脱・迷走開発 製品コンセプト駆動型開発の 実現に関する実証研究 ~組織形態・開発行動に関する一考察~ 明治大学 商学部 諸上茂登演習室 C班 濵田拓朗 安藤太一 生貝拡樹 池上美和 門田佳久 サントリー『DAKARA』 の製品コンセプトとは? 「摂る」 ↓ 「出す」 カラダバ ランス飲 料 セルフメ ンテナン ス 野中郁次郎著『イノベーションの本質』 2004年東洋経済新報社より出典 なぜ製品コンセプトか? 魅力的な製品コンセプトという共通点 ↓ ヒット商品の一要因 製品コンセプトとは一体何か? ◎開発プロセスにおける製品の設計図 佐藤邦廣 『戦略的マーケティングと経営理念』 同文舘出版 2003年 ◎企業の製品知識と市場ニーズを圧 縮 したもの 楠木建 「価値分化:製品コンセプトのイノベーションを組織化する」 『組織科学』Vol..35 No.2,2001 ◎市場の期待と製品性能が結合・融合 したもの 織畑基一 『ラジカル・イノベーション戦略』 東洋経済新報社 2001年 製品コンセプトの有効性・機能 ◎技術開発やマーケティングに目標を与える。 織畑基一 『ラジカル・イノベーション戦略』 東洋経済新報社 2001年 ◎製品開発プロセス全体における指針となる 製品エンジニアリング、コストマネジメント等の一連 の製品開発行動の首尾一貫性を保つ 清水信年 「製品コンセプト変更に関する実証分析」『流通研究』2000年 Clark,K.B. and Fujimoto,T Product Development Performance,Harvard Business Press, 1991 (田村明比古訳『製品開発力』ダイヤモンド社,1993年) 製品コンセプト駆動型開発とは ◎コンセプトを受け入れ,そのコンセプトの内側か ら,新しいビジョンを探っていく。 ◎「製品コンセプトの創造を基盤とした製品開発」 ⇒製品コンセプトを軸にすえた製品開発 現在の製品開発における問題の所在 製品市場の多くは,競争の激化を呈している。 ⇒製品ライフサイクル短絡化 製品は飽和化,ニーズは潜在化へと移行 一体何を作ればいいのか。何の技術を開発すれ ばいいのかの明確な指針を失っている。つまり開発 組織の統合性が失われている。 迷走開発の状態にある。 我々の問題意識 ◎現状は市場駆動型・技術駆動型とも有効 な製品開発とはいえなくなってきている。 製品コンセプト駆動型開発が有効と考えら れる では製品コンセプト駆動型開発に は一体どういった企業行動が必要 なのであろうか? 実現を促進する組織形態・開発行動 外部統合 内部統合 製品コンセプト 魅力的な製品コンセプト創出には外部統 合行動と内部統合を緊密に融合が必要 外部統合行動 ◎製品と市場ニーズとの整合性を図るもの 市場情報獲得行動が必要 ◎現状では難しい ライフスタイルを含めた更なる統合性を図る 内部統合行動 ニーズや技術を含んだ製品知識を全社的に共有 部門間連結が必要 ・部門横断的な開発チーム ・部門間移動による経験能力の蓄積 ・開発に対するトップのコミットメント 研究フレームワーク 市場情報獲得行動 H・1 H・3 製品コンセプト 駆動型 開発 部門間連結行動 H・2 製品 開発成果 組織的 成果 研究課題Ⅰ(H・1):「市場情報獲得行動」が,「製品コンセプト駆動 型開発」に正の影響を与える。 研究課題Ⅱ(H・2):「部門間連結」が,「製品コンセプト駆動型開 発」に正の影響を与える。 研究課題Ⅲ(H・3):「製品コンセプト駆動型開発」が,「組織的成 果」と「新製品開発」に正の影響を与える。 ~解析編~ 記述統計,一元配置分析,分散分析 、信頼性分析,因子分析, 相関分析,重回帰分析 我々の仮説を実証 コンセプト駆動型開発を実現する 開発行動を提示. 並びにコンセプ 駆動型開発による成果の提示 脱・迷走開発へ ~アンケート調査~ ☆母集団・・・699社 食品・化学・輸送用機器・機械・精密機器・その他製造業 ☆送付・・・458社 ☆回収・・・ 180社(39.3%) (有効回答数194社) 2005年度夏季号『四季報』(東洋経済新報社)・2005年度夏号『日経会社情報』(日本経済新聞 社)より抽出 H・1の検証 表2<研究課題Ⅰ>「市場情報獲得行動」因子と「製品コンセプト駆動型開発」に関する重回帰分析 ※表中には有意確率5%以下の変数のみ記載 表2-a 従属変数:製品コンセプトの明確さ(合成変数)N=180 標準化係数 有意確率 同業他社情報獲得 