講義資料1

認知行動研究法
講義予定(本郷の人は注意)
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岡ノ谷
①9/18 1-3章・17章
四本先生 ②9/25 ③10/2 4-6章
本吉先生 ④10/9 ⑤10/16 7-8章
丹野先生 ⑥10/23 ⑦10/30 9-10章
菊池先生 ⑧11/6 11章
石垣先生 ⑨11/13 ⑩11/24(火) 12-13章
長谷川先生 ⑪11/27 14-15章
中谷先生 ⑫12/4 16章
試験
⑬12/11
• 10/30:教養学部では授業日、文学部では補講日
11/20午後:教養学部では休講、文学部では授業日
11/24(火)午後:教養学部では金曜午後の振替、文学部で
は通常の火曜の授業日
Science,
仮説演繹法
(岡ノ谷、2010 「言葉はなぜ生まれたのか」より)
科学は性善説にもとづく
• 研究者は事実を発見するのが喜びであり、世間でもて
はやされるのが目的ではない。
• なので、ねつ造するはずがない。
• ねつ造はないことを前提に、結果を評価する。
• 事実の発見よりも世間の評価が大事と考える研究者
も出てきた。
• にもかかわらず、基本は性善説にもとづかなければ科
学を運営できない。
• だから、ねつ造が発覚した場合には厳罰すべき。
• ねつ造はその個人のみならず、所属研究室、所属機
関にまで損害を及ぼす。
STAP細胞事件
• 背景
• 遺伝子導入による細胞の初期化 (iPS)
• 遺伝子発現の環境制御(エピジェネティクス)
• 環境刺激による初期化の可能性への期待
• 事件
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パラダイムに則った手法、仮説を支援する結果
蛍光応答の観測により間違った確信
研究所・世間の高い評価
自己制御の欠如によるねつ造の正当化
• 結末
• 正統的な手続きなので追試が可能であった
• インパクトの大きさにより多くの追試がなされた
• 結果、ねつ造が最も妥当な説明
1章.科学と実証
1.実証の重要性
• 直感のほうが正しく感じる場合がある
• 例:天動説と地動説
• 直感はあやうい
• 例:血液型性格占い
• 間違っていることは何度も実証されている
• しかし、信じる人が多い。部署配置に応用されることも。
• 実証
• 現実を正確にとらえるための努力
• 心理学は人間行動の実証をめざす
2.因果と説明
• 一般的な因果法則があることを前提に説明がなさ
れる。
• 例:リンゴはなぜ木から落ちるのかを万有引力の法則
から説明する。
• 相関関係
• 原因となる変数→結果となる変数
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Xが原因、Yが結果
相互的
Xは結果、Yが原因
Zが原因、XもYもその結果
たんなる偶然
• 因果の適応的意義
3.実証のロジック
• 因果関係を見極めるためのミルの3原則
• 原因は結果より時間的に先
• 原因と結果が関連
• 他の因果的説明が排除される
• 後件肯定の誤謬
• AならばB → BならばA とは限らない
• 例:嫌悪経験で扁桃体が活動(逆推論は危険)
• 反証主義
• 「カラスは黒い」という言明は、白いカラスを探せば反証可能
であるから、科学的な言明である。
• 「STAP細胞はないとは言えない」という言明は反証不能であ
る。あるとも言えないし、ないとも言えない。非科学的な言明。
• 悪魔の証明(~がないことを証明する)
2章 実験と観察
1.暴力番組の影響
• 暴力番組を見る→暴力を振るう子ども
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相関か、因果か
実験:人形に暴力を振るう・振るわない映画を見せる
結果:暴力映画のあとのほうが実際の暴力がふえる
解釈:無作為割り付けなので別の因果はない
• 実験研究と観察研究
• 観察では因果まではわからない
• しかし実験は調べたい現実を反映しているか不明
• どちらも必要
2.実証の論理構造
• 実験的研究の構造
• 独立変数:原因と仮定される。実験者が操作
• 従属変数:結果と推定される。実験者が測定
• 剰余変数:実験者が統制する(努力をする)変数
• 観察的研究の構造
• 予測変数:原因と仮定され、研究者が測定
• 基準変数:結果と推定され、研究者が測定
• 共変数:研究者が統制
• 一般法則とシステム法則
3章.実証の手続き
1.変数と手続き
• 抽象的な概念(変数)を具体的な手続きに翻訳す
る必要がある。
• 補助仮説:仮説を立てるのに必要な翻訳手続き。
例:暴力を振るう→人形を叩く
• 操作的定義
• ブリッジマン:概念を手続きで定義
• 長さ:物差しではかるもの(温度計ではなく)
• 知能:知能検査ではかるもの(体重計ではなく)
• 問題が多いので、近年「操作的定義」は補助仮説の検
討が十分である程度の意味に使われる
2.手続きの妥当性と信頼性
• 妥当性の担保
• 独立変数:概念から手続きへの翻訳を複数試みる。
• 従属変数:複数の測度を得る(反応時間と脳波など)
• 人道上・倫理上の問題
• 内観を従属変数とできるか
• 信頼性
• 複数の測定が同じ条件で行われているか。
• 標準的な手続きが妥当か。
17章 研究報告
1.研究報告の大切さ
• 報告されない研究は無意味
• 科学そのもの
• 客観性が保証されない
• 他の科学的発見に寄与しない
• 人類一般
• 科学的知識の集積に貢献しない
2.研究発表
• 研究発表の利点
• 研究の全体像の整理
• 同僚からの意見・提案を得る
3.研究論文
• 公共「言語」で書く
• それぞれの分野の作法を身につける
• 例:表17-1
• よい研究論文
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概念や用語の厳密な定義
事実と意見の区別
再現性の保証
自分の考えと他者の考えの区別
何が新しいのかを明確に
教科書にない事柄
学会発表の性質
• 近年研究発表の性質が変化している
• 論文投稿後に発表されることが多い→ライバル対策
• 学会が知的交流というより社交の場になっている
• 研究費を出す側へのアピールの機会と捉えられている
• 研究発表の利点を生かすため、学会を選ばなけ
ればならない時代である。
実験は楽しい、論文は苦しい
• 研究の進捗
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実験の準備
実験データの取得完了
解析完了
グラフ作成
論文完了
論文投稿
査読対策
受理
刊行
5%
10%
20%
30%
50%
55%
70%
90%
100%
研究者への道
• 学部
• 卒論を原著論文として投稿(春休み中)
• 修士課程
• 修士1年の間に修論の一部を原著論文として投稿
• 修士2年の4月までに論文2本受理
• 日本学術振興会特別研究員DCを取得(8倍程度)
• 博士課程
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毎年国内学会で2回発表
国際学会で3年に最低2回発表
博士2年の4月までに論文3本、総説1本を投稿・受理
日本学術振興会特別研究員PDを取得(10倍程度)
• 博士研究員時代
• 国際的な活躍をしているラボでインパクトの高い雑誌に論文を通
す。招待講演をする。