ドル安・円高の一服、持続性を模索 年度替わり需給、米中指標

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Market Insight
平成28年3月28日(月)
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ドル安・円高の一服、持続性を模索
年度替わり需給、米中指標、FRB幹部発言など焦点
今週の為替相場は、ドル安・円高一服の持続性をにらんだ展開となる。週間予想
はドル/円が112.30-114.80円、ユーロ/円が125.10-128.10円。3月末で日本企業
の年度替わりを迎えるなか、期末に向けた海外収益の円転持続と剥落、新年度明け
に伴う新規外債投資(ドル買いなど)の漸増が焦点となる。米FRBの4-6月にかけて
の利上げ動向も注目され、米国の経済指標やイエレン議長を始めとしたFRB幹部の
発言にも一喜一憂となる。リスク回避の後退を左右するうえで、中国の指標なども
注視されよう。
ドル急落から8週目、日柄では反発周期
今週の為替需給面では、日本企業の3月決算対策に伴う海外収益の円転(リパト
リエーション)の最終手当てとピークアウトが注目材料となる。2015年3月の期末
相場でいえば、ドル/円は3月26日で当時のドル安値を形成した。その前にさかのぼ
ると、2014年3月が14日から19日、2013年は3月25日にかけて期末のドル安・円高が
ピークを迎えている。
一方で期末円転が一段落してくると、今度は国内機関投資家による新年度外債投
資に向けたドルやユーロなどの外貨押し目買いが注目材料となっていく。ただでさ
え今年は1月末の日銀によるマイナス金利政策を受けて、「利回り狩り」による外
債投資が急増傾向にある。
財務省の週間・対内外証券投資状況によると、3月13-19日週に対外中長期債投
資はネットで+2兆2768億円という大幅買い越しとなった。2005年の統計開始以降
では最高の資本流出額となっている。日銀ゼロ金利開始後の1月31日以降では、7週
間の累計で+7兆7595億円の買い越しに及んできた。4月以降については新年度向け
運用資金の外債配分が、ドルなどの外貨下支え(円高抑制)要因となりやすい。
相場サイクルの日柄面でもドル/円は、ドルが111円割れに急落した2月12日週か
ら、3月28日-4月1日週で8週目を迎えてきた。2013年以降のドル急落局面では7-8
週間のドル下攻めのあと、一旦はドルが買い戻される日柄パターンが繰り返されて
いる。ドル/円の週足テクニカルでは、下値メドとして2月から下値抵抗線となって
きた140週移動平均線111.52円前後の維持攻防が続く。続いて4週線112.99円前後、
6週線113.30円前後などが意識されるが、ここに来て6週線の方向性は昨年12月上旬
からの下向き化を経て、微妙な横這いに向かうというトレンド転換が示唆され始め
た。
反対にドルの上値メドとしては、週足・一目均衡表の雲の下限115.53円前後など
が重要抵抗ラインとなっている。同ラインは5月にかけて120.66円方向に切り上
がっており、これから同ラインに沿う形で上値余地を試すか。あるいはこのまま戻
り売りに押されて、110-115円や105-115円へのレンジ下方修正が定着するかの重
要攻防が続くことになる。
ちなみにドル/円と相関性のある米ドル/カナダ・ドルでは、1月からの調整的な
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米ドル急落が一服してきた。52週移動平均線や週足・一目均衡表の雲の上限といっ
た重要サポートラインで踏みとどまり、中長期スパンでの米ドル高トレンドの延命
が示唆されている。その他の注目ポイントは以下の通り。
<FRB幹部の講演と利上げ動向>
米FRBの4-6月利上げが注目されるなか、今週は29日のイエレン議長講演を始め
としてFRB幹部の発言が相次ぐ。3月以降は市場安定化や原油安・ドル高の一服が見
られており、4月はともかく、6月の利上げ地ならしが注目されやすい。3月16日の
FOMCでは「年2回の利上げ見通し」が提示されたが、今年の米国では11月に大統領
選が控えている。過去実績では大統領選の半年前に利上げを実施したケースは少な
く、ギリギリ6月に1回目の利上げを行い、あとは大統領選後まで様子見に移行する
可能性がくすぶっている。
その中で政策金利のFFと相関性の高い米2年債金利は、16日の0.99%から17日の
0.81%への急低下のあと、0.86%から0.88%で下げ止まりとなっている。週足テク
ニカルでは、26週移動平均線0.82%、一目均衡表の基準線0.81%といった重要節目
ラインで下げ止まりに転じてきた。まだ2013年以降の緩やかな金利上昇トレンドは
崩れておらず、為替相場でもドル/円を含めたドル安の抑制要因となりやすい。
<雇用統計やISMなどの米国指標>
米FRBの利上げ時期を探るうえで、今週も米国の経済指標が注目される。とくに4
月1日の米雇用統計が注目されるが、前月は上振れ改善となっただけに、反動減速
が警戒される。季節的なジンクスとして、3月の米雇用統計は予想を下回るケース
も目立っている。
ただし、平均賃金については、前月の減速から反動改善となる可能性をはらむ。