0.272 0.002 L/Sを含む市場情報獲得 0.318 0.000 R2乗 0.219 F値 10.102 表2-b 従属変数:開発関係者の製品コンセプト理解・浸透(合成変数)N=180 標準化係数 有意確率 同業他社情報獲得 0.321 0.000 L/Sを含む市場情報獲得 0.288 0.001 R2乗 0.207 F値 9.424 表2-c 従属変数:製品コンセプトへのトップの関与(合成変数)N=180 標準化係数 有意確率 L/Sを含む市場情報獲得 0.231 0.012 流通網からの市場情報獲得 0.190 0.039 R2乗 0.112 F値 4.551 表2-d 従属変数:製品コンセプト重視度(合成変数)N=180 標準化係数 有意確率 同業他社情報獲得 0.256 0.002 L/Sを含む市場情報獲得 0.332 0.000 流通網からの市場情報獲得 0.287 0.001 R2乗 0.281 F値 14.046 仮説は実証された。 ◎市場情報獲得行動は,製品コンセプト駆 動型開発に必要な行動となる。 H・2の検証 表3<研究課題Ⅱ>「部門間連結」因子と「製品コンセプト駆動型開発」に関する重回帰分析 ※表中には有意確率5%以下の変数のみ記載 表3-a 従属変数:製品コンセプトの明確さ(合成変数)N=180 標準化係数 有意確率 PJT内コミュニケーション 0.243 0.008 経営陣の組織牽引力 0.270 0.003 製品知識の他部門間共有 0.251 0.007 R2乗 0.258 F値 8.188 表3-b 従属変数:開発関係者の製品コンセプト理解・浸透(合成変数)N=180 標準化係数 有意確率 PJT内コミュニケーション 0.316 0.000 経営陣の組織牽引力 0.328 0.000 製品知識の他部門間共有 0.280 0.001 部門間移動 0.222 0.007 R2乗 0.399 F値 15.572 表3-c 従属変数:製品コンセプトへのトップの関与(合成変数)N=180 標準化係数 有意確率 PJT内コミュニケーション 0.272 0.000 経営陣の組織牽引力 0.601 0.000 製品知識の他部門間共有 0.183 0.011 R2乗 0.540 F値 27.581 表3-d 従属変数:製品コンセプト重視度(合成変数)N=180 標準化係数 有意確率 PJT内コミュニケーション 0.213 0.015 経営陣の組織牽引力 0.276 0.002 製品知識の他部門間共有 0.325 0.000 部門間移動 0.184 0.035 R2乗 0.315 F値 10.782 仮説は実証された。 ◎部門間連結は,製品コンセプト駆動型 開発に必要な行動となる。 H・3の検証 表4「製品コンセプト駆動型開発」と「新製品開発成果」・「組織的成果」因子に関する重回帰分析 ※表中には有意確率5%以下の変数のみ記載 表4-a 従属変数:製品化の速さと頻度 N=180 標準化係数 有意確率 製品コンセプトへのトップの関与(合成変数) 0.150 0.046 R2乗 0.023 F値 4.028 表4-b 表4-c 表4-d 従属変数:市場導入達成力 N=180 標準化係数 有意確率 開発関係者の製品コンセプト理解・浸透(合成変数) 0.282 0.000 R2乗 0.080 F値 15.042 従属変数:市場導入承認までのコストと時間の達成 N=180 標準化係数 有意確率 製品コンセプトの明確さ(合成変数) 0.193 0.010 R2乗 0.037 F値 6.745 従属変数:開発組織の統合性向上 N=180 標準化係数 有意確率 開発関係者の製品コンセプト理解・浸透(合成変数) 0.662 0.000 製品コンセプトへのトップの関与(合成変数) 0.167 0.048 R2乗 0.509 F値 44.310 表4-e 従属変数:部門間コンフリクト解消 N=180 標準化係数 有意確率 製品コンセプトの明確さ(合成変数) 0.192 0.011 R2乗 0.037 F値 6.636 仮説は一部実証された。 ◎製品コンセプト駆動型開発は,特に組 織的成果の「開発組織の統合性」に強い 影響を及ぼしている。 考察~その1~ ◎製品コンセプト駆動型開発の実現要因 市場情報 獲得行動 部門間 連結 製品コンセプト駆動型開発の実現 考察~その2~ ◎製品コンセプト駆動型開発がもたらす成果 製品コンセプト駆動型開発 組織的成果 (開発組織の統合性など) 新製品開発成果 ◎製品コンセプト駆動型開発がもたらす成果は,新製品開発 成果よりも組織的成果のほうが明確である。 