公共経済(1) 余剰分析

「初級ミクロ経済学 3」(宮澤和俊)
第 17 講
2014/12/12
公共経済 (1) 余剰分析
1. 消費者余剰
消費者の最適化問題を,
max
x, y
U = u(x) + y
(1)
subject to
m = px + y
(2)
と定式化する.x はある財の消費量,p はその価格,m は所得,y は貨幣を表
す1 .(2) 式を (1) 式に代入すると,
max
x
U = u(x) + m − px
となる.最適化の条件は,
p = u0 (x)
(3)
である.限界効用が逓減するとき(u00 < 0),(3) 式で表される(逆)需要曲
線は (x, p) 平面で右下がりになる(図 7.2).
価格が p1 のときの間接効用関数は,
U = u(x1 ) + m − p1 x1
である.ただし,p1 = u0 (x1 ).ここで,我々は,
Z x1
1
u0 (x)dx = [u(x)]xx=0
= u(x1 ) − u(0)
0
であることを知っている.これを利用すると,
Z x1
U=
u0 (x)dx − p1 x1 + m + u(0)
(4)
0
となる.
第 1 項の定積分は需要曲線の下の面積を表す.第 2 項の消費支出 p1 x1 は長
方形の面積を表す.m + u(0) は定数なので省略.価格が p1 のとき,消費者
は財を買うことにより,価格線の上の三角形の面積だけ経済厚生がアップす
る.消費者余剰 (consumer surplus, CS) という.
問題 1
上の設定で,u(x) = 60x − x2 (0 5 x 5 30) とする.
(1) p = 40 のときの需要量および消費者余剰を求めよ.
(2) p = 20 のときの需要量および消費者余剰を求めよ.
1 (1) 式のような効用関数を準線型 (quasi-linear) という.貨幣の限界効用は常に 1 であり逓
減しない.
1
2. 生産者余剰
企業の最適化問題を,
max
x
π = px − C(x)
と定式化する.ここで,x は生産量,p はその価格,C(x) は費用関数である.
最適化の条件は,
p = C 0 (x)
(5)
である.限界費用が逓増するとき(C 00 > 0),(5) 式で表される供給曲線は
(x, p) 平面で右上がりになる(図 7.3).
価格が p1 のときの利潤は,
π = p1 x1 − C(x1 )
である.ただし,p1 = C 0 (x1 ).ここで,我々は,
Z x1
1
C 0 (x)dx = [C(x)]xx=0
= C(x1 ) − C(0)
0
であることを知っている.これを利用すると,
Z x1
π = p1 x1 −
C 0 (x)dx − C(0)
(6)
0
となる.
第 1 項の収入 p1 x1 は長方形の面積を表す.第 2 項の定積分は供給曲線の下
の面積を表す.C(0) は定数なので省略.価格が p1 のとき,企業は財を生産
することにより,価格線の下の三角形の面積だけ利潤が生ずる.生産者余剰
(producer surplus, PS) という.
問題 2
上の設定で,C(x) = 2x2 とする.
(1) p = 40 のときの供給量および生産者余剰を求めよ.
(2) p = 20 のときの供給量および生産者余剰を求めよ.
3. 社会的余剰
消費者余剰と生産者余剰の合計を社会的余剰 (Social surplus, SS) という.
市場均衡では社会的余剰は最大.余剰が最大という意味で,市場均衡は効率
的である.
問題 3
ある財の市場需要曲線が D : p = 60 − 2x,市場供給曲線が S : p = 4x で
あるとする.
(1) 均衡価格を求めよ.
(2) 市場均衡における消費者余剰 CS ,生産者余剰 P S ,社会的余剰 SS を
それぞれ求めよ.
(3) 市場均衡において社会的余剰が最大となることを確かめよ.
講義資料
http://www1.doshisha.ac.jp/˜kmiyazaw/
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