最低賃金の引き上げや、内需サービス関連を中心とした人手不足なども、小幅な賃
金の上昇要因となるものだ。ブルームバーグの米国・週間消費者信頼感指数では、
最新3月20日週に「家計環境」が58.6と前月の58.1から上昇した。1月17日週の55.0
をボトムとして改善モメンタムが強まり、昨年10月以来の高水準を回復している。
また、米国市場では4月1日に、重要先行指標であるISM製造業景況指数が公表さ
ドル/カナダの週足・一目均衡表
52週移動平均線、ドル/円
1.400
1.350
1.300
1.250
1.200
1.150
1.100
1.050
1.000
2014/12/19~
2015/3/27~
2015/8/28~
2016/2/12~
2013/6/21~
7-8週後にドル安一服↑
経過週→
Sep-16
Jul-16
May-16
Apr-16
Feb-16
Dec-15
Oct-15
Aug-15
Jun-15
May-15
Mar-15
Jan-15
Nov-14
Sep-14
Jul-14
May-14
Apr-14
Feb-14
Dec-13
Oct-13
Aug-13
ドル/カナダ(左軸)
先行スパン1
先行スパン2
52週平均
ドル/円(右軸)
ドル/カナダは節目で
調整ドル安一服
最近のドル/円のドル急落局面
ドル急落週以降の推移
(急落週後の経過週)
2013/6~
のみ右軸→
12
11
10
9
8
7
6
5
4
3
2
1
0
-1
-2
-3
禁無断転載・転送
↑
Jun-13
123
122
121
120
119
118
117
116
115
114
113
112
111
110
円
122
119
116
113
110
107
104
101
98
95
雲
ドル高↑
ドル安↓
May-13
加
㌦
↑
円
99.0
98.5
98.0
97.5
97.0
96.5
96.0
95.5
95.0
94.5
94.0
93.5
93.0
円
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れる。昨年10月からは景気判断の節目となる50を割り込んできたが、最新3月分で
は「50の回復」が期待されやすい。同じ3月分の地区連銀製造業景況指数では、
NY、フィラデルフィア、リッチモンド、カンザスシティの4連銀指数が揃って前月
比で大幅改善となった。4指数が全て前月比プラスになったのは、実に2011年3月以
来の現象となっている。4指数の平均も上昇へと転換し、12カ月移動平均でのトレ
ンドは2015年3月以降の悪化基調に歯止めが掛かってきたが、過去にはドル/円と一
定の相関性を有している。
<中国PMIなどの中国動向>
中国では28日に1-2月の工業利益が前年比+4.8%の増加となり、7カ月連続の減
少に歯止めが掛かった。今週は4月1日に中国の製造業PMIが公表されるが、金融緩
和や人民元安の累積効果、景気対策への期待感、米欧などの減速一服により、下げ
止まりが注目されやすい。
中国を始めとした世界経済の動向や資源相場に先行性のある「バルチックドライ
海運指数」は、昨年7月以降の暴落と今年2月での底入れを経て、微妙に下限を切り
上げている。週足テクニカルでは昨年8月以降で初めて、13週移動平均線や一目均
衡表の転換線の節目を上抜け回復してきた。過去には資源国通貨(豪ドル、NZド
ル、カナダ・ドル、南アフリカ・ランドなど)の支援材料となってきたほか、円の
総合力を示す実効相場ベースではリスク回避の円高を後退させる(円安)相関性を有
している。
米国4地区連銀;製造業景況指数の平均、12カ月移動平均線、ドル/円
※NY、フィラデルフィア、リッチモンド、カンザスシティの各連銀指数
20
15
10
5
0
-5
-10
-15
↑
基調改善
Mar-16
Oct-15
May-15
Dec-14
Jul-14
Feb-14
Sep-13
Apr-13
Nov-12
Jun-12
Jan-12
Aug-11
Mar-11
Oct-10
May-10
Dec-09
Jul-09
Feb-09
4連銀平均(左軸)
12カ月平均
ドル/円(右軸)
円
ユーロ/円、月足ADX指数(一方向のトレンドの強さを示す)
南アフリカ・ランド/円、ブラジル・レアル/円、メキシコ・ペソ/円の月足ADX
過去節目まで到達
(各通貨安に過熱感)
50
40
30
20
10
Feb-16
Jul-15
Dec-14
May-14
Oct-13
Mar-13
Aug-12
Jan-12
Jun-11
Nov-10
Apr-10
Sep-09
Feb-09
Jul-08
Dec-07
ユーロ/円(左軸)
ユーロ/円ADX(右軸)
ランド/円ADX(右軸)
レアル/円ADX(右軸)
ペソ/円ADX(右軸)
May-07
Oct-06
Mar-06
Aug-05
Jan-05
Jun-04
Nov-03
Apr-03
Sep-02
円
Sep-08
Apr-08
165
155
145
135
125
115
105
95
85
120
115
110
105
100
95
90
85
80
75
%
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