Forex 株式会社 ジャパン エコノミックパルス 〒107-0052 東京都港区赤坂1-14-5 Tel 03-3568-2973 Fax 03-3568-2977 www.j-pulse.co.jp [email protected] Market Insight 平成26年12月29日(月) 円安継続も薄商い下の乱高下は警戒 米欧中の指標、年末フロー、ギリシャ大統領選などが焦点 今週の為替相場は、基本的な円安やドル高の持続見通しの一方、年末年始の薄商 い下での乱高下は警戒されよう。週間予想はドル/円が118.70-121.70円、ユーロ/ 円が145.30-149.30円。米国の景気改善や中国での景気刺激策への期待感などによ り、リスク回避が一服となる中で、米国や欧州、中国の最新指標が注目されやす い。その他、年末の特殊な資金フローやギリシャ大統領選の行方、原油安とロシア の通貨経済不安の動向、国内でのエボラ熱感染懸念の拡大リスクなどが焦点となり そうだ。 輸出復調と輸入金額減少、為替需給の変容注視 「ドル/円は12月23日に120.80円前後を回復して以降、国内輸出企業のドル売り が上値抑制の一因となっているが、年末年始休暇を控えた一過性のドル売り増加 か、あるいは微妙な輸出の復活による需給構造の変化なのか、年明け以降の推移を 見極める必要がある」――。 国内の為替市場関係者はこのような指摘を行う。為替相場では日本の貿易赤字高 止まりが来年にかけての円安継続要因となる一方、「円安2年経過」による時間差 効果や米国経済の回復などを受けて、輸出の復活が焦点になってきた。最新11月の 鉱工業生産でも、予測調査では12月が前月比+3.2%、1月が+5.7%の高い伸び率 となっており、生産と輸出の復調が示唆されている。 かたや輸入サイドは、原油価格の急落が輸入金額の押し下げに作用している。日 本では来年4月の統一地方選が終わると、芋づる式の原発再稼働が想定され始め た。いずれも資源エネルギー輸入の急増を抑制させていくもので、来年にかけては 「輸出企業のドル戻り売り増加」と「輸入企業によるドル押し目買いの勢い減退」 という為替需給の変化が注視されそうだ。 加えて29日の東京市場では、国内でエボラ熱に感染した疑いのある患者が発生し たことから、リスク回避の株安・円高に拍車が掛かる場面があった。年末年始の長 期休場を前にしたエボラ熱懸念は、リスク選好に冷や水をかぶせており、短期的な 攪乱要因として警戒される。現在は堅調推移となっている米国株市場も、1月上旬 からは決算発表シーズンが本格化する。今年は1月の年明け直後から「決算発表見 合いでの割高さ」が未然警戒される形で米国株は調整急落した経緯があり、今週以 降の年末年始相場では思わぬリスク回避の株安・円高という短期混乱シナリオは軽 視できない。 もっとも一年前のリスク回避相場については、米国の記録的な寒波が混乱に拍車 をかけた。今年は米国で指標の改善が相次いでおり、1月9日の12月雇用統計までは 米国指標の上振れリスクが、ドルの押し目買い(円の戻り売り)地合いを支援しよ う。12月30-31日のグローバルな年末決済フローに関しても、日本の輸入企業を始 めとしてドル買い手当ての旺盛さが想定されている。 ポジション調整やスピード調整の範囲を超えたドル安・円高を制御させるのが、 来年6月以降に向けた米FRBの利上げ観測の高まりだ。政策金利のFF翌日物と相関性 1 Market Insight の高い米2年債金利は、26日に0.74%にまで切り上がり、2011年4月以来の高水準と なってきた。反対に日本では日銀の国債買い入れ強化や原油安などによる物価下落 の圧力を受けて、2年債金利は低下圧力が持続。22日には、-0.04%にまで急低下 する場面が見られている。 結果、日米の2年債金利差は2007年から長期に及んだ縮小トレンドが一段落し、 緩やかながらも拡大傾向が明確化されてきた。今後は来年以降の「金利差拡大余 地」が、ドル/円のドル高の伸びシロとして意識されよう。その他の注目ポイント は以下の通り。 <米国の経済指標> 米国の指標は強弱混在ながら、原油下落などを受けて上振れケースのほうが優勢 となっている。今週は30日のケースシラー住宅価格指数や消費者信頼感指数、31日 のシカゴPMIや中古住宅販売成約指数、2日のISM製造業景況指数などでの改善が注 目されそうだ。ただし、米国では年末商戦や年末商戦向けの臨時雇用が、季節的に ピークアウトを迎えつつある。そのため最新指標となる31日の週間・新規失業保険 申請件数や、2日の12月PMI、ISM指数などでは、これまでの急回復の反動鈍化が警 戒されやすい。 <欧州の指標とギリシャ大統領選> 欧州では、2日にドイツやユーロ圏などの12月製造業PMIが予定されている。原油 安やユーロ安効果、米国の成長加速などにより、下げ止まりが焦点となる。単発的 なユーロの下支え要因となるものだ。 もっともユーロについては、ギリシャの政治混乱リスクが戻り売り要因として消 えていない。ギリシャ議会では29日、新大統領選出に向け最後となる3回目の投票 が行われる。2回目までの投票で与党が推したスタブロス・ディマス元欧州委員は 信任に必要な票を得られず、政権の求心力低下が浮き彫りとなった。3回目で否決 されれば議会は解散され、来年1月にも総選挙が行われる。