすこ とはあり得る。だが、それは日銀が日本の公的債務をマネタイズ(貨幣化)してい るとの解釈につながりかねず、市場の懸念を強めることになりそうだ」と警戒感を 示している。 NZドル/円と韓国ウォン/円(×100) 月足の一目均衡表 85 80 75 70 65 60 55 50 45 雲の 攻防 雲 平時下限 Feb-18 Feb-17 Feb-16 Feb-15 Feb-14 Feb-13 Feb-12 Feb-11 Feb-10 Feb-09 Feb-08 Feb-07 Feb-06 Feb-05 NZドル/円(左軸) 先行スパン1=79.43 先行スパン2=72.41 ウォン/円(右軸) 先行スパン1 先行スパン2 Feb-04 Feb-03 Feb-02 Feb-01 Feb-00 Feb-99 Feb-98 Feb-97 Feb-96 円 雲 18 17 16 15 14 13 12 11 10 9 8 7 6 円 お客様は、本レポートに表示されている情報をお客様自身のためにのみご利用するものとし、第三者への提供、再 配信を行うこと、独自に加工すること、複写もしくは加工したものを第三者に譲渡または使用させることは出来ま せん。情報の内容については万全を期しておりますが、その内容を保証するものではありません。また、これらの 情報によって生じたいかなる損害についても、当社および本情報提供者は一切の責任を負いません。本レポートの 内容は、投資一般に関する情報の提供を目的としたものであり、勧誘を目的としたものではありません。投資にあ たっての最終判断はお客様ご自身でお願いします。 禁無断転載・転送 3
© Copyright 2025 ExpyDoc