その2 これまでになかった大改訂

中 学 社 会 研 究 室 通 信 N o .2
ー新 学 習 指 導 要 領 社 会 の 読 み ど こ ろ ・ お さ え ど こ ろ ー
これまでになかった大改訂
前回は,学習指導要領と中教審の答申のお話をしました。「幼稚園,小学校,中学校,高等学校及び
特別支援学校の学習指導要領等の改善について(答申)」
(以下「答申」という)では,学習指導要領改
訂の基本方針が示されています。この答申に大きく影響を与えたのが改正された教育基本法でした。
平成17年2月の中教審第47回総会では,文部科学大臣から学習指導要領の見直しに当たっての検討課
題が示されました。そのうち,教育内容の改善充実については,次の6点を挙げています。
(1)社会の形成者としての資質の育成
(4)国語力の育成
(2)豊かな人間性と感性の育成
(3)健やかな体の育成
(5)理数教育の改善充実 (6)外国語教育の改善
ちなみに,すでに理数教育の改善充実が挙げられています。現在の移行期間から算数・数学・理科の
指導資料が配られるのもうなずけます。
当時,
「社会の形成者としての資質」が,新学習指導要領にみられる「公共の精神」
「環境の保全」
「伝
統・文化の尊重」「我が国を愛し,他国を尊重する」といった内容と直接結び付くとは思えませんでし
た。これらの内容は,平成18年12月の教育基本法の改正を受けて答申に入れられたからです。
改正された教育基本法の第2条には「教育の目標」が明記されています。改正前の第1条「教育の目
的」と第2条の「教育の方針」とに分けられていたものをを一つにまとめ,新たな文言を書き加えてい
ます。
第2条に新たに加えた文言のうち,社会科関係の文言だけ拾い出してみると「職業」
「男女の平等」
「公
共の精神に基づき,主体的に社会の形成に参画し,その発展に寄与する態度」「環境の保全に寄与する
態度」
「伝統と文化を尊重し,それらをはぐくんできた我が国と郷土を愛するとともに,他国を尊重し,国際
平和と発展に寄与する態度」等があります。また,新たに加えられたこれらの文言のほとんどが,社会
科にかかわる文言であることが分かります。これらの文言に関係する社会科の内容は,教育基本法を反
映する形で学習指導要領に盛り込まれているわけです。法改正を行わない限りこれらの文言に関係する
社会科の内容は,充実されることはあってもなくなりはしません。ですから,社会科の担う役割は大き
いといえます。見方を変えれば今回の改訂は,従来にない社会科重視の改訂といえるのかもしれません。
参考資料:「改正前後の教育基本法の比較」(文部科学省:
「教育基本法資料室」のHPからダウンロード可能です)
「http://www.mext.go.jp/b_menu/kihon/about/06121913/002.pdf」
次 回 は ,「 社 会 参 画 と 公 民 的 資 質 と の 関 係 は ? 」 で す 。
岡山県総合教育センター教科教育部指導主事
久山 将弘
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