Page 1 Page 2 平田 快級広 氏の学位論文審査の要旨 論文題目 酸化

熊本大学学術リポジトリ
Kumamoto University Repository System
Title
酸化ストレスと冠動脈疾患の診断及び予後との関連につ
いて
Author(s)
平田, 快紘
Citation
Issue date
2016-03-25
Type
Thesis or Dissertation
URL
http://hdl.handle.net/2298/34562
Right
平田快紘氏の学位論文審査の要旨
論文題目
酸化ストレスと冠動脈疾患の診断及び予後との関連について
(
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冠動脈疾患(c
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D)患者は年々増加しており、その進展は致命的心血管イベン
トの原因となりうるため、そのリスク層別化が重要である。また、酸化ストレス( r
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Dの発症と進展に関連していることが主に基礎研究を中心に報告されている o しかし、 C
A
D患者に
R
O
S)が C
おける R
O
Sの有用なバイオマーカーに関してはいまだ確立されていなし、。本研究は、新しい酸化ストレスの
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D
R
O
M)の、 C
A
D患者の診断および予
バイオマーカーである d
後における有用性を検討したものである。
2
0
0
7年から 2
0
1
3年に熊本大学病院で冠動脈造影検査を受け、 C
A
Dと診断された 3
9
5人、および非 C
A
Dと診
断された 2
2
7人を対象とした。冠動脈造影検査前に、末梢血の血清 D
R
O
M値を測定した。 C
A
D患者は、その重
症度を一枝病変患者および多枝病変患者に分類し、またその複雑度を A
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e分類を用いて単純病変と複雑
病変に分類した。 3
9
5人の C
A
D患者は心血管イベントを発症するまで追跡し、 D
R
O
M値との関連性について検
討した。また、サブスタディとして冠動脈造影検査時に、冠静脈洞と大動脈基部から採血を行い、冠循環に
おける D
R
O
Mの産生について検討を行った o その結果、リスク因子をマッチさせた C
A
D患者は、非 C
A
D患者と
R
O
M値は有意に高値を示した(p
<
O
.0
0
1)。また、 C
A
D患者では多枝病変患者は一枝病変患者
比較して血清 D
R
O
Mが高値で、あった(p
<
O
.0
0
1)。また、複雑性病変を持つ C
A
D患者は単純性病変を持つ
と比較して有意に D
患者と比較し有意に D
R
O
Mが高値で、あった( p
<
O
.0
0
1)
。 3
9
5人の C
A
D患者を平均 2
0ヶ月追跡したところ、
8
3人が心血管イベントを発症した。力プランマイヤー解析では、中央値で二分した D
R
O
M高値群は低値群と
比較して心血管イベントを有意に多く発症していた。多変量コックスハザード解析では、 D
R
O
Mは他の因子と
A
D患者における心血管イベント発症と関連していた(p
=
O
.0
0
1)。また、冠循環での D
R
O
M
独立して有意に C
の産生は、非 C
A
D患者と比較して C
A
D患者で有意に増加していた( p
=
0
.
0
4)。以上より、新しい酸化ストレ
スマーカーである D
R
O
Mは C
A
D患者で増加しており、その重症度、複雑度、および予後と関連していることが
明らかとなった。また、 C
A
D患者の冠循環で D
R
O
Mが増加していることが示され、 C
A
D患者での末梢血 D
R
O
M
値増加に一部関与していることが示唆された。
O
Sのマー力ーと D
R
O
Mの相関や関連性、薬剤投与による D
R
O
Mの変動、脳血管疾患での
審査では、従来の R
D
R
O
Mの変動と意義、 D
問 M測定の費用、末梢血での D
R
O
Mの産生源、高血圧、糖尿病や脂質異常症での D
R
O
M
値の意義、健常人での D
R
O
Mと運動の関係、抗酸化剤投与の効果判定のための有用性などについて質問がなさ
れ、申請者から概ね適切な回答がなされた口
本研究は、新しい酸化ストレスマーカーである D
R
O
Mが C
A
D患者のリスク層別化に有用であることを示唆し
た点で学位授与に値するものと評価された。
審査委員長明能薬理学担当教授光山勝反