購買力平価 一橋大学商学部 小川英治 1 マクロ金融論2016 マクロ金融論2016 購買力平価とは • 購買力平価とは、異なる通貨の価値(購買力) を均等化させる為替相場 • 為替相場(円/ドル)=通貨間の交換比率 =通貨間の価値の比率 =通貨間の購買力の比率 =当該国間の一般物価水 準の逆数の比率 2 マクロ金融論2016 商品裁定 • 商品裁定(安い所で買って高い所で売ることによって利 鞘を得る) • Coke(東京):120円⇔Coke(NY):1ドル • 円ドル相場:110円/ドル ↓ • Coke(東京):120円⇔Coke(NY):110円(=1ドル×110円/ドル) ↓ • CokeをNYから東京へ輸入 3 マクロ金融論2016 商品裁定による各市場での取引 • NYでCokeを買う⇒NYで価格上昇 • 東京でCokeを売る⇒東京で価格低下 • 外国為替取引(円売りドル買い)⇒円安ドル高 ↓ • 東京とNYで価格が均等化 4 マクロ金融論2016 商品裁定による一物一価の法則 • 前提条件:①同一の商品 ②貿易可能 ③完全競争 ④取引費用=0 • 一物一価の法則 あらゆる所で同一の商品の価格は等しい。 5 マクロ金融論2016 一物一価の法則 • 日本の市場の価格:P円 • USの市場の価格: P* ドル • 円/ドル相場:S円/ドル P SP * 6 マクロ金融論2016 絶対的購買力平価 • 絶対的購買力平価 1 * P P S * 1 P P ⇒絶対的購買力平価は、外国物価に対する自国物価の 相対的比率として表される。 ⇒あるいは、自国物価の逆数(自国通貨の価値)に対す る外国物価の逆数(外国通貨の価値)の相対的比率と なる。 7 マクロ金融論2016 相対的購買力平価 • (一定の)取引費用を考慮に入れる。 • 絶対的購買力平価を変化率で表現すると、一 定の取引費用を除去できる。 • 相対的購買力平価 * S PP ⇒購買力平価の変化率は、自国のインフレ率と外 国のインフレ率の差である。 8 マクロ金融論2016 図4:購買力平価の推移 9 マクロ金融論2016 PPP(WPI/PPI) vs. PPP(CPI) • WPI/PPI (1) 貿易財のみ (2) 出荷時価格 • CPI (1) 貿易財+非貿易財 (2) 小売価格(=流通コスト を含む) CPIに非貿易財や流通コストが含まれているために、 PPP(WPI/PPI)の方がPPP(CPI)よりも購買力平価に 適している。 10 マクロ金融論2016 Balassa-Samuelson効果 • 非貿易財を含んだ一般物価水準に基づいて購 買力平価を推計すると、実際の為替相場がそ の購買力平価から乖離する可能性がある。特 に、貿易財部門における生産性上昇率の高い 国で起こりやすい。(Balassa-Samuelson効果) 11 マクロ金融論2016 貿易財部門と非貿易財部門 (想定) (1) 小国開放経済(貿易財部門Tと非貿易財部門N) (2) 国内労働市場の移動⇒貿易財部門と非貿易財部門 とで賃金Wが均等化 (3) 貿易財価格 PT と非貿易財価格 PN は、賃金を労働生 産性 (T , N )で除したものとなる。 (4) 貿易財については、一物一価の法則が成立。外国 * * P SP の貿易財価格を P とする。( T ) 12 マクロ金融論2016 自 国 非貿易財部門 PN 外 貿易財部門 賃金 貿易財部門 T W 国 価格 PT S P * P T PT N PN S PPP T T N S N 13 マクロ金融論2016 貿易財・非貿易財価格と一般物価 水準 • 貿易財価格 PT W T PT* W* T* • 非貿易財価格 PN W N P * N W* N* • 一物一価の法則 PT SPT*\ 14 マクロ金融論2016 為替相場決定式 • 為替相場決定式(水準) W T* S * W T • 為替相場決定式(変化率) S W W * T* T 15 マクロ金融論2016 一般物価水準とPPP • 一般物価水準 P PT T PN N *T* T P P * **N N P • 対数変換 log P T log PT N log PN log P* T log PT N log PN * * * * 16 マクロ金融論2016 貿易財部門の生産性上昇による購 買力平価の過小評価 • 購買力平価 log S PPP P log * log S N log T log N N* log T* log N* P S PPP S N T N N* *T N* • 貿易財部門の生産性が非貿易財部門に比較して上昇すると、 貿易財における一物一価の法則を成立させる為替相場に比較 して購買力平価が過小評価される。 17 マクロ金融論2016 China Tradable Share of Goods Growth rate of Productivi ty Rate of change in nominal wage rate United States Tradable Nontradable 74.61% 25.39% 59.57% Nontradable 40.43% 8.08% 4.17% 2.39% 6.74% 8.55% 1.48% Productivity effect Productivity + wage effects Balassa-Samuelson effect Japan Tradable Korea Tradable 19.96% Nontradable 80.04% 1.50% 5.08% 3.39% 0.29% 8.90% 10.44% 7.77% Nontradable 92.23% 2.39% 2.36% 5.89% -0.24% Effects on Chinese yuan vis-à-vis Japanese vis-à-vis US dollar yen 5.7% p.a. of 5.7% p.a. of appreciation appreciation 1.3% p.a. of 0.4% p.a. of depreciation appreciation 0.8% p.a. of 1.6% p.a. of undervaluation undervaluation vis-à-vis Korean won 3.0% p.a. of appreciation 5.3% p.a. of depreciation 0.2% p.a. of undervaluation Ogawa and Sakane (RIETI Discussion Paper, 2006) 18 マクロ金融論2016 購買力平価の限界 • 非貿易財の存在(商品裁定、BalassaSamuelson効果) • 競争状態(pricing to market) • 在庫調整などによる価格の反応の遅さ ↓ • 実際の為替相場が購買力平価から乖離する。 19
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