Forex 株式会社 ジャパン エコノミックパルス 〒107-0052 東京都港区赤坂1-14-5 Tel 03-3568-2973 Fax 03-3568-2977 www.j-pulse.co.jp [email protected] Market Insight 平成28年5月23日(月) ドル反発と円反落、持続性を吟味 米6月利上げの確度焦点、サミットなども注目 今週の為替相場は、ドル反発と円反落の「持続性」を吟味する展開が続く。週 間予想はドル/円が108.80-111.30円、ユーロ/円が121.80-124.90円。前週から は米FRBによる6月利上げ観測の高まりがドル高を支援しているが、実際の利上げ までには紆余曲折が想定されるほか、FRBの利上げは米国株や世界株、原油相場 などに打撃となり、リスク回避の円高要因にもなる。今週は米国の経済指標や FRB幹部の発言を踏まえたFRBの6月利上げ確度の見極めや、伊勢志摩サミットに 向けた政策動向などが焦点となる。 米10年債金利、13週線「上抜け」と「上向き」の基調転換 ドル/円の中期トレンド判断で参考になる週足テクニカルでは、一目均衡表の 転換線109.68円前後、6週移動平均線109.06円前後、180週移動平均線108.57円前 後などの上抜け回復を巡る攻防となってきた。これから上下動を経ながらも、上 抜け定着できるとドル安の圧力が一服。各ラインなどでの下値固めを経て、先行 き基準線114.62円前後、40週(200日)移動平均線116.68円前後(先行き切り下が り)の方向を試す可能性を秘めている。 当座のドル/円を左右するのが、6月14-15日の米FOMCに向けたFRBの利上げ動 向だ。前週からは18日のFOMC議事要旨やFRB幹部の発言などで、利上げ遅延の楽 観論が後退し、前倒し警戒が高まっている。米CMEグループによると議事要旨以 降、市場が予想する次回利上げ時期は9月から7月にシフトした。FF金利先物市場 が織り込む6月の利上げ確率は現在30%で、議事要旨公表前の19%から上昇して いる。今後の経済指標やFRB幹部の発言次第では、利上げ確率の伸びシロがドル の上値余地として着目されやすい。 FRBの利上げ警戒と米国の指標改善などを受けて、米国の10年債金利は下げ止 まりに移行してきた(債券価格は上げ渋り)。前週末には1.83%前後で終了した が、13週移動平均線1.82%の上抜け攻防に直面している。しかも13週線の方向性 は、微妙な上向きへと向かい始めた。このまま13週線の「上抜け」と「上向き 化」が定着してくると、実に昨年12月以来の現象となる。同時期から加速されて きたドル安・円高のトレンド一服が支援されやすい。 前回、米10年債金利が13週線の上抜けと上向きとなった基調転換には、2015年 10月があった。当時のドル/円は、118円から123円方向までドル高ラリーが形成 されている。その前には2015年5月から観測されたが、ドル/円は118円から125円 方向までドル高が進む局面があった。 もっともFRBの利上げ警戒の高まりは、米国債金利の上昇やドル高の併発とあ いまって、米国株にはマイナス材料となる。新興国株などの世界株や原油相場に も打撃となり、またぞろリスク回避の円高や資源国通貨安(豪ドル安、NZドル 安、カナダ・ドル安など)を誘発させる側面を有している。現在の欧州では6月 23日に英国でEU離脱を問う国民投票が予定されており、この問題もドル高と裏表 でのポンド安、ユーロ安が、クロス円でのリスク回避の円高を助長させるシナリ オも無視できない。 1 Market Insight ただし、為替相場では年明け以降、「米FRBの利上げペース慎重化」や「英国 のEU離脱リスク」、「2016年の中国を始めとした世界減速」といった複合要因を 織り込む形で、投機的な円ロング(買い持ち)ポジションが膨張してきた。シカ ゴIMMの投機的な円ポジション(非商業部門、国際通貨市場)では、最新5月17日 時点で+5万8919枚のネット・ロングが積み残されている。前週の+5万9047枚や 過去最高水準となった4月19日週の+7万1870枚からは円の買い持ちが減少してき たものの、依然として大規模な円ロングが残存したままだ。 今後は海外勢の6月決算対策とあいまって、リスク回避でも「新規の円ロング 積み増し」よりは、6月の不透明材料に備えたポジション中立化や利益確定など の手仕舞い圧力が増大。円ロング整理と円の売り戻しに作用する潜在エネルギー が残されている。その他の注目ポイントは以下の通り。 <IMMの円ロング膨張、整理の円売り余地> 前回、シカゴIMMで円ロングが急拡大した局面には2007年以降があった。当時 は円ショートから円ロングが急膨張したあと、2008年3月の+6万5920枚で一旦の 円買いピークと、ポジション調整へと転換している。当時のドル/円は2008年3月 の95.78円前後をドルの底値として、同年8月の110.67円方向まで、+15円近いド ルのリバウンド反発(円反落)が観測されている。 その後の円ロング整理局面でも、2009年1月の1ドル=87.12円前後から同年4月 の101.50円方向まで、約+14円のドル反発が進展した。それ以降も基本的なドル 安・円高のトレンドが続く中にあって、「円ロング調整相場」では2009年11月か ら2010年5月にかけて約+10円、2011年10月から2012年3月にかけて約+9円と いったドル反発(円反落)パターンが見られてきた。 <米国の経済指標> 米国の経済指標は強弱混在が続いているが、最近は改善指標に敏感となるケー スが目立ち始めた。今週は24日の新築住宅販売、26日の新規失業保険申請件数、 26日の耐久財受注などで底堅さが注目されやすい。一方、26日の中古住宅販売成 ドル/円;9週移動平均線を中央値のボリンジャーバンド 週足ADX指数(トレンドの強さを示す) 125 123 121 119 117 115 113 111 109 107 105 103 ↑ 上抜け攻防 May-16 Apr-16 Mar-16 Feb-16 Jan-16 Dec-15 Nov-15 Oct-15 Sep-15 Aug-15 Jul-15 Jul-15 Jun-15 May-15 Apr-15 ドル/円(左軸) バンド上限=112.72 9週線=109.22 バンド下限=105.71 ADX(右軸) Mar-15 Feb-15 Jan-15 Dec-14 Nov-14 Oct-14 円 ドル安基調 勢い鈍化 ↓ % ユーロ/円、カナダ/円、ノルウェー・クローネ/円(×10) ブラジル・レアル/円(×2) 170 160 95 90 85 80 75 70 65 60 55 150 140 130 120 全般下げ渋り↑ 110 ユーロ/円(左軸) 100 May-16 Apr-16 Mar-16 Feb-16 Jan-16 Dec-15 Nov-15 Oct-15 ブラジル/円(右軸) Sep-15 カナダ/円(右軸) Aug-15 Jul-15 Jun-15 May-15 Apr-15 禁無断転載・転送 Mar-15 円 ノルウェー/円(左軸) 46 43 40 37 34 31 28 25 22 円 2 Market Insight 約指数は、前月の改善の反動悪化が警戒される。27日の1-3月GDP改定値につい ても、年初の世界減速懸念や大雪、原油安のマイナス影響などを受けた伸び悩み が懸念されそうだ。 なお、米国経済の先行指標であるコンファレンスボードの米国景気先行指数で は、最 新 4 月 に「直 近 6 カ 月 間 ベ ー ス の 年 率 比」が + 1.1% と な っ た。前 月 の + 0.8% や 直 近 最 低 で あ る 1 月 の + 0.3% か ら 改 善 し て お り、2014 年 7 月 の+7.5%を直近最高とした景気停滞の底入れが示唆されている。過去にはドル/ 円でのドルの底入れとも符合しており、米国の経済ファンダメンタルズ面でのド ル安一服が支援されやすい。 <FRB幹部の発言> 今週の米国市場ではFRB幹部による講演などが相次ぐ。改めて6-7月に向けた 利上げ地ならしを前進させると、ドルの下値固めを支援しやすい。最大の注目は 27日のイエレンFRB議長の講演だ。米国では2月から原油が底入れ反発しており、 過去の経験則でいえば、半年程度のタイムラグで消費者物価指数(CPI)の押し 上げに作用する可能性をはらむ。実際に6-7月のFRB利上げはまだ微妙ながら、 今後の経済指標次第での「利上げ急ブレーキ」という市場混乱を回避させるた め、イエレン議長が6-7月の「可能性としての利上げ余地」を示唆する地ならし 準備には注意を要する。 <伊勢志摩サミットに向けた政策期待> 今週は26-27日に伊勢志摩サミットが開催される。前週末の仙台G7財務相・中 銀総裁会合では、財政出動の政策協調が不調に終わっている。サミットでも財政 出動の合意は困難であり、政策失望が短期的なリスク回避の円高・株安を促す展 開は無視できない。ただし、議長である安倍晋三首相は現在、「財政出動だけで なく、金融政策と構造改革をセットにして世界経済を支える『G7版3本の矢』で の合意取り付け努力」に奮闘している。日本では7月に参院選、場合によっては 衆参同日選の可能性が予定されており、日本が率先する形での景気対策の地なら し強化が、円安・株高を後押しさせる可能性も注視されよう。 米国のコンファレンスボード景気先行指数 6カ月・年率比、ドル/円 12 10 8 6 4 2 0 -2 -4 -6 先行指数は底入れ Jun-16 Jun-15 Jun-14 Jun-13 ドル/円(右軸) Jun-12 先行指数(左軸) Jun-11 Jun-10 Jun-09 Jun-08 Jun-07 Jun-06 Jun-05 Jun-04 Jun-03 Jun-02 Jun-01 Jun-00 Jun-99 Jun-98 Jun-97 Jun-96 Jun-95 Jun-94 Jun-93 % ↑ 140 130 120 110 100 90 80 70 60 円 お客様は、本レポートに表示されている情報をお客様自身のためにのみご利用するものとし、第三者への提供、再 配信を行うこと、独自に加工すること、複写もしくは加工したものを第三者に譲渡または使用させることは出来ま せん。情報の内容については万全を期しておりますが、その内容を保証するものではありません。また、これらの 情報によって生じたいかなる損害についても、当社および本情報提供者は一切の責任を負いません。本レポートの 内容は、投資一般に関する情報の提供を目的としたものであり、勧誘を目的としたものではありません。投資にあ たっての最終判断はお客様ご自身でお願いします。 禁無断転載・転送 3
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