目白大学大学院 修了論文概要 所属 心理学研究科 臨床心理学専攻 修士課程 修了年度 平成 26 年度 氏名 小田 亜澄 指導教員 (主査) 小池 眞規子 論文題目 ペットロス経験者の示す反応様式と対処方略について ―罪悪感に着目して― 本 文 概 要 【問題と目的】 ペットは,現在,人間の生活になくてはならない存在となっているが,ペットを飼うことの負の側面 の一つとしてペットロスが指摘されている。ペットロスは病気でも異常でもなく,愛するペットを失っ た時の自然な反応であるとしているが,重篤な場合には専門的な援助が必要であることも報告されてい る。ところで,犬の登録頭数は増加傾向にあり,犬猫の平均寿命は人間よりもはるかに短いため,多く の飼い主がペットロスを経験することが予想され,ペットロスへの適切な対処を確立することの社会的 要請がますます大きくなっていると言える。ペットロスを規定する要因の一つとして,罪の意識という 概念があり,生前にやるべきことをやったと思えない場合,自責感を抱えることとなり,悲嘆反応が長 引くとされる。ここから,罪の意識を軽減する要因を明らかにすることができれば,ペットロスが深刻 になることを防げると考えられる。そのため,ペットロスを受け入れ,うまく乗り越えていくための規 定因を明らかにすることを本研究の目的とする。 【方法】 研究 1 は 3 尺度(失ったペットに対する罪悪感尺度,ペットロス深刻度尺度,ペットロスコーピング 尺度)の作成を目的とした。研究 2 は新たに作成した尺度の再検査信頼性の検討及び,ペットを失った 時の状況などによる失ったペットに対する罪悪感,深刻度,コーピングの違いの検討を目的とした。 対象者:調査を 2 回行い,研究 1 では 173 名,研究 2 では 273 名のペットロス経験者を対象とした。 質問紙:1 回目の調査では,①フェイスシート,②失ったペットに対する罪悪感尺度,③ペットロス深 刻度尺度,④ペットロスコーピング尺度(②~④は新たに作成) ,⑤日本語版 K6(古川ら,2002)を用 いた。2 回目の調査では①~④に加え,⑤日本語版 CES-D (島ら,1985)を用いた。 倫理事項:質問紙調査の実施にあたり,回答者の権利の保護と個人情報の秘匿に細心の注意を払った。 【結果】 因子分析の結果から,失ったペットに対する罪悪感得点は 1 因子構造,ペットロス深刻度得点は 2 因 子構造,ペットロスコーピング得点は 4 因子構造となった。各因子のα係数は.51~.91,再検査信頼性 は r=.69~.78 であり,信頼性が示された。また,併存的妥当性及び弁別的妥当性も示された。 結果から,ペットの喪失を予期することにより,心の準備が出来,喪失を受け入れ,罪の意識を感じ ることが少ない傾向にあることが示された。しかし,若年層でペットを失った場合,高齢層と比べ,罪 の意識を感じやすい傾向にあることが示された。そして,相関分析の結果から,ペット喪失時はペット の喪失に直面化し,積極的に対処した方が,悲嘆の解決が早い傾向にあることが示された。 【考察】 新たに作成した 3 尺度はペットロスの研究に際し,実用可能な尺度であることが示された。全体の結 果から,ペットロスの深刻化には,性別だけでなく,動物の種類や,喪失の仕方なども一定の影響を与 えている可能性が示唆された。ここから,性別,動物の種類,喪失の仕方など包括的に考慮した支援を 提供する必要があると考えられた。 【引用文献】 岩本隆茂・福井至(2001) .アニマルセラピーの理論と実際 株式会社 培風館
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