この章で学習すること • 市場はどうやって、人々の目的を達成するか。 • 買い手と売り手の目的はなにか。 第4章 市場の効率性 • どのように、それらの目的が達成されたかを 評価するか。 • 市場は買い手と売り手の個人 レベルの情報を活用する。 はじめに 市場は無人で動く 市場はとても巨大な組織 市場はリーダーや管理者なしに動いている。 • 膨大な種類の商品 ネット通販の大手(楽天)で160万点。 市場全体ではもっと多い • 膨大な数の参加者 日本の人口は1億2千万以上 そのほとんどと、さまざまな 企業が市場の参加者 組織における情報 大人数のサークル、運動部、生徒会の リーダーは色々な知識が必要。 例) 野球部の主将に必要な知識 • Aはバントがうまい。 企業や政府には経営陣、内閣などのリーダーがいる。 にもかかわらず、市場で、自分の必要なもの、好みのも のを手に入れることができる。 どうやって、無人操縦の組織である市場が、 私たちの必要性や好みを汲み取っている のだろうか。 買い手の目的と売り手の目的 買い手の目的 買った商品から高い満足度を得ること • Bは球が遅いがコントロールがいい。 このような知識は野球の 専門的知識ではなく、組織特有の情報 組織が大きくなるほど、リーダーが 組織特有の情報とつかむのは難しくなる。 売り手の目的 商品を売ることで利潤(儲け)を得ること 1 市場における個人レベルの情報 お金で測った満足度 買い手の満足度と関係する情報 買い手の満足度の尺度 • 商品への必要性 (食品へのアレルギー、靴のサイズ) • 商品への好み (コーヒー、紅茶、日本茶のどれが飲みたいか) 市場はどうやって、個人レベルの情報を 活用しているのだろうか。 例) Aさんは価格が 100円を超えるならコーヒーを買わず、 100円以下ならコーヒーを買う。 Aさんのお金で測った コーヒーの満足度は100円 お金で測った満足度と個人レベルの情報 消費者余剰 お金で測った満足度はさまざまな 個人レベルの情報を反映している。 満足度が100円のコーヒーを買えば 満足度が100円増えるのではない。 例) コーヒーのお金で測った満足度 • オレンジジュースとどちらがいいか。 • コーヒー代を節約すれば、夕飯をどれだけ グレードアップできるか。 100円なら、マンガの古本が買える。 コーヒーの価格が80円とすれば、コーヒーを 手に入れるために他の80円のものをあきらめ なければならない。 消費者余剰=お金で測った満足度ー価格 例)満足度100円のコーヒーを80円で買った。 消費者余剰=100円ー80円=20円 などなど お金で測った満足度と需要量 お金で測った満足度と需要曲線 Aさんのビールのお金で測った満足度 1本目:800円、2本目:500円、3本目:300円 価 格 600円 400円 300円未満 1本目 2本目 3本目 満足度>価格 満足度<価格 満足度<価格 満足度>価格 満足度>価格 満足度<価格 満足度>価格 満足度>価格 満足度>価格 1本 ビールを飲む。 2本 ビールを飲む。 最低3本 ビールを飲む。 1 2 3以上 需要量 • お金で測った満足度を 棒グラフにすると需要 曲線になる。 • 棒グラフの高さ(お金で 測った満足度)が 価格より高い商品が 需要される。 2 需要曲線と消費者余剰 売り手の費用 消費者余剰=満足度ー価格 さまざまな費用 1本目=800-400(①) • 生産にかかる費用 2本目=500-400(②) • 仕入れにかかる費用 需要曲線と価格ではさ まれた図形の面積が 消費者余剰をあらわす 。 • 売り手自身に満足度をあたえるものを 手放す費用 売り手の費用も個人レベルの情報 正確に知っているのは売り手自身だけ。 最低販売価格 生産者余剰 売り手は高い費用のものは、高い価格でしか 売らない。逆に、安い費用のものは、 安い費用でも売る。 売り手の利潤の指標 売り手が商品をいくらで売ってもいいかと 考えるかは、費用を反映している。 最低販売価格 売り手が商品を売ってもいいと考える 最低の価格。 最低販売価格と供給量 生産者余剰=価格ー最低販売価格 例) 最低販売価格80円の商品を価格100円で 売る。 生産者余剰=100-80=20円 供給曲線と生産者余剰 価格>最低販売価格 供給する 価格<最低販売価格 供給しない 例) 3人のコーヒーの売り手 A:最低販売価格50円、100個 B:最低販売価格80円、70個 C:最低販売価格110円、60個 • 最低販売価格の低い売り手の 順に、最低販売価格の棒グラ フを作る。 • 価格の水平線より最低販売価 格が低い商品が供給される。 ⇒最低販売価格の棒グラフ は供給曲線をあらわす。 価格=90円 ⇒売り手A、Bが供給 ⇒供給量=100+70=170 3 供給曲線と生産者余剰 供給曲線と価格水平線ではさま れた図形の面積が生産者余剰 をあらわす。 売り手Aの生産者余剰 =(100-50)×100 売り手Bの生産者余剰 =(100-80)×70 個人レベルの情報と需要曲線・供給曲線 満足度も費用も個人レベルの情報 個人レベルの情報はみんな秘密に したがる。 ⇒アンケートをとってもみんな正直 に答えてくれない。 ところが、市場では、供給量と需要量の決定を 通じて、売り手は満足度を、買い手は費用を 正直に市場に申告する。 市場は個人レベルの情報を集約するしくみ。 市場全体の供給曲線・需要曲線 総余剰 • 市場には多数の売り手と買い手がいる。 総余剰 • 個人の需要曲線から市場全体の需要曲線を 導くやり方は3章を参照。 • 多数の売り手と買い手がいるとき、需要曲線 と供給曲線は、いままでの例のように階段状 ではなく、なめらかに見える。 =消費者余剰の総計+生産者余剰の総計 =満足度の総計ー最低販売価格の総計 供給曲線 供給曲線 需要曲線 供給曲線 需要曲線 満足度の総計(太枠の台形) 総余剰の最大化 売り手と買い手の順序づけ 個人レベルの情報を知っている神様が 総余剰を最大化するとしよう。 神様は満足度の高い順に買い手に需要 させ、最低販売価格の低い順に売り手に 供給させる。 神様より、多くの総余剰を達成するこ とは無理。神様が達成する総余剰が 最大の総余剰 この順番がみだされると、総余剰は 最大化できない。 4 順序づけがされていない例 最適取引量 最低販売価格が200円の売り手が 供給し、50円の売り手が供給していない 神様は「需要しているなかで一番低い買い手 の満足度=供給しているなかで一番高い最低 販売価格」となるように、取引量をきめる。 200円の売り手の供給量をへらして、 同じだけ50円の売り手の供給量を増やす。 同じ供給量で総余剰の増加。 もともとの状態では総余剰は最大になって いない。 最適取引量において、 「満足度=最低販売価格」 取引量<最適取引量 取引量>最適取引量 最低販売価格が満足度 を下回る、実行されると 総余剰が増えるように 取引が行われない。 最低販売価格が満足度を 上回る、実行されると 総余剰が減るような 取引が行われる。 (マイナスの余剰が発生) 図のAの面積だけ、 最適取引量より総余剰が少ない。 図のBの面積だけ、 最適取引量より総余剰が減少。 市場の効率性 おわりに 最適取引量は均衡取引量(需要量と供給量が 等しくなる取引量)と一致する。 市場均衡は総余剰を最大化している。 総余剰からみて効率的: 総余剰が最大化されていること。 市場均衡は総余剰からみて効率的で ある。 • 市場が効率的であるのは、個人レベル情報を市場が 活用しているから。 • われわれが色々なものを市場で買えるのは、市場の 規模が大きくなっても、市場が個人レベルの情報を 処理し続けるから。 • だだし、市場は常にうまく動くとはかぎならない(市場 の失敗)、また、効率的であっても、公平でなかったり、 平等でなかったりするかもしれない。 このようなときは政府の政策が必要。 5 この章でまなんだこと 考えてみよう 1 • 市場における個人レベルの情報 あなたの最近の買い物で、あなたが得た 消費者余剰がいくらか考えてみよう。 • お金で測った満足度と最低販売価格 • 満足度と需要量、最低販売価格と供給量の 関係 • 消費者余剰、生産者余剰、総余剰 • 市場は総余剰を最大化する。 (市場は効率的である。) 例) 昼にコンビニ弁当を380円、 缶コーヒーを120円で買った。 コンビニ弁当のお金で測った満足度 450円 缶コーヒーをお金で測った満足度 200 コンビニ弁当から得た消費者余剰 450-380=70円 缶コーヒーから得た消費者余剰 200-120=80円 考えてみよう 2 考えてみよう 3 あなたが、お金があれば、いくつも買ったり、 飲んだり、食べたりしたくなる商品の あなた自身の需要曲線を書いて、 そこから、商品ひとつごとのお金で測った 満足度がどれだけかを考えてみよう。 コラム2を参考にして、 商品の価格が上がったとき、 どうして、売り手はうれしく感じるか、 生産者余剰を使って考えてみよう。 次に読んでほしい本 「ミクロ経済学Ⅰ」 八田達夫 東洋経済新報社、2008年 「入門経済学(第三版)」 伊藤元重 日本評論社、2009年 6
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