原油市場はドーハの悲劇なのだろうか

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グローバル
2016年4月18日
原油市場はドーハの悲劇なのだろうか
ドーハで主な産油国の間で増産凍結を模索する会合が不調に終わったことを受け、原油先物価格が下落していま
す。ただし、原油価格の動向は産油国間の会合よりも、需給要因に左右される可能性が高いと見ています。
ドーハ産油国会合:イランが欠席する中、原
油増産凍結で合意できず
2016年4月17日にカタールの首都ドーハで、石油輸出国機構
(OPEC)加盟国と非加盟の産油国、合計18ヵ国が参加して、
原油増産凍結を模索する会合が開催されました。予定時間
を越えて話し合われましたが、最終合意がないまま終了、合
意には至りませんでした。増産を計画するイランは同会合を
欠席、サウジアラビアなど湾岸諸国が、イランを含むOPEC
加盟国が参加しない合意には同意しない姿勢を示し、協議
は暗礁に乗り上げたと報道では伝えられています。
どこに注目すべきか:
地政学リスク、イラン、中国PMI、原油需要
ドーハで主な産油国の間で増産凍結を模索する会合が不
調に終わったことを受け、原油先物価格が下落しています
(図表1参照)。ただし、原油価格の動向は産油国間の会合
よりも、需給要因に左右される可能性が高いと見ています。
ドーハの会合が合意に失敗した背景はまず、制裁解除を受
け増産意欲の高いイラン(並びに政局の混乱で生産が減少
したリビア)が直前に不参加を表明したことで物別れに終わ
る可能性が考えられたためです。
次に、OPECの盟主とも呼ばれるサウジアラビアはイラン抜
きの合意に難色を示しました。地政学リスクなどとも表現さ
れる2016年年初の国交断絶による両国の関係悪化が原油
市場のリスクとなった格好です。
確かに、今回の会合は2016年2月に4ヵ国で原油増産凍結を
模索する会合を受けてのもので、参加国の拡大などもあり、
合意の行方が原油市場の動向を左右する印象も見られま
すが、この間(2月から現在まで)に起きた経済環境の変化
がより重要な影響を原油市場に与えたとも考えられます。
例えば中国の景気見通しの改善です。中国の製造業購買
担当者景気指数(PMI)は低下傾向でしたが足元の数字は
50.2と景気拡大・縮小の目安の50を(景気対策頼りながら)
超えており(図表2参照)、原油需要も期待されます。
ピクテ投信投資顧問株式会社
次に、原油需要の改善期待です。米国などの暖冬で需要減
が懸念されていましたが、今後はガソリンの需要回復が期待
される面もあり、季節要因による落ち込みから解放される可能
性も考えられます。
また、産油国の話し合いに参加する可能性が見込まれない米
国ですが、一部のシェール油田では採算が合わないなどの理
由で原油生産に頭打ち傾向が見られます。
最後に2月のイエレン議長の議会証言や3月の米連邦公開市
場委員会(FOMC)で(世界経済の悪化を懸念して)利上げ
ペースの後退が示唆されたことも下支え要因と見られます。
以上の4点は持続性の点で弱い面もあり、原油価格を上昇さ
せるには不十分と見られますが、ドーハ会合物別れ(決裂で
はなく今後も妥協点を模索)のショックで下落が懸念される原
油価格をある程度下支えする可能性も考えられます。
図表1:WTI原油先物価格の推移
(日次、期間:2015年4月20日~2016年4月18日(日本時間正午))
ドル/バレル
65
55
45
35
WTI原油先物
25
15年4月
15年7月
15年10月
16年1月
16年4月
※WTI原油先物:ニューヨーク・マーカンタイル取引所(NYMEX)で取引される
原油先物(軽質スイート原油先物)の期近物で構成
図表2:中国製造業購買担当者景気指数(PMI)推移
(月次、期間:2011年3月~2016年3月、政府版PMI)
55
54
53
52
51
50
49
48
11年3月
中国製造業購買担当者景気指数(PMI)
13年3月
15年3月
出所:ブルームバーグのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成
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