目白大学大学院 修了論文概要 所属 心理学研究科 臨床心理学専攻 修士課程 修了年度 平成 26 年度 氏名 横倉 芳望 指導教員 (主査) 沢崎 達夫 論文題目 定時制高校の生徒の登校回避感情に関する研究 ―教師との関わり経験および援助要請スタイルとの関連― 本 文 概 要 【問題と目的】不登校経験者の「再生の場」として期待されている定時制高校だが,不登校や中途退学 の再発が課題の一つとして挙げられている。そうした中,彼らの相談行動における課題や,生徒の登校 継続における教師の存在の重要性が注目されてきている。そこで本研究では定時制高校に通う生徒の登 校回避感情に関して,生徒と教師との関わり経験および生徒の援助要請スタイルがどのように関連して いるのかを検討することを目的とした。 【方法】調査対象者:A 高等学校(定時制課程)に通う生徒 101 名(男性 37 名,女性 61 名,不明 3 名)質問紙:①「教師との関わり経験尺度」 (中井・庄司,2009)24 項目 4 件法,②「援助要請スタイ ル尺度」 (永井,2013)12 項目 7 件法,③「登校回避感情測定尺度」 (渡辺・小石,2000)26 項目 5 件 法,④フェイスシート(学年,年齢,性別,不登校経験の有無,現在の 1 週間の登校日数,規則の厳し さの認知の程度) 。なお①~③の尺度に関しては,指導教員および調査依頼校の教職員と協議の結果,A 高等学校の生徒にとって質問項目の意味が分かりにくいと判断したものに関しては,似た意味の言葉を 括弧書きで加え,全ての漢字にルビを振った。倫理事項:本研究は「目白大学人及び動物を対象とする 研究に係る倫理審査委員会」の承認を得た上で行った。 【結果】各尺度について因子分析を行った結果,教師との関わり経験尺度に関しては第 1 因子から順に 「教師との関わりにおける傷つきのなさ」 「教師との親しい関わり」 「教師からの受容」 (α=.85~.88) , 援助要請スタイル尺度は「援助要請過剰型」 「援助要請回避型」 「援助要請自立型」 (α=.83~.89) ,登 校回避感情測定尺度は「友人関係における孤立感傾向」 「登校嫌悪感傾向」 「学校への反発感傾向」 (α =.73~.87)と,それぞれ 3 因子が抽出された。 得られた因子に基づき,教師との関わり経験尺度および援助要請スタイル尺度を独立変数,登校回避 感情測定尺度を従属変数とした分散分析,重回帰分析を行った。その結果,分散分析では教師との関わ り経験尺度が登校回避感情測定尺度の合計点と各下位尺度の全てにおいて有意差が認められ,いずれも 教師との関わり経験得点が高い,すなわち教師との関わりを肯定的に捉えている生徒ほど登校回避感情 が低いことが分かった。しかし重回帰分析では,教師との関わり経験尺度に関しては登校回避感情の合 計点に関しては全ての下位尺度が負の影響を示していたが,登校回避感情の下位尺度に関しては影響を 示すものと示さないものが見られた。援助要請行動では分散分析に手「学校への反発感傾向」において のみ有意差が見られ, 「援助要請過剰型」の生徒のほうが「援助要請回避型」の生徒よりも得点が低いこ とが分かった一方,重回帰分析では影響が示されるものと示されないものがあった。 【考察】教師との関わり経験が生徒にとって肯定的なものであることが登校回避感情を低減する可能性 が示された一方で,そのことが直接的に影響を及ぼしているというよりは,教師の支援をより受けやす い状況にあるなど間接的な影響を持っている可能性が考えられる。また,援助要請スタイルに関しては あまり大きな関連は示されなかった。本研究では援助要請の対象を教師に限定したこともあり,結果が 出にくかったという可能性がある。今後援助要請の対象を友人などにも広げて検討する必要がある。 【引用文献】高橋伸行 (2013). 定時制高校入門―略史と現状― 椙山女学院大学教育学部紀要, 6, pp.1-10.
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