今後の展望 ◎製品開発における指針・意思決定の拠り所が欠落 している現状 製品コンセプト駆動型開発により,開発組 織の統合性が向上する。 製品コンセプト駆動型開発を実現するためには… 市場情報獲得行動,部門間 連結が必要。 参考文献1 ・織畑基一著『ラジカル・イノベーション戦略』東洋経済新報社,2001年 ・児玉文雄『ハイテク技術のパラダイム』中央公論社,1991年 ・Clark,K.B. and Fujimoto,T Product Development Performance,Harvard Bujiness Press, 1991 (田村明比古訳『製品開発力』ダイヤモンド社,1993 年) ・フィリップコトラー著,月谷真紀訳,『マーケティングマネジメント』,ピアソン・エ デュケーション,2002年 200~223頁 ・佐藤邦廣著『戦略的マーケティングと経営理念 : ビジョンから製品コンセプトへ 』 同文舘2003年 ・竹村正明,「消費者製品システム観の構造―製品・要素技術と消費者問題解決 様式の相互作用―」『彦根論叢 第320号』,1999年 167~168頁 ・楠木建「価値分化:製品コンセプトのイノベーションを組織化する」『組織科学』 Vol..35No.2,2001 ・野中郁次郎・竹内弘高著『知識創造企業』東洋経済新報社,1995年 ・ Clark,K.B. and Fujimoto,T The Power of Product Integrity, Harvard Business Review,Nov-Dec,107-108 (坂本義実訳「製品統合性とそのパ ワー」『ダイヤモンドハードビジネス』Feb-Mar,1991) ・ジョージS.デイ著・徳永豊・森博隆・井上崇通・小林一・篠原敏彦・首藤禎史訳 『市場駆動型の戦略』同友館,1998年 参考文献2 ・西原達也著『消費者の価値意識とマーケティング・コミュニケーション』日本評論社,1994年 ・池島 政広著『新製品開発とプロジェクト・チーム』 ・今井賢一著『イノベーションと組織』,東洋経済新報社,1986年 ・楠木建 野中郁次郎 永田晃也「日本企業の製品開発における組織能力」『組織科学』 Vol.29 ・ゲオルクファンクロー・一條和生・野中郁次郎『ナレッジ・イネーブリング』,東洋経済新報社 ・ Cooper,R.G. and E.J.Kleinshmidt, The Key Factors in Success, American Marketing Asociation, Chicago, 1990 ・梅澤伸嘉「キーニーズ法による商品コンセプトの開発」『DHBFeb.Mar.1988』,1988年 ・S.A.Zahra And A.P.Nielsen(2002) ・Gupta, Ashok K.and David L.Wikemon, Accelrating the Development of New Products, California Management Review,Winter , 1990 pp.3-19 ・Burchill,Gary&Charles.H.Fine Time Versus Market Orientation in Product Concept Development:Empirically-Based Theory Generation, Management Science, Vol.43,No.4,pp.465-478 ・加登豊著『原価企画―戦略的コストマネジメント』日本経済新聞社,1993 ・ジョージS.デイ著・徳永豊・森博隆・井上崇通・佐々木茂・首藤禎史訳 『戦略市場戦略』 同友館,1992年 ・D.レオナルド著 阿部孝太郎・田畑暁生訳『知識の源泉:イノベーションの構築と持続』,ダ イヤモンド社,2002年 ・米谷「新製品開発をめぐる基礎的問題」(2001) ・Harold.W.Berkman&Chiristopher.C.Gilson,ConsumerBehavior,concepts,and strategies,Dickenson Publishing Co.,Inc.,Encino,carifornia,1978,pp.497
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