伸縮価格マネタリー・アプローチ 一橋大学商学部 小川英治 マクロ金融論2016 マクロ金融論2016 伸縮価格マネタリー・アプローチと購買力平価 • 伸縮価格マネタリー・アプローチは、購買力平価の発 展形。 • 購買力平価は、自国と外国の物価水準の相対比とし て為替相場が決まる。 • それでは、物価水準はどのように決まるのか? ↓ • この問いに答えるのが、伸縮価格マネタリー・アプロー チである。 2 マクロ金融論2016 商品裁定による一物一価の法則 • 前提条件:①同一の商品 ②貿易可能 ③完全競争 ④取引費用=0 • 一物一価の法則 あらゆる所で同一の商品の価格は等しい。 3 マクロ金融論2016 一物一価の法則 • 日本の市場の価格:P円 * • USの市場の価格: P ドル • 円/ドル相場:S円/ドル P = SP * 4 マクロ金融論2016 絶対的購買力平価 • 絶対的購買力平価 P = S = * P 1 * P 1 P ⇒絶対的購買力平価は、外国物価に対する自国物価の 相対的比率として表される。 ⇒あるいは、自国物価の逆数(自国通貨の価値)に対す る外国物価の逆数(外国物価の価値)の相対的比率と なる。 5 マクロ金融論2016 相対的購買力平価 • (一定の)取引費用を考慮に入れる。 • 絶対的購買力平価を変化率で表現すると、一 定の取引費用を除去できる。 • 相対的購買力平価 * S= P − P ⇒購買力平価の変化率は、自国のインフレ率と 外国のインフレ率の差である。 6 マクロ金融論2016 伸縮価格マネタリー・モデルの特徴 • • • • 購買力平価が常に成立する。 物価が伸縮的である。 物価の決定は、貨幣の需給による。 為替相場決定は、貨幣の需給による。 7 マクロ金融論2016 購買力平価とマネタリー・アプローチ • 絶対的購買力平価 P S= * P (1) • 貨幣市場均衡式 M = L(Y , i ) P * M * * * = L ( Y ,i ) * P (2) (3) 8 マクロ金融論2016 伸縮価格マネタリー・モデルにおけ る為替相場決定式 (1)・(2)・(3)式より、 * * * M L (Y , i ) S= * M L(Y , i ) (4) • 為替相場は、相対的貨幣供給量と相対的貨幣 需要量によって決定される。 9 マクロ金融論2016 貨幣の需要供給が為替相場を決め る • 自国貨幣供給量の増加⇒自国物価上昇⇒自 国通貨減価 • 外国貨幣供給量の増加⇒外国物価上昇⇒自 国通貨増価 • 自国貨幣需要量の増加⇒自国物価低下⇒自 国通貨増価 • 外国貨幣需要量の増加⇒外国物価低下⇒自 国通貨減価 10 マクロ金融論2016 対数表示化したモデル • (1)・(2)・(3)式の対数表示 s= p − p m − p = φ y − λi * m* − p* = φ y* − λi* (5) (6) (7) • 但し、φ :貨幣需要の所得弾力性、λ :貨幣需要 の利子半弾力性(semi-elasticity) 11 マクロ金融論2016 対数表示化したモデルにおける為 替相場決定式 • 為替相場決定式(対数表示) s = (m − m* ) − φ ( y − y* ) + λ (i − i* ) (8) ①自国貨幣供給成長率⇒同率の自国通貨減価 ②外国貨幣供給成長率⇒同率の自国通貨増価 ③自国所得成長率⇒φ倍の自国通貨増価 ④外国所得成長率⇒φ倍の自国通貨減価 ⑤自国利子率変化量⇒λ倍の自国通貨減価 ⑥外国利子率変化量⇒λ倍の自国通貨増価 12 マクロ金融論2016 金利差にカバーなし金利平価式を代入 • カバーなし金利平価式 i −i = ∆s * 但し、 e ∆s ≡ log S e (9) e t +1,t e t +1,t S − log St = − St St 13 マクロ金融論2016 PPP成立の下での予想為替相場変化率 • 相対的購買力平価 ∆s = ∆p − ∆p * (10a ) • 予想為替相場変化率 ∆s = ∆p − ∆p e e *e (10b) • 為替相場決定式 = s (m − m ) − φ ( y − y ) + λ (∆p − ∆p ) (11) * * e *e 14 マクロ金融論2016 マネタリスト・モデルにおける予想インフレ率 • マネタリスト・モデル M = kPy • 予想インフレ率 ∆p = ∆m e *e e ∆p = ∆m *e (12a ) (12b) 15 マクロ金融論2016 伸縮価格マネタリー・モデルの為替 相場決定式 • 為替相場決定式 s (m − m ) − φ ( y − y ) + λ (∆m − ∆m ) (13) = * * e *e ①自国の予想貨幣成長率の上昇⇒自国名目利 子率上昇⇒自国貨幣需要減少⇒自国通貨 減価 ②外国の予想貨幣成長率の上昇⇒外国名目利 子率上昇⇒外国貨幣需要減少⇒自国通貨 増価 16 マクロ金融論2016 マクロ金融論2016 17
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