第4学年C組 理科学習指導案 授 業 者 研究協力者 1 単元名 「物の性質を調べよう 高橋 浦野 猛 弘,川村 教一,田口 瑞穂 ~物の体積と温度~」 2 子どもと単元 (1) 子どもについて 子どもたちは第3学年において,「粒子の保存性」にかかわる内容として,物は形が変わ っても重さが変わらないことや体積が同じでも物によって重さが違うことを学習している。 また,物に日光を当てると物のあたたかさが変わることなど,エネルギーの見方についても 学習している。第4学年では,「閉じこめた空気と水」の単元において,閉じ込めた空気は お お 圧し縮めることができること,水は圧しても体積が変わらないことを学習している。その際 空気と水の性質の違いをとらえるため,力を加える前後の空気の体積変化について,空気を モデル化して説明する経験をしている。身の回りには,温度の変化によって物の体積が変化 する現象は多く存在するが,空気のように目に見えなかったり,水や金属のように体積の変 化が小さかったりするために,それに気付いている子どもは少ないと考えられる。 (2) 単元について 本単元は,「粒子」についての基本的な見方や概念を柱とした内容のうち「粒子のもつエ ネルギー」にかかわるものであり,中学校の「状態変化」の学習につながるものである。こ こでは,空気,水,金属の性質について興味・関心をもって追究する活動を通して,温度の 変化と体積の変化とを関係付けて考える能力を育てるとともに,それらについての理解を図 り,空気,水,金属の性質についての見方や考え方をもつことができるようにすることがね らいである。 身近に存在する空気,水,金属をあたためたり冷やしたりして,それらの体積変化につい て,「閉じこめた空気と水」の学習を基に,子どもなりの予想を立てながら,見通しをもっ て問題解決に取り組むことができる単元である。また,身の回りの現象と関連付けながら考 えることで,学習したことと生活のかかわりについて,実感を伴った理解を図ることができ る単元でもある。 (3) 指導について 温度変化による,空気,水,金属の体積変化について,主体的な追究活動を通して問題を 解決させていきたい。そのためには,「おや?不思議だな」と思えるような事象を提示する ことが重要であると考える。そこで,フラスコを温めると栓が飛び出す現象や瓶を冷やすと ゆで卵が吸い込まれて瓶の中に入る現象など,様々な事象を提示する。そして,子どもたち の疑問から問題を見いだし,予想し,それを確かめる計画を立て考察するという学習過程を 構成していく。 また,科学的な見方や考え方を育てるために,実験結果を正確に記録し,それを根拠とし た「対話」の場を設定していく。予想を確かめるための実験を計画し,それぞれが違った実 験方法で問題解決を進めると,他のグループの実験の様子や結果,考察の過程が分かりにく いことがある。そこで,実験の様子をタブレット型端末で撮影し,その映像を使ってグルー プや全体で考察していく活動を取り入れる。実験のどの様子を撮影すれば良いのかという視 点をもつことで,見通しをもった追究活動も期待される。 3 単元の目標〈記号は本校の資質・能力表による〉 (1) 空気,水,金属をあたためたり冷やしたりしたときの体積変化に興味をもち,意欲的に追 究しようとする。 <ア-2,7> (2) 空気,水,金属の温度と体積の変化について,予想を基に実験を計画したり,実験結果か ら物の温度と体積の変化の関係について考察したりすることができる。 <イ-1,3> (3) 閉じこめた空気や水,金属をあたためたり冷やしたりして,体積の変化を調べ,結果を図 やグラフ,表などを用いて適切に記録することができる。 <ウ-1i,ウ-3> (4) 空気,水,金属は,温度によって体積が変化すること,変化の仕方は空気が最も大きいこ とが分かる。 <エ-10> 4 単元の構想(総時数8時間) 時間 学習活動 1 (1) フラスコの栓が飛 び出す実験をして, その理由を予想する 教師の主な支援 ・ 子どもたちの関心を高める ため,最初はフラスコのあた ためている部分を隠して事象 提示する。 ・ 栓が飛び出す理由を予想し やすいように,空気の様子を 図に表して考える活動を取り 入れる。 評価<本校の資質・能力との関連> ・ フラスコの栓が飛び出 す実験を意欲的に行い, その理由について予想し 進んで調べようとしてい る。 <ア-2,7> <問題①> フラスコのせんが飛び出したのは,どうしてだろうか。 2 (2) 予想を確かめる方 法を考える。 3 本時 (3) 予想を確かめる実 験をする。 4 5 ・ 多様なアイデアを基に予想 を確かめる方法を考えること ができるように,同じ予想を した子ども同士で実験のグル ープをつくる。 ・ 実験の妥当性を検討するた め,計画した実験の内容を全 体で確認する場を設定する。 ・ 実験の結果を確認しながら 考察を行うことができるよう 実験の様子を撮影できるタブ レット型端末を準備する。 ・ 予想を確かめるための 計画を立て,実験の見通 しをもっている。<イ-1> ・ 実験結果から,フラス コの栓が飛び出した理由 について考え,空気の体 積変化によるものである と説明している。 <イ-3> ・ 閉じこめた空気を冷や して,体積の変化を調べ 結果を記録している。 <ウ-3> (4) 空気を冷やして体 ・ 空気を冷やしたときの体積 積の変化を調べ,空 変化についても問題を見付け 気の温度変化と体積 ることができるように,ゆで 変化の関係について 卵が吸い込まれて瓶の中に入 まとめる。 る現象を提示する。 (5) 水や金属も,温度 ・ 事実を根拠とした話合いに ・ 水や金属は,温度によ の変化によって体積 なるように,生活経験や身の って体積が変化するかを が変化するかを予想 回りの現象から予想を引き出 予想し,進んで調べよう し,実験の計画を立 すようにする。 としている。 <ア-2,7> てる。 <問題②> 水や金ぞくも,温度によって体積が変わるのだろうか。 6 (6) 水をあたためたり 冷やしたりして,体 積の変化を調べる。 7 (7) 金属の球をあたた めたり冷やしたりし て,体積の変化を調 べる。 8 (8) 温度による物の体 積変化について,学 習したことをまとめ る。 ・ 小さな体積の変化にも気付 くことができるように,ガラ ス管付きのゴム栓をはめたフ ラスコや試験管を準備する。 ・ 金属の体積変化は,目では 確認できないため,専用の金 属膨張実験器具を準備する。 ・ 実験用ガスこんろや金属膨 張実験器具の安全な使い方に ついて確認する。 ・ 実感を伴った理解を図るこ とができるように,温度によ って空気,水,金属の体積が 変化している現象をいつくか 紹介する。 ・ 閉じこめた水をあたた めたり冷やしたりして, 体積の変化を調べ,結果 を記録している。<ウ-3> ・ 実験用ガスこんろを使 って金属をあたためたり 冷やしたりして,体積の 変化を調べ,結果を記録 している。 <ウ-1i,ウ-3> ・ 空気,水,金属は,温 度によって体積が変化す ること,変化の仕方は空 気が最も大きいことが分 かる。 <エ-10> 5 本時の実際 本時(3/8) (1) ねらい 栓をしたフラスコをあたためたときにフラスコの栓が飛び出した理由を,温度変化に 伴う空気の体積変化と関係付けて説明することができる。 (2) 展 開 時間 ○:「対話」の機能を活かすための手立て 学習活動 教師の支援 評 価 <問題> フラスコのせんが飛び出したのは,どうしてだろうか。 13分 ① 計画した実験を行う。 7分 ② 実験結果をまとめ,考察 する。 20分 ③ グループごとに,実験結 果と考察を発表する。 【仲間との対話】 (予想される見方や考え方) ・ 体積が大きくなっているこ とがよく分かる実験方法だ。 ・ その実験方法では,本当に 予想が確かめられたとは言え ないのではないか。 ・ ・ 精度の高い実験ができるように,グループで予想 と実験方法について確認する場を設定する。 ・ 映像を基に考察できるように,タブレット型端末 をグループに1台準備する。 ・ 安全に実験を進めることができるように,60℃程 度のお湯を準備する。 ・ 実験を自分事としてとらえ,より正確な実験結果 が得られるように,実験時の役割を変えて複数回実 験するように促す。 ・ 安全に気を付け計画通り実験が進んでいるかを確 認するため,グループごとに実験の様子を確認し, 必要に応じて助言する。 ・ 実験結果をもとに他のグループへ説明できるよう に,考察の視点を示す。 ・ 撮影した動画から,考察の根拠を他のグループへ 伝えられるように,グループで映像を確認する場を 設定する。 ・ グループの実験結果が分かるように,マトリクス 表を使って分類する。 ○ グループごとの実験の様子が共有できるように, タブレット型端末を電子黒板に接続し,映像を根拠 にしながら考察し合う場を設定する。 ○ 考えを全体に広げ,科学的な見方や考え方を高め るために,担当したグループが実験結果と考察を発 表し,その他の子どもが実験方法や考察の妥当性に ついて検討するように進める。 自分たちの予想は違ってい グループの結果と考察を総合的にとらえ,フラ スコの栓が飛び出したのは,フラスコの中の空気 があたためられて体積が増えたためであることを 説明している。 (発言の内容,ノートの記述内容) <イ-3> たが,他のグループの実験結 果から,空気をあたためると 体積が大きくなって栓が飛び 出したことが分かる。 5分 ④ フラスコの栓が飛び出し た理由を説明し,結論をま とめる。 ・ 結論付ける際の焦点化を図るため,子どもたちの 言葉から,体積変化とその要因にかかわるキーワー ドを拾い上げる。 (3) 「仲間との対話」を通して新たな価値を創造する子どもの姿 《学習活動③において》 【協働して追究する「問い」】 「フラスコのせんが飛び出したのは,どうしてだろうか。」 ・ 子どもの姿 自分たちの実験では,空気をあたためると体積が大きくな ることが確かめられた。他のグループの実験結果はどうだっ たのだろうか。 ・ あたためられた空気が上に移動して栓を押していると予想 したけれど,実験結果から違うことが分かった。それなら, 空気をあたためると体積が大きくなるのかな。 【教師の手立て】 ・ グループごとの実験の様子を再現し共有できるように,タ ブレット型端末を電子黒板に接続し,映像を根拠にしながら 考察し合う場を設定する。また,実験結果や考察を検討する 際の視点を次のように設定する。 ① 予想を確かめることができる実験であったか。 ② 実験したグループの考察は妥当であったか。 仲間との対話 ・ へこませたペットボトルをあたためるとふくらむというこ とは,あたためられたことによって空気の体積が大きくなっ たということだ。 ・ 私たちのグループは別の方法で実験したけど,その方法で も,空気をあたためると体積が大きくなるということが確か められるね。 ・ モデル図のように,シャボン玉を使って空気を可視化させ て実験すると分かりやすいな。 ・ 空気をあたためると体積が大きくなるという実験はしてい なかったけど,瓶をあたためることで風船がふくらむという 実験結果を見て納得できた。 ・ その実験方法では,空気が上に移動して栓が飛び出した可 能性もあるので,予想が確かめられたとは言えないのではな いか。容器を横にしたり,逆さまにしたりしながら同じ実験 をする必要があるのではないか。 目指す 子どもの姿 ・ 他のグループの実験結果も合わせて,空気があたためられ たことによって体積が大きくなり,フラスコの栓が飛び出し たと説明している。
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