目白大学大学院 修了論文概要 所属 心理学研究科 臨床心理学専攻 修士課程 修了年度 平成 26 年度 氏名 小平 かよこ 指導教員 (主査) 丹 明彦 論文題目 大学生の自己愛傾向及び定型・非定型うつ傾向がうつに与える影響 ―攻撃性の特徴との関連に着目して― 本 文 概 要 【問題と目的】 近年,非定型うつが若年層を中心に増加していると指摘されている。また,自己愛パーソナリティを 抱える者も急増していると言われ,対象者の年齢層も重なっていることから,非定型うつと自己愛との 関連性は強いと考えられる。本研究では,過敏型・誇大型の自己愛及び,定型うつタイプの特性を持つ 者と,非定型うつタイプの特性を持つ者が,うつ病の基準を満たすうつへと至る一要因として,攻撃性 の特徴を仮定し,その関連性を検証することを目的とする。 仮説:①過敏型定型うつタイプの者は, 「短気」が高まると「うつ」が高まる。②誇大型非定型うつタイ プの者は, 「言語的攻撃」や「身体的攻撃」が高まっても, 「うつ」は低くなる。③誇大型,過敏型のい ずれかの自己愛傾向と,定型うつタイプ,非定型うつタイプのいずれかのうつタイプを合わせ持つ群で あっても,攻撃性が低い者は, 「うつ」が低くなる。 【方法】 調査対象者:大学生 1 年~4 年の計 478 名(男性 188 名,女性 261 名,不明 14 名) 。 使用尺度:①フェイスシート(学年・年齢・性別)②評価過敏性-誇大性自己愛尺度(中山・中谷,2006) 18 項目③日本版 Buss-Perry 攻撃性質問紙(安藤・曽我・山崎・島井・嶋田・宇津木・大芦・坂井,1999) 24 項目④グローバルうつ病評価尺度(福西・福西,2012)30 項目。 倫理事項:質問紙の実施にあたり,回答者の権利の保護と個人情報の秘匿に細心の注意を払った。 【結果と考察】 結果として,誇大型非定型うつタイプ群は, 「他者から嫌われていると感じる」 「暴力の容認」が, 「う つ」を促進し,過敏型定型うつタイプ群の女性は, 「短気」が「うつ」を促進し,誇大型定型うつタイプ 群の女性は, 「短気」が「うつ」を抑制し, 「暴力の欲求」が「うつ」を促進することが示唆された。 まず,誇大型非定型うつタイプ群にとって,他者からの敵意を認知し,暴力によって攻撃性を発散さ せることを容認する行為は,社会的に不適応であり,抑制されるものである。従って,社会生活の中で, 内に溜まった攻撃性を上手く発散することができず,うつ病へのリスクが高まってしまうのではないか と考えられるが,これは仮説②とは真逆の結果となった。また,過敏型定型うつタイプ群の女性は,他 者の目を気にする傾向が見られ,内に溜まった攻撃性を上手く発散することができないのではないかと 推測される。そのため,情動的な攻撃性を感じた時,その攻撃性を上手く発散することができず,うつ 病へのリスクが高くなってしまうのではないかと考えられ,これは仮説①の一部を立証する結果となっ た。さらに,誇大型定型うつタイプ群の女性は,誇大型傾向と定型うつタイプという,異なる特徴を持 つことから,情動的な攻撃性は適応的に発散でき,うつを抑制するが,暴力的な欲求はうまく発散でき ず,うつ病へのリスクを高めてしまうのではないかと考えられた。ここから攻撃性の高さが全てうつ病 のリスクを高めるのではなく,攻撃性を感じたときに,社会的に適応するような方法で上手く発散させ ることができるかということが,うつ病のリスクを左右するのではないかと考えられ,仮説③は立証さ れなかった。 【引用文献】 福西朱美(2014).非定型うつ病の臨床心理学的研究 治療,96(3),300-317.
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