調 査 速 報 浜銀総合研究所 調査部 産業調査室 2015.11.6 神奈川県の新設住宅着工戸数(2015年9月) 県内の住宅着工動向は緩やかな持ち直しが持続 ○2015 年9月の神奈川県の新設住宅着工戸数は引き続き回復基調 ・10 月 30 日に発表された9月の神奈川県の新設住宅着工戸数(季調済年率換算)は前月比 6.2%減の 7.3 万戸と4か月ぶりに減少した。ただ、3か月後方移動平均値でみたトレン ドは引き続き増加しており、県内の住宅建築動向は回復基調を維持している。 ・利用関係別の着工戸数を3か月後方移動平均でみると、まず持家系の住宅に関しては、9 月は持家(注文住宅) 、分譲一戸建(建売住宅) 、分譲マンションの全てで着工戸数の持ち 直しが続いた。ただ、増加幅は全タイプで前月より縮小しており、依然として持ち直しの 勢いは緩やかにとどまる。なお、10 月 21 日をもって、省エネ住宅エコポイントの申請が 予算額に到達したため締め切られたが、県内における省エネ住宅エコポイントの申請件数 をみると、6月と7月に 1,700 戸前後で推移した後、8月は 1,998 戸、9月は 2,265 戸に のぼり、駆け込みの様相を呈した。このことが 10 月以降の住宅着工戸数を下支えする要 因となろうが、一方で、住宅価格の上昇等により家計の住宅取得環境が悪化の方向で推移 していることから、総じてみれば、先行きの持家系の住宅建築動向は浮揚感を欠く展開が 続く可能性が高い。 ・一方、貸家の着工戸数についても、9月は増加基調に転じた。横浜市や相模原・県央エリ アにおいて持ち直しの動きが続いていることが背景にある。 図表1 県内の住宅着工動向は緩やかな持ち直しが続いている 利用関係別の推移 県内の新設住宅着工戸数(総計)の推移 季調済年率換算、千戸 100 90 80 70 60 50 40 30 20 10 0 季節調整済年率換算戸数(左軸) 2078 4572 45.45057 原数値の前年同月比(右軸) 2010年 11 季調済年率換算、3か月後方移動平均、千戸 前年同月比、% 12 13 14 140 120 100 80 60 40 20 0 ‐20 ‐40 ‐60 40 35 貸家 30 25 20 持家 15 10 5 0 分譲一戸建 2010年 15 注1:季節調整は浜銀総合研究所が実施。 注2:太赤線は3か月後方移動平均値。 出所:国土交通省「住宅着工統計」 11 分譲マンション 12 13 注:季節調整は浜銀総合研究所が実施。 出所:国土交通省「住宅着工統計」 1 14 15 ○今後の新築マンション販売動向には要注意 ・神奈川県内の新築マンションの販売動向をみると、9月は新規発売戸数(季調済)が前月 比 55.3%減の 618 戸、総契約率(同)が同 24.3%ポイント低下の 32.2%であった。2015 年春先以降の県内の新築マンション販売市場の回復は、首都圏の他都県と比較しても堅調 であったが、9月はみなとみらいや武蔵小杉などでの人気物件の販売が少なく、また、手 頃な価格帯の物件の販売が低調であったため、需給両面で大きく落ち込んだ。同月の動き は、人気物件の供給が落ち込むとマンション市場全体が下向くという県内新築マンション 販売市場の最近の傾向を浮き彫りにしており、価格の上昇等を背景に購入可能層が広がり を欠いていることを今一度認識する必要があろう。 ・なお、地域別にみると、建築費が高水準となるなか、県内でも比較的安価なマンションが 供給されやすいその他神奈川エリア(横浜・川崎以外のエリア)では新築マンションの供 給が僅少となっており、市場がほとんど動かない状態が続いている。そうしたなかで、9 月には平塚市で大型マンションの着工が行われており、今後の販売動向が注目される。 ・また、10 月には横浜市都筑区において 2006 年に分譲された大型マンションが、杭打ち工 事の不具合によって傾斜するという事案が発生した。本事案はマンションの安全性や信頼 性を揺るがしかねない事案であり、この先、マンションの品質への懸念や不安が消費者に 広がれば、今後のマンション市場の回復に水を差すことになりかねない。なお、本事案を 受けて、今後、行政と関連業界が一体となって再発防止策の検討が行われると想定される が、その際には供給者の職業倫理や問題発生の温床となったとみられる業界構造(余裕の ない工期設定、重層下請構造等)にまで踏み込んだ議論が行われることが期待される。ま た、規制強化等の対策を実施する際には、2005 年の耐震偽装事件から 2007 年の建築基準 法改正に至った際の経緯を教訓に、市場を混乱させることのないよう周到な準備が行われ ることが望まれる。 図表2 人気物件の供給一服を受けマンション市場は急落した 県内新築マンション 総契約率 季調済、% 70 65 60 55 50 45 40 35 30 3か月後方移動平均 25 20 県内新築マンション 新規発売戸数 季調済、戸 1,700 1,500 1,300 1,100 900 700 500 3か月後方移動平均 300 10年 11 12 13 14 15 10年 注:季節調整は浜銀総合研究所が実施。 出所:㈱不動産経済研究所 11 12 13 14 15 注:季節調整は浜銀総合研究所が実施。 出所:㈱不動産経済研究所 担当:調査部 産業調査室 森翔太郎 TEL 045−225−2375 E-mail: [email protected] 本レポートの目的は情報の提供であり、売買の勧誘ではありません。本レポートに記載されている情報は、浜銀総合研究所・調査部が 信頼できると考える情報源に基づいたものですが、その正確性、完全性を保証するものではありません。 2
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