中 学 社 会 研 究 室 通 信 N o .7 ー新 学 習 指 導 要 領 社 会 の 読 み ど こ ろ ・ お さ え ど こ ろ ー 社会科の言語活動とは何か?PartⅡ 前回は,社会科の言語活動のキーワード「解釈」 「説明」 「論述」を示しました。今回はそれらについ て社会科として,もう少し詳しく述べてみたいと思います。 中教審答申(平成20年1月)では社会,地理歴史,公民科の「改善の基本方針」として,2項目めに 「(前略)社会的事象の意味,意義を解釈すること,事象の特色や事象間の関連を説明すること,自分 の考えを論述すること」が示されています。前述のキーワードが盛り込まれている部分です。 では,キーワードに関して,学習指導要領の中に顕著に表れている例を見ていきましょう。 まずは「社会的事象の意味,意義を解釈すること」についてです。歴史的分野では「3 内容の取扱 い」に「イ 歴史的事象の意味・意義や特色,事象間の関連を説明したり,(中略)意見交換したりす るなどの学習を重視」とあるように歴史的事象の意味・意義を解釈した上で説明する学習を重視するよ うになりました。従来の学習指導要領には見られなかった学習です。意義や意味について学習指導要領 解説には明確に書かれていません。そこで一つの考え方として,歴史的事象の意味とは同じ時代の他の 歴史的事象との関係性から見えてくる本質や役割であり,意義とは長い時系列の中で現在からその事象 の影響を見たときの位置付けであるとします。例えば,中世の「元寇」という歴史的事象には,御恩と 奉公という鎌倉武士社会の構造を示し幕府が外国の勢力を排除することに成功したものであるという意 味や武家社会の経済的基盤の弱さを示した最初の歴史的事象であるという意義があります。それらを生 徒が解釈し自分の言葉で説明する学習が想定されます。解釈ですから個々でとらえ方が異なることも当 然ありますが,学習した知識をもとにその知識同士を,意味や意義という観点から再構成した上で解釈 するわけです。 次に,「事象の特色や事象間の関連を説明すること」についてです。地理的分野では(2)「イ 世 界と比べた日本の地域的特色」において他地域に見られる地理的事象と我が国のものとを比較して我が 国の国土の特色を理解させたり, (2) 「ウ 日本の諸地域」において,その地域に見られる特色ある事 象が「なぜこの地域に見られるのか」という問いを立てて,生徒はその事象と他の事象との関連を見い 出したりする学習がそれに当たるでしょう。 最後に「自分の考えを論述すること」についてです。公民的分野では(4)「イ よりよい社会を目 指して」において,持続可能な社会を形成するという観点から,課題について生徒自らが探究し自分の 判断を含めた意見を,根拠を挙げながら論理的に論述していく学習が想定されています。 このような学習を行うことを前提に年間指導計画や単元計画を考えてみてはいかがでしょうか。今回 紹介したのは,顕著に表れているものでした。他の分野や単元にもこのような学習を想定すべきところ があると思います。一度,言語活動という視点から検討をしてみてはいかがでしょうか。 次回は,「全国学力調査問題にみる社会科の役割」です。 岡山県総合教育センター教科教育部指導主事 久山 将弘 〒716-1241 岡山県加賀郡吉備中央町吉川7545-11 TEL:0866-56-9103 FAX:0866-56-9123 E-mail:[email protected] HP: http://www. edu-ctr. pref. okayama. jp/gakkoushien/chu_syakai/index. htm
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