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第5学年A組
道徳の時間
学習指導案
指 導 者
研究協力者
1
2
主題名
誠実に生きる
1-(4)
資料名「手品師」
堀井
小池
綾子
孝範
誠実・明朗
子どもと主題
(1)子どもについて
困っている友達に優しく手助けをしたり,委員会や係活動などに前向きに取り組んだ
りする姿が多く見られる。また,多くの子どもたちは自分の良心に従って判断すること
の大切さに気付いている。しかし,実際の行動場面となると,楽しさに流れてしまった
り,集団の中で自分一人くらいやるべきことをやらなくてもいいのではないか,別のこ
とをしてもいいのではないかと考えて行動してしまったりすることもある。自分への甘
さが出てしまい,誠実さに基づいた行動をとることができない様子も見られる。
(2)ねらいとする価値について
「誠実さ」とは,他人に対しても自分自身に対しても,うそ・偽りやごまかしがなく,
自分の良心に従い真心をもって行動しようとする態度のことである。人は誰でも誠実に
行動し,明るく生活したいと願っている。しかし,自分の心の弱さから,ごまかしたり
言い逃れをしたりして,真心をもって行動できないことがある。このことは形の上では
相手に対する嘘やごまかし,裏切りとして表れるが,実は自分自身をも裏切ることにな
るのである。誠実に生きることは自己を向上させることにつながるとともに,他者や集
団とともに明るく楽しい生活を送ることができるようになるためには欠かせないもので
ある。
本資料は,大劇場に立ちたいと努力をしていた手品師が,「さびしそうにしていた男
の子との約束」と「夢見ていた大劇場に立てるというチャンス」との間で葛藤する話で
ある。手品師は迷った末,男の子との約束を選ぶ。手品師の葛藤と決断について深く考
えることで,「自分に対する誠実さ」について考えることのできる資料である。男の子
にも自分にも誠実に行動した手品師に寄り添うことで,誠実に生きることのすばらしさ
や相手に真心をもって尽くしたときの清々しさを感じとっていく子どもたちの姿を期待
したい。
(3)指導にあたって
手品師の葛藤や決断が子どもたちにとっても心惹かれる場面であるだろう。大劇場の
ステージと男の子との約束とで葛藤する手品師に十分共感させ,その上で,手品師の決
断を支えた気持ちや考え方について客観的な視点から話し合う展開とし,登場人物への
共感的追求から広げる授業を目指したい。
人は,一つの結論を出すまでに,多くのことを考えながら自分のとるべき行為を決定
していく。どちらを選択するのかということではなく,その選択に至るまでの登場人物
の気持ちを考えることに意味があると考える。そこで,それぞれの選択による結果につ
いて多面的に考える場を設定し,手品師の葛藤に深く共感できるようにする。その上で,
手品師の決断を客観的に見てその意味について話し合うことで,その決断に託された思
いに迫っていきたい。手品師を決断させたのは,「男の子がかわいそうだから」「男の
子のために」といった思いやりの心からだけではない。また,それは自己犠牲による選
択だったのではない。ここで,手品師は「我慢をしたのか」「自分の気持ちにうそをつ
いたのか」といった揺さぶりを入れたい。手品師の決断や,翌日,男の子の前で「すば
らしい」手品を演じる手品師の行動の基底にある誠実さに思い至らせることで,ねらい
とする価値の追求につなげていきたい。
3
資料分析
《登場人物の動き,かかわり合い,気持ちの変化,キーワードなど》
《主な発問と話合いの場》
手品師
・くらしは楽ではない。
・大劇場のステージが夢
・いつかは!→腕をみがく。
思わず声をかける
男の子
しょんぼり
どうしたんだろう。
心配だ。
何とかしてあげたい。
すっかり元気に
手品を見せる
「ああ,来るともさ。」
「明日も来てくれる?」
男の子のためにでき
ることをしたい。
友人からの誘いの電話:「大劇場に出られるチャンスだぞ。」
大劇場へ行く
手品師
…迷いに迷う
チャンスだ!
二度とないかも。
男の子との
約束を守る
約束は破れない!
迷いに迷っている手
品師の心の中は?
【共感的に話し合う場】
それぞれの選択のメリ
ット・デメリットは…
自分の気持ちと向き合う
決断
男の子との約束を守る!
・約束は守りたい。
・男の子のためにできることをしたい。
・自分の信念
手品師にその決断を
させたのは何か。
【客観的に見て
話し合う場】
自分の中にある良心
誠実な心
翌日…次々とすばらしい手品を演じていました。
・男の子との約束を守り,清々しい,さわやかな気持ち
・満足している。
翌日 ど んな 気 持ち で
男 の子 に 手品 を 見せ て
いたんだろう。
4
本時の実際
(1) ねらい
手品師の葛藤や決断について話し合うことを通して,自己の良心に誠実に生き
ようとする心情を育てる。
(2) 展開
時間
○;「対話」の機能を生かすための手立て
学習活動
5分
①
30分
②
資料「手品師」の感想を出し
合い,話し合いたいことを決め
る。
教師の支援
価
・
手品師の葛藤や決断の場面が子どもたちにと
っても心惹かれる場面であるだろう。気になる
場面について感想を語らせながら,子どもたち
の発言を学習問題につなげ,話合いの方向性を
定めていく。
○
どちらを選択するのかということではなく,
その選択に至るまでの登場人物の気持ちを考え
ることに意味があると考える。そこで,それぞ
れの選択による結果について多面的に考える場
を設定し,手品師の葛藤に深く共感できるよう
にする。
○
手品師の決断を客観的に見てその意味につい
て話し合うことで,その決断に託された思いに
迫っていく。手品師を決断させたのは思いやり
の心からだけではない。手品師自身の「自分の
思い」に対する誠実さに気付くことができるよ
うに,自己犠牲による選択だったのか等の問い
返しを意図的にする。
・
翌日,男の子の前で「すばらしい」手品を演じ
る手品師の気持ちについて思いを巡らせるよう
促し,誠実に行動することの清々しさを感じ取
ることができるようにする。
手品師の葛藤や決断について
話し合う。
【自分との対話】
【仲間との対話】
「迷いに迷っている」手品師の
気持ちを考えよう。
〈予想される子どもの反応〉
《大劇場へ行く》
+ 夢がかなう。
+ 生活が豊かになる。
+ たくさんのお客さんの前で手品が
できる。
- 約束を破ることになる。
- 男の子の元気がなくなる。
- 自分を許せなくなる。
《男の子との約束を守る》
+ 約束を守れる。
+ 男の子を笑顔にできる。
+ 責任を果たすことができる。
- 生活が今のまま。
- チャンスを逃す。
- 有名になれない。
手品師にその決断をさせたの
は何だろう。
〈予想される子どもの反応〉
・
・
男の子を思う心
男の子のために我慢をしたわけで
はない。
・ 自分がこうしたいという気持ち
・ 約束を守りたい。
・ 男の子のためにできることをした
い。
10分
評
③
今日の学習を通して考えたこ ・ 本時の学習を通して考えたことを書く活動を
とを書く。
設定し,自分自身を見つめ直し,価値に対する
【自分との対話】
自分の思いの変容や価値についての自覚を深め
る場とする。
誠実に生きることの大切さに気付き,自己の
良心に誠実に生きようとする気持ちを高めてい
る。
(発言・シート)
(3) 本時における「仲間との対話」を通した思考の深まり
《学習活動②の後半において》
※
学習活動②の前半で,手品師に対して共感的に話し合う場面で手品師の葛藤
に深く共感した上で,後半で手品師を客観的に見て話し合うことが本時の「仲
間との対話」のポイント
子どもの姿
「迷いに迷っている」手品師への共感だけにとどまっている。
【協働して追究する「問い」】
「手品師にその決断をさせたのは何だろう。」
【教師の手立て】
「思いやり」「約束は守らなければいけない」という考えの
話合いに偏っている場合
→発問:
「手品師は男の子のために我慢をしたのですか。」
発問:「手品師は自分の気持ちに嘘をついたのですか。」
仲間との対話
・
・
・
・
・
男の子を思う「思いやりの心」だけじゃないのかな。
男の子のために我慢をしたわけではないんじゃないかな。
自分がこうしたい!と思ったからなのでは。
自分が正しいと思うことをしたんじゃないかな。
きっと男の子のために自分ができることをしたいと思って
いたんだよ。
子どもの姿
目指す子どもの姿:
手品師への共感的追求から広げ,その行為やその背景に
ある思いについて語り合っている
手品師の決断や,翌日,男の子の前で「すばらしい」手品を
演じる手品師の行動の基底にある誠実さに思いを広げている。