ユーロ圏では1月22日の ECB理事会で量的緩和強化の観測がくすぶっており、ユーロ/ドルを中心にユーロの 戻り売り圧力の持続と、まずは1ドル=1.2000ドル方向を意識したユーロの下値リ スクが続く。 <中国の指標と景気刺激策期待> 中国では31日に1月のHSBC製造業PMI、1日に製造業PMIが予定されている。中国で 8月以降のドル/円;週足ローソク足 6週移動平均線を中央値のボリンジャーバンド 122 120 118 116 114 112 110 108 106 104 102 100 1.02 12.19 12.05 11.21 11.07 10.24 10.10 9.26 9.12 8.29 赤字↑ 黒字↓ 8.15 8.01 -28 -24 -20 -16 -12 -8 -4 0 4 8 12 日本の輸出数量指数-輸入数量指数(軸を上下反転、1年先行) ドル/円(1年遅行) ↓ 赤字拡大 一服 差し引き(左軸) ドル/円(右軸) Sep-14 Nov-13 Jan-13 Mar-12 May-11 Jul-10 Sep-09 Nov-08 Jan-08 Mar-07 May-06 Jul-05 Sep-04 Nov-03 Jan-03 Mar-02 May-01 Jul-00 Sep-99 Nov-98 Jan-98 禁無断転載・転送 6週線=119.80 レンジ横這い化 7.18 円 上限=121.93 下限=117.67 122 120 118 116 114 112 110 108 106 104 102 100 円 142 134 126 118 110 102 94 86 78 円 2 Market Insight は12月から景気刺激策や金融改革への期待感などから、中国株が大幅に反発してき た。資源下落や米国を中心とした外需の改善などにより、指標が下げ止まりとなる と、リスク選好の円安や資源国通貨の単発的な上昇(豪ドル、NZドル、カナダ・ド ルなど)を支援しやすい。中国では前週に機械輸出の支援策や、設備投資向け融資 の促進策などが打ち出されたほか、2月中旬の春節(旧正月)までには国有企業の 改革プラン取りまとめといった政策対応が取り沙汰されている。 <原油安とロシア混乱> 前週からはリスク回避を促してきた原油先物とロシア・ルーブルの急落が一服と なってきた。産油国のロシアでは原油安による経済打撃を受けて、外交面での強硬 姿勢を微妙に軟化させる姿勢が見られている。年末年始にかけてロシアとウクライ ナの平和交渉が進展するなど、ロシアの対外融和姿勢が明確化されると、原油の自 律反発が継続。為替相場ではリスク選好による円安が支援される反面、原油安・ド ル高の一服は、ドル/円でのドルの上値の重さや、対ドルでの欧州通貨や資源国通 貨の短期反発(調整ドル安)につながる余地を秘めている。 <リスク回避尺度のVIX指数> リスク回避の尺度となり、 米株式投資家の不安心理の度合いを示すシカゴ・オ プション取引所(CBOE)のボラティリティー・インデックス(VIX指数)は前週末 の26日、14.50と直近最高である16日の25.20から低下傾向を維持して終了した。12 月5日の11.53を直近最低としたVIX急上昇と米国株の急落、円全面高というリスク 回避相場の一段落が示されている。 テクニカルの日足・一目均衡表では、雲の下限17.94を完全に下抜けてきた。雲 の下限は先行き1月12日にかけて13.43方向に切り下がっており、当面は雲の下限に 沿う形でのVIX低下とリスク選好による米株高・円安の持続が期待されやすい。た だし、VIX指数は12月17日の日中最低19.26から、翌日18日は最高が18.51と急低下 しており、ギャップ(隙間=窓)が空いている。今週は年末年始相場で閑散な取引が 想定されるため、ちょっとした悪材料の浮上による乱高下と、ギャップを埋める 「窓埋め」のVIX再上昇、裏表での米株安とリスク回避の円全面高は短期波乱の地 雷として警戒される。 金利差(左軸) 米2年債(左軸) 米10年債(左軸) ドル/円(右軸) 米2年債と10年債の金利、10年債-2年債の金利差、ドル/円 4.6 3.8 ↑ドル高 3.0 ↓金利差縮小 ※利上げ= 短期金利から 上昇 2.2 1.4 0.6 縮小↓ -0.2 Oct-14 Mar-14 Aug-13 Jan-13 Jun-12 Nov-11 Apr-11 Sep-10 Feb-10 Jul-09 Dec-08 May-08 Oct-07 Mar-07 Aug-06 Jan-06 Jun-05 Nov-04 Apr-04 Sep-03 Feb-03 Jul-02 % 122 118 114 110 106 102 98 94 90 86 82 78 円 お客様は、本レポートに表示されている情報をお客様自身のためにのみご利用するものとし、第三者への提供、再 配信を行うこと、独自に加工すること、複写もしくは加工したものを第三者に譲渡または使用させることは出来ま せん。情報の内容については万全を期しておりますが、その内容を保証するものではありません。また、これらの 情報によって生じたいかなる損害についても、当社および本情報提供者は一切の責任を負いません。本レポートの 内容は、投資一般に関する情報の提供を目的としたものであり、勧誘を目的としたものではありません。投資にあ たっての最終判断はお客様ご自身でお願いします。 禁無断転載・転送 3
© Copyright 2024 ExpyDoc