初等社会科教育学 第3回 社会科授業のケーススタディを通した分析 視点の構築(1) 共感・理解型の授業:「周慶」 望ましい生き方へ 1 0.振り返ろう 私たちが社会科授業を見るとき,何に注目しているの だろう?=社会科授業では,何が大事だと考えている のだろう? • 子どもの興味や主体性?学習活動? • 社会が分かったかどうか?分かり方? • 実際に社会に関わっていく力や態度? • 指導要領に則っているかどうか?上記のバランス? 2 皆さんが社会科で(最も) 大事だと思うのはどれ? 教育行政・指導要領・学校環境・試験 社会が分かる/ 分かり方 教師 子どもの経験・興 味・主体性・学習活動 現実社会との関わり 3 本日の内容 小学校第4学年社会科授業「讃岐糖業の父「向山周 慶」周慶の素晴らしさをまとめよう」の分析。 • この授業はあなたにとって,「よい」社会科授業で すか。 • 授業のどこがどうなっているから,よい(よくな い)と考えましたか。 • この授業に課題があるとすれば,それはどこですか。 4 1.「周慶」の授業の事実 MQ:「周慶とはどのような人物か,砂糖作りの様子はどのよう なものか」 子どもたちの住む香川県の重要な産業の発展に貢献した人物を取 り上げる。 体験的な学習:調べ学習→表現活動 農民の暮らしグループ 向良神社グループ 砂糖作りグループ →劇,紙芝居で表現=登場人物を演じ,彼らの工夫,願い,努 力,苦労を追体験して,「共感」する 5 学習内容:「生き方」を学ぶ。 登場人物の願い,意図を み取る活動 ↓ 登場人物の生き方を評価(賞賛)する活動 「生涯を糖業に捧げた周慶の努力は,地元経済の活性化,地 域住民の生活の安定化に寄与した」…etc. ↓ 自分の生き方に示唆を得る 「現在でも,地域の人々は地域の発展のために努力しているの であり,自分も地域の発展のためにできることで何か努力し よう」…etc. 6 2.「周慶」の授業の分析 1. この授業は,あなたにとって「よ い」社会科授業ですか。 2. どこがどうなっているからですか。 3. この授業に課題があるとすれば,そ れは何ですか。 7 子どもの経験,興味,主体性, 学習活動から見た「よさ」 自ら調べ,自らやってみて,分かったことを表 現させる学習活動 • できるだけ当事者と同じことをさせたり(劇, 紙芝居),体験談等を聞かせたりして,共感さ せる。 →子どもを当事者と同じ思い,気持ち,立場にさ せる活発な活動 8 社会が分かる,分からせ 方から見た「よさ」 社会の当事者の目線から(内側から)分かることがで きる • 社会を(制度やシステムといった人々を取り巻いてる ものではなく)そこで生きている人々の願い,苦労, 生き方,それらが現れた行動をつかむと理解できる。 =「社会がよりよく分かる」ためには… その人々と同じ立場に立ち,同じように考え,同じよう に行動する=共感していく授業になる。 9 現実社会との関わりから 見た「よさ」 「私たち」の社会をよく知り,「私たち」の社 会のよき一員となることにつながる。 • 社会の良き一員のモデルとなる人物に自分を重 ね合わせ,その生き方に導くことを通して,子 どもが社会の発展を願い大切にする愛情を持つ ことを期待。 →社会への「同化」「社会化」を促す教育 10 3.「周慶」の授業の課題 本当に「社会が分かった」ことになるのか? ・なぜ人々は当時そんな願いを持ち,工夫や努力をしたのか, 人々を取り巻いていた時代的,社会的状況は!? =稲作→糖業に転換したのはなぜ? ・願いが実現しない場合は? 一つの生き方に子どもを誘導してしまう可能性は? 子どもたちは周慶らに自分を重ね合わせる一方で,地元社会 との関わり方について他の選択肢に触れにくくさせてしま う!? 11
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