熊本大学学術リポジトリ Kumamoto University Repository System Title 重大な暴力の既往がある統合失調症罹患者の心理社会的 背景ならびに認知機能の特徴について Author(s) 柏木, 宏子 Citation Issue date 2016-03-09 Type Thesis or Dissertation URL http://hdl.handle.net/2298/34646 Right 相木宏子氏の学位論文審査の要旨 論文題目 重大な暴力の既往がある統合失調症擢患者の心理社会的背景ならびに認知機能の特徴に ついて ( P s y c h o s o c i a lb a c k g r o u n d sa n dN e u r o c o g n i t i v eF e a t u r e si nS c h i z o p h r e n i cP a t i e n t s w i t hS e r i o u sV i o l e n c e ) 大部分の統合失調症患者は暴力行為を伴わない。しかし一部の患者は暴力行為を伴い精神科治療 の対象となるケースが存在している。近年、海外を中心に殺人などの暴力的他害行為の発生率が、 統合失調症などの精神病性障害擢患者群では一般人口と比較して、率は低いものの有意に高いとい う報告がなされ、その要因に関する研究がすすめられている。そのなかで、認知機能と暴力行為と ( の関連についても調査は行われつつあるが、未だ結論は得られていない。本研究は、重大な暴力に 関連する因子を特定するために、暴力行為を伴った統合失調症擢患者群と暴力行為を伴わない統合 失調症擢患者を比較検討した。 対象者は、重大な対人暴力行為(殺人、殺人未遂、傷害)の後に、医療観察法病棟に入院となっ 0名の男性統合失調症擢患者と暴力行為の既往のない 2 4名の男性統合失調症擢患者である。精 た3 A N S S( P a si ti v ea n dN e g a t i v eS y n d r o m eS e aI e )、認知機能は B A C S( B r i e fA s s e s s m e n to f 神症状は P C o g n i t i o ni nS c h i z o p h r e n i a)日本語版にて評価を行なった。 A C S日本語版の各項目の Zスコアを算出し、反復測定分散分析を行ったところ、暴力 その結果、 B 行為群は、非暴力行為群と異なる神経心理学的プロフィールである傾向がみられた。また下位検定 を行ったところ、暴力行為群は非暴力行為群よりも、有意に作動記憶と実行機能の Zスコアが高か った。物質使用障害有無の認知機能への影響を調整しても、実行機能について同様の結果が認めら れた。 以上の研究結果より、暴力行為のある統合失調症擢患者群の一部は、特徴的な神経心理学的プロ フィールを有している可能性があることが示唆された。 . 文献検討と用いた要因(変数)との関連、 審査では、 1 対象者の選定理由とその限界点、 2 3 . 変数間の相関の検討、 4 . 在院日数の結果への影響、 5 . 統合失調症発症時期と暴力行為との関 連 、 5 物質使用障害データの正確性などについて質問が行われ、申請者からは概ね良好な回答が 得られた。 本研究は、より効果的な心理社会的治療の発展や、重大な暴力行為のある統合失調症患者のさら なる理解に寄与できる貴重な研究であり、学位の授与に値すると評価した。 審査委員長 公衆衛生学分野担当教授 れた々ろ
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