2015 年 2 月議会意見書討論 (2015.03.13)

2015 年 2 月議会意見書討論
(2015.03.13)
ばばこうへい府議(日本共産党・伏見区)
日本共産党の馬場紘平です。提案されている意見書・決議案 22 件中、自民党提案の「国会における憲法
論議の推進と広く国民的議論の喚起を求める意見書」案、3 会派提案の「原子力発電所の安全確保等に関す
る意見書」案の2件に反対し、他の意見書・決議案に賛成する討論を行います。
まず、我が党提案の決議案についてです。
まず、
「関西電力高浜原子力発電所3・4号機の再稼働中止の意見表明を求める決議案」についてです。
今議会の会期中、何度も府庁門前に多くの府民が集まり、国民の安心安全そっちのけで進められる原発再
稼働の動きへの怒りと、高浜原発の再稼働にお墨付きを与えるかのように結ばれた同意見のない安全協定へ
の怒りの声が上げられました。改めて、この府民の怒りの声に向き合うことが求められています。
そもそも、進められている高浜原発の再稼働の動きは、原子力規制委員会の委員長自らが、審査に合格し
ても原発が安全だとは言えないと発言し、フィルター付ベントも未設置、免震重要棟も未完成、住民の避難
計画も実行性のある計画は全く出来ていないなど、全く再稼働の条件のない中で進められている。
今、全国で原発はひとつも稼働していません。これは、誰かの権限で止められているのではありません。
原発ゼロの社会を求める多くの国民の声が、原発の再稼働を行いたい財界や、安倍首相を押しとどめている
結果です。伝統ある京都府議会の良識が問われています。我が党提案の決議案への賛同をお願いします。
なお、3 会派提案の「原子力発電所の安全確保等に関する意見書案」については、原発の再稼働に道筋を
つけるものであり反対です。
次に「老人医療助成制度の存続・拡充を求める決議案」についてです。
老人医療助成制度「マル老」は、国の医療制度改悪に連動し、窓口負担1割を2割に、対象も「世帯全員
が所得税非課税」へと縮小・改悪するものです。この制度改悪によって現在の6万人の対象者が、府の試算
でも 43%の方が対象外になるとされ、お年寄りからは「MRIの検査には、1割負担で 3000 円かかる。こ
れが 6000 円、9000 円になれば受けられない」などの声が相次ぎ、一気に医療にかかれない方が増えてし
まいかねません。とりわけ、これまでの寝たきり、単身者、高齢者のみなど一番大変な世帯を一気に切り捨
てるようなことは、住民の福祉の増進を図ることが責務である京都府として到底行なうべきことではありま
せん。現在、本府に対して制度の維持・拡充を求める約2万筆を超える署名が寄せられ、今議会には 11 件
の陳情や請願が個人団体から出されています。
本府が今取り組むべきは、
国の制度改悪に反対するとともに、
本府の老人医療助成制度は従来通り継続し、対象年齢を 74 歳まで拡充することです。
次に、大学生に対する給付制奨学金の創設を求める決議案についてです。
貧富の格差の拡大、貧困の連鎖の中で、経済的な理由で進学を断念せざるを得ない若者が少なくありませ
ん。また、奨学金を借りながら進学をした若者の中では、非正規雇用の拡大の中で、返済に苦しむ層が増え
続けています。こうした中で、学生を中心に学費の低減と併せて、給付制の奨学金制度の創設を求める運動
が広がっており、今議会には、若者たちの請願が寄せられています。
OECD加盟 34 カ国で、大学の学費があり、返済不要の奨学金がないのは日本だけであり、日本におい
ても返済不要の給付制奨学金を早期に創設すべきです。
同時に、全国では、24 県で大学生に対する貸与制の奨学金が創設され、松江市などでは大学生への給付制
奨学金も実施されています。京都府においても、学生が大学に経済的な心配なく進学できるように支援する
ため、京都府独自の給付制奨学金制度を創設すべきであります。
次に、我が党提案の意見書案についてです。
まず、経ヶ岬・米軍 X バンドレーダー基地の稼働停止・基地撤去を求める意見書案についてです。
「住民の安心安全が第一」が大前提で進められたはずの X バンドレーダー基地の問題は、基地の本格運用
が始まった途端に前提条件がことごとく崩れ去っています。
度重なる米軍関係者による交通事故。生活に支障をきたすほどの騒音。住民の中からは、
「話が全然違う」
と怒りの声が上がっています。
「府民の安心安全に責任がある」としながら、大臣の「国が責任を持つ」とい
う一言で協力を決定した知事の責任が問われています。沖縄県の翁長知事は、県民と共に「県の有するあら
ゆる手法を用いて基地をつくらせない」と立ち上がっています。しかし、決算特別委員会の総括質疑で山田
知事は、最後までそうした立場に立つことに背を向けたことは重大です。
二元代表制の一翼を担う京都府議会として、国に対して住民の皆さんの声を意見書としてあげようではあ
りませんか。
次に、
「労働法制の改悪に反対する意見書(案)
」及び「青年雇用の拡大とブラック企業・ブラックバイト
根絶に関する意見書(案)
」についてです。
安倍内閣は、日本を「世界で一番企業が活躍しやすい国」にするとして、
「正社員ゼロ・生涯派遣」法案、
「残業代ゼロ」法案、という 2 つの重大な法案の提出を狙っています。こうした動きに対して、
「大量の不
安定雇用を生み出す」
「過労死を激増させる」などとして、全労連や連合も含めて、まさにすべての労働者か
ら怒りの声が上がっているのです。
現状ですら雇用・労働の中では、
「15 分未満の勤務時間を切り捨てられる」
「辞めたいと言ったら、
『求人
広告費分として給料から 4 分の 3 を差し引く』といわれた」など違法な長時間労働、ただ働きなど若者をつ
ぶすブラック企業・ブラックバイトが大きな社会問題となっています。京都府は労働者の 41.3%が非正規雇
用で全国平均 38%を大きく上回っており、アルバイトや非正規雇用の実態調査は不可欠です。さらに実態調
査を進めることが必要です。
「なか卯」が新規採用の学生アルバイトに対して、着替えや連絡ノート確認、会社経営理念の唱和、接客
用語や月間重点目標の唱和のあとにタイムカードを押させるという労働時間のごまかしも明らかなりました。
わが党の国会での質問に対して、首相も「出勤後にタイムカードを押すのが通常」と答弁、厚労大臣も「な
か卯」のやり方の違法性を認めました。今求められているのは、労働時間の上限規制の実現や賃金水準の引
き上げで、労働時間の規制を破壊するのでなく、厳しく守らせることこそ求めること。さらに、アメリカや
フランスのように中小企業への直接支援の仕組みをつくり、最低賃金の大幅な引き上げを行うとともに地域
間格差の縮小の施策をとり、全国一律最低賃金制を確立することです。
次に「福祉労働者の処遇改善・人材確保に関する意見案」及び「介護保険の抜本的見直しを求める意見書
案」についてです。
介護・福祉分野はまさにマンパワーが制度を支えています。しかし「3 年間で約 7~8 割の若手労働者が介
護・福祉分野を離れていく」という職場が普通にあるほど、他の業種と比べても平均で 10 万円近くも安い
賃金が介護崩壊を招く根本問題になっています。しかも、こうした現状は保育の分野でも同様に広がってい
ます。
処遇改善なしに、高齢者の介護はもちろん、子どもや障害者の安心と発達を保障することはできません。
ところが、国が発表した 4 月からの介護報酬の改定額は、4.48%と過去最大規模の引き下げです。政府は
そこに、介護労働者の「処遇改善」の特別加算を加えて、2.27%の削減としていますが大幅な報酬削減の中
で、特別加算を受けられる事業所は極めて限定的と言われています。今求められているのは、人材不足の言
われる福祉・介護労働者確保のために、全額国庫負担による抜本的で恒久的な賃金の引き上げ・処遇改善と
正規雇用化を実施することです。
次に、少人数学級の推進に関する意見書案についてです。
中教審の初等中等教育部会が 2010 年に出した提言では、
「40人という学級規模では学級経営が困難とな
っている」とし、手厚いケアが必要な子どもが増え、学級崩壊や立ち歩き、トラブルの増加などさまざまな
教育困難が広がっていることが示されています。世界に目をむければ、欧米では1学級30人以下が当たり
前です。韓国でも35人学級編制を目標としています。まさに少人数学級は世界の流れです。
少人数教育は、日本PTA全国協議会、全国レベルの校長会や教頭会、教育委員会の協議会、さまざまな
教職員組合など、文字通りの国民的な要求です。安倍首相自身も国会で我が党議員の質問に対して、
「教員が
一人ひとりの子どもにきめ細かく対応できるよう必要な検討を進める」と述べています。国に対して、今こ
そ実現に向けて教員定数を改善し、加配定数削減を行わないことなど強く求めるべきです。
次に、
「農協『改革』をはじめとした『農業改革』に反対する意見書案」
「TPP交渉からの即時撤退を求
める意見書案」についてです。
安倍・自公政権は、農産物の関税撤廃をはじめ、医療、労働、地域経済、中小企業など、あらゆる分野に
重大な影響を及ぼすTPP参加を強引に推し進めるとともに、日本農業を、アメリカと日本の大企業に新た
なビジネスチャンスとして提供するため、今国会に「農業改革」関連法案を提出しようとしています。
TPP交渉では、秘密交渉のなかでも、政府が「聖域」としてきた、コメ、牛肉・豚肉、乳製品などの農
産物重要5品目についても譲歩を重ねていることが明らかになっており、農家からは「自民党は選挙公約違
反だ」
「国会決議に違反している」と怒りの声があがっています。
日米交渉がいまだ妥結に至らず、12カ国の交渉も難航している背景には、異常な秘密交渉や、市場原理
一辺倒の「アメリカ型ルール」押しつけに対する、各国国民の反対世論の広がりがあります。
いま、世界の流れは、グローバル化一辺倒ではありません。国連は、国際家族農業年を呼びかけ、家族農
家・小規模農家こそ、食料安全保障や生物多様性、環境維持、貧困削減に貢献するとしています。
京都府においても、中山間地が多く、小規模農家が農業と食料生産を支えておられます。いま、農家のみ
なさんが願っておられるのは、米価暴落への対策をはじめ、農業を続けていくための価格保障や、家族農家・
小規模農家も含めた多様な経営を支える農政です。これと相容れない、
「農業改革」やTPPは転換すべきで
す。
なお、3 会派提案の農業2意見書案については賛成するものですが、一言述べます。
農業の生産基盤整備や、生産緑地の賃貸、相続税納税猶予制度の適用条件等には、農家の要望があり、農
業・都市農業の発展に必要なことです。しかし一方、これらをテコにして、農地中間管理機構による農地集
積や大企業の参入が強引に行なわれたりすれば、これまで地域農業を支えてきた農家の離農を促進すること
につながりかねません。あくまで、農家と農地を守り、維持するためのものであるべきです。
以上、我が党提案の意見書案及び決議案への賛同をお願いするものです。
なお、その他の意見書案について、いくつか申し述べます。
自民党提案の「国会における憲法論議の推進と広く国民的議論の喚起を求める意見書案」についてです。
国会では、安倍政権が総選挙後には憲法改定について「歴史的チャレンジ」と述べ、国民投票の時期につ
いて「参議院選挙後」などと具体的なスケジュールまで示し、改憲への動きを加速させています。改憲の中
身は、自民党の「日本国憲法改正草案」としてすでに発表されていますが、憲法 9 条を改定し自衛隊を国防
軍にし、集団的自衛権を認め、交戦権の放棄についても取り払うものです。基本的人権については永久不可
侵とした 97 条を全面廃止し、改憲発議要件を定めた 96 条は大幅に緩和するなど、権力を縛るという立憲主
義を踏みにじる内容となっています。
戦後 70 年という大きな節目を迎える中で、侵略戦争の反省の上に「政府の行為によって再び戦争の惨禍
が起こることのないようにする」とうたった憲法 9 条を亡き者にし、再び日本を戦争する国へとする安倍首
相の暴走政治を後押しすることになる意見書案には反対です。
「ヘイトスピーチ(差別扇動)被害に対する意見書案」についてです。
民族差別をあおるヘイトスピーチは自由や民主主義と相いれるものでなく、健全な市民社会と両立しませ
ん。
ヘイトスピーチの根絶のために政治が断固たる立場に立つことが必要であり、このことは我が党も求めて
きたものであります。賛成です。
以上で討論を終わります。 ご清聴ありがとうございました。