Forex 株式会社 ジャパン エコノミックパルス Market Insight 平成28年6月13日(月) 〒107-0052 東京都港区赤坂1-14-5 Tel 03-3568-2973 Fax 03-3568-2977 www.j-pulse.co.jp [email protected] 円高圧力の継続と歯止めをにらむ 米日の中銀会合、英投票、世界金利低下の過熱焦点 今週の為替相場は、ドル/円、クロス円での円高圧力継続と歯止めをにらんだ 展開が予想されよう。週間予想はドル /円が104.80-108.20円、ユーロ /円が 118.30-121.90円。23日の英国におけるEU離脱を問う国民投票の不透明感が高ま るなか、リスク回避の円高が警戒されやすい。14-15日の米FOMCでの利上げ見送 り観測も、ドル安・円高の材料となる。一方、FOMCで7月以降の利上げが示唆さ れたり、15-16日の日銀政策会合での追加緩和や緩和地ならし、世界的な金利低 下の過熱調整などで反動円安の可能性も残されている。 円高・債券高が過熱、ドル建て円債価格は2番天井攻防 「3年前にアベノミクスが始まって以来、日本国債を買い越しているのは日銀 と外国人投資家である。この3年間で日本国債の外国人保有比率は2倍以上とな り、2015年末時点では日銀の保有高を除くと外国人投資家は日本国債の18.2%を 保有している。従って、日本国債と円の脆弱さは高まっており、グローバルな資 金フローの影響を受けやすくなっている。この状況では円は構造的に弱い通貨に なりつつある」――。 米国の大手運用会社幹部は、中長期的なリスクとしてこのような警告を発す る。しかし、足元では英国のEU離脱懸念に伴う安全逃避や米FRBの利上げ遅延な どにより、世界的に長期国債金利の低下が加速してきた(債券価格は高騰)。日 本では改めてリスク回避による債券高・円高・株安が進展している。 その中で外国人投資家による日本国債投資で判断材料となる「ドルベースでの 日本の債券価格指数」は、過去最高値を巡る重要攻防に直面してきた。日本の債 券価格指数(ブルームバーグ・EFFAS=欧州証券アナリスト協会連合会の債券指 数、10年以上)は10日、ドル換算で4.144ドル前後となり、2012年11月以来の高 値を更新してきた。 前回の複合デフレによる円高・債券高(金利は低下)を受けたドル建ての過去 最高値が、2012年7月から9月の4.22ドル前後となっている。今後は一気に過去高 値を突破し、一段と円高・債券高がオーバーシュートしていくか。あるいは過去 最高値圏で頭打ちから高値横這いに移行し、歴史的な2番天井とクライマックス を形成。ジワリと前出の米国金融筋が指摘するような「日本国債と円の脆弱性」 が表面化してくるアリの一穴となるか、重要な分岐点に直面している。 短期的には23日の英国投票まで不透明感が残り、為替相場ではドル/円、クロ ス円で円全面高の波乱余地が警戒される。14-15日の米FRBによるFOMCでは利上 げ見送りが予想され、ドル安・円高の仕掛け材料となりやすい。ドル/円の月足 テクニカルでは、180カ月移動平均線105.26円前後、150カ月線102.12円前後、 120カ月線100.07円前後などが次なる下値メドとして意識されている。 もっとも15日の米FOMCでは、7月以降の利上げ余地が示唆される可能性は消え ていない。現在の米国では英国問題によって過剰に長期金利が押し下げられてお り、国外要因による金利低下の行き過ぎは、1)不動産・自動車ローンなどの局地 バブル醸成、2)先行き反動調整や、FRBによる利上げ地ならし再開の場合の急激 1 Market Insight な金利の反転上昇リスク、3)米国での先行き悲観心理の拡大と期待インフレの低 下――といった弊害を招いてしまう。15日のFOMCで過度に利上げ遅延メッセージ を強調すると、現在の金利低下バブルが助長されるため、微妙に7月以降の利上げ に含みを残すシナリオも残されている。その場合は材料出尽くしとあいまって、 米債金利の上昇とドル反発が後押しされる。 同時に14-15日のFOMCのあとには、15-16日に日銀の金融政策決定会合が予定 されている。FOMCの直後に日本で円高・株安が激化するようであれば、16日の日 銀会合で混乱歯止めに向けた追加金融緩和措置が想定されよう。その他の注目ポ イントは以下の通り。 <米国の経済指標> 米国の経済指標は5月の雇用統計が大幅悪化となって以降、低迷リスクが警戒さ れている。今週も14日の5月小売売上高や17日の住宅着工件数について、前月改善 の反動減速が意識されやすい。15日の鉱工業生産も、自動車販売の改善一服や生 産部門の雇用減少などで下振れが懸念される。 一方、15日のPPI(生産者物価指数)、16日のCPI(消費者物価指数)といった インフレ指標は、原油反発とドル高一服、緩やかな賃金回復などによる下げ止ま りが焦点となる。最新6月指標となる15日のNY連銀、16日のフィラデルフィア連銀 の各製造業景況指数についても、FRBの利上げ遅延観測や資源反発、ドル高一服な どが下支え要因となりそうだ。 <英国のEU離脱を問う国民投票> 英国では23日にEU離脱を問う国民投票が予定されており、それまではリスク回 避の株安・円高やポンド安、欧州経済への打撃懸念によるユーロ安の混乱が懸念 される。引き続き日々の世論調査の結果にも、一喜一憂となる不安定さが続く。 もっとも英国では2014年のスコットランド独立を問う住民投票、昨年の英国の 総選挙ともに、事前の世論調査とは異なり、市場安定化を促す投票結果となって いた。今回も最終的にはEU残留の現実判断が優勢になる可能性が高い。そのため23日に かけては、投票後の一旦の「悪材料出尽くし」を見据えたドル/円、ポンド/円、ユー ロ/円などでの下値仕込み買い(円売り)のタイミングも焦点となる。 145 ドル/円の月足チャート 120カ月、150カ月、180カ月、240カ月 各移動平均線 135 125 115 105 95 85 75 Mar-16 Mar-15 Mar-14 Mar-13 Mar-12 Mar-11 Mar-10 Mar-09 Mar-08 Mar-07 Mar-06 Mar-05 Mar-04 Mar-03 Mar-02 Mar-01 ↑ 円高・債券高 2番天井攻防 Jan-16 Jan-15 Jan-14 Jan-13 Jan-12 Jan-11 Jan-10 Jan-09 Jan-08 Jan-07 Jan-06 ドル建て円債 バンド上限 48カ月平均 バンド下限 Jan-05 Jan-04 Jan-03 Jan-02 Jan-01 Jan-00 Jan-99 Jan-98 Jan-97 Jan-96 Jan-95 Jan-94 禁無断転載・転送 Mar-00 日本の債券価格指数;ドル換算 48カ月移動平均線を中央値のボリンジャーバンド ※債券指数はブルームバーグ・EFFAS 世界債券指数の日本;10年以上 4.3 4.0 3.7 3.4 3.1 2.8 2.5 2.2 1.9 1.6 1.3 1.0 ㌦ Mar-99 Mar-98 Mar-97 円 ドル/円 120カ月平均=100.07 150カ月平均=102.12 180カ月平均=105.26 240カ月平均=108.47 2 Market Insight <日銀の金融政策決定会合> 15-16日の日銀による金融政策決定会合については、現状維持の失望、あるい は追加緩和でも「緩和効果や緩和手段の限界露呈」などにより、円高の材料とし て警戒されている。しかし、ここに来て安倍晋三首相の有力ブレーンである本田 悦朗内閣官房参与、中原伸之元日銀理事が、揃って日銀の6月緩和に期待感を表明 している。両氏ともに消費税増税の延期を皮切りとした「アベノミクス再点火」 の再起動ボタンとして、日銀の資産買い入れ増強を重要視している。両氏ともに4 月の日銀会合では「緩和の必要なし」と指摘し、実際に日銀は緩和を見送った経 緯があり、日銀の信認回復行動は無視できない。 しかも日本では7月10日に参院選が迫るなか、野党は日銀のマイナス金利が「預 金者や高齢者を苦しめている」として政権攻撃の材料としている。日銀からする と、金融政策を政争の具にさせないため、あるいは国民による日銀批判の高まり で政策手段が狭まることを回避させるため、参院選前にマイナス金利の弊害を除 去させておく、工夫努力の必要性が高まっている。 <中長期スパンでのリスク回避の円高緩和> 足元では根深い世界減速懸念などで、リスク回避の円高圧力が強まっている。 一方で世界経済に6カ月程度の先行性を有するOECD景気先行指数では、最新4月に 「先進国+主要新興国」が3カ月連続で前月比プラスに転じた。2013年12月からの 長期悪化トレンドに歯止めが掛かっている。地域別では4月に米国が2014年7月以 来の上昇となったほか、中国も改善しており、今夏から秋にかけての世界経済の 底入れに微かな先行期待シグナルが点滅し始めた。 また、日本では昨春以降、原油安や内外経済の減速などもあり、物価下落と円 高の負の共振連鎖が再燃してきた(インフレは通貨安、デフレは通貨高の各要 因)。しかし、最新5月の国内企業物価指数は、消費税を除いたベースで昨年6月 以来の前月比プラス化へと転じている。同時に期待インフレと相関性の高い内閣 府・景気ウォッチャー調査では、5月に「景気の先行き判断」が4カ月ぶりに前月 比プラスとなり、やはり昨年5月以降の悪化トレンドが底入れしてきた。今後、英 国の国民投票というノイズが除去されたあとは、日本での期待インフレの低下・ 物価下落・円高という負のスパイラルが緩和される環境が整備されつつある。 ポンド/円 月足・一目均衡表 過去の平時下限 235 225 215 205 195 185 175 165 155 145 135 125 115 Nov-17 Nov-15 Nov-13 Nov-11 Nov-09 Nov-07 Nov-05 Nov-03 Nov-01 Nov-99 Nov-97 Nov-95 Nov-93 Nov-91 円 ポンド/円 先行スパン1=155.11 先行スパン2=145.85 平時下限=148.30 お客様は、本レポートに表示されている情報をお客様自身のためにのみご利用するものとし、第三者への提供、再 配信を行うこと、独自に加工すること、複写もしくは加工したものを第三者に譲渡または使用させることは出来ま せん。情報の内容については万全を期しておりますが、その内容を保証するものではありません。また、これらの 情報によって生じたいかなる損害についても、当社および本情報提供者は一切の責任を負いません。本レポートの 内容は、投資一般に関する情報の提供を目的としたものであり、勧誘を目的としたものではありません。投資にあ たっての最終判断はお客様ご自身でお願いします。 禁無断転載・転送 3
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