辻 勝美 - 日本大学文理学部

平成26年度 日本大学文理学部個人研究費 研究実績報告書
学科・資格 国文学科・教授
申請者氏名 辻 勝美
研 究 課 題
研究目的
お よ び
報
研究概要
告
研 究
の
の
概
結 果
要
研
究
の
考 察
・
反 省
㊞
中世文学の書誌的研究
日本の中世文学のうち随筆、日記紀行、和歌文学作品を中心として書誌的な研究をおこなうことを
目的とする。
これまでにも、日本大学が所蔵している古典籍資料作品を調査、整理し、『方丈記』
『徒然草』
『内裏
名所百首』
『歌枕名寄』などの享受史を考察するうえで重要と思われる資料をとりあげ、その本文の性
格や意義について検討してきた。本研究では、とくに西行法師・鴨長明など、中世文学の主要な作家
たちに関する説話伝承を中心とし、
『百人一首』などの和歌文学作品をも含めて、あらたな享受史関連
資料を紹介するとともに、その表現世界の意義などについても読解の成果を示し、今後の検討課題や
研究の展望を切りひらいていく。そのための研究文献資料の調査とデータ整理をおこない、関連資料
の紹介・公刊をめざす。
本年度は、藤原定家の秀歌撰『百人一首』に関して、文理学部所蔵の「百人一首注」(室町時代末期
写)をとりあげ、その本文の特質、資料的性格について調査、考察した。
いわゆる「百人一首宗祇抄」や「応永抄(満基抄)」などとの本文と比較対照して、本学所蔵本の位置づ
けを試みた。とりわけ「宗祇抄」については、現在の研究段階において、その伝本の種類が多く、どのよう
な系統分類をおこなったらよいか、不分明な問題があるので、今後の解明にむけての基礎的な研究成果
を示すことを目指した。昨年度は『日本大学文理学部蔵「百人一首注」』(2013 年 12 月、文成印刷・
私家版、全 105 頁)として影印版・本文翻刻(解題を付す)を刊行したので、本年度はその成果
をふまえて、大学院生ら 5 名との共同作業で、本文内容についての検討結果と主要な本文異同を
示したものを日本大学国文学会誌に報告した。
『百人一首』の注釈の研究については、いわゆる「宗祇抄」の多様な伝本に関する調査が必要で、主要
な伝本との比較によるおおよその位置づけはできたが、今後はさらに多くの諸伝本との本文比較によっ
て、整理されなければならない問題が残されている。百人一首のみにとどまらず、中世における古典注釈
のあり方とも関連させて、考察すべき問題があることも確認できよう。
そこで、本学部所蔵「百人一首注」のほかに、同学部所蔵「百人一首抄」もとりあげ、金子馨との共著
で、本文の翻刻紹介とともに主要な本文異同一覧を作成、報告することとしたが、なお当該伝本の位置
づけに関しても検討すべき課題が残った。
※この欄は,本報告書提出時点で判明している事項について御記入ください。
研究発表
学会名
発表テーマ
年月日/場所
研究成果物
テーマ
誌 名
巻・号
発行年月日
発行所・者
◎論文・資料紹介
辻勝美・金子馨・高橋優美穂・荒川真一・吉田智美・篠嵜あゆみ「日本大学文理学部所蔵『百人
一首注』について」
『語文』149 輯(日本大学国文学会、2014 年 6 月 25 日、p17~41)
辻勝美・金子馨・高橋優美穂・荒川眞一・吉田智美・篠嵜あゆみ「日本大学文理学部所蔵『百人
一首注』について」
(『語文』第 150 輯、2014 年 12 月 25 日、p10~31)
辻勝美・金子馨「日本大学文理学部所蔵『百人一首抄』について―附翻刻・異同一覧―」(『語文』
第 151 輯、2015 年 3 月 25 日、p39~86)