自己都合退職について

労働相談
Q&A
Vol.3
A
こ の コ ー ナ ー で は 、当 課 に 寄 せ ら れ た 相 談 を も と に 、
意外と知らない労働に関する疑問についてお答えしま
す。今回は「自己都合退職」についてです。
Q
会社の労働条件が契約内容と異なっていたため
退 職 予 定 の 1か 月 前 に 退 職 願 を 出 し ま し た 。 会 社 が 退 職 を
認 め な い た め 、 黙 っ て 辞 め た と こ ろ 、「 突 然 辞 め ら れ 損 害
を受けたので、賃金は支払わない」と言われました。
○契約で明示された労働条件が事実と異なる場合、労働者は即時に契約を解除で
き ま す ( 労 働 基 準 法 15 条 2 項 ) 。 こ の 即 時 解 除 権 を 行 使 せ ず 、 入 社 後 相 当 の 期 間 が 経
過しているときには、退職の申入れをすることが必要になります。
○相談事例では退職願とありますが、労働者の意思により退職する場合、法的に
は次の2つの方法があります。
①合意退職:労働者が退職願により退職を申入れ、会社が承諾する。
②辞
職:労働者が一方的に解約を行う。
いずれにしても、退職に関する定めは労働基準法になく、民法によることにな
ります。
○民法では、上記②の解約申入れについて定めており、正社員のように労働期間
の定めがない場合は、原則として退職の2週間前に解約を申入れすれば、退職
す る こ と が で き ま す ( 民 法 627 条 1 項 ) 。 ま た 、 契 約 社 員 の よ う に 期 間 の 定 め が あ
る場合は、病気や家族の介護など「やむを得ない事由」があれば直ちに契約を
解 除 す る こ と が で き ま す 。「 や む を 得 な い 事 由 」 に つ い て 労 働 者 に 過 失 が あ る
と き は 、 損 害 賠 償 の 責 任 を 負 う こ と に な り ま す ( 民 法 628 条 ) 。
○上記①の合意退職については、民法に定めはありませんが一般的に行われてい
ます。しかし、職業選択の自由や強制労働の禁止により、会社が退職を承認し
ないことが無制限に許されているわけではありません。会社は、労働者の同意
の上、退職時期の若干の調整をすることはできます。会社が承認しない場合、
退職願を出してから 2 週間経過すれば退職することができます。
○このように退職する際の紛争を避けるために退職に関する事項は、就業規則に
定 め な け れ ば な り ま せ ん ( 労 働 基 準 法 89 条 3 号 ) 。 ま た 、 契 約 を す る 場 合 は 、 労 働 者
に 書 面 ( 労 働 条 件 通 知 書 ) で 明 示 し な け れ ば な り ま せ ん ( 労 働 基 準 法 15 条 1 項 ) 。
○実際には、民法の定める2週間とは異なりますが、就業規則で退職の予告期間
を 1 か月前とする事例が多いようです。
○相談事例では、就業規則にしたがって退職願を出していれば問題はありません。
就業規則がない場合ですが、この退職願は、会社が契約した労働条件と事実が
異なるために退職を申入れしたものであり、契約を終結させる意思が客観的に
明らかですので、解約の申入れと解することができます。
○したがって、期間の定めがない場合は2週間の予告期間により退職することが
できますが、本相談のように「やむを得ない事由」に相当する場合は直ちに解
除 す る こ と も で き る と 考 え ら れ ま す 。 ま た 、 期 間 の 定 め が あ る 場 合 は 、「 や む
を得ない事由」に相当すると考えられますので直ちに解除することができます。
会社の「損害を受けたので賃金は払わない」との言い分は、賃金は全額支払が
義 務 づ け ら れ て い ま す の で 認 め ら れ ま せ ん ( 労 働 基 準 法 24 条 ) 。
○相談事例では、1月前に退職願を出しているので、損害賠償の義務はありませ
ん。
○なお、労働者が退職する場合に未払賃金を請求すると、会社は退職手当を除い
て 7 日 間 以 内 に 支 払 わ な け れ ば な り ま せ ん ( 労 働 基 準 法 23 条 ) 。