Forex 株式会社 ジャパン エコノミックパルス 〒107-0052 東京都港区赤坂1-14-5 Tel 03-3568-2973 Fax 03-3568-2977 www.j-pulse.co.jp [email protected] Market Insight 平成26年10月20日(月) 円売り戻し「持続性」をにらむ 米指標と決算、日米欧の政策対応、欧中指標など焦点 今週の為替相場は、リスク回避の一服による円売り戻しの持続性をにらんだ展開 が 想 定 さ れ よ う。週 間 予 想 は ド ル / 円 が 106.20 - 108.70 円、ユ ー ロ / 円 が 135.30-137.70円。引き続き世界減速懸念やエボラ熱の感染拡大リスクなどによる 市場の不安定化は警戒されるものの、米国の経済指標や決算発表の底堅さ、日米欧 の政策期待などが混乱の歯止め要因として注目されやすい。 VIX指数、2011年以降の上限到達 リスク回避の尺度となり、米株投資家の不安心理を映すシカゴ・オプション取引 所(CBOE)ボラティリティー(VIX)指数は前週15日、一時31.06ポイントと2011年 11月以来の高水準に急上昇した。しかし、週後半にかけては信用不安が後退し、週 末17日は21.99と大幅低下で終了している。 長期トレンド判断で参考になる月足テクニカルでは、一目均衡表チャートの雲の 下限25.59で一旦は上昇がブロックされている。雲の下限は2011年から強力な上限 抵抗ラインとなってきたほか、前回の雲下限の上抜け突破はサブプライム危機が本 格化した2007年7月から観測された。現在はサブプライム危機のような金融経済危 機までは想定されておらず、VIX指数の当座の上限到達とリスク回避の後退、それ に伴う円売り戻しの持続性が注目されよう。 ただし、VIX指数は20台と2月以来の高水準にあることは変わりなく、引き続き市 場変動率(ボラティリティー)の高まりは警戒されやすい。しかも短期テクニカル でVIX指数は、16日の日中最低24.61から17日の日中最高は23.08とギャップ(隙 間)を空けての急低下となっている。ちょっとした悪材料が出てくると、その隙間 を埋める「窓埋め」のVIX再上昇と米株安・円高に振れる脆弱性は残されている。 一方で2007-2013年までに繰り返されてきた「リスク回避の円高」局面に比べる と、米国では金融経済の正常化が進んできた。10月以降は世界減速懸念やエボラ熱 感染リスク、米株急落による資産効果の減殺などから、米国経済の失速が警戒され ているが、17日に公表された最新10月のミシガン大学消費者信頼感指数・速報値は 86.4となり(前月84.6、予想84)、2007年7月以来の高水準に改善している。前週 は米国の鉱工業生産や設備稼働率、住宅着工件数なども市場予想を上回っており、 米国経済の底流部分での抵抗力強化がドルの押し目買いや円の戻り売り地合いを支 援していく。 しかも米国経済には先行き「年末商戦」と「年末商戦向け臨時雇用」というプラ ス材料が控えている。足元のガソリン、暖房油などの資源エネルギー価格や食品価 格の急落もあり、世界減速に対しての米国の内需の打たれ強さが注目されやすい。 前週は米セントルイス連銀の総裁が量的緩和(QE)の延長を示唆するなど、一段の 株安激化や景気減速の場合の柔軟な政策対応への期待感も残されている。 その中でドル/円の週足テクニカルでは、前週で転換線106.82円前後、13週移動 平均線105.91円前後、基準線105.46円前後までの調整ドル安が進捗してきた。今後 はこうした節目ラインを下値メドとしたドルの下限切り上がりが焦点になりそう だ。その他の注目ポイントは以下の通り。 1 Market Insight <米国の経済指標> 米国の経済指標は強弱混在が続いているものの、基本トレンドは緩やかな回復軌 道を維持している。今週も21日の中古住宅販売や23日の新規失業保険申請件数、景 気先行指数などで底堅さが期待されやすい。ただし、24日の新築住宅販売は前月急 増の反動もあり、下振れリスクが警戒されている。 <米国企業の決算発表> 米国企業の決算発表は前週段階で、64%の企業が市場予想を上回るという健闘を 見せている。今週は市場期待値のハードルが高くなってきた分だけ、失望リスクは 残るものの、賃金抑制などと裏表の企業収益の拡大トレンド持続が期待される。 ブルームバーグの算出によると、米株S&P500のPER(株価収益率)は9月5日週に 約18.2倍となり、2010年3月以来の高水準となった。そこから米国株は割高警戒な どで調整下落が進んできたが、前週にPERは16.7倍にまで低下している。今年1月か らの調整株安では16.3倍、4月以降の株安では16.8倍に低下したところで、割高警 戒による株安が一段落となってきた。今回も株価急落で一定の割高調整や過熱調整 が進捗しており、当座の下げ止まりが注目されやすい。 <欧州の経済指標> 欧州では23日に最新10月のPMIが公表される。不良債権の重石や地政学リスクな どにより、改めて景気減速の深刻さが警戒されよう。もっとも改めて悪化となれ ば、欧州中銀(ECB)による緩和強化の期待感を高めていく。前週末にはクーレECB 理事による「ECBは数日以内に資産購入を開始」という発言が欧米の株高とリスク 選好の円安を支援しており、ECBの緩和期待はユーロの上値を抑制する一方で、株 高・円安要因となり得る。 <中国の経済指標> 中国では21日に7-9月期GDPと9月の鉱工業生産、小売売上高、23日に10月のHSBC 製造業PMIが公表される。中国経済は不動産下落や主要輸出相手である欧州の減 速、過剰供給などが重石となっており、成長鈍化のリスクが警戒される。ただし、 中国では20-23日にかけて中国共産党の中央委員会第4回全体会議(4中全会)が開 催されている。欧州と同様、景気後退リスクに備えた政策対応が、リスク回避の歯 止め要因として注視されそうだ。 その中で米有力投資ファンド・ブラックロックの新興国担当幹部は20日、「中国 の経済構造改革が奏功し始めており、中国の株式市場は向こう3-5年にわたって強 昨年12月以降のドル/円;週足ローソク足 6週移動平均線を中央値のボリンジャーバンド 110 110 108 108 上限=110.57 上限=106.07 106 6週線=108.32 106 104 104 102 102 100 100 10.31 10.17 10.03 9.19 9.05 8.22 8.08 7.25 7.11 6.27 6.13 5.30 5.16 5.02 4.18 4.04 3.21 3.07 2.21 2.07 1.24 1.10 12.27 12.13 円 円 米株VIX指数の月足・一目均衡表、米10年債スワップ・スプレッド 70 60 50 40 30 20 10 0 先行スパン1 スプレッド(右軸) 90 80 70 60 50 40 30 20 10 0 厚い雲 雲 リスク選好↓ スプレッド安定 Nov-16 May-16 Nov-15 May-15 Nov-14 May-14 Nov-13 May-13 Nov-12 May-12 Nov-11 May-11 Nov-10 May-10 Nov-09 May-09 Nov-08 May-08 Nov-07 May-07 Nov-06 May-06 Nov-05 禁無断転載・転送 VIX(左軸) 先行スパン2 リスク回避↑ bp 2 Market Insight 気になりそうだ」(香港経済日報)という見通しを示している。過度な中国懸念の 後退は、豪ドルやNZドルといった資源国通貨の下支え要因となるほか、リスク選 好の円安地合いを支援しやすい。 <GPIFなど日本の政策対応> ロイター通信は18日、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の運用改革に 関して、「現在12%の日本株の比率を20%台半ばにするなど複数の改革案を軸 に、政府内で詰めの協議を行う模様」と報じた。安倍政権は消費税10%再増税の 最終判断が12月に迫る一方、内外経済の減速や円高・株安によって増税環境は厳 しさを増している。さらに二閣僚の辞任で政権基盤の弱体化リスクに直面してお り、GPIF改革を含めた円高・株安の阻止策が注目を集めやすい。 日銀は31日に政策会合と経済物価展望レポート公表が予定されている。成長と 物価見通しの下方修正が、追加緩和期待による日本株の押し目買いと円の戻り売 りを支援する余地を秘めている。 <長期ドル高示唆するドル/カナダの月足> 10月からは5-9月までのドル全面高にポジション調整が見られているが、長期 スパンでのドル高トレンド入りを示唆するのが、ドル/カナダの月足テクニカル だ。月足の一目均衡表では重要な上限抵抗ライン、1.1236カナダ・ドル前後(17 日終値は1.1252ドル前後)の上抜け攻防に直面してきた。これから上下動を経な がらも上抜け定着できると、実に2003年2月以来の現象となる。過去に雲上限を上 抜け突破したのは、1976年以降、1992年以降の2例があるが、いずれもドルの総合 力を示すドル実効相場では10年前後の長期スパンでドル高トレンドが形成されて いる。 1.6 1.5 1.4 1.3 1.2 1.1 1.0 0.9 雲上限 攻防 Jan-15 Jan-13 Jan-11 Jan-09 Jan-07 Jan-05 Jan-03 Jan-01 Jan-99 Jan-97 Jan-95 Jan-93 Jan-91 Jan-89 Jan-87 Jan-85 Jan-83 Jan-81 Jan-79 Jan-77 Jan-75 Jan-73 Jan-71 加 ㌦ ドル/カナダ(左軸) 350 先行スパン1 325 先行スパン2 300 ドル/円(右軸)275 ドル/カナダの月足・一目均衡表 ドル/円 250 225 200 175 150 125 100 75 円 お客様は、本レポートに表示されている情報をお客様自身のためにのみご利用するものとし、第三者への提供、再 配信を行うこと、独自に加工すること、複写もしくは加工したものを第三者に譲渡または使用させることは出来ま せん。情報の内容については万全を期しておりますが、その内容を保証するものではありません。また、これらの 情報によって生じたいかなる損害についても、当社および本情報提供者は一切の責任を負いません。本レポートの 内容は、投資一般に関する情報の提供を目的としたものであり、勧誘を目的としたものではありません。投資にあ たっての最終判断はお客様ご自身でお願いします。 禁無断転載・転送 3
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