政策協調 一橋大学商学部 小川英治 マクロ金融論2016 マクロ金融論2016 国際的相互依存関係 • 自国におけるマクロ経済政策が外国の経済活 動にも波及効果を及ぼす。 • 外国経済に及んだ波及効果がさらに自国経済 に反作用効果をもたらす。 2 マクロ金融論2016 2国経済モデル 【仮定】 • 世界には自国経済と外国経済の2国経済のみ が存在。 • 両国経済の規模とパラメータは同一。 • 両国経済が生産する財は不完全代替。 • 完全資本移動+内外資産完全代替。 • 民間部門の物価水準と為替相場の予想は所与。 3 マクロ金融論2016 2国経済モデルの体系(1) • 自国経済 m p y i (6.1) y ( s p p ) i (6.2) * y y ( p p ) e (6.3) 4 マクロ金融論2016 2国経済モデルの体系(2) • 外国経済 m p y i * * * * y ( p s p ) i * * y y ( p p ) * * * *e (6.4) * (6.5) (6.6) 5 マクロ金融論2016 2国経済モデルの体系(3) • 金利平価式 i i s s * e 1 (6.7) • 外生的な予想将来価格水準 *e p p 0 e • 単純化のための国内総生産の標準化 y y 0 * 6 マクロ金融論2016 価格水準と国内総生産と為替相場 • 価格水準 p Am Bm C s * e 1 p Bm Am C s * * e 1 (6.8) (6.9) A B, A 0, C 0, D 0, 0 B 0 if B 0 if 7 マクロ金融論2016 価格水準と国内総生産と為替相場 • 国内総生産 y ( Am Bm C s ) (6.10) y ( Bm Am C s ) (6.11) * * e 1 * e 1 • 為替相場 s CD(m m ) C (C 2 )s * e 1 (6.12) 8 マクロ金融論2016 国際相互依存関係(1) • 自国の金融政策は外国経済に影響を及ぼす。 (「近隣窮乏化」) 自国の金融緩和M↑⇒自国金利i↓⇒自国から外 国へ資本移動⇒自国通貨減価外国通貨増価 s↑⇒外国財から自国財へ需要シフト⇒自国財価 格上昇・自国国内総生産増加+外国財価格低 下・外国国内総生産減少 9 マクロ金融論2016 国際相互依存関係(2) • 両国で同様の金融政策を行うと、為替相場に影 響を及ぼさない。それによって、両国で等しい金 利の変化を通じた価格・国内総生産の変化が 発生する。 • 近隣窮乏化をもたらさない 10 マクロ金融論2016 政策協調のゲーム理論(1) • 中央銀行の目的=国内総生産( y )と一般 物価水準( pc 0)の安定化 • 損失関数 1 2 2 L ( y ) pc 2 1 * * 2 *2 L ( y ) pc 2 (6.13) (6.14) 11 マクロ金融論2016 政策協調のゲーム理論(2) • 一般物価水準の定義 pc p (1 )( s p ) (6.15) * p p (1 )( p s) (6.16) * c * 12 マクロ金融論2016 政策協調のゲーム理論(3) • 両国の物価水準((6.8)・(6.9)・(6.12)式を (6.15)・(6.16)式に代入) pc Fm Gm Hs (6.17) p Gm Fm Hs (6.18) * * c * e 1 e 1 F G, F 0, G 0 or G 0, H 0 13 マクロ金融論2016 政策協調のゲーム理論(4) • 損失最小化の最適貨幣供給量:政策反応関数 m Xm Ys A (6.19) m Xm Ys A (6.20) * * e 1 e 1 2 2 1 X 1, Y 0 14 マクロ金融論2016 政策反応関数 • If 0<X<1, 外国の金融緩和に対して自国も金 融緩和する。 • If -1<X<0, 外国の金融緩和に対して自国も金 融引締めする。 • 自国通貨が減価すると予想されれば、自国は 金融引締めする。 • GDP目標値が高まると、自国は金融緩和する。 15 図6 -1 マクロ金融論2016 国際政策協調 m R* R* RR N B C C* B* 0 m* 16 マクロ金融論2016 非協調解と協調解 • 非協調解=ナッシュ均衡N • 協調解=CC* • 政策が協調されないと、ナッシュ均衡である点N で表される金融政策が行われる。 • 曲線CC*のどの点が選択されるかは、両国の 交渉力に依存する。 17 マクロ金融論2016 政策協調の限界(1) • 経済モデルについての共通認識の不足 ⇒国際政策協調が達成されるためには、政策当 局者が自国と外国の両方の経済の構造と政策 目標と目的関数(損失関数)について共通認識 をもっていることが必要。 18 マクロ金融論2016 共通認識がないケース • 【想定】自国の中央銀行が真の経済モデルと異なる経 済モデルを信じている。次の図のように、点B’が損失 最小点であると信じている。 ⇒協調解の集合CC*曲線は、点B’を損失最小点とする 誤った経済モデルから見れば、ナッシュ均衡Nに比較 して損失が大きいと自国の中央銀行は考える。国際協 調は不利と判断。 ⇒国際協調が行われない。 19 図6 -1 マクロ金融論2016 国際政策協調 m R* R* B’ RR N B C C* B* 0 m* 20 マクロ金融論2016 政策協調の限界(2) • 両国の中央銀行の金融政策を予想し、予想インフレ率 を高める民間部門の存在(合理的予想) ⇒民間部門が合理的予想をしない場合には両国の中央 銀行は協調によってインフレ率を高める傾向がある。し かし、民間部門が合理的予想をする場合には、中央銀 行がインフレ率を高めると、民間部門が予想インフレ 率を高めるために、国内産出量が自然失業率以上に 増加できず、インフレ率のみが上昇する。 21 マクロ金融論2016 合理的予想 • 物価水準に関する合理的予想 p p e *e p p (6.21) * (6.22) 22 マクロ金融論2016 合理的予想の下でのマクロ経済変数 s m m (6.23) 2 但し、 :自国と外国の趨勢的貨幣成長率の差 • 為替相場 * • 自国と外国の価格水準と国内総生産 p m i (6.24) p * m* i * (6.25) y y* 0 (6.26) 23 マクロ金融論2016 合理的予想の下での金融政策 • 政策反応関数(←中央銀行の損失関数最小化条件) * m i (6.28) 2 * m i (6.29) 2 • 合理的予想の下での金融政策(点E)は、協調解の集 合CC*より中央銀行の損失が大きい。 24 図6 -1 マクロ金融論2016 国際政策協調 m R*E* R* R* RR N B C C* B* 0 E m* RE 25
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