Forex 株式会社 ジャパン エコノミックパルス Market Insight 平成29年2月27日(月) 〒107-0052 東京都港区赤坂1-14-5 Tel 03-3568-2973 Fax 03-3568-2977 www.j-pulse.co.jp [email protected] ドル安・円高の持続と潮流変化をにらむ 米大統領とFRB議長発言、英欧不安、米中指標など焦点 今週の為替相場は、ドル安・円高の持続性と潮流変化をにらんだ展開が想定され よう。週間予想はドル/円が111.30-113.80円、ユーロ/円が116.70-119.80円。今 週の米国では28日にトランプ大統領の演説、3月3日にイエレンFRB議長の講演が予 定され、内容次第でドル安持続とドル反発の両リスクをはらむ。一方で高値警戒感 がくすぶる米国株の動向や英国のEU離脱とスコットランド独立問題、仏大統領選な どの欧州政治不安、米国や中国での経済指標――といった材料に一喜一憂の不安定 さが続く。 米国の国防費増強や資源開発支援、金利上昇要因 「ドル/円の予想変動率を示す1週間物インプライド・ボラティリティ(IV)で は、2月27日から3月3日週に変動率の抑制が示唆されており、73%の確率で1ドル= 110.43円から113.95円のレンジにとどまる可能性が示されている」――。 ブルームバーグのストラテジストは27日、このような分析を行っている。今週は 28日にトランプ米大統領の議会演説、3月3日にイエレン米FRB議長の講演が予定さ れており、米国の財政・金融政策の行方を見極める様子見ムードが広がりやすい。 財政政策に関しては23日、ムニューシン米財務長官が「財政出動による今年の景 気影響は限定的」、「税制改革は8月までに議会を通過させる方針だが、年後半に ずれ込む可能性もある」などと発言し、過度な期待感が後退している。現状ではト ランプ演説も失望が見込まれており、米国債金利の低下(債券価格は上昇)とドル 安、米国株の過熱調整下落とリスク回避の円全面高を警戒した地合いが続く。 一方でトランプ大統領は近いうちに議会に提出する予算教書で、国防費の大幅増 額を提案するとともに、環境保護局(EPA)などの予算を大幅に削減する方針と なってきた。軍備関連の投資増強や、環境保護見直しと裏表の資源エネルギー開発 の促進は、潜在的なインフレ要因となるものだ。米国債金利の一段の低下を制御さ せるもので、ドル安のブレーキ要因となりやすい。 しかもトランプ政権は支持率が大きく低下し、メディアとの対決姿勢を激化させ るなか、政権の実行力をアピールするうえで「有言実行の景気浮揚と雇用・賃金の 底上げ」という成果作りの重要性が高まってきた。トランプ大統領が多種多様な政 権批判を打ち負かすため、28日の演説では実際に「驚くべき」(9日のトランプ氏 発言)減税などの政策プランを打ち出す可能性も残されている。 また、米国では政策期待の剥落とともに、米FRBによる3月15日の利上げ観測も大 きく後退してきた。しかし、最新2月の米ミシガン大学消費者信頼感指数では「1年 後のインフレ期待」が2.7%となり、1月の2.6%からは上昇している。昨年12月の 2.2%をボトムとして、昨年4月以来の高水準を回復してきた。米国では株高や金融 規制緩和への期待感などで局地的なバブルの芽もあり、3月3日にイエレン議長が利 上げペース加速の警鐘を発する可能性も無視できない。 その中で米国の長期インフレ動向が反映される米30年債金利は、上昇一服ながら 低下幅も抑制されている。月足テクニカルの一目均衡表チャートでは、3月にかけて 1 Market Insight 雲の下限2.98%を上抜け定着できるか否かの重要攻防に直面してきた(24日終値は 2.95%)。過去実績として米30年債金利が月足の雲下限を上抜けしたり、雲下限に絡み合 う下げ止まりが続く局面では、ドル/円でもドルが下げ止まりから下限切り上がりに向か うパターンが観測されている。その他の注目ポイントは以下の通り。 <米FRBのマネーサプライ伸び鈍化> 米FRBの金融政策ではバランスシートの縮小論議が注目され始めたが、すでに通 貨供給量を示すマネーサプライは伸び率が鈍化してきた。あくまでも前年比でのテ クニカルな反動回復一服や金利上昇などによる銀行貸し出しの伸び鈍化が影響した ものだが、最新2月13日週はマネーサプライM1が単純52週前比(前年比)で+7.6% となり(前週は+8.5%)、1月30日週の+10.5%をピークにプラス幅が縮小してい る。M2も+6.3%となり、1月2日週の+7.1%で拡大一服となってきた。 M1でいえば昨年10月から+12%方向へと急増し、トランプ新政権での政策期待 とは別要因で米国株の最高値更新をサポートしてきた。背景としては政策期待や景 気回復などによる銀行貸出の増加やマネー回転の活発化、2015年12月の利上げから の「前年比」引き締め効果一段落、FRBによる短期金利の上昇抑制に向けた資金供 給の増強などが取り沙汰されている。 それに対して足元のマネーサプライ伸び鈍化は、米国株の調整下落の材料やリス ク回避の円高要因として警戒されるものだ。一方で過去実績として米国でのマネー サプライ減少は、「ドルのだぶつき化(ドル供給)」から「ドルの引き締まり(ド ル吸収)」へと作用し、ドル/円ではドルが下支えされたり、ドル高が後押しされ るパターンが繰り返されている。 <英国のEU離脱とスコットランド独立問題> 英国のサンデー・タイムズ紙は26日、「スコットランド行政府が22日の英政権と の非公式協議で、英国からの離脱の賛否を問う2回目の国民投票の問題を取り上げ た」と報じた。3月からは英国自身によるEUとの離脱交渉が本格化するが、同時進 行でスコットランドの独立問題が新たな火種となってきた。為替相場ではポンド安 要因となるほか、おりにふれてリスク回避の円高材料となる可能性を秘めている。 <仏大統領選やオランダ総選挙などの欧州政治リスク> 欧州では5月のフランス大統領選挙に向けて、極右政党を率いるルペン候補の躍 進が警戒される。3月15日のオランダ議会選でもEU離脱派が台風の目になってお り、欧州の政治不安はユーロ安やリスク回避の円高材料としてくすぶる。欧州では ギリシャによる7月の債務返済期限にかけて、ギリシャ危機の再燃リスクも残され ている。 <米国の経済指標> 米国の経済指標は良好な数字が続いているが、すでに織り込みが進捗してきた。 最新2月指標からは、政策期待の息切れや金利上昇・ドル高・資源高によるマイナ ス影響が警戒される。2月指標となる28日のシカゴPMIや消費者信頼感、3月1日と3 米30年債金利の月足・一目均衡表、ドル/円 ミシガン大学消費者信頼感指数 1年後のインフレ期待 5.0 4.5 4.0 ※雲定着 攻防 3.5 雲 3.0 2.5 2.0 ↑期待改善 Sep-18 Feb-18 Jul-17 Dec-16 May-16 Oct-15 Mar-15 Aug-14 Jan-14 Jun-13 Nov-12 Apr-12 Sep-11 Feb-11 Jul-10 Dec-09 May-09 Oct-08 Mar-08 Aug-07 Jan-07 Jun-06 禁無断転載・転送 Nov-05 % 米30年債(左軸) 先行スパン1=2.98 先行スパン2=3.50 インフレ期待 ドル/円(右軸) 120 115 110 105 100 95 90 85 80 75 円 2 Market Insight 日のISM製造業・非製造業景況指数に関しては、前月までの改善の反動鈍化のリス クをはらむ。 一方、FRBの金融政策との関係では、3月1日のPCE(個人消費支出)デフレーターが注 目される。資源高や中国など世界的な過剰供給の一服、米国での雇用拡大により、物価 上昇の前兆シグナルが見られるとFRBの利上げペース加速につながってくる。 <中国の経済指標と全人代、海運指数> 今週の中国では3月1日に2月のPMIが公表される。製造業については人民元安や世 界経済の回復、資源反発、インフラ投資期待などがサポート要因となりそうだ。非 製造業は資本流出や物価上昇、不動産引き締め策などが重石となるが、旧正月を受 けた消費増加が悪化の歯止め要因となる。 中国に関しては、3月5日からの中国共産党による全国人民代表大会(全人代=国 会)が開会する。米トランプ政権による貿易黒字削減圧力もあり、インフラ投資な どの内需拡大策が焦点となっていく。現在は調整下落となっている資源相場や資源 国通貨(南アフリカ・ランド、豪ドル、NZドル、カナダ・ドルなど)についても、 下支え要因として注目されやすい。 その中で世界的なリスク選好や資源相場に先行するバルチックドライ海運指数 は、昨年11月18日を直近高値とした先行調整の急落を経て、2月14日の685ポイント を底値に底入れ機運が見られ始めた。先行き予断は許さないが、24日には875ポイ ントと1月24日以来の高値を回復しており、先行する形での悪材料消化が示唆され ている。週足テクニカルの一目均衡表では、3月10日週にかけて変化週を示す雲の ネジレ(634-658水準)が視界に入り始めた。3月5日からの中国全人代への期待感 などもあって、海運指数には雲ネジレの上抜け通過期待が高まっている。 過去に海運指数が長期下落から上昇転換したあとは、タイムラグを経てリスク選好相 場へと移行し、為替相場でも円ショート(売り持ち)ポジションの拡大を含めた円安が 後押しされてきた。現在は昨年11月から急膨張してきた円ショートの解消による円買い 圧力が続いているが、先行き整理一段落と円売り再開が注目されそうだ。 90 米FRBの週間マネーサプライ M1とM2の52週前比(1年前比) ドル/円(軸を上下反転) 12 11 ※↓ 10 95 100 9 105 8 7 110 6 115 5 ドル供給・ドル安↑ ドル吸収・ドル高↓ 4 米マネーサプライ 伸び縮小 3 Feb-17 Dec-16 Oct-16 Aug-16 Jun-16 Apr-16 Feb-16 ドル/円(右軸) Nov-15 M2(左軸) Sep-15 Jul-15 May-15 Mar-15 Jan-15 Nov-14 Sep-14 Jul-14 May-14 Mar-14 Jan-14 Nov-13 Sep-13 Jul-13 % M1(左軸) 120 125 円 お客様は、本レポートに表示されている情報をお客様自身のためにのみご利用するものとし、第三者への提供、再 配信を行うこと、独自に加工すること、複写もしくは加工したものを第三者に譲渡または使用させることは出来ま せん。情報の内容については万全を期しておりますが、その内容を保証するものではありません。また、これらの 情報によって生じたいかなる損害についても、当社および本情報提供者は一切の責任を負いません。本レポートの 内容は、投資一般に関する情報の提供を目的としたものであり、勧誘を目的としたものではありません。投資にあ たっての最終判断はお客様ご自身でお願いします。 禁無断転載・転送 3
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