人民元安だが、様子が違う

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アジア
2016年6月1日
人民元安だが、様子が違う
2015年8月や2016年年初には人民元安が中国株式市場の下落を伴うという現象が見られましたが、中国株式市場は
小幅な変動にとどまっています。過去の株価が急落した局面と現在とではどこが違うのかを振り返ります。
中国人民銀:人民元の中心レートを3日連続
で引き下げ、2011年以来の低水準
中国人民銀行は2016年6月1日、人民元の中心レートを前日
の1ドル=6.579から0.15%引き下げ、1ドル=6.5889元に設
定しました(図表1参照)。人民銀は中心レートを5月の1ヵ月
間で2%弱引き下げています。人民元の対ドルレートは2011
年前半の水準にまで低下しています。
どこに注目すべきか:
中国製造業PMI、通貨バスケット、資本逃避
ピクテ投信投資顧問株式会社
図表1: 人民元(対ドル)と上海総合指数の推移
(日次、2015年6月1日~2016年6月1日(日本時間午後))
6.7 人民元/ドル
5,500
株価指数
人民元(対ドル、左軸)中心レート
6.6
人民元(対ドル、左軸)
6.5
上海総合指数(右軸)
4,500
6.4
6.3
3,500
6.2
6.1
2,500
6.0
15年6月
15年9月
15年12月
16年3月
16年6月
安 人民元 高
人民元が対ドルで弱含んでいます。2015年8月や2016年年
初には人民元安が中国株式市場の下落を伴うという現象が
見られましたが、中国株式市場は小幅な変動にとどまって
います。過去の株価が急落した局面と現在とではどこが違う
のか、次の3点に注目しています。
まず、中国の景気動向の違いです。過去2回の局面では中
国景気に対し(過度の)悲観論が見られましたが、足元中国
景気への見方に落ち着きが見られます。例えば、中国財新
製造業購買担当者景気指数(PMI)の動きを見ると、2015年
6月から9月にかけて49.4から47.2へ急速に悪化しています
(図表2参照)。2016年年初に公表された2015年12月の財新
製造業PMIは48.2となりました。ただし、市場予想では48.9程
度が予想されていたため失望感が高まったと見られます。
一方、6月1日に公表された5月の財新製造業PMIは49.2と景
気拡大・縮小の目安の50を下回るものの、まずまずの水準
で、市場予想(49.2)と一致しています。
次に、中国当局の為替政策の変化です。2015年8月の人民
元安政策は、中国当局が事前の説明なく短期的に水準を変
えたため、市場は当局の意図を理解できず、リスクを落とす
(株式などリスク資産を売る)動きが見られました。一方、足
元では米国の利上げ観測を織り込む形で、緩やかに人民元
安が進行しています。報道によると中国当局は年初の市場
の変動を受け、その後人民元の中心レートの設定に通貨バ
スケットの動きを反映させ、ユーロなど他の通貨の動向をと
りいれる運営に改善した模様です。市場実勢と整合的な動き
であることが過度の変動を抑えた可能性が考えられます。
3点目は、資本逃避が既にある程度終了した可能性です。貿
易にとってプラスが期待される人民元安が株式市場にマイナ
スとなった原因として資本逃避(実体は中国国内からと見ら
れる)による売りが指摘されていましたが、過去の人民元安
により当該ポジションはある程度整理が進んだ可能性が考
えられます。
中国株式市場の落ち着きには中国A株の株価指数組入れ期
待という偶然もあるのかもしれませんが、(持続性には疑問
が残るものの)景気の回復期待と、過去の政策の見直しも貢
献しているように思われます。
図表2:中国製造業購買担当者景気指数(PMI)の推移
(月次、期間:2015年1月~2016年5月)
51
財新製造業PMI
中国製造業PMI
指数
50
49.4
49.2
49
48
48.2
47.2
47
15年1月
15年7月
16年1月
出所:ブルームバーグのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成
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