テキスト

第
章
三角形の中心
「三角形の心」とは、任意の三角形から一意的に求めることができる点の総称をいいます。特
に有名なのは「五心」と呼ばれる点(内心・外心・重心・垂心・傍心)が一般的に広く知られ
ています。この「五心」は古くから知られており、ユークリッドの「原論」にも記述が見られ
るくらいです。
他の点の多くは、
年のチェバの定理の発表後に発見されていて、この定理によって存在
が容易に示される心は少なくありません。そのうちの代表的なものとして、ジェルゴンヌ点や
ブロカール点、ド・ロンシャン点などがあります。そのうちのいくつかを、この章では取り上
げます。
モーレーの定理の発表などもあり、
世紀から
世紀にかけて三角形の研究は広く行われ
ました。心の名前には、その心に関する研究をした人の名前が付けられることが多く、ナポレ
オン点のナポレオン・ボナパルトやソディ点のフレデリック・ソディのように、数学者以外の
名前がつく例もあります。安島 マルファッティ点のように、日本人の名前が入っているものも
あります。
その後も新しい心が発見されており、エヴァンズビル大学内のサイト「
」には
以上の心が登録されています。
共円
六点円
(定理)六点円(テーラー円)
において、頂点
とする。頂点
の足をそれぞれ
引いた垂線の足を
、頂点
、頂点
垂線の足を
から対辺に引いた垂線
から辺
から辺
に引いた
に引いた垂線の
とするとき、 点
足を
に
から辺
は同一円周
上にある。
(証明)
点
が同一円周上にあることを示す。
より、 点
∽
よって、
∽
は同一円周上。よって、
より、
∴
より、
同様にして、
よって、
より
点
は同一円周上にある。
となり、 点
は同一円周上にある。
が同一円周上にあることを示す。
点
より、 点
は同一円周上。よって、
より
より、
同様にして、 点
は同一円周上にあり、
より
より、 点
より、 点
より、
∴
は同一円周上。よって、
は同一円周上。よって、
∴
より、
よって、 点
より、 点
は同一円周上にある。
は同一円周上にある。■
九点円
(定理)九点円
の
の中点を
、頂点
から対辺に引いた垂線の足をそれぞれ
と垂心
との中点を
、 頂点
とするとき、 点
は同一円周上にある。
(証明)
より、
また、
より、 四角形
同様に、四角形
は長方形。
も長方形。
より、 点
より、
は同一円周上。
もこの円の直径。
より、 点
も同一円周上。■
の
から
の 等分線に
から下ろした垂線の足を
に下ろした垂線の足を
辺
とし、
の中点をとすれば、 点
は共円であって、その中心は九点円の上にあることを証明
せよ。
(京都大
年)平面上の鋭角三角形
, を通る円の中心、
とき
, , ,
の内部(辺や頂点は含まない)に点
を , , を通る円の中心、
を
をとり、
を ,
, , を通る円の中心とする。 この
が同一円周上にあるための 必要十分条件は
が
の内心に一致する
ことであることを示せ。
(京都大
年) 円
る 。円
と直線 の交点を
円
と直線
わり、 直線
の交点を
は直線
に交わる 直線
、円
を引く
と直線
とする。 また 直線
および
の交点は円
の交点を
は直線
とそれぞれ
は同一円周上にあることを証明せよ。
(フォイエルバッハ)三角形の九点円は内接円と傍接円に
接することを証明せよ。
、円
および
の周上にないものとす
と直線 の交点を
とそれぞれ
で交わるとする。 このとき 点
、
で交
共線
オイラー線
(定理)オイラー線
正三角形でない
の外心
において、
の中点を
とする。
は一
、外心
を通る直径を
とする。
と
との交点を
より、
よって、四角形
は
は平行四辺形。
の中点、
∽
よって、
よって
、垂心
である。
直線上にあり、
(証明)
、重心
は重心
より、
となり、
と一致する。よって、 点
は一直線上にあり
■
シムソン線
(定理)シムソン線
の外接円の周上の点
に下ろした垂線の足を
から、直線
とするとき、 点
は同一直線上にある。
(証明)
より、 点
は同一円周上。
よって、
より、 点
は同一円周上。
よって、
と
において、 点
また、
が同一円周上にあるので、
∴
より、
よって、 点
は同一直線上にある。■
この定理はシムソン(
)の定理と呼ぶこともある。
)の定理として広く知られているが、ウオーレス(
(京都大
年)
である直角三角形
に垂直な半直線 ,
を頂点
ひき、 この延長が ,
点
, ,
台形
がある。頂点 , をそ れぞれ始点として、辺
のある側にひく。 次に辺
と交わる点をそれぞれ
,
上の任意の点
とする。
の面積の 倍になるとき、この台形の形を求めよ。ただし、
とする。
点
がある。
の垂心
下ろした垂線がそれぞれ
ば、 点
から
に
と交わる点を
とすれ
は共線であることを証明せよ。
(スタイネル)
点
の
の垂心を
外接円周上の 点を
に関するシムソン線は、線分
とすると、
の中点を通ること
を証明せよ。
の外接円周上の 点
び円と交わる点を
から
に下ろした垂線が再
とすれば、
は点
の
に関するシムソン線に平行であることを証明せよ。
(オーベール)
と
点
がある。直線
のの外接円とであう点を
を結ぶ直線が
点
,
は一直線上にあることを示せ。
の面積が三角形
と
より辺
が再び
とし、外接円周上の点
と交わる点を
は共線であることを証明せよ。
と
とすれば、
に垂線を
共点
ナポレオン点
(定理)ナポレオン点
の外側に つの正三角形
をかき、それぞれの重心を
は
とすると、
点で交わる。
(証明)線分
と辺
との交点をそれぞれ
より、
同様に、
よって、
よって、チェバの定理の逆より、 直線は
点で交わる。■
とすると、
(定理)ナポレオンの三角形
の外側に つの正三角形
をかき、それぞれの重心を
とすると、
は正
三角形である。
(証明)
より、
同様にして、
∴
より、
より、
∽
∴
同様にして、
よって、
は正三角形である。■
フェルマー点
(定理)フェルマー点
の外側に つの正三角形
をかくと、その正三角形の外接円は
(証明)
の外接円と
点で交わる。
の外接円の交点を
ると、
また、 点
が同一円周上にあるので、
同様に
∴
∴
よって、 点
は同一円周上にある。■
とす
(定理)
の外側に つの正三角形
をかくと、直線
(証明)
の交点はフェルマー点である。
と
する。 点
の外接円を考え、その交点を
と
が同一円周上にあるので、
点
が同一円周上にあるので、
また、 点
が同一円周上にあるので、
∴
よって、 点
と
点
は同一円周上にある。同様にして、 点
も同一直線上にある。■
(定理)シュタイナー点
のフェルマー点を
にあるとき、
(証明)点
直線を
内部の任意の点
を通り
の交点を 、直線
内の任意の点
の内部
に対して、
に垂直な直線を 、点
とし、直線
さらに、
とする。 が
から、直線
を通り
に垂直な直線を
の交点を 、直線
、点
の交点を
を通り
とする。
に下ろした垂線の足をそれぞれ
より、
同様にして
となり、
は正三角形。 ∴
が一定より、
の値も一定。点
はそれぞれ
までの最短距離であるから、
■
も
に垂直な
の内部の点なので、
とする。
四角形
九点円は
において、 つの三角形
の
点で交わることを証明せよ。
(ノイベルク)
線の足を
の頂点
とする。
から 直線 に下ろした垂
からそれぞれ
に
下ろした垂線は共点であることを証明せよ。
(注意)この交点を直線
の
に関する直極点という。
円に内接する凸六角形
あるための必要十分条件は
であることを証明せよ。
の対角線
が共点で