年 頭 所 感 経済産業省中国四国産業保安監督部長 栗原 晃雄 平成29年の新春を迎え、謹んでお慶び申し上げます。 旧年中は、産業保安行政の推進に対し格別のご理解とご協力を賜りました ことに、厚く御礼申し上げます。 昨年は、4月に発生した熊本県熊本地方を震源とする地震をはじめ、特異 な進路をたどった台風10号による北海道・東北地方における記録的な大雨、 10月の鳥取県中部を震源とする地震、11月の福島県沖を震源とする地震 及びそれに伴う津波等の自然災害により、多くの死傷者と電気・ガス等ライ フラインへの多大な被害が発生するなど、改めて自然の脅威、自然災害への 対応の困難さを再認識する一年でした。 中国管内における産業事故に目を向けますと、依然として感電事故や波及 事故、ガス等の漏えいや火災などが後を絶たない状況で、特に感電事故につ いては人命に関わる重大な案件が発生したほか、コンビナートにおける異常 現象の発生件数も過去最多を更新するなど、憂慮すべき事態と考えています。 産業保安を推進していくために、先ずは事業者の皆様が自主保安体制を強 化し、コンプライアンス遵守を徹底することが非常に重要です。その上で、 行政としましても立入検査を通じ保安状況を確認するとともに、発災事業者 に対しては原因究明・再発防止について所要の措置を講じるほか、関係事業 所への水平展開を実施し類似事故等の防止を図ることにより、更なる産業保 安の推進を目指す所存です。 私ども中国四国産業保安監督部は、国民の皆様のご期待・ご意見に誠実に 対応し、私どもに与えられた使命「国民の安全の確保と環境の保全」を確実 に実行していくため、「強い使命感」「科学的・合理的な判断」「業務執行の 透明性」「中立性・公正性」を行動規範として、それぞれの分野において次 のとおり取り組んでまいります。 第一は「電気の安全確保」についてです。 昨年1月に発生した、鳥取県内の水力発電所の電気工作物破損事故による 公衆の死傷事故については、原因究明を確実に行うよう指導し、発生原因に 対する再発防止の計画が適切であることを確認しました。また、類似事故の 発生を防止するため、ホームページ等により管内の水力発電所の設置者等へ 注意喚起を行いました。 中国地域においては、昨年は電気の保安業務を行う電気担当者等の感電負 傷事故が一昨年と同数発生しています。電気事故が発生した際にはその状況 を迅速、かつ、的確に把握し、適切な再発防止対策がとられていることを確 認するとともに、類似事故の発生を防止するため、水平展開を適切に実施し ます。 また、太陽電池発電所の事故の増加を受け、新たに設置される太陽電池発 電所の使用前自己確認制度の的確な実施により安全を確保します。 電力の安定供給と公共の安全を確保するため、本年も電気事業法及び電気工 事業法に基づく立入検査を計画的・機動的に実施するとともに、法令違反等 を確認した場合には厳正に対処します。 第二は「都市ガス及びLPガスの保安確保」についてです。 本年4月から、ガスの小売全面自由化により、ガスの事業類型が大幅に変 わります。大まかに分けると、これまでの「一般ガス事業」は「一般ガス導 管事業」と「ガス小売事業」に、また、 「簡易ガス事業」は「ガス小売事業」 に、「LNG基地」は事業規模によっては「ガス製造事業」に該当すること になりますが、事業類型が変わっても、これまでどおり関係団体と連携して 保安の確保に努めます。 また、LPガスでは保安アドバイザー制度について、各県等との連携を図 るなどにより、より円滑かつ効率的に実施できるよう支援します。 第三は「火薬類及び高圧ガス等の保安確保並びにコンビナート災害防止の 推進」についてです。 一昨年から産業保安規制のスマート化として、設備の老朽化やベテラン人 材の引退等の課題に対応するために、IoT、ビッグデータ等を活用した現 場の保安力を高めていくための検討・取り組みを進めてまいりました。 具体的には、高圧ガスの分野では、新認定事業所制度、ファスト・トラッ ク制度の創設、水素利用関連の普及に向けた保安規制の整備などについて、 また、火薬類の分野では、製造の技術基準の見直し・性能規定化、軽微変更 届出の対象範囲の拡大などについて、関連する法令改正等を順次進めていま す。 本年はこのスマート化に関する施策を実施に移すスタートの年となりま す。各事業所におかれましてはこの施策を有効に活用していただき、効率的 かつ効果的な形で、現場の自主保安力を高めることで、事故の減少につなげ ていただけるよう期待します。また、前述のとおり昨年の中国地域のコンビ ナート異常現象件数は、この30年で最も多い数となりました。内容として は、バルブの閉め忘れ、作業員同士の連携の確認不足など単純なヒューマン エラ-に起因するものが例年より目立っています。もう一度、作業手順書通 り行っているか、指差呼称を行っているか、作業員同士の意思疎通が出来て いるかなど原点に立ち返った保安管理をお願いします。 第四は「鉱山の保安確保」についてです。 本年は平成25年度からスタートした第12次鉱業労働災害防止計画の 5年目(最終年)に当たります。同計画で定めたとおり、鉱山災害の発生を防 ぐためには、各鉱山がそれぞれの実情に即した鉱山保安マネジメントシステ ムを構築し、PDCAサイクルを循環させることにより、その有効化を図る ことが重要です。昨年は、この鉱山保安マネジメントシステムの構築・有効 化を自己評価するためのチェックリストについて理解を深めて頂くため、管 内の稼行鉱山を対象に判定チェック項目の内容や意義について説明会を開 催するなどの取組を行いました。本年はこの結果を踏まえ、鉱山保安マネジ メントシステムに係る各鉱山の取組が弱い点を中心にその実施方法や優良 事例の情報提供を行います。 鉱害防止対策としては、昨年当部管内で発生した3件の坑廃水の排水基準 超過事象を踏まえ、本年は坑廃水処理施設の管理の強化を指導します。また、 休廃止鉱山対策として、鉱業権者に対しては着実な休閉山に向けた鉱害等防 止措置の実施を指導します。休廃止鉱山鉱害防止等工事費補助金については、 補助事業者である地元自治体等と連携し実効ある形で執行します。 以上、新春を迎えるにあたり所感の一端を述べさせていただきましたが、 近年は大規模な自然災害も発生しており、災害事故時等における迅速な対応 がより重要となっています。中国四国産業保安監督部では、関係企業や関連 保安団体との連携はもとより地方自治体等との連携を密にし、地域住民の皆 様が安全で安心して生活できる環境形成に貢献していきたいと考えていま す。 最後に、本年も引き続き産業保安の確保と無事故・無災害の継続、そして 皆様のますますのご発展を祈念し、新年のご挨拶とさせていただきます。 皆様、「御安全」に。
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