2015年10月 - 浜銀総合研究所

調 査 速 報
浜銀総合研究所
調査部
産業調査室
2015.12.2
神奈川県の新設住宅着工戸数(2015年10月)
県内の住宅建築動向の持ち直しには再び一服感
○2015 年 10 月の神奈川県の新設住宅着工戸数は2か月連続で減少
・11 月 30 日に発表された 10 月の神奈川県の新設住宅着工戸数(季調済年率換算)は前月比
14.7%減の 6.3 万戸と2か月連続で減少した。3か月後方移動平均値でみたトレンドも下
向きに転じており、県内の住宅建築動向の持ち直しには再び一服感が現れた。
・利用関係別の着工戸数を3か月後方移動平均でみると、まず持家系の住宅に関しては、10
月は持家(注文住宅)
、分譲一戸建(建売住宅)
、分譲マンションの全てで着工戸数が減少
した。住宅価格の上昇等によって県内家計の住宅取得環境が徐々に悪化する中で、持家系
住宅の着工戸数の推移にはこれまでも回復の動きに弾みがつかない状態が続いていたが、
同月はそうした傾向がより一層鮮明に現れた格好だ。
・一方、貸家の着工戸数についても、10 月は再び下向く傾向となった。タイプ別にみると、
春頃から着工の勢いが鈍っていたディンクス(DK)タイプに加えて、足元ではワンルー
ム(1R)タイプも着工戸数が弱含む展開となっている。相続税対策としての貸家建設の
ブーム的な増加がピークアウトした形だ。この先については、これまでの着工増を受けた
貸家の供給増による空室リスクの高まりや、建築コストの上昇及び家賃相場の回復力の鈍
さなどを背景とする投資冥利の薄まりが意識され、天井感が強い展開となることが予想さ
れる。
図表1 県内の住宅着工動向は持ち直しに一服感
利用関係別の推移
県内の新設住宅着工戸数(総計)の推移
季調済年率換算、千戸
100
90
80
70
60
50
40
30
20
10
0
季節調整済年率換算戸数(左軸)
2078
4572
45.45057
原数値の前年同月比(右軸)
2010年
11
季調済年率換算、3か月後方移動平均、千戸
前年同月比、%
12
13
14
140
120
100
80
60
40
20
0
‐20
‐40
‐60
40
35
貸家
30
25
20
持家
15
10
5
0
分譲一戸建
2010年
15
注1:季節調整は浜銀総合研究所が実施。
注2:太赤線は3か月後方移動平均値。
出所:国土交通省「住宅着工統計」
11
分譲マンション
12
13
注:季節調整は浜銀総合研究所が実施。
出所:国土交通省「住宅着工統計」
1
14
15
○住宅価格の上昇を主因に県内家計の住宅取得環境は悪化の傾向
・前述のように、神奈川県内の持家系の住宅着工が盛り上がりを欠いている背景には、県内
家計の住宅取得環境の悪化がある。浜銀総合研究所では、住宅価格や家計の収入状況、金
利環境等を基に、住宅種別ごとに神奈川県内家計の住宅取得能力指数を算出しており、図
表2がその推移である。
・これをみると、足元で急激に住宅取得環境が悪化しているのが新築マンションである。新
築マンション価格は、主にRC(鉄筋コンクリート)造の建築費上昇によって高騰してい
る。直近 10 月の1㎡当たり販売単価は 72.8 万円であり、まだ価格が比較的落ち着いてい
た 2013 年平均(57.7 万円)よりも 25%以上高く、およそ 20 年ぶりの水準となっている。
また、中古マンションについても、価格の上昇によって住宅取得環境が下向いているほか、
建売住宅に関しても、住宅取得能力指数は過去の水準と比べれば高水準を保ってはいるも
のの、足元では下落傾向となっている。
図表2 住宅取得環境は新築マンションで取得の困難さが強まっている
住宅取得
が容易
倍
1.8
神奈川県内家計の住宅取得能力指数
神奈川の住宅取得能力指数
1.8
15年(月次)
中古マンション
1.6
1.6
1.4
1.4
1.2
1.2
建売住宅
1.0
1.0
0.8
0.8
0.6
住宅取得
が困難 0.4
新築マンション
0.6
0.4
02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 1 3 5 7 9 11
年
月
注:「住宅取得能力指数=資金調達可能額/住宅価格」にて算出。資金調達可能額は平均的な家計が年間のローン支払額を
年収の 25%にするなどの前提で推計した最大借入可能額(元利均等返済、借入期間 30 年)。家計の収入は総務省「家計
調査」の前年収入、住宅ローン金利は住宅金融支援機構資料、住宅価格は、新築マンションは㈱不動産経済研究所資料、
建売住宅は東日本不動産流通機構資料、中古マンションは MSCI.INC「IPD/リクルート日本住宅指数」を基に算出。
出所:上記各種資料を基に浜銀総合研究所作成
担当:調査部 産業調査室 森翔太郎
TEL 045−225−2375
E-mail: [email protected]
本レポートの目的は情報の提供であり、売買の勧誘ではありません。本レポートに記載されている情報は、浜銀総合研究所・調査部が
信頼できると考える情報源に基づいたものですが、その正確性、完全性を保証するものではありません。
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