市場の効率性

市場の効率性
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市場経済においては,需要と供給の作用によって
価格と取引数量がきまる.これは実証的な側面の
考察
この章では,市場のはたらきによる資源の配分が
経済的福祉にとってどのような意味で望ましいとい
えるのかをみる
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消費者余剰
生産者余剰
総余剰
支払い許容額
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買い手が財に対して支払ってもよいと思っている金
額の最大値を支払い許容額という
支払い意志額ということもある
一般に買い手は安ければ安いほどよいと考えるの
で最大値を考えることに意味がある
財の価格が支払い許容額よりも低ければ購入し,
高ければ購入しない.等しければどちらでもよい
人によって異なる
例
●
リンゴ1個に対する5人の買い手の支払許容額
買い手 支払許容額(円)
A
180
B
150
C
130
D
110
E
100
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●
支払許容額と価格が一致しているときは購入しな
いとする
リンゴ1個を競売にかける
価格が150円になったとき買い手がひとりになり競
売がおわる
もっとも高い評価をしているAがリンゴを手に入れ
る
買い手 支払許容額(円) 価格 脱落者
A
180
B
150 150 B,C,D,E
C
130 130 C,D,E
D
110 110 D,E
E
100 100 E
消費者余剰
●
●
Aはリンゴ1個に対し,最大180円支払ってもよいと
考えていたが,実際には150円を支払うことでリン
ゴをえることができた
このときAは,取引に参加することで,
30円(=180-150)の便益をえている
●
●
この便益を消費者余剰という
消費者余剰=支払許容額ー実際の支払額
総消費者余剰
●
リンゴが2個あるとし,競売を考える
●
取引価格は130円になる
●
●
A,Bがえた消費者余剰の和(70円)を総消費者余剰という(0円の人
も足すが影響がない)
一般的にいうときは,消費者余剰は総消費者余剰のこと
買い手 支払許容額(円) 価格 脱落者
A
180
B
150
C
130 130 C,D,E
D
110 110 D,E
E
100 100 E
消費者余剰
50円
20円
0円
0円
0円
需要表
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●
価格
リンゴ需要量
181~
0
151~180
1
131~150
2
111~130
3
101~110
4
~100
5
支払許容額と価格が一致する場合購入すると考え
る
余剰は,支払許容額ー価格,なので購入するとし
てもしないとしても余剰の計算に影響はない
価格
支払許容額にもとづく需要曲線
需要曲線の高さは
支払許容額をしめ
している
180
150
130
110
100
1
2
3
4
5
数量
価格
需要曲線でみる消費者余剰
価格が150円であれば,
需要量1個で,これを購
入した人の消費者余剰
は30円であり,これはA
の面積である.
価格が130円であれば,
需要量2個で,1個目購
入した人の消費者余剰
は50円(A+Bの面積) で
あり,2個目を購入した人
の消費者余剰は20円(C
の面積)である.総消費
者余剰は70円
(A+B+C).
180
A
150
B
C
D
E
130
F
110
100
1
2
3
4
5
数量
一般的に考える
●
多数の買い手がいて複数個買う可能性がある場合を考える.
需要曲線は階段が細かくなって直線とみなしてもよいようにな
る
●
消費者余剰は需要曲線と価格から引いた水平線で囲まれる面
積ではかられる
価格
消費者余剰
取引価格
需要曲線
数量
価格の下落がもたらす消費者余剰の増加
●
価格の下落によって消費者余剰は増加する.追加の増分は下
落以前に購入していたヒトが追加でえられる増分と新規に購入
するヒトがえられる消費者余剰の和である.
価格
下落以前の
消費者余剰
新規に購入する
ヒトが得る分
取引価格
価格下落
これまで購入したいたヒト
が追加で得る分
需要曲線
数量
費用と財を供給する意志
●
●
●
●
財を生産し供給する側を考える
財を生産する費用は機会費用で考える
財の価格が費用より高ければ生産し供給する.低
ければ生産しない.同じであれば生産するとしても
よいし,しないとしてもよい.
費用が財を生産し供給する最低限の価格を示して
いると考えられる
例
●
リンゴジュース1パックに対する5人の売り手の費
用
売り手
A
B
C
D
E
費用(円)
250
230
220
200
170
●
費用と価格が一致しているときは生産しないとする
●
リンゴジュース1パック購入されるとする.高い価格から考えて
供給者が一人になったときにその価格で購入されるとする
●
価格が200円になったとき売り手がひとりになりおわる
●
もっとも低い費用で生産できるEが生産する
売り手 費用(円)
A
B
C
D
E
価格 脱落者
250 250 A
230 230 A,B
220 220 A,B,C
200 200 A,B,C,D
170 170
生産者余剰
●
●
Eはリンゴジュース1パックの生産の費用が170円
であったから,170円よりも1円でも高ければ生産
する意思があった.実際には生産し供給することで
200円えることができた
このときAは,取引に参加することで,
30円(=200-170)の便益をえている
●
●
この便益を生産者余剰という
生産者余剰=実際の受け取り額ー費用
総生産者余剰
●
リンゴジュース2パック購入を考える
●
価格が220円になったとき売り手がふたりになりおわる
●
DとEがえた生産者余剰の和70(=50+20)を総生産者余剰という
●
一般的にいうときには生産者余剰で総生産者余剰をさす
売り手 費用(円) 価格 脱落者
A
250 250 A
B
230 230 A,B
C
220 220 A,B,C
D
200 200
E
170 170
生産者余剰
0
0
0
20
50
供給表
価格
~169
170~199
200~219
220~229
230~249
250~
●
●
リンゴジュース供給量
0
1
2
3
4
5
費用と価格が一致する場合生産すると考える
余剰は,価格-費用,なので生産するとしてもしな
いとしても余剰の計算に影響はない
費用にもとづく供給関数
価格
価格が200円であれば,
生産量1個で,これを生
産した人の生産者余剰
は30円であり,これはA
の面積である.
価格が220円であれば,
生産量2個で,1個目を生
産した人の生産者余剰
は50円(A+Bの面積) で
あり,2個目を生産した人
の生産者余剰は20円(C
の面積)である.総生産
者余剰は70円
(A+B+C).
250
230
D
E
B
C
F
220
200
A
170
数量
1
2
3
4
5
一般的に考える
●
多数の売り手がいて複数個生産する可能性がある場合を考え
る.供給曲線は階段が細かくなって直線とみなしてもよいよう
になる
●
生産者余剰は供給曲線と価格から引いた水平線で囲まれる面
積ではかられる
価格
供給曲線
取引価格
生産者余剰
数量
価格の上昇がもたらす生産者余剰の増加
●
価格の上昇によって生産者余剰は増加する.増加分はこれま
で生産していた生産者がえる増加分と追加の生産者が新規に
える分の和である.
価格
供給曲線
上昇後に追加でえられる
生産者余剰
取引価格
上昇以前の
生産者余剰
追加の生産から
えられる
生産者余剰
数量
均衡における総余剰
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●
●
●
均衡価格は需要量と供給量が一致する価格,需
要曲線と供給曲線が交わる点での価格
消費者余剰は価格から引いた水平線と需要曲線
で囲まれる部分の面積
生産者余剰は価格から引いた水平線と供給曲線
で囲まれる部分の面積
したがって市場での取引に参加している人全体の
均衡状態における総余剰は次のスライドのAとBの
面積となる
価格
供給曲線
消費者余剰
(A)
均衡点
均衡価格
生産者余剰
(B)
需要曲線
均衡取引数量
数量
市場の効率性(1)
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経済的福祉を,消費者余剰と生産者余剰の和であ
る総余剰ではかるとする
資源の配分が総余剰を最大にしているとき効率的
であるという
消費者余剰
=買い手にとっての価値ー支払った額
生産者余剰
=受取額ー売り手の費用
総余剰=買い手にとっての価値ー売り手の費用
市場の効率性(2)
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●
総余剰=買い手にとっての価値ー売り手の費用
したがって,財に最も高い価値をつけている買い手
に資源がわたっていないときは非効率.
財の生産をもっとも低い費用でおこなえる生産者
が生産をしていないときは非効率
衡平の問題は効率性とは別
市場均衡の評価
●
完全競争の仮定のもとで自由市場は総余剰を最大にする
(効率的な)財の量を生産する
●
需要と供給できまる均衡点において資源配分が効率的
●
緑の部分では,買い手の価値ー売り手の費用>0,なので
生産量を増やすことで総余剰を増加させることができる
(次のスライド)
●
赤の部分で買い手の価値ー売り手の費用<0,なので生産
量を増やすことで総余剰を増加させることができる(次の
スライド)
市場均衡の評価(グラフ)
価格
供給曲線
需要曲線
均衡取引数量
数量
連絡
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次回は第7章.必ず読んでおくこと
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復習問題を参考に6章の内容をまとめる
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応用問題を考える
4章と5章の応用問題の偶数番の解答例は
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http://nakamath.eco.saga-u.ac